日本文法覚え書き⑤

 お元気ですか。最近いきなり寒くなって、私は風邪をひきました。そして初めて国語のレポートで不合格になりました。自信がある教科だとけっこう凹むな。こしゃくな。

参考文献:市川孝、山内洋一郎監修『標準古典文法』

いろは歌
後半使える音が減っていくのに最後まで作りきったのがすごい。

いろはにほへと(色は匂えど) ちりぬるを(散りぬるを)
わかよたれそ(我が世たれぞ) つねならむ(常ならむ)
うゐのおくやま(有為の奥山) けふこえて(今日越えて)
あさきゆめみし(浅き夢見じ) ゑひもせす(酔ひもせず)


現代語訳
桜の花は色美しく照り映えるけれど 儚く散ってしまう。
我々人の世ですら 無常である。
道もなく越えがたい深い山のようなこの世を 今日もまた越えていくような人生で
浅い夢を見るように目の前の出来事に惑わされたりはしない。
酒に酔いしれるようにわけのわからないまま生涯を送ったりはしない。

文語敬語動詞「奉る」「参る」
「奉る」「参る」ともに謙譲と尊敬の二つの用法がある。

まず謙譲語の場合である。
「奉る」は「与ふ」の謙譲語。
「参る」は「来・行く・与ふ・す」の謙譲語である。
また、「奉る」には補助動詞(本来の意味がなく、あくまでも補助として添えられている動詞)の用法もある。

左大将の北の方、源氏に若菜参りたまふ。――源氏物語
(左大将の奥方が源氏に若菜をさしあげなさる。)

見送りの人々、見奉り送りて帰りぬ。――竹取物語
(お送りの人々は、見送り申し上げて帰った。)

次に尊敬語の場合である。
「奉る」は「食ふ・飲む・着る・乗る」の尊敬語。
「参る」は「食ふ・飲む」の尊敬語である。
「参る」に飲食的なイメージがないだけに難易度が高い。

一人の天人言ふ、「壺なる御薬奉れ。」――竹取物語
(一人の天人が言った。「壺にある薬を召し上がれ。」)

「何か、今は粥など参りて。」――蜻蛉日記
(なに、今はご飯などを召し上がって。)

文語動詞「酔ふ」「恨む」「寝」
どれも一癖ある動詞ばかり。

酔ふ
「よう」ではなく「えう」と読む。
活用はハ行四段活用で「酔は(ず)」「酔ひ(たり)」「酔ふ(。)」「酔ふ(時)」「酔へ(ども)」「酔へ(。)」

恨む
「うらむ」と読む。
未然形接続は現代的な感覚では「恨まず」のような感じがするが、「恨みず」が正しく
ひっかけのマ行上二段活用である。
「恨み」「恨み」「恨む」「恨むる」「恨むれ」「恨みよ」
命令形の「恨みよ」に、すごい違和感がある。


「ぬ」と読む。
現代的な感覚では「蹴る」といった下一段活用っぽいが、下一段活用は「蹴る」しか存在しないので、語幹と語尾の区別がない下二段活用となる。
「寝(ず)」「寝(たり)」「寝(。)」「寝る(時)」「寝れ(ども)」「寝よ(。)」
やはり命令形の「寝よ」にかなり違和感がある。そこは「寝ろ」だろう、と。
語幹と語尾の区別がない下二段活用はほかにも、「得(う)」や「経(ふ)」がある。

文語動詞「侍り」「候ふ」
ひとつめは「あり」「をり」の謙譲語(自分の方が身分が低い場合に自分の動作に用いる敬語)で「おそばにお仕えする」という意味、もしくは「仕ふ」の謙譲語で「お仕えする」という意味。

局してこのたびは日ごろ候ふ。――更級日記
(局をいただいて、この度は数日お仕えする。)
※内親王様のそばで仕事をすることになりましたというシーン。

ふたつめは丁寧語として使われている場合で、動詞で用いられている場合は、「身分の高い人のそばに仕える」の意味に解釈できないときには、丁寧語になる。

正月の十余日までは侍りなむ。――枕草子
(正月の十余日までは、きっとございますでしょう。)
※「ある」の丁寧語の「ございます」になっている。

また、補助動詞(本来の意味がなく、あくまでも補助として添えられている動詞)で用いている場合はすべて丁寧語である。

さらば自害は思ひとどまり候ひぬ。――平家物語
(それならば、自害は思いとどまりました。)

文語助動詞「まし」
「まし」は活用語の未然形に接続する文語助動詞で、意味は①反実仮想(もし~だったら・・・だろうに。)と、②迷い・ためらい(・・・たものだろうか。・・・たらよかろうか。)の二つがある。

①反実仮想
反実仮想とは、事実に反することを仮定して結果を想像するという意味である。つまり、「雨が降っていたら傘は必需品だ。」といった一般論とは異なり、事実と仮定を対立(反実)させなければならない。
なんとなく「もし、あの時雨が降っていたら、私は傘を持っていっただろうに。」のように、過去のことを振りかえるパターンが多い印象がある。

竜を捕らへたらましかば、またこともなくわれは害せられなまし。
(もし竜を捕まえていたら、またわけもなく私はきっと殺されただろうに。)

これは『竹取物語』の一節だが、殺されずに済んだことを強調するため、事実と反対のことを仮定して結果を想像したのである。

反実仮想の表現パターンには

A・・・ましかば・・・まし
B・・・ませば・・・まし
C・・・せば・・・まし
D・・・ば・・・まし

があるが、特にCの「せば」の「せ」は過去の助動詞「き」の未然形。「ば」は仮定を示す接続助詞である。「もし・・・だったなら・・・だろうに」と訳す。

②迷い・ためらい
「まし」が「・・・ば・・・まし」の形で用いられていないときは、多くは「迷い・ためらい」を表す。この場合、「いかに」「何」などの疑問語が前にあることが多い。

これに何を書かまし。
(これに何を書いたらよかろうか)

枕詞
下にある言葉を導き出したり、文章内容に豊かさや味わい深さを生み出したりする技巧である修辞法の一つ。
下の特定の言葉にかかる、固定的な飾りの言葉で、声調を整えたり、余韻を添えたりする。大部分の枕詞は5音節からなり、普通は口語訳しない。
例えば「ぬばたまの」だったら、下の言葉は「夜」と、連想ゲームのように決まっており、枕詞とかかる語はセットになっている。
もともとは、意味の連想や音の類似によって下の言葉にかかるものだったが、「ひさかたの」など本来の意味が不明になっているものも多い。

①「茜さす」と「紫・日」
②「足引の(あしひきの)」と「山」
③「梓弓(あづさゆみ)」と「張る・引く」
④「天離る(あまざかる)」と「日・鄙(ひな)」
⑤「新玉の(あらたまの)」と「年」
⑥「青丹よし」と「奈良」
⑦「唐衣」と「着・裁つ」
⑧「白妙の(しろたえの)」と「衣・雪」
⑨「玉だすき」と「畝火(うねび)」
⑩「垂乳根の」と「母」
⑪「千早振る(ちはやぶる)」と「神」
⑫「久方の」と「天(あめ)・空・光」
⑬「百敷の」と「大宮」
⑭「若草の」と「妻」


文語助動詞「む」「べし」
意味は似ているが、shouldとmustで強さが違うように「む」より「べし」の方が強い。


「む」は活用語の未然形に接続する助動詞。
発音的には「ン」になるが、『平家物語』など中世以降の作品では、表記も「む」から「ん」となっているものが多く見られるようになる。
意味は以下の4つ。

①推量
「・・・う」「・・・よう」「・・・だろう」
主語が三人称の時はこの意味が多い。一般論や客観的な記述の時。

これを待つ間、何の楽しびかあらむ。――徒然草
(これ=“老いと死”を待つ間、なんの楽しみがあろう。)

②意志
「・・・う」「・・・よう」「・・・つもりだ」
主語が一人称の時はこの意味が多い。

今宵は、ここに候はむ。――伊勢物語
(今夜はここでお仕えしましょう。)

③適当・勧誘
「・・・べきだ」「・・・のがよい」「・・・たらどうだ」
アドバイス的なニュアンスであるため、主語は二人称である場合が多い。

子といふものはなくてありなむ。――徒然草
(子どもというものはないのがよい。)

花を見てこそ帰りたまはめ。――宇津保物語
(花を見てお帰りになりませんか。)

※「む」の已然形が「め」で、このように已然形となる場合は、適当・勧誘の意味になることが多い。

④仮定・婉曲
「・・・としたら」「・・・ような」

ただ一度にいらへむも、待ちけるかともぞ思ふ。――宇治拾遺物語
(ただ一度で返事をするとしたら、それも待っていたのかと思うといけない)

心あらむ友もがな。――徒然草
(情趣のわかるような友がほしい。)

べし
「べし」は活用語の終止形に接続する助動詞。ただしラ変の場合は、連体形に接続。

①推量
「・・・にちがいない」

この戒め、万事にわたるべし。――徒然草
(この戒めは、すべてのことに通じるに違いない。)

②意志
「・・・つもりだ」

この一矢に定むべしと思へ。――徒然草
(この一本の矢で決めるつもりだと思え。)

③適当・勧誘・命令
「・・・のがよい」「・・・べきだ」「・・・せよ」

かならずこのたびの御遊びに参るべし。――宇治拾遺物語
(必ずこの次の遊びに参上せよ。)

④当然・義務
「・・・はずだ」「・・・なければならない」「・・・べきだ」

子になりたまふべき人なめり。――竹取物語
(私の子どもにおなりになるはずの人であるようだ)

⑤可能
「・・・できる」
打ち消し表現の中にある「べし」は「可能」の意味になることが多い。

財多しとて頼むべからず。――徒然草
(財産が多いからといってあてにすることはできない。)

文語助詞「に」
「海に入る」の「に」は名詞(海)についているので格助詞。
格助詞は、体言や連体形について、資格を表す助詞。
この場合は、用言(入る)を修飾する、連用修飾格。

「見るに竹の中光れり」の「に」は連体形(見る)につき、「見る」と「に」の間に「の」を入れることができないので、単純接続助詞。
「見ると」や「見るところ」といった意味になる。

「家に帰りて業(なり)をしまさに」の「に」は、活用語の未然形についているので、終助詞。
「・・・てほしい」という意味になる。
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