アメリカのスーパーヒーローコミックはなくならないな

 日比谷公園の図書館で行われた小野耕世氏講演イベント「アメリカンコミック最前線 ~アメリカンコミックから見る文化の違い~」を聴いてきました。
 ここのところ新しい仕事を覚えたり、脚本が行き詰まってたり、その内容がトゥモローネバーダイにかぶってたりと、いろいろあって多少疲れていたのですが、こういう機会はなかなかないので参加してきました。
 以下はそのメモ。聞き取り間違いの可能性もあるのでご了承ください。

 コミックストリップ(アメリカの新聞掲載漫画)は19世紀末から存在。
 1948年には米軍から流れて日本でも出版。
 アメリカはほとんど地方紙で、日本のような全国紙は少ない。ちなみにNYタイムズには漫画は無し。

 コミックストリップは、子供(特に男の子)だけを対象にしたヨーロッパの漫画と異なり、老若男女すべての読者をターゲットに描かれる。ミッキーやスター・ウォーズなども掲載。
 また人気のある古い作品が新聞に再掲載されることもある。
 著作権はシンジケート持ち。

 アメコミがカラーなのは、もともと多色刷りの日曜版の新聞で掲載が始まったから。その後白黒印刷の平日版にも掲載、アメリカの漫画はカラーが最初でありそれが慣例となった。

 コミックブックは1930年代に子供向けのスーパーヒーロー漫画として誕生。全ページカラー。
 またコミックストリップを再録したコミックブックもできる。その後戦争に突入、黄金時代を迎える。
 コミックブックは月刊もしくは隔月で新聞のスタンドに売っており、本屋では扱っていなかった(本とみなされていなかった)。

 小野さんはSF作家の星新一さんから個人的にコミックブックを譲ってもらったらしい。いくつかは小野さんのコレクションとかぶるものもあったが、初期のXメンなど持っていないものもあった。星先生はSFのショートショートのネタのヒントに、子供向けなのに話の出来がいいコミックブックを読んでいたらしい。

 戦後の原子力の描き方。『子どもの科学』『児童百科事典』などで明るい未来の象徴として取り上げられた。
 1970年代には『世界の原子力行政』という原子力の光と影(原潜の沈没および政府のもみ消し)を取り上げた本が出版される。

 スーパーマンで描かれる世界も戦後では変わった。平和の時代となりSF性は徐々に薄れていく。宇宙などにはいかず、倒すのはアメリカの犯罪者(たとえロボットが敵でも裏にいるのは普通の人間)。
 また目が見えずスーパーマンの存在を信じない少女とスーパーマンの交流という、キャラクターの心情を掘り下げたドラマ性の高いエピソードも作られた。
 この1950年代をシルバーエイジという。

 1960年代に登場した『マイティ・ソー』はさらに善悪について問いを投げかけた。こういったマーベルのコミックブックは70年代に出版された『指輪物語』に夢中になった学生たちが読んでいた。

 1970年代漫画の専門店が登場。NYには75年出店。アメリカの出版業界は再版制度ではなく買取製なので、出版予告を破ると裁判沙汰になってしまう。よって原稿が落ちるということはありえない。

 日本の漫画は1930年代に100ページ以上のハードカバーの漫画本(のらくろ)を出版。これは世界初。1980年代には『AKIRA』がアメリカに進出する際にコンピュータ着色された歴史がある。

 日本の漫画は実在の政治家などを出さずあまり時事的なものを取り上げない。その反面当時の風俗に近すぎ、時代が過ぎると急に色あせてしまう作品が多い。
 またアメリカでは商業的に失敗でもシンジケートが押し続ける作品もある。
 小野さん一押しのクリス・ウェアーの『ビルディング・ストーリー』などは箱に入ったリーフレットや新聞、小冊子などで構成された実験的な漫画作品で、これは日本では商業ベースにまず乗らないという。
 また『ジミーコリガン』は、スーパーマンを演じた役者の子供時代から自殺するまでを描いた叙情性のある作品。もちろん『スーパーゴッズ』もオススメ!



 ・・・というわけで、今回も例のごとくパキPさんと行ったんですが、講演のあと喫茶店でいろいろと相談とか愚痴に突き合わせちゃって、なんか近年稀にみるみっともなさ、いやいつもみっともないけど、今回は特に疲れてた上にハイになってたらしい。冬眠シェルターがあったら入りたいよ。
 でもツイッターでは難しい微妙な言葉のニュアンスが伝わったらしくて、それだけはよかった。文字でしかやり取りができないツイッターではしばしばロジックとロジックのぶつかり合いになりがちだけど、冷静客観なはずのロジックがなぜ平行線をたどったり、感情的な水掛け論になりがちかの話をしたんだ。
 つまりロジックのレベルとモチベーションのレベルが違うという。私の漫画を作るスタンスもどう考えても二律背反で、パキPさんに「それはごまかしですよ~」とか言われちゃったんだけど、クリエイティブな活動のすべてをロジックでは説明しきれないし、ものを作るモチベーションを上げるのは感情レベルの話だからロジックでは奮い立たないんだっていう。自然科学というロジックの原動力になったのはキリスト教なんだってことなんだけどね。
 こういう微妙な細部って文字だけじゃやっぱり伝わってくれないんだなあってつくづく思った。

 それとコミックコードの時期が意外と早かったのは驚いた。これについては本で調べたほうがいいなあ。なんでアメリカがコミックを規制したのかいまいち見えてないから(日本の方も見えてないけど)。
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