『青春アタック』脚本㉓乾坤一擲

雷鳴が轟く。
雷の光に照らされる森のギャングアライグマ。
アライ「くらいやがれえええ!」
アタックを打つアライ。花原とちおりが拾おうとするが、お互いにゴチンとぶつかる。

海野がアタックを決めるが、イノシシが暴走して拾ってしまう。
シマダ「南西1.2m!」
アライ「おらあ!」
海野のアタックを全て跳ね返して、白亜高校の絶対エースを抑えてしまう。
息を切らす海野。
華白崎「海野部長がこれほどまでに抑えられてしまうとは・・・」
花原「ど・・・どうしよう・・・?」

アライ「あいつさえマークしちまえば勝てちまうな。」
オジカ「所詮は素人だからな・・・」

アタックを決めるアライ「おらあ!」
怯える花原「あわわ・・・」
ヘルプに走る海野「どいて・・・!」
片腕を伸ばしギリギリレシーブする海野「華白崎さん・・・!」
トスを上げる華白崎。
アタックをしようとする海野。
そのアタックを跳ね返すアライ。

飛び込みレシーブをする海野。
アタックをする海野。
花原をカバーする海野。

病田「・・・な、なんか、美帆子ちゃんだけでバレーをしているみたい・・・」
大此木「ほかの5人をすべてカバーしてるんだ・・・あいつは責任感が強いからな。
今までも、隠れてメンバーをフォローしていた・・・」
山村「むう・・・見てられん・・・我がエースアタッカーのあんな姿を見るのは・・・」
さくら「誰がアタッカーだって??」
山村「・・・む?」
さくら「あの子の専門はレシーバーよ。アタッカーじゃない。」
山村「なんと!では、今まで苦手な役割を・・・?」
さくら「・・・人には向き不向きがある。さあて、どうする?」

アライグマの猛攻に怯えるメンバーたち。
肩で息を切らす海野(初心者の花原さんたちには、あの珍獣の相手は無理だ・・・
私ががんばらないと・・・私が・・・)

織戸高校の昔のメンバーから「全国制覇」の旗を体育館から放り出されたことを思い出す海野。
織戸高校のキャプテン「・・・帰って・・・もうあなたとは関わりたくないわ・・・」
海野「ひとこと・・・謝りたくて・・・」
キャプテン「謝っても・・・ここにはもうあなたとバレーをしたい子なんていない・・・」
全国制覇の旗を外に放り投げてくる。
雨で濡れた地面に倒れる旗。泥で汚れる。
海野「みんなの夢だったよね・・・」
キャプテン「いいや、あなたの夢よ」

海野(・・・もう・・・ひとりぼっちは嫌だ・・・!)

渾身のアタックを打つが、それすらクマガイのブロックに阻まれる海野。
とうとう力尽き、コートで倒れてしまう。

白亜高部員「・・・!海野さん・・・!!」
救急箱を用意する山村「審判!タイムだ・・・!」

理央「クマガイさんのディフェンスが地味に効いてたみたいね・・・」
クマガイ「いや~強敵だった・・・」
アライ「クマガイのブロックが破られても、イノセとシマダが確実にレシーブするしな。」
イノセ「任せろ。」
スコアボードに目をやるオジカ「あと5点か・・・」



海野を寝かせるさくら
花原「・・・先生・・・」
さくら「だいじょうぶ、ただの貧血よ。すこし休ませれば治るわ。」
花原「よかった・・・」
さくら「最近、神経の方も使ってたらしいから・・・
あんたたちのまとめ役ってのも大変ね・・・」
花原「・・・え?」
華白崎と乙奈がお互いに見つめ合う「・・・・・・。」
よろよろと立ち上がる海野「迷惑かけてごめんね・・・さあ続きをやろう・・・!」
さくら「ダメよ、部長。すこしは休んでなさい。」
海野「しかし、監督・・・それでは5人になっちゃいますよ・・・」
服を脱ぎ出す山村「ふふふ・・・ついに来たか、この最強のマネージャー、マッスル山村のショータイムが・・・!」
さくら「5人で行きましょう。」
山村「・・・え?」
海野「そ・・・そんなむちゃくちゃな!5人であのチームに勝てるはずが・・・!」
さくら「これは監督としてじゃない。養護教諭としての判断よ。従ってもらうわ。」
海野「は・・・はい・・・」

さくら「おい、そこのマッシュ坊や。」
大此木「お・・・俺のこと言ってんのか・・・?」
さくら「うん。美帆子ちゃん、かなり辛そうだから保健室に連れてってほしいの。」
大此木「わ・・・私がですか??」
海野「・・・大此木くん・・・」
山村「それなら私が運んでやろう・・・なにしろ、この部のアイドルでありマネージャーは私なのだから・・・」
さくら「いやいいよ。マッスルくんはここでスコアをつけてて。」
むせび泣く山村「・・・なんもやらしてもらえねえ・・・!!」
山村にハンカチを差し出す病田。

海野に肩を貸してやる大此木「ほら、いくぞ・・・」
海野「ありがとう・・・」
花原「海野さんにセクハラすんじゃないわよ」
ちおり「バックブリーカーもダメだよ!」
大此木「誰がするか!」
合宿場を出て行く二人。

雷が激しくなる。
窓の外を見る野生動物。
「山火事にならないかしら・・・」
「土砂崩れで巣穴つぶれないかなあ・・・」

理央「・・・おっあっちは5人でやるみたいよ。」
シマダ「ほんとだ。」
アライ「勝負を捨てたな。止めを指してやる・・・」

さくら「さあ、諸君。海野部長にはもう甘えられないよ。どうする?」

イノセがボールを鼻面で放り投げ、ボールが空中に浮いているあいだに後ずさり、一気に突進してサーブを打つ。

ブーちゃんがそのサーブを根性で受け、華白崎がアタックをしようとする。
しかし、クマガイのあまりに高いブロックに肝を潰す。
華白崎のアタックを跳ね返すクマガイ。
ネット際に落ちたボールをひろうちおり「へにゃー!」
華白崎「会長・・・!」

さくら「あの子はネット際のプレイがうまいわね・・・」
山村「ですな。」

花原が今度はアタックモーションに入る。
花原「畜生ども、今度は私が相手だ!!」
アライ「うるせえ死んどけ!」
花原のアタックをアタックするアライ。
ボールが顔面に当たる花原「ぎゃあああ!!」

観客「すげえええ!アタッカー殺しのアライ!!」

頬を抑える花原「ううっもうやだ・・・いたい・・・」
華白崎「5人でやりあうのは相当厳しいですね・・・」

理央「あと2点で第1セット取れるよ!」

床に崩れる花原「だめだー海野さん抜きじゃ勝てないよー諦めよう・・・」
花原の背後に回るちおり「も~ダメだな~花原さんは・・・」
花原に浣腸をするちおり「闘魂注入!」
飛び上がる花原「ぐぎゃあああああ!!」
ボールを持ってポーズを決めるちおり「希望を捨てなきゃきっと勝てるわ!!」
理央「・・・ほう・・・」
山村「青春アタックの名台詞だ・・・!」



保健室。
ベッドの海野に毛布をかけてやる大此木。
海野「ありがとう・・・優しいんだね・・・」
微笑む大此木「なぜ、モテないか不思議か・・・?」
微笑む海野「・・・うん・・・」
大此木「・・・バレーは一人じゃできねえぞ海野・・・」
海野「へへ・・・ひどいよね、私って・・・
心の中では結局みんなを素人扱いして信じていなかったんだ・・・
もう二度と・・・大切なチームメイトを失いたくなかったから・・・」
大此木「負けたら、お前のチームメイトはいなくなるのか?」
海野「・・・でも、私にとってはこれが最後の戦いなの・・・」
大此木「誰が決めたんだ、そんなこと・・・
いいから、お前はゆっくり寝てな。
あいつらは負けんよ。じゃなきゃ、この俺様も動物以下だ・・・」



――動物以下が決定した。
主審「ピー」
第一セットを落とす白亜高校。

ちおり「あー負けちゃったー次のセットがんばろー」
花原「あんたのカンチョーのせいで私がアタックできなかったからじゃない!」
ケンカするちおりと花原。
華白崎「は~っ私にあの二人をまとめるのは無理だ・・・」

扇子であおぐ理央「よく走り回れる元気があるよね・・・」
華白崎「なるほど・・・そういう見方も・・・」
アライ「馬鹿!向こうに聞こえちゃったぞ!」

パイプ椅子から立ち上がるさくら「さあて・・・追い込まれちゃったね。」
華白崎「・・・監督。なにか策が?」
さくら「一セット目の様子を見させてもらって、だいたいわかったわ・・・」

主審「それでは第二セットを開始します!」
万石「このセットもとってたたみかけろ!」
コートに入る三畳高「おー!」

理央「・・・ん?ポジションが変わった・・・!?」

前衛の両翼に乙奈とちおり、そしてセッターに花原がついている。

病田「・・・な!」
山村「花原さんがセッター!?」
花原「ふふふ・・・驚いているわね・・・何しろ私は・・・オーバーハンドパスができない・・・!!」

アライ「向こう、ポジション間違ったんじゃねえか??」
サービスエリアの理央「相手の監督は元全日本だよ。油断は禁物。」
綺麗なジャンプサーブを打つ理央。
理央「どうだ・・・!」

ブーちゃんがレシーブする。
理央「なんでよ~!!」
アライ「あの給食のおばさんレシーブうまいな・・・」

ブーちゃんのあげたボールがセッターの花原の方へ飛んでいく。
おびえる花原「もうきたー!!!」

理央「アタックが来るよ!」
クマガイ「ライトだ!!」

震える花原「う・・・うあああ・・・!」
花原はオーバーの姿勢はするもののトスが上げられず、勢いよく相手コートにボールを弾いてしまう。
意表を突かれて、花原のボールがブロックに入ったクマガイの顔面に当たる。
結果的にフェイントの形になり、白亜高が最初の一点を取る。

華白崎「花原さんナイスフェイント!!」
花原「・・・は?
け・・・計算通り・・・」

アライ「ホントかよ・・・」
花原に話しかけるオジカ「おいあんた・・・セッターとはどういうつもりだ?
オーバーハンドパスができないのは知っている・・・」
オジカを無視する花原「は・・・はは・・・乙奈さんサーブがんば~・・・」

山村「全日本よ・・・なぜ・・・トスができない花原さんをセッターにしたのだ・・・?」
タバコに火を付けるさくら「いや・・・そんなこと言ってないわよん。センターをやってって言ったのよ。」
山村「では聞き間違いか!!?」
煙を吐くさくら「でもまあいいか。面白そうだし。」
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