物理学概論覚え書き③

 来月の試験に向けて物理学演習百人組み手を開催中です(百問も解くかどうかはかなり怪しい)。

運動

平均加速度
①静止していた自動車が5秒間で時速45kmまで加速されるとき、この自動車の平均加速度を求めよ。

45÷5=9km/s2

②速度30m/sで移動していた自動車が6秒間で停止する時の平均加速度は、どの方向にどれだけの割合で減少するか求めよ。

30÷6=5km/s2

進行方向に5km/s2減少する。

③傾斜30°の斜面を滑っている質量1kgの物体の加速度を求めよ。

g×sin30°=9.8×0.5=4.9m/s2

④新幹線こだまは駅を発車後、時速198kmの速さに達するまでに1秒あたり0.25m/sの割合で一様に加速していく。こだまの速度が時速198kmになるまでにかかる時間と、それまでの走行距離はいくらか。

まずMKSA単位系を使わなきゃいけないので、時速198キロを秒速に直すと、55m/sになる。
時間tは速さv÷加速度aなので

55÷0.25=220秒

走行距離dは(1/2)×加速度a×時間tの二乗なので

(1/2)×0.25×220×220=6050メートル

仕事とエネルギー

仕事率
クレーンが1000kgのコンテナを20秒間で25mの高さまで吊り上げた時の、クレーンの仕事率を求めよ。
仕事Wは力×移動距離なので

力mg=1000kg×9.8m/s2=9800N

9800N×25m=245000J

仕事率は仕事を所要時間で割ればいいので

245000÷20=12000W

周期運動

等速円運動
車が円形の道路を20m/sで走っており、1秒あたり0.1radの割合で進行方向を変えている。乗客の加速度の大きさを求めよ。

加速度a=速度v×角速度ωなので・・・

    =20×0.1
    =2m/s2

ちなみに1ラジアンは弧の長さが半径と等しくなる時の扇型の角度で57.3°くらい。
つまり0.1radは5.7°くらい。

ばね定数
ばねに吊るした質量2kgのおもりの鉛直方向の振動の周期が2秒であった。ばね定数はいくらか求めよ。
ばね定数kとは、ばねの種類によって決まっている弾性定数で、これにばねの変形量Xをかけたものがそのばねの弾力Fになる。

F=-k×X

また、ばねの単振動の周期Tは

T=2π√m÷√k

つまり、周期はおもりの重さに比例して、ばね定数に反比例する。
よって

2=2π√2÷√k

2√k=2π√2

√k=π√2

k=π2×2

k=2π2

k≒19.7192kg/s2

連続体力学

ヤング率
かっこよくいうと伸び弾性係数という。その物体を引っ張った時の歪みにくさを表す。
ヤング率2×1011Pa、長さ1m、直径0.2cmの鋼鉄製の針金に1kgのおもりを吊るしたとき、針金がどれだけ伸びるかを考える。

棒の伸びΔL=(1/ヤング率E)×力F×もともとの長さL÷断面積A

に数値をそれぞれ代入すると

ΔL=1÷(2×1011)×1kg×9.8m/s2×1m÷(0.001m×0.001m×π)

  =1.6×10-3メートル

だいたい1.6ミリメートルってことになるので、さすが鋼鉄、細い針金といえど1kgのおもりごときでは全然伸びない。

流体力学

流体連続方程式
途中で太さが狭くなる円筒内を流体が流れるとき、内径20mmの断面Aでの平均の速さが5cm/sのとき、内径10mmの断面Bの平均の速さを求めよ。

流体の連続方程式によれば、流管のすべての断面を1秒間に流れる流体の質量は同じである。つまり、流管内の流体は、狭いところは早く、広いところは遅く流れる。

断面積A×断面Aでの速さvA=断面積B×断面Bでの速さvBなので・・・

vB=vA×断面積A÷断面積B

 =5×(10×10×π)÷(5×5×π)

 =20cm/s

トリチェリの法則
水面が下がり高さが低くなると、水の流出する速度は低下するというもの。
たとえば、深さhの貯水槽の底にある穴から水が速さvで流出している場合、ベルヌーイの法則から水の深さと流出する水の速さが導ける。
ベルヌーイの法則によれば、運動している完全流体(粘性がゼロの仮想流体のこと)の圧力は、高さが高いほど、流速が速いほど小さい。
したがって流速0、高さh、圧力p0(=大気圧)の水面と、流速v、高さ0、圧力p0(=大気圧)の穴の関係は・・・

p0+pgh=p0+(1/2)×pv2

v=√(2×g×h)

よって、水面が低くなればなるほど水が流出する速度は減少することがわかる。
ここで水で満たしたビニール管の両端を閉じ、一端を水の入ったタンクの水面下0.02メートルのところに置き、もう一方の端をタンクの外側で水面よりも0.5メートルだけ下のところに置く。
ここでビニール管の両端を開いたとき、管から外へ流れ出す水の速度は・・・

v=√(2×9.8×0.5m)=3.1m/s

波動

縦波と横波
縦波・・・媒質の運動方向が波の進行方向と同じ(疎密波。音や地震のP波)
進むスピードは速い。
横波・・・媒質の運動方向が波の進行方向と垂直(電磁波や光、地震のS波)
進むスピードは遅い。弦楽器の場合、弦を強く引っ張った方が速度が上がる。
魚の縦ジマ横ジマ並みにわかりづらいけど、波の立場で考えてみるとなんとなく分かります。縦波はストライプ、横波はボーダーになります。

節と腹
弦の振動のように、同じようなところで振動して進まない波のことを定常波というが、定常波の振動しない部分(つまり真ん中の直線と交わる部分)を節、振幅が一番大きいところを腹(山の一番高いところ、谷の一番低いところ)という。

定常波と移動波
水面上で12cm離れた2点A、Bから、波長4cmで振幅の等しい波が同位相で送られてくる。線分AB上での節の位置を求めよ。
同位相とは波の波長が全く一緒のことを言う。しかもAとBからやってくる二つの波は振幅も同じなので、違うのは進行方向が真逆ということだけである。
ちなみに一定方向に動き続ける波のことを、定常波に対して移動波という。
点Aと点Bにそれぞれ波の腹がある場合は二つの波がお互いに相殺されて打ち消しあってしまうが、4分の1周期、もしくは4分の3周期だけ波を進めると、二つの波はぴったりと重なって、大きな定常波が生まれる。
この定常波はAとBを腹にする、波長4cm、振幅2倍の波なので、節の位置は1、3、5、7、9、11cmの場所ということになる。

基本振動数
長さ50cm、質量5gのピアノ線が張力400Nで張ってあるときの基本振動数を求めよ。
まずピアノ線の密度μを求めなければならない。

密度=質量÷長さ

μ=5×10-3kg÷0.5m
 =0.01kg/m

波の速さv=√張力S÷√密度μなので・・・

v=√(400÷0.01)
 =√40000
 =200

振動数f=音の速さv÷2÷長さLだから・・・

f=200÷(2×0.5)=200Hz

ドップラー効果
どちらも時速72kmの速度の電車がすれ違ったとき、一方の電車は振動数500Hzの警笛を鳴らしていた。もう一方の電車の乗客には何Hzの音として聞こえたか。
音速は340m/sとする。
ドップラー効果により、音源が観測者に接近すると音は高くなり(振動数が上がり)、音源が観測者から遠ざかると音は低くなる(振動数は下がる)。
どちらも時速72kmを20m/sに直し、振動数=音速÷波長で求めればいい。

①接近時
音の速さは電車の速度分だけ増加し、波長は電車の速度分だけ減少するから

振動数f’=500Hz×(340+20)÷(340-20)=563Hz

②遠ざかるとき
音の速さは電車の速度分だけ減少し、波長は電車の速度分だけ増加するから

振動数f’=500Hz×(340-20)÷(340+20)=444Hz

光の屈折
波が媒質1から媒質2へ入射角45°で入射した。媒質1→媒質2のときの屈折率nが1.41の場合、屈折角はいくらか。

スネルの法則から、屈折角が小さくなればなるほど、光は大きく折れ曲がっていることになるので・・・

入射角θ1÷屈折角θ2=屈折率n

45÷θ2=1.41

1.41×θ2=45

θ2=31.9

熱力学

熱量
cal/gをJ/gに変換する際は

1カロリー=4.2ジュール

とする。

融解熱
固体が液体に相転移(状態変化)するときに必要な熱のこと。
水の場合は80cal/g=334J/g

気化熱
液体が気体に相転移(状態変化)するときに必要な熱のこと。
水の場合は540cal/g=2260 J/g

潜熱
0℃の氷500gを加熱して100℃にして、全部水蒸気にするのに必要な熱量を求める。

➀1グラムの水を1℃上げるための熱量は1カロリーなので
500グラムの水を100℃上げるための熱量は
1×500×100=50000カロリー

次に潜熱を加算する。
②氷→水に状態変化する際に1グラムあたり80カロリーの熱が必要なので
80×500=40000カロリー

③水→水蒸気に状態変化する際に1グラムあたり540カロリーの熱が必要なので
540×500=270000カロリー

これらの熱量の合計は

50000+40000+270000=360000カロリー

ちなみにカロリーをジュールに変換すると

360000×4.2=1512000ジュール

ケルビンとファーレンハイト
摂氏30℃をケルビン(K)とファーレンハイト(F)で表すとそれぞれ何度か計算して求めよ。
ケルビンは絶対零度(=-273℃)を基準(ゼロ)とするので、セルシウス温度に273を足せばいい。よって

30℃=303K

ファーレンハイトはいわゆる華氏のことで、水銀温度計を考案し色々なものの温度を測ったドイツ人の物理学者ファーレンハイトに由来する。
ファーレンハイト度は人間の体調を基準にしていて、風邪をひいた時に使う氷枕の温度を華氏0度、平熱を華氏98度、風邪で熱が出た場合を華氏100度としている。
摂氏を華氏に変換する場合は
摂氏に9/5をかけて、それに32を足せばいい。
よって

30℃×9/5=54

54+32=86F

熱機関
カルノーの原理により、熱機関の効率は高温熱源と低温熱源の差が大きいと効率が良くなる。したがって400℃の高温熱源と50℃の低温熱源のあいだで働く最大効率は・・・

η=T高-T低/T高

 =400-50/400

 =0.875

電磁気学

電場
電場とは、電荷に電気的な力を与える空間のことで、物質とかじゃないので真空中にも働く。これは電磁場も同様で、そのため電磁波は真空中(媒体なし)でも伝わるというわけ。
さて、電子の電荷は-1.6×10-19クーロン(C)で、質量は9.1×10-31kgである。
この電子に9.8m/s2の加速度を与える電場の強さを求めてみる。

電場E=質量m加速度g÷電荷e

なので・・・

E=(9.1×10-31)×(9.8)÷(1.6×10-19
=5.6×10-11N/C

また、電子が10000N/Cの一様な電場の中にあるときの電気力による加速度は、先ほどの式を等式変形して・・・

ma=eE

a=eE÷m

=(1.6×10-19)×(10000N/C)÷(9.1×10-31

=1.8×1015m/s2

磁場
長さ30cm、巻き数6000の中空のソレノイドに3Aの電流を流したとき、内部に発生する磁場の強さを求めよ。

磁場B=磁気定数μ0×1mあたりの巻数n×電流I
   =(4π×10-7)×6000÷0.3×3
   =(4π×10-7)×60000
   =24π×10-3
   ≒75.36×10-3T

磁気力
地球の磁気は4.6×10-5Tである。ここに垂直に導線を吊って10Aの電流を流すとき、この導線1mに働く磁気力の強さを求めよ。

磁気力F=電流I×長さL×地球の磁気B

    =10×1×4.6×10-5
    =4.6×10-4N

平行電流
フレミングの左手の法則により、平行な導線にそれぞれ電流が流れている場合、二つの直流電流の間には磁気力が働く。この強さは導線の間隔が狭いほど強く、広いほど弱い。そして二つの電流の積と導線の長さに比例する。
間隔が10cmの平行な導線のそれぞれに100Aの電流が反対向きに流れている。この導線10mに働く力の強さは・・・

F=磁気定数(4π×10-7)×電流I1×電流I2×導線の長さL÷二つの導線の間隔d÷磁場の直径2π

F=2×10-7×100×-100×10÷0.1

 =0.2N
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