映画のリアリティとは?

 この手の話は高校の頃descf氏と散々したし、漫画や映画の過去の記事でも多少触れたのですが、もう一度ここで論じてみようと思います。

 もう言うまでもありませんが、「現実のリアリティ」と「映画におけるリアリティ」は異なります。映画のリアリティとは映画で描かれる世界(作り話。虚構の世界)をうまく成立させるためのギミックであり、時にそれは「映画のウソ」と言われます。
 映画の世界はマサルさんの言葉を拝借するならば「現実の相似拡大」。決められたテーマを強調して描くために、作り手が現実の“一部”を強調したり剪定したりして、デフォルメするわけです。
 美少女萌えアニメで言うならば、受け手に好まれて強調されるシーンが美少女の入浴シーンだったりするし、逆に美少女がトイレでウンコしているシーンはおそらく100%割愛されます(だからケツからチョコプリンを噴射した『セックス&ザ・シティ』は逆説的で最高なんだよ!)。
 このように物語の世界観を描くために、作り手は現実のリアリティの持つ「比率」をあえて崩すのです。これによって映画の物語はスムーズに進行し、受け手に「映画の世界のリアリティ」を感じさせることができるのです。

 ここまでは単純な話。しかし実際は受け手によって「何にリアリティを感じるか」が若干異なるので、「監督の考えるリアリティ」がどこまで多くの「お客さんのリアリティ」に違和感なく合致するかが作り手の腕の見せどころ。これが下手だと客に「あざとい」と思われて、映画の世界に入ってはもらえない。
 例えば『トイ・ストーリー』が多くの人の心を感動させるのは、誰しも小さい頃おもちゃで遊んだ経験があるはずだし、おもちゃが好きだ(った)から、「おもちゃが喋る」という嘘っぱちの設定に特に違和感を感じない。「夢があっていいじゃない素敵~」って思う。
 でも中には「おもちゃが喋るはずねえだろ」「この設定ってよく考えたら怖くね?」と違和感を感じる人もいる。そういう人は最初っから『トイ・ストーリー』の世界にイマイチなじめず取り残されてしまう・・・これはもう人それぞれの反応なのだから仕方がない。

 つまり、どんな映画にもある虚構の世界を成立させるための「映画のウソ」に違和感を持ってしまったら、その映画は自分には合っていないし、面白くないし好きじゃないわけです。
 私が、全く魅力のない主人公がたくさんの可愛い女の子にモテモテな美少女アニメ(21世紀に入っても相変わらずこんな古典的なのがまだやってるw)に面白さを感じないのは、ギャグならともかくその嘘くさい設定をマジでやっている虚構の世界に違和感を感じているからです。
 「こんなにたくさんの可愛い子にモテテいいな~(感情移入)」に「こんな女どもいるわけねえだろ(違和感)」が勝ってしまうわけです。ギャグなら笑えて好きなんですが。
 
 人はそれぞれ自分の世界を持って生きている。だから人によって何にリアリティを感じるかは違う。しょうもないアナロジーですが「良い映画に出会うという事」は「自分と価値観の合う恋人に出会う事」に似ているのかもしれない。
 即ちたくさんの映画を見れば、それだけ自分がどういう存在かが明確化されていくわけです(ちょっと大袈裟です)。
 ただ自分の価値観や感性は普遍的なものではなく時と場合によって変化してしまうのですが。逆を言えば、だからこそ文化や芸術の鑑賞は楽しいんですけどね!

 結論:映画『告白』をエンターテイメントとして楽しむべきことは分かっている。でも私は「負のカタルシス」より「嘘くせえ」という違和感が勝っちゃったんです。だから“私にとって”あの映画はダメ。これは仕方がない。
 美少女がパン咥えながら「遅刻遅刻~」って通学路走っていて、男の子とぶつかって、その後教室で再会。そこで女の子が転校生だってことが分かって「あ、お前は朝の・・・!」っていう少女漫画において幾度も繰り返されたであろう展開があざとくてダメなのと一緒(今そんな漫画描いてます。ギャグだけど)。
 余談ですがdescf氏は『告白』の原作小説を読んでいて、映画は原作に忠実だと言われていますが、けっこう重要なところが異なっているようです。原作と映画は楽しみ方が結構違う??ここら辺は機会があったら取り上げます(取り上げないかもしれないけど・・・)。
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