「面白い度☆☆ 好き度☆☆☆☆☆ 曲☆☆☆☆☆」
ハモンドと同じだ。
・・・とはいえ、映画の内容は前作と同じレベルには達しなかったよう。典型的なハリウッドの続編映画。
そもそもあれだけ濃い内容の一作目を作っちゃったら、続編がそのレベルを維持するのはハリウッドのシステム上不可能なんだよね。
どういうことかと言うと、一作目は正直あれほどまでヒットするとはプロデューサー側も想定していなかったと思うんだ。
「え~今更恐竜映画~?ふる~い。ださ~い」って感じで制作陣は映画会社の重役どもにけっこうバカにされたのだ(・・・と勝手に妄想)。
その証拠に『ジュラシック・パーク』には有名なスター俳優が出ていない。これにはスピルバーグが「ネームバリューではなくしっかりと演技ができる俳優を厳選した」って言ってるけど(なんか取りようによってどっちにも失礼なコメント)正直、キャストに予算がさけなかったんだろう。
もしハリウッドが本気でヒット映画を狙うなら絶対主演はハリソン・フォードだったに違いない。んでハリソン・フォードのグラント博士は素手でティラノサウルスを殴り殺していた。
そういう意味でハリウッドが本気にならなかったからこそ一作目は質の高いSFスリラーとして完成したんだけど、二作目は事情が違う。
恐竜モノは売れると分かったドナルド・ジェナーロ並の強欲な映画会社は、金を出す代わりにいろいろと制作サイドに要求を通してきたに違いない。
つまり誰もが楽しめる典型的なハリウッド映画にしろってこと。
その為には前作の難解すぎて頭の悪い観客がついていけなかった「カオス理論」やら「遺伝子工学」やらの理系的要素は一切カット!あの前作で脚本を担当していたインテリでいろいろうるさそうな原作者は降板!
そしてエメリッヒが制作中の「ハリウッド版ゴジラ」に対抗して、こっちも早めに手を打とう!よし、ラストに予定していたプテラノドンのシーンは全部没!ラプトルのシーンも大幅カット!あいつはちっこくて華がない!
こちとらサンディエゴでティラノサウルス大暴走じゃ~!これで大ヒット間違いなしでっせ~!
・・・こんな感じで出来た映画と言ってもそれほど間違いじゃないと思う。ハリウッドの映画業界おそろしっこ~。そんなわけだからうっすい映画なわけですよ。濃い前作が二倍に希釈された感じ。やっぱり物足りなさは否めない。
当時中学生の私も「ジュラシック・パークは続編やらない方がいいと思うんだけどな~。もう新しさもないだろうし・・・」って子どもながらにけっこう的確に予想していて、でも映画版公開前に発売された原作小説の出来が前作よりも良かったのでそれで期待しちゃったんだよな・・・えええ~!?消えるカルノタウルス超見てぇ!って。
まあ後は『アリス・イン・ワンダーランド』を観た時と同じですよ。期待した私がバカだったって。ハリウッドの大作映画に過度な期待は禁物だよね。
しかし・・・ここまで言ってあれだけど、この映画・・・決して面白くはない。面白くはないけどすっごい好きなの。ちょうど『ジュラシック・パークⅢ』と逆。
例えばこの映画には、マルカム率いる(?)恐竜保護派(メンバーには元グリーンピースもいる)と、インジェン社の次期CEOルドロー率いる恐竜ハンターが、恐竜の孵化工場があった「サイトB」っていう島にいて、それぞれ「恐竜の環境を壊すな!」「恐竜は我が社の所有物だ。捕まえて何が悪い」って対立するんだけど、結局どっちも問答無用で恐竜に食べられだして、仕方なく思想の壁を越えお互いに協力するんだよね。
ここはすっごい好き。自然界にとって人間の思想なんてまったくどうでもいいっていうのが見事に解る展開だよね。
そして相変わらずキャラがいい。厳密に言うとキャラデザインがいい。それはすなわち俳優さんを選んでオファーした人のセンスと、衣装を担当した人のセンスがいい。
とはいえ前作と比べて今回はちょっと無駄に人数出し過ぎかなとも思うけど(あと某古生物学者に謝れ)、それでもマルカムを演じるジェフ・ゴールドブラムさんはさらに渋くかっこよくなっているし、サラ・ハーディング役のジュリアン・ムーアさんもハマっていた。
まあサラに関しては、キャラ設定が映画版は最悪で、ただのトラブルを呼ぶ不吉な女って感じだったけど、原作版はフィールド経験豊富なタフな動物行動学者だからね。絶対vicさんは見た方がいいと思う。男の私でもほれぼれするほどカッコいい女性だから。
あと、映画オリジナルキャラ、百戦錬磨の猛獣ハンター「ローランド・テンボ」は外せないでしょう。このキャラは、前作でティラノサウルスをロケットランチャーで仕留めた、原作小説の恐竜監視員マルドゥーンって感じもするけど、演じるピート・ポスルスウェイトさん(『インセプション』にも出ていたとか!←気付けよ)がまたかっこいいんだ。
そして冒険嫌いなメカニック「エディ・カー」役のリチャード・シフ兄貴は最高。もうとにかく出ている俳優がいい味出している。JPシリーズはスター俳優のネームバリューに頼らないってところだけは継承されてよかったなあ。
世界観もなかなかいいのよ。ロストワールドはロストワールドでちゃんと世界観がある。やっぱりスピルバーグって映画内の世界観の構築にかけては天才だと思う。
ジョー・ジョンストンのJPⅢの世界観はやっぱり前二作に比べて見劣りしちゃったもんな。なぜだか。すっごい巧いけどスピルバーグの模倣だよなって。
というわけで好きながらも文句の残る二作目だったのでした(kenkoさんの口調がうつってるぞ)。もし私が二作目をいじれるならこうしますね。
①ラストのサンディエゴのシーンはまるまる没
ああいう円谷的シーンはティラノ如きではなくもっとドバーンと巨大なハリウッド版ゴジラに任せましょう。
②映画『プレデター』のような光学迷彩恐竜カルノタウルスは絶対出す
前作のディロフォサウルスに当たるポジションです。サンディエゴやるくらいならカルノのシーンに回しましょう。そこまで長尺のシーンじゃないし。
③草食恐竜の観察シーンを大幅増
ひどいのが物語最初の『ハタリ!』のような恐竜捕獲シーンしか草食恐竜が出ないこと。せっかくハイ・ハイド(観察小屋)を作ったんだから、そこからヴェロキラプトルVSトリケラトプスの団体戦を見せてほしかった。これ絶対絵になったシーンだって!
それに草食恐竜だって肉食恐竜以上に危険な奴はいたはずだ。原作ではそれがパキケファロサウルスだったんだけど、とにかくもっと草食恐竜出してほしいよ。出した方が絶対子ども受けした。
④やっぱりヴェロキラプトルの話にする
JPといったらやっぱり最大の恐怖の対象はティラノサウルスじゃなくて、あくまでもヴェロキラプトル。ティラノサウルスの親子愛を描くなら、それと同じだけラプトルの臨界点寸前の共同体も描いて欲しかった(仲間同士でもすぐにカッとなって殺し合う)。ティラノ様よりも知能の高いラプトルが育児放棄しているのはすっごい興味深い設定だし。
⑤カオスの縁理論ちょっとだけでもいいからマルカムに言わせてやろうよ
じゃないと主人公が数学者って意味がないじゃん!
ちなみに小説のマルカムは「サイトBでの観察から恐竜絶滅の原因はすでに分かった」ってうそぶくんだけど(下巻26ページ)この仮説があまりに強引ですごい。
一部の恐竜が内陸海岸沿いの湿原を掘り起こしたことで、水の流れが変わって、そこに生える植物のラインナップが変わって、前の植物に依存していた草食恐竜が死んで、それを餌にしていた肉食恐竜が死んで、草食恐竜が増えて・・・そんな連鎖反応によって今までの秩序が崩壊してあっという間にハイ絶滅!ザッツオール!ってすごいでしょ。これが真実ならサバンナの哺乳類はとっくに滅びさってるぜ。
ウィキペディアの記事には「マルカムはサイトBのクローン恐竜の絶滅を説明した」とか別の人の指摘が書いてあるけど、あれ違うから(こういうことがあるからウィキペディアはやめたんだよな)。原作小説の下巻176ページを参照してください。
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