漫画業界はやっと黎明期を抜けた?

 今大手の漫画出版社が、所有する漫画のブランドや著作権を守ろうと運動を起こしているようです。
 これは共有ソフトなどで違法に著作物がダウンロードされるのを防ぐため、締め付けを強化するというものですが、大変失礼ですが個人的な意見を言わせてもらえば「そんなことに苦心している暇があったら作品のクオリティをあげてくれ!」と思います。
 言うまでもなくプロの漫画の著作権は作家ではなく出版社に帰属しています。そしてデジタル化の流れによって、その著作権が脅かされようとしていることも解ります。

 しかしかつてブックオフなどの中古の本屋を漫画業界が批判したことがあったのですが、ブックオフを叩く前にすばらしい作品を提供し続けていれば、ちょっとやそっと中古書店で漫画が循環しても余裕なわけで、そういう意味で「あれれ・・・今の漫画業界って余裕がないのかな?」と感じました。
 面白い漫画は絶対発売日にちびっ子が買ってくれますよ。

 そう、この問題どことなく美術教育削減問題と重なる部分があって(自己弁護、美術教育の必要性のプレゼンテーションに徹してしまい、授業の質の向上まで気が回らない)、今漫画業界は漫画が売れないことを深刻に悩んでいて、著作権の締め付けをしているのかな?と。
 おそらくジャンプ黄金期(=少年ジャンプが週に600万部以上売れた時代!)に、違法ダウンロード作品があっても集英社は黙認したはずです。逆に宣伝になってくれるし余裕余裕♪と。
 これはジャンプ黄金期の集英社が、当時盛んだった二次創作の同人活動(プロの考えた既存の漫画のキャラを勝手に使って同人誌を作ること)を「著作権違反だ!」とうるさく言わなかったことから私は想像するのですが、現在のように著作権にすがりつきピリピリする状況は本気でやばいのかな?と思うのです。

 そもそも日本における「漫画」は、「鳥獣戯画」「北斎漫画」など言う気になれば言えますが(線でフラットに絵を構成する手法は本当に今の漫画のスピリットと共通していると思う)、現在の形の枠組みは言うまでもなく漫画の神様=手塚治虫さんの功績によるものでしょう。
 手塚氏の時代、漫画と言ったら「スウィーツで例えると(なぜ?)駄菓子(まずくはないけどとにかく安い)」のようなメディアで、良くも悪くもどことなく素人くささの残る「赤本」でした。

 その後、高度経済成長期に伴い漫画業界も発展多様化(アニメとのタイアップ戦略など)するのですが、この発展期は漫画という媒体が非常に叩かれた時代でもあります。つまり「漫画を読むと馬鹿になる!」というわけで、漫画はこのような世間のイメージと戦い、いわゆる「反骨精神」で良作を生み出していった熱いメディアだったと私は認識しています。
 小林よしのりさんは、この時代に「漫画の守護者」として、漫画を馬鹿にする世間の風潮と戦われた先生で、今なお先生の漫画の端々に反骨の精神がうかがえるのはとても興味深いです。
 さらにこのように淘汰圧が上がると、適応度の高い優れた漫画が選別されるので、漫画のクオリティはPTAのおばさんの思惑とは裏腹に高まったと思います。
 そしてジャンプ黄金時代でまさに漫画業界はピークを迎えたのです。

 で、何が言いたいかと言うと、漫画が大好きな人には大変怒られそうですが、もともと戦後生まれの現在の形式の漫画は、サブカルチャーであり崇高なものではないと見なされてきた、ということです。これは純然たる事実です。
 しかしこの風潮は現在明らかに変わった。麻生総理すら漫画が大好きで、日本が自動車、ハイテク技術と共に誇る重要な「文化」として一般的に認知されるようになったのです。

 つまり漫画家や出版社が著作権に対して結構無頓着だったのも、もとがサブカルチャーだったので既得権益を守ると言ったエスタブリッシュメント的発想がなかったのでしょう。
 そう考えると、現在の漫画業界が著作権を守る動きに出ているのは、とうとう日本の漫画がサブカルチャーと言うポジションを脱し、黎明期を抜けたということなのでしょう。
 これから漫画業界は日本が誇るハイカルチャーとして、現在の地位の存続と腐敗化の防止を試みなければなりません。
 そして漫画業界がそうなってしまったのを、私は「嬉しい:ちょっと好きな人が遠くに行ってしまった感=3:7」くらいで感慨深く感じています。
 ・・・ってお前は漫画のなんなのさって感じですが。
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