エゼルバルド城作戦会議室
ベオウルフ「お前は勢力が二倍以上の敵に勝てるというんだな・・・!」
ゼリーマン「大勢力は指揮系統も結束も弱い。情報を攪乱すれば簡単につぶせる。」
ベオウルフ「軍を動かしたこともないのに偉そうに・・・」
ゼリーマン「スライムってだけで軍師採用試験の受験資格がなかったからな・・・」
ヨシヒコ「受けようとしたのか・・・」
ゼリーマン「地図を見ろ。ガリア軍は南から進軍してくる。
キャッスルヴァニア地方の北はハイランド・・・そこを超えたら王都だ。
城内の領民は2000人・・・こいつらをまとめてハイランド地方に移住させる。」
ベオウルフ「それこそ愚策・・・!民間人の亀の歩みでアキレスのようなガリア軍の機動歩兵部隊からは逃げ切れまい・・・!」
ゼリーマン「その時間稼ぎをあんたらがしろ。」
ベオウルフ「我々騎士が民の盾になれと・・・?」
ゼリーマン「そういうの好きだろう?」
兵士「しかし、敗れたらどうなる?エゼルバルドでガリア軍は物資を補給し、次は王都を狙うぞ」
ゼリーマン「そこだ。避難民に必要最低限の物資を持たせたら、エゼルバルド城を焼いちまえ。
ここで略奪できると思ったガリア軍は落胆するだろう。
さらに、北のアルフレド城とイケニ城で狼煙を上げろ。あたりの城塞都市を全て焼いて逃亡したと思わせるんだ。
するとどうなる?ガリア軍内部に不平不満がたまり、士気は下がり、バン!内部から崩壊だ。
もともとこいつらはならず者集団。仲間意識なんかねえ。
将軍のジルドレイを殺したものにTボーンステーキスペシャルディナーセットを振舞うと情報を流せば、喜んで反逆を起こすさ・・・」
ベオウルフ「どう思う、ヴィンツァーくん・・・」
ヴィンツァー「民間人は助かるが・・・君ら騎士団は良くて壊滅、悪くて全滅だ・・・」
ゼリーマン「もうひとつ手があるぜ・・・それはお前ら騎士団が領民を見捨てて、とっとと逃げちまうことだ。」
ヨシヒコ「そうなると、敵は王都まで進軍しないか?」
ゼリーマン「だいじょうぶです。その頃にはハイランドは冬。
補給路を伸ばしすぎて全員凍え死にます。
ジルドレイが利口なら、そうなる前に兵を引き上げるはずだ。」
兵士「・・・そっちにしませんか?」
ベオウルフ「でも、カッコ悪くないかね・・・」
兵士「団長、考えても見てください。
領民2000人と騎士800人の命どちらが国にとって重要ですか?」
ベオウルフ「確かに・・・ここで精鋭である我々がまとめて討ち死にしたらこの戦争は敗北・・・
断腸の思いだが領民には犠牲になってもらうとするか・・・」
シルビア「なんか、クソみたいな結論が出たわよ・・・」
ベオウルフ「礼を言うスライム。お前のおかげで決心がついた。」
ゼリーマン「よかったな。」
兵士「それでは全軍撤収!!」
作戦室を片付けてぞろぞろ出ていく騎士団。
ヨシヒコ「信じられない・・・市民を見捨てて軍隊が逃げ出したぞ・・・一体どうなるんだ?」
ゼリーマン「2000人の市民は皆殺しにされます。」
シルビア「それにあたしたちは含まれるの?」
ゼリーマン「あの馬鹿どもと一緒に逃げれば生き延びられるぜ?
封鎖されていた城門も解禁されるだろうしな。」
ヨシヒコ「虐殺を防げないのか??」
ゼリーマン「旦那・・・我々の目的は奥様の奪還でしょう?
こんなくだらねえ戦争に首を突っ込むことはないっすよ。とっとと出立しましょう。」
ヨシヒコ「しかし・・・キミが言ったように市民を北のハイランドに逃せば・・・」
ゼリーマン「ガリア軍を足止めする奴がいない。」
ヨシヒコ「ぼくらでなんとかできないのか・・・」
ゼリーマン「たった4人で??自殺行為だ。」
ヨシヒコ「だが猶予は6日間ある。」
ゼリーマン「もしかして・・・3000のガリア兵と戦うとか言いませんよね!?」
微笑むヨシヒコ「きみは最強のモンスターの王なんだろ?
だいじょうぶ・・・ぼくに考えがあるんだ・・・」
ゼリーマン「ちょ・・・!」
ヴィンツァー「・・・ヨシヒコさん・・・あなたは私の師匠に似ている・・・
シドニア・ウィンロード卿は、私財を投げ打ってまで自分の領民を守ろうとしていた・・・
ぼくは彼に何を教わったんだろうな・・・」
ヨシヒコ「ヴィンツァーさん・・・」
ヨシヒコに膝まづくヴィンツァー「サー・イズミ・・・私はあなたに従います。
どうぞご命令を・・・」
シルビア「あたしも簡単な魔法と、怪我の手当ならできます・・・!
ヨシヒコさん、みんなを助けてあげて・・・!」
ゼリーマン「ま、まあ・・・領主が出て行ったから、これでこの城を守れば、オレたちは一国一城の主か・・・旦那の作戦を聞きましょう・・・」
ヨシヒコ「キミは覚えているだろう?修道院でぼくが書いた手紙のことを・・・」
ゼリーマン「向こうからの加勢は期待できないのでは・・・?」
ヨシヒコ「ドリームワールドにはひとつだけ“裏技”があるんだ・・・」
・
ドリームワールド各リージョン転送ゲート管理室
椅子の背もたれに寄りかかって、さぼってスマホゲームをしている管理室の主。
ドリームワールド運営本部ゲートキーパー部長:長門守
「くそったれが~!!千連ガチャ引いて、SSRがゼロとはどういうことだこの野郎!」
スマホを投げつける長門「コマキの野郎・・・くそみてえなゲームばっかり作りやがって・・・
100万も課金しちまった・・・ああ、ばかばかしい・・・
しかし、泉と小田は帰還する気配がないな・・・死んだな。」
機械室のような部屋に入ってくる湯浅「半分あたりで半分はずれだ・・・」
長門「・・・こんな窓際部署に人が来るとは珍しい・・・ようこそ我が城へ。」
湯浅「ドリームワールドのすべての転送ゲートは君が管理していると聞いたが・・・」
長門「その通り。転送先をスイッチングするだけの誰でもできる退屈な仕事だ・・・
こんなことをするために私は量子力学を学んだわけじゃない・・・」
湯浅「スイッチング?」
長門「このパークの転送ゲートはすべて同じものを使ってるんですよ。
転送先を変えているだけでね。」
湯浅「では・・・例えばマジックキングダムの転送ゲートの行き先をジャングルツアーズに変えることは・・・」
長門「スイッチ一つで可能だ。しかし、何のために?
ドリームワールド開園目前にそんなことをすれば混乱しかないだろう。」
湯浅「実は、マジックキングダムの泉さんから手紙が届いた・・・」
手紙を受け取る長門「拝見。」
湯浅「君はこの会社に不満を持っていると聞いた。
結城さんはもう頼りにならない。君の力を貸してほしい・・・」
手紙を読んでニヤリと笑う長門「くくく・・・泉め・・・面白いことを考えたものだ・・・」
湯浅「頼めるかね?」
長門「考えておこう・・・」
湯浅「え?」
長門「ケンブリッジ大学理学部卒、元ロスアラモス研究所主任技術者のこの私を見くびってもらっては困る・・・ゲートの設定を無断で変更することはコマキ社の懲戒処分の対象になるのだ。
この仕事・・・気が狂うくらい退屈だが手取りは悪くなくてね・・・」
湯浅「ここで手を打たなければ、泉さんも姫川さんも死んでしまうぞ・・・!
実際に小田さんは惨殺されたそうだ・・・
これ以上死者が出たら、それこそテーマパークとして営業停止になる・・・!」
長門「この私にリスクを冒させるのならば、その見返りをご提示願いたい・・・」
湯浅「私の後任に君を選出する。それでどうかね。」
長門「大手ゲームメーカーGASEの専務の椅子を譲るというのか?」
湯浅「私はもう定年だ。会社を守って勇退できるなら本望だ。」
長門「悪くねえな。転送プログラムのバグで一時的に転送先が変更されたということにする。
オレは何も聞かなかったし、あんたは何も知らなかった・・・これでいいな?」
・
作戦会議室には4人しかいない。
ゼリーマン「異世界から異世界へ行く?」
バックパックから「ドリームワールド」の園内案内図を取り出すヨシヒコ。
「実は・・・転送ゲートは周波数を変えるだけでほかの異世界につなぐことができる・・・
ぼくの世界には英雄はいないが・・・ほかの世界にはいる・・・
ヴィンツァー卿・・・あなたがかつて邪神と戦った時と同じように精鋭を集めるんだ。」
ヴィンツァー「あれはゼリーマンが集めてくれただけで・・・」
シルビア「そうなの?」
ゼリーマン「確かに面白いアイディアだが・・・アテはあるんですか?
ニャルラト・カーンと戦う時は、4人集めるのに1年かかった。」
ヨシヒコ「ああ・・・ドリームワールドの世界のうち、4つは僕が開拓した・・・
頭を下げて営業をし・・・相手との信頼を築いたつもりだ。
まず、格闘ゲームエリアの「九龍」・・・ここにはスパルタン草薙という格闘家がいる。
常に強いものと拳を交えることしか考えていないストイックな人物で、対戦相手に魔王を紹介すると言ったら二つ返事で協力するだろう・・・
次に、アクションゲームエリアの「ジャングルツアーズ」・・・ここには、どんな猛獣も仕留める凄腕のハンターがいる。名前はローランド・ペルト・・・・ドラゴンのトロフィーを屋敷に飾れるとなればハンターとしての血が騒ぐに違いない・・・
3つめ。シューティングゲームエリアの「メガ・サターン」・・・この世界は僕らの世界よりもずっとテクノロジーが進んでいて・・・星間戦争すら安全な、ある種のスポーツになっている・・・
戦闘宇宙船を一機でも借りれれば、魔王の居城まではひとっ飛びだ。」
ゼリーマン「戦闘宇宙船??」
ヨシヒコ「空が飛べる乗り物だよ。」
驚くシルビア「そんなことが可能なの!?」
ヨシヒコ「僕らにとってみれば、魔法がある方が驚きだけど・・・
宇宙船のレンタルは、エースパイロットのルナ・マイヤースに頭を下げればもしかしたら・・・」
ヴィンツァー「4つめは・・・?」
ヨシヒコ「ここです。」
シルビア「じゃあ結局3人しか増えないの・・・?」
ゼリーマン「ほかにも世界はあるんでしょう??」
ヨシヒコ「ああ・・・僕は知らないが、サウンドノベルホラーゲームエリアの「ホーンテッドレジデンス」と、プライズ・メダルゲームエリアの「ビリオンパラダイス」という新エリアが・・・」
ゼリーマン「じゃあ、ここもついでにリクルートしましょう。」
ヴィンツァー「戦闘要員になるかなあ・・・」
ゼリーマン「この名探偵、黒神志郎はいい軍師になりそうだ。」
シルビア「軍師はあなたじゃないの?」
ゼリーマン「あんなモエ、出まかせに決まってるだろう?」
シルビア「あきれた・・・」
ヴィンツァー「シルビア、これがゼリーマンだ。」
ヨシヒコ「それでは、敵が攻めてくるまでに5つの世界に手分けして行き、最強の戦士を連れてくる・・・異論は?」
シルビア「あたしは大賛成!こういう冒険小さい頃からずっと憧れてたの・・・!」
ゼリーマン「オレにとっちゃどんな世界も、この世界よりはマシだぜ。」
ヨシヒコ「ヴィンツァー卿・・・?」
ヴィンツァー「 ぼくは人見知りする性格なんだけど・・・
みんなを殺されるよりはましだ・・・頑張ります。」
ヨシヒコ「・・・では各々方、ぬかりなく。」
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