『青春アタック』脚本⑪倚門之望

壁に全国模試の結果が張り出される。
ガヤ「すげ~な、また華白崎が全国一位かよ・・・!」
「なんでそんなやつがこんな底辺校にいるんだ・・・?」

背伸びして結果を見るちおり「わたしはどこかな~?」
花原「5教科2点のあんたが全国ランカーに載るわけ無いでしょ・・・」
ちおり「見えな~い、花原さんだっこして~」
花原「まったく・・・ほら」
ちおりを抱きかかえてあげる。
ちおり「花原さんは?」
花原「わ、わたしはこういうすでに判明していることを丸暗記することに意義を感じないから・・・」
ちおり「あった!偏差値62だって!頑張ってせいぜい千葉大だってよ。」
花原「声がでかい・・・!」
海野「華白崎さんは本当にすごいよね・・・私なんて体育しかできないもん。」
乙奈「わたくしも音楽だけですわ・・・四国4県が言えるかも怪しい・・・」
ちおり「メディア、リディア、新バビロニア、ミスルでしょ?」
花原「お前は異世界に住んでいるのか・・・
ふん・・・あそこは、たしか親が弁護士でしょう?
金持ちの家は子どもの学力が高いことが相関関係としてあるのよ・・・」
ちおり「わたしたち貧乏でよかったね!」
海野「・・・え?うん・・・」

近づいてくる華白崎「・・・自分の努力不足を家柄のせいにしている限り、あなたたちの成績が上がることはないわね」
花原「出たよ・・・」
海野「まったくおっしゃる通りです・・・華白崎さんは大学は何処へ行くの・・・?」
そのまま横切ろうとする華白崎「・・・私が受験する2年後まで、この学校が果たしてあるのか・・・」
花原「あんた1年生だったのか・・・」
海野「ねえ・・・バレーの話は・・・」
華白崎「・・・この前お断りしたはずです・・・私はいま選挙の準備で忙しいので。」
行ってしまう。

ちおり「・・・せんきょ?」
海野「生徒会長の選挙よ・・・そうか・・・1年生だから華白崎さんは副会長だったんだ・・・」
花原「いくら優秀でも、あんな冷たい女には票は入らないと思うわ・・・」
乙奈「でも・・・あの人の経理で、この学校は紙一重に廃校を逃れていますわ・・・」
花原「なら政治家じゃなくて官僚をやってればいいのよ・・・
ちおり・・・あんた立候補しなさい。」
ちおり「地盤もカバンも看板もないですが・・・」
花原「貧乏代表として、特権階級をギャフンと言わせるのよ。」
海野「花原さん、そんなむちゃくちゃな・・・」
花原「生徒会費で好きなだけ納豆ご飯食べられるわよ?」
ちおり「ほんと!?やる~!」



職員室
羽毛田校長「いや~今年の会長選挙は面白くなりそうですね・・・」
くわえたばこをして校長にお茶を出すさくら
「え?華白崎副会長の繰り上げ当選じゃないんですか?
だいたいあの子しか立候補しないでしょう。」
京冨野「生原のお嬢が出馬するらしいぞ。」
京冨野がちおりの選挙ポスターをさくらに差し出す。
幼稚園生みたいなクレヨンで書かれた文字で
「たのしいがっこう おいしいきゅうしょく しゅういちあげぱん」と書いてある。
京冨野「マニュフェストだそうだ・・・」
さくら「・・・校長、あたしちおりちゃんの後援会長やっていいっすか?
立候補には一名以上の教員の推薦がなきゃいけないわけだし・・・」
羽毛田「どうぞどうぞ!」
華白崎のポスターも差し出す京冨野「委員長のほうももらってきたぜ・・・」
さくら「白亜高校を蘇らせる4つのお約束・・・基礎的財政収支健全化・・・不必要な歳出の見直し、事業仕分け・・・つーか字が多い。この文字の小ささはアラサーの女には無理。」
病田「・・・・・。」
病田が職員室から出ていき、生徒会室に入っていく。

生徒会室
生徒会のスタッフが関係各所に電話攻撃をかけている。
「もしもし・・・!今回の選挙、はい、ぜひ社長のお力添えを・・・!」
「自治会長様はいらっしゃいますでしょうか、はい・・・今年の選挙の件で・・・!!」
おどおどする病田「華白崎さん・・・ちおりちゃん陣営にはさくら先生がついたみたい・・・
さくら先生はわたしと違って生徒から人気があるから・・・どうしよう・・・」
ワープロを打って演説原稿を作成する華白崎
「目立ちたいだけのタレント候補ですよ・・・捨ておきましょう・・・」
印刷機から原稿が出力される。
華白崎「A案です。こちらがB案・・・
誤字脱字の確認をお願いします。日本語として不自然な点がないかも・・・」
原稿を添削する病田「わ・・・わかりました・・・」
華白崎「・・・・・・」



廊下を花原がマウンテンバイクをこいで走っている。
自転車の後ろにはちおりが二人乗りをしており、笑顔で手を振っている。
花原「はいばら、はいばらちおりでございます。
段ボールの家は焼かれ、こんにちまでぺんぺん草を食べて生きてまいりました。
本当に苦しい学生の気持ちがわかる政治家・・・はいばらちおりにどうぞ清き一票を・・・」
なぜかビートたけしのものマネをするちおり
「おわっちゃったのかな、まだはじまっちゃいねえよこのやろう!」
4組女子「ちおりちゃんがんばって!」
3組練習生「生原プロデューサーファイト~!」
運動部の主将たち「ちおりちゃん、会長になったら部費をはずんでくれよ~!」
花原「華白崎が3倍なら、ちおりは今の4倍だすわ。財源には羽毛田校長の給与を充てる・・・!」
主将「わ~いグラウンド増設しようぜ!」
悪い顔をする花原(・・・我ながら天才ね・・・
ちおりを客寄せパンダにして私が生徒会の会計の実権を握れば、この学校の金はわたしのもの…)

そのとき、マウンテンバイクのバランスが崩れ、豪快に転ぶ2人。
花原「ぎゃあああああ!」
ちおり「にゃあああああ!」

全身をすりむく花原「誰よ!廊下にワックスがけをしたのは!!」
清掃用具を持つ華白崎「・・・校内で自転車に乗る方が悪いのでは・・・?」
花原「あ、あんたの仕業ね・・・!」
華白崎「・・・校内の美化活動はわたしの日課です。」
花原「ま~た、分かりやすい点数稼ぎを・・・」
華白崎「あなたたち学生が毎日しっかりと掃除をすれば、こんなことをする必要もないの・・・」
ちおり「花原さん掃除さぼっているのバレてるよ?」
花原「・・・はは・・・」
華白崎「・・・政治家は、甘い幻想を国民に抱かせてはならない。」
花原「何が言いたいのよ・・・」
華白崎「べつに・・・」
華白崎「生原さん・・・あなたはなんで生徒会長になりたいの・・・?」
ちおり「ん?生徒会長になったら毎日白いご飯を食べさせてくれるって花原さんが・・・」
あわてる花原「生原先生ストップ・・・!」
華白崎「なるほど・・・花原さん、あなたの借金返済のために、この学校を渡すわけにはいかないわ・・・今度の選挙はわたしが絶対に勝つ・・・」
花原「もし負けたら?」
華白崎「そうね・・・あなたたちとバレーでもやってあげるわ・・・」
喜ぶちおり「ほんと!?やったー!!」



保健室
消毒をするさくら「あんたたち選挙運動初日で何でもう満身創痍なのよ・・・」
ちおり「花原さんがこけた。」
花原「あの子が校舎をピカピカにするから・・・」
ちおり「誰も見ていないところで、学校のために働いている・・・
本当によくできた人だよね!」
花原「対抗馬を褒めてんじゃないわよ・・・」
さくら「・・・で?有権者の感触は?」
花原「ばっちり。この子かわいいからけっこう人気あるんですよ。」

保健室に入ってくる海野「学区に生原さんのポスターを貼ってきたよ。」
乙奈「校内も完了ですわ・・・」
さくら「ごくろう・・・で、華白崎のポスターははがしてきたの?」
海野「・・・え?それは・・・」
さくら「じゃあ落書きは?バカとか、うんことか何でもいいから書いてこないと・・・!
ネガティブキャンペーンは選挙運動の基本よ?」
乙奈「こっちのイメージがかえって悪くなりませんかしら・・・」
さくら「だからロビイストとか影の人間を使うのよ。
花原選対委員長・・・ずいぶんと生ぬるいじゃない・・・
相手の心臓を掴んで握りつぶすくらいの非情さがないと、選挙には勝てないわよ?」
花原「べ・・・勉強になります・・・」
海野「そういえば、なんでさくら先生はこっちの後援会長を引き受けたんですか?」
目をそらすさくら「そ・・・それは、まあいいじゃん・・・」
華白崎のチラシを見て乙奈「もしかしてこれかしら?
一部の教員が校内で飲酒・喫煙をしているが、未成年である学生への教育的悪影響を鑑みて、一切禁止にすべきです・・・」
さくら「独身女から酒とタバコを取り上げるなんて、あの子は冷血動物よ・・・!うわああ!」
花原「学校の外で飲めばいいじゃないですか・・・」
さくら「これだから平成世代は・・・大人には、あんたたち子どもにはわからない苦労があんのよ・・・
この酒も医療用アルコールという名目で保健室が購入しているけど、あの子が会長になったらいつ摘発されるやも・・・」
ちおり「・・・見逃してやろうよ。」
さくら「さすがちおりん・・・!先生はあなたのことが大好き!」
ちおり「厳しく取り締まると、この先生きっと密造するよ。」
乙奈「それは犯罪ですわ・・・」
さくら「とにかく、どんなにできた人物にも叩けばホコリは出てくるものよ・・・
女子高生たちよ、華白崎桐子副会長のスキャンダルをとってきなさい・・・!」



生徒会室を隣の校舎の窓から望遠鏡で監視する乙奈
生徒会室で帳簿をつけている華白崎
乙奈「作業を始めて3時間・・・休憩するそぶりもない・・・なんて勤勉な方・・・」

1組プロフェッショナルクラス
1組生徒「海野さん、1組に何か用ですか?」
海野「華白崎さんについて聞きたくて・・・」
生徒「とっても優しい人ですよ。」
生徒「数学の授業も解りやすいしね。」
生徒「東大の二次試験の数学を解説できる高校生はあの人くらいだよね!」
海野「クラスのみんなとはうまくやれてるんだ・・・」
生徒「あの人・・・まじめすぎるから誤解されやすいのは知っています。
でも、本当はとってもあたたかい心を持った人なんです。」



下校する華白崎を尾行する海野と乙奈
海野「こういうことしたくないんだけどな・・・」
カメラを持つ乙奈「同感ですわ・・・」
海野「そう言いながら、なんか楽しそうね乙奈さん。」
乙奈「スパイ大作戦とか大好きなんです。
あ・・・あの弁護士事務所がおうちですわね・・・」
弁護士事務所の角を曲がって建物の影に入っていく華白崎。
追いかけようとする二人。
海野「あれ・・・?いなくなっちゃった」
乙奈「わたくしとしたことがターゲットを見失いましたわ・・・!」
すると二人の背後に現れる華白崎
「わたしは人に見られて恥かしいことなど一度もしたことはない・・・」
乙奈「いつから背後にいらっしゃったのですの・・・?!!」
華白崎「しかし、他人のプライバシーを暴こうとするなんてあまりにも悪趣味です。」
海野「・・・本当にごめん・・・
でも・・・私は選挙とか関係なく・・・あなたのことが知りたいの・・・」
華白崎「・・・なぜ?」
海野「ともだちに・・・なりたいなって・・・」
華白崎「私は、ずっと前から友だちだと思っていますよ・・・職員室でみなさんと机を並べた時から。」
海野「・・・え?」
華白崎「それでは、また明日学校で。」
そういうと、ボロボロの平屋に入っていく華白崎。

海野「え・・・?ここが華白崎さんの家・・・?」
乙奈「家が弁護士事務所の・・・裏だっただけなのですわね・・・」
海野「乙奈さん・・・帰ろう・・・友だちにすることじゃないよ、これ・・・」
カメラをしまう乙奈「はい・・・」

帰っていく二人を横目に、マウンテンバイクで走ってくる花原
「これはスクープよ!高学歴エリートだと思われていた華白崎の実家がまさかの廃屋レベル!!
明日の学級新聞の一面はこれに決まりね!」
ワクワクしながら華白崎の家の塀をよじ登り、家の中を覗き込む花原。
その時、家の中で何かが割れる音がする。

華白崎の家の中は、床中にものが散乱するひどい有様で、父親らしき人物が酔っぱらって華白崎を突き飛ばしている。
駆け寄る華白崎の小さい妹や弟たち「おねえちゃん・・・!」
メガネをひろう華白崎「また、吞んじゃったのね・・・」
まったく動じずエプロンをして、部屋を片付け、妹たちのために食事を作る。
フライパンに油をひく「モヤシ炒めスペシャルでいい・・・?」
妹「お姉ちゃん・・・ケガ大丈夫・・・?」
妹の頭をなでて微笑む華白崎「心配ない・・・
高校を卒業したらすぐに就職してあなたたちを楽にするから・・・」
父親「酒を出せ、この野郎!」
華白崎「・・・わたしを殴っても、酒は出てこないわよ・・・」
父親「やってみなきゃわからねえ!」
華白崎を殴る父親。
怯える兄弟たち「おねえちゃん・・・!」
華白崎「なぐるなら私にして・・・!」

無言で塀から降りる花原「・・・想像以上に重かった・・・見なかったことにしよう・・・」
すると、海野がまだ帰っていないことに気づく。
花原「海野さん・・・?」
海野「やっぱり・・・見過ごせない・・・!」
華白崎の家の中に入っていく海野
花原「・・・え!?ちょ、ちょっと、その中は・・・」

ウイスキーの瓶を取り出す父親
「へへへ・・・おとなしく、さっさと出せばいいんだ・・・」
その瓶を取り上げて、流しに捨ててしまう海野
父親「て・・・てめえ、何者だ!?何をしやがる・・・!」
震えながら海野「世の中には・・・こんな親が本当にいるんだね・・・」
華白崎「海野さん・・・」
父親「桐子!誰だこいつは!!民生委員か!!?」
涙を流す海野「・・・・・・。」
あわてて花原も入ってくる「海野さん、もう帰ろう・・・人の家に首を突っ込んじゃ・・・」
父親に向けて、ゆっくりと話しだす海野
「・・・わたしには両親がいません・・・」
父親「だ・・・だから何だ・・・!」
海野「・・・今まで誰にも言ったことはないけど・・・
3年前の大震災で私の家は被災して・・・
お父さんとお母さんはわたしをかばってつぶれてしまった・・・」
華白崎「・・・なんで、そんな話をするの・・・?」
華白崎の方を向く海野「ともだちだから・・・」
花原「・・・・・・。」
海野「でも・・・心の中に両親がいるから・・・私は明るく生きていける・・・
それはきっと、あなたの娘さんたちだってそう・・・
もし・・・この子たちの心の中に、優しいお父さんの姿がなくなったら・・・
絶対に・・・生きてはいけない・・・
だから、華白崎さんのお父さん・・・家族をもっと大事に・・・!」
海野にも殴りかかろうとする父親「・・・酔っていて何を言っているかわからん!」
その父親をひっぱたく花原
吹っ飛ぶ父親「ぐええええ!!!」
花原「なら、いい加減酔いを醒ませ!!
・・・あんたの娘は誰よりも優秀で・・・お前がいなくたって一人で生きていけるんだ・・・!
でも毎日家に帰っている・・・家で親の帰りを待っている・・・
まだわからないの?
父親のあんたが好きだからよ・・・!!」
華白崎「花原さん・・・」
花原「お父さんの人生に何があったからは知らないけど・・・
家族がいる幸せってやつをもう一度考え直してみなさい・・・
海野さん、帰ろう・・・」
涙をぬぐう海野「うん・・・おじゃましました・・・」
後ろから呼び止める華白崎
「待って・・・学級新聞にリークする気・・・?」
振り返らずに家を出ていく花原「・・・墓場まで持っていくわよ・・・」
微笑む海野「じゃあまた明日学校でね・・・!」
2人を見送る華白崎「・・・・・・。」



翌日の保健室
さくら「どうだった、委員長のスキャンダルのネタはあった?」
海野「いえ・・・まったくのクリーンでした・・・ね?」
乙奈「ええ・・・残念ながら三木武夫レベルですわ・・・」
腕を組むさくら「ダメか~!結局いい子なのよね、あの子は・・・面白みがないっていうか・・・」
花原「そういえば、さくら先生ってお酒で悪酔いしたことってあるんですか・・・?」
さくら「あるよ、しょっちゅう。
大人は孤独だからね。
30を過ぎると、アルコールしか友達がいなくなるのよ・・・」
すると、保健室に入ってくる華白崎
「なら・・・いい友達がいますけど、紹介しましょうか・・・?
失業した弁護士で華白崎和也っていうんですけど・・・」
さくら「マジで!?」
海野「華白崎さん・・・」
華白崎「あの人に、大人のお酒の飲み方を教えてあげてほしいんです・・・」
さくら「おっけー!お姉さんが可愛がってあげるわよ~ん!」
花原の方を向いて華白崎「対立候補の陣営に来て悪かったわね・・・すぐ出ていくから・・・
ただ・・・2人に一言言いたくて・・・」
花原・海野「・・・・・・。」
華白崎「・・・ありがとう。」
保健室から出ていく華白崎。
微笑むちおり「??なんかよくわからないけど・・・よかったね!」
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