それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆☆」

 アンパンマン原点に帰る。

 「アンパンマン」って週末ニュース見ようとしたら、日本テレビはアンパンマンタイムで「なんだアンパンマンかよ・・・」と思いながらも、チャンネルを変えるのがおっくうで、そのまま見ちゃうことが極たまにあるのですが(絵本はもともと好きなので)よくよく考えてみればアンパンマンって、アメコミのヒーローとは一線を画する何とも独特なヒーロー。
 自分の体の一部を引き千切って空腹に苦しむ動物たち(主にかばおくんのイメージ)に分け与えてしまうのだから、こんな利他的なヒーローの前では他のヒーローの善行なんてまだまだ自己満足で利己的だと思う(言いすぎ?)。

 原作者のやなせたかし先生は(descf氏はやなせ先生の漫画の賞を受賞し、本人に会ったそうだ。羨ましい!)NHKの番組において「ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そしてそのためにかならず自分も深く傷つくものです(『アンパンマン』の著者あとがき)」と言っていて、これは正義を遂行するということは奇麗事ではなく、少なからず自己犠牲的な精神が伴うものだし、たとえば戦時中の一般市民の生活の苦しさ、貧しさを考えれば、大体の人にとっては政治的な理念どうこうよりも、まずは生活が安定しなければ幸せはない。
 本当のヒーローとは、みんなの空腹をまずもって救ってくれるという哲学が『アンパンマン』には通底している。そのためには顔の形が不格好になっても構わない。もっと言えば顔がなくなっちゃっても構わないと・・・
 戦後生まれの作家にこんなすさまじい発想はできないと思う。

 ということで、『アンパンマン』のテーゼって意外と重い。唄の歌詞でも「なんのためにう~まれて、な~にをし~ていきるのか?」ってめっちゃ哲学的。
 そしてこのテーマをガツンとぶつけてきたのが、この映画『それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ』です。
 アンパンマンって、そもそもアンパンを焼いていたパン工場の窯に煙突から流れ星が入っちゃって、それによってアンパンマンは誕生するのですが(OPアニメ参照)その設定をこの映画は大きなテーマにしていて、アンパンマンに命を与えた流れ星を「いのちの星」というそうです。
 「いのちの星」は、アンパンマンの世界を生命あふれる美しい環境にする源で、その星をたたえるお祭りをアンパンマンの世界の住人は定期的に開催しているよう。
 この設定は実はけっこうこの世の真理を突いていて、科学的にも地球の生命の材料は宇宙の星が運んできたし、この地球の生態系の根源的エネルギーは太陽ですから、私たちもマジで星のいのちを持っていますよね。

 今作ではその「いのちの星」によって命をもらった人形「ドーリィちゃん」がゲストキャラクターなのですが、こいつがまたニヒルかつ毒舌で、同じ星をもらって生を受けたアンパンマンと対極をなすキャラクター。
 ドーリィちゃんはアンパンマンの唄の歌詞「何のために生まれて?」を「自分のためでしょ」とクールに言い放ち、自分の好き勝手に生きるエゴイスト。幼稚園でもみんなの傷つくことを平気で言うし(空気読めw!)、ルールなんてお構いなしの問題児。
 ドーリィちゃんがここまでやさぐれているのには、けっこう重くて悲しい理由があって、それで「せっかくもらった命なんだから、好きに生きなきゃもったいない」という発想に至ったのですが、周りの空気があまりにも読めないドーリィちゃんは、基本的にみんないい奴のアンパンマンワールドでは見事に浮いてしまい、好きに生きているはずなのに生きててあまり楽しくないんです。星からもらった命もなんか腐ってきているし・・・

 そんな彼女に(あ、ドーリィちゃんって女性。フランス人形みたいなキャラね)アンパンマンは、「僕が生まれてきたのは困っているみんなを助けるためなんだ」と、なんとアンパンマンご本人から、あまり明かされることのなかった自身のヒーロー哲学が公開されます。まさに「情熱大陸」アンパンマン編!このシーンって結構異色だったのでは?

 そして案の定、人形を欲しがるドキンちゃんのわがままを叶える為に、ばいきんまんが開発した最終兵器「スーパーカビだんだん(打つのが面倒くさいので以下SKDD)」が遠隔操作しきれずに暴走。ばいきんまんの手を離れ世界をカビだらけにしてしまいます。
 ドーリィちゃんを助けるために彼女の盾になり、SKDDの攻撃を食らってしまうアンパンマン。ここから凄い展開なのですが、SKDDの腐食液によって、アンパンマンは完全に絶命してしまい、新しい顔をジャムおじさんが投げつけても復活しなくなってしまたのです!
 頭さえ変えればいくらでも戦えると思っていたアンパンマンって腐らせると完全に倒せるのかよ!

 前代未聞のアンパンマンのピンチに、ドーリィちゃんは、これほどまで自分の為に命を投げうってくれたアンパンマンを助けるために自分の「いのちの星」はあったんだ、と自分の「いのちの星」を取り出しアンパンマンに捧げます。
 これによってアンパンマンは最強の兵器SKDDを撃破。しかし星を失ったドーリィちゃんはもとのボロボロな人形に戻ってしまった・・・
 このドーリィちゃんの生き様?に感動した「いのちの星」は再びドーリィちゃんに命をふき込み、彼女は人間の女の子として生まれ変わることができましたとさ。

 ・・・テレビシリーズでは味わえない原作の重くて深いスピリットが感じられる感動作。七夕の夜にぜひどうぞ。ちなみに私はアンパンマンのキャラでは汽車の「エスエルマン」が好きです。あんま出ないけど。
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