電子書籍について

 書籍をデータ化して端末で読むという次世代の本「電子書籍」。学校の教科書で電子書籍を使う話もあって、私みたいな若造が言うのもなんですが「時代は変わったなあ・・・」と。
 で、この電子書籍は本当に印刷出版というこれまでの本の在り方を大きく変えてしまうのでしょうか?
 今回は電子書籍のメリットとデメリットについて考察したいと思います。

 メリットがデメリットを大きく上回れば、それは普及すると言うことですが、例えば電子書籍のメリットは、とにかくかさばらない。子どもが大きく分厚い漫画雑誌を買う習慣は、携帯電話にとって変わられたと言う人もいますから。
 電子書籍は端末さえあれば、必要なのはせいぜいメモリーカードのようなソフト(書籍データのバックアップ)だけで、本棚はかなり片付きます。

 その反面デメリットは、新聞や大きなサイズの図鑑は端末におさまらないので「スクロール」したり、「iフォン」のように指で「クローズアップ」させるしかありません。これは面倒だと思います。人間の目で直接本を見れば、目が自然にやってくれることを端末をいちいち操作して行うことで、読者と本の間に一層フィルターが増えてしまうからです。
 また机の上に複数の本を広げるような「同時読み」は一つの端末では不可能でしょう。私の机には様々な資料が一度に開かれていますが、ああいうことは限りある端末の小さな画面ではできないだろうな・・・
 さらに携帯やパソコンにも言えますが、少なからず機械の光を直視するので、小説などに没頭して長時間読むには目に負担がかかる。まあ最新技術で目に極力優しいディスプレイくらい作ってくれそうですが。

 ただ個人的には電子書籍は「活字本」には強いと思います。論文を書く際の参考資料はかつては付箋というタグをつけて引用箇所を整理したり、メモをとったりしていましたが、活字本がワードのようにテキスト化されて端末に配信されてくれると、検索がかなり楽。引用はもっと楽。
 そして「回し読み」「本の貸し借り」がよりグローバルになります。なにせこの本(?)は「データ」ですから、複製するのも容易で、複数の他の人に同時に配信することができます。
 これは便利な分、前回の記事でもふれたように著作権について引き締めにかかる漫画出版社にしては頭が痛い問題でしょう。
 ただルネサンス期に発明されたグーテンベルグの活版印刷が、写本の時代よりもずっとたくさんの人に聖書や『不思議の国のアリス』を配信したように、書籍に関する技術はどんどん「共有化」される方向に向かっていると思います。これはどっちかというと社会主義的進歩であり、資本主義、作家主義(≒個人主義)の思惑とは外れた進化の道筋を辿っていることは大変興味深いです。

 さて、Yukiko T.さんが注目している漫画の電子書籍化についてですが、これが主流になると(おそらく当分ならないと思いますが)漫画の見せ方が大きく変わることになるんじゃないか、と私は考えています。
 漫画には「ネーム」を楽しむと言う重要な要素があって、まずは「ページ見開いた時の全体的な印象」を眺め、そして右上から読み進めていって、コマの相対的な大小関係によって「リズム」が生まれ(例えば作家が読者に“見せたい”コマは限られた紙面の中で大きく描く。これは常に同サイズのスケールのフレームで展開する映画やテレビドラマと漫画が大きく異なる点です。カメラの「より」と「引き」に当たるものって感じでもないんです・・・)、最後に「めくり」を楽しませます。

 黒澤明監督は「映画の八割は脚本で決まる」と言いますが、漫画業界では「漫画の八割はネームで決まる」ともいわれ、この作家の用意周到なネームの技術が、電子書籍や携帯電話で読む漫画などでは、どれほど反映されるのだろうか・・?という素朴な疑問があります。
 もしかしたら「フラッシュアニメ」と漫画のキメラみたくなって「電子的紙芝居」みたいになるんじゃないか?という気もしますね。それはそれで違ったメディアになって面白いな。音楽や声、ストーリー進行も作り手が操作できるし。
 でもそれはもはや漫画じゃないですね・・・読者が自分に合ったペースで好きに読み進められるのが本や漫画のいいところだと思うし・・・う~ん・・・

 (強引な)結論:電子書籍は印刷された本にとって代わることはないが、ちょっとした活字資料をインストールする分にはかなり便利。
 漫画が電子書籍化されると、かなり違った雰囲気で漫画を楽しむことになると思う。「iフォン」などでクローズアップやスクロールされて読まれちゃうと、おそらくネームの面白さは分からない。
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