地球物理学覚え書き

地球の形状

アリストテレス
哲学、政治学、生物学、物理学に続いてここでも登場!
紀元前330年頃、月食の際に月に映った地球の影が丸いことから、地球は球体であることをすでに見抜いていた。

エラトステネス
紀元前220年頃、シエネとアレキサンドリアの距離(925キロメートル)と、その二地点から見える太陽の位置のズレ(7.2°)から、中心角7.2°、弧の長さ925キロメートルの扇形を作り、地球の全周をかなり正確に算出した。

7.2:925=360:X
    X=46250キロメートル

ニュートン
物理学では重力加速度は9.8m/s2とされるが、厳密には場所によって若干異なり、赤道に近づくほど小さくなり(赤道では約9.78)、北極や南極に近づくほど大きくなる(緯度90°では約9.83)。
これは赤道の方が遠心力が高いためである(※)が、ニュートンはこの変化量を正確に求め、地球がちょっとだけ楕円であることを突き止めた。
その約50年後にフランス政府が調査隊を派遣し、ペルー、フランス、フィンランドでそれぞれ緯度一度あたりの経線の長さを測量したところ、緯度が高い国の方が罫線が長くなったため、地球が楕円であることが実際に証明された。

※実際には、地球の中心との距離が緯度によって異なるのが原因で(地球は楕円だから)、この影響は遠心力の影響の10倍もある。

ジオイド
地球の表面は7割が海、3割が陸であるが、これをすべて海の水に覆われた星と仮定して、その時の地球全体の平均海面をジオイド(ジオ=地球、イド=~みたいなもの)という。
平均海面とは、海面は波や潮汐によって変動しているが、その平均値をとり静水面としたもの。
しかし、地球内部はダイナミックな変動を繰り返しているため、平均海面も局所的に異なりボコボコになってしまう。
そのため、ジオイドに最も近い、綺麗な回転楕円体(地球楕円体)を作り、ジオイドとの差(ジオイドの高さ)を人工衛星によって測定すると、地球は洋なしというか肉まんのような形をしていることがわかる。
ちなみにジオイドの高さが最も凹んでいる場所はインド南部で、南極や北米もかなり凹んでいる。

扁平率
では地球はどれだけ潰れているかを計算すると

赤道半径(幅)=6387.137キロメートル
極半径(高さ)=6356.752キロメートル

扁平率=赤道半径-極半径/赤道半径≒1/300

なので、地球はほぼほぼ球形と考えていい。

重力異常
地球の形を地球楕円体と仮定したときの重力(引力と遠心力の合力)を標準重力というが、引力は物体の質量に比例するので地下に密度の大きな物質が存在する場合、局所的に重力の値は大きくなってしまう。この時の標準重力と実測値のズレを重力異常という。
初めて聞いた人は、だいたいKAGRAとかブラックホールとか、そういった類の宇宙物理学用語だと勘違いする(私だ)。
なんにせよ、この重力異常のせいで、重力の実測値をほかの地域と比べる場合は、ジオイド面上の値に変換する必要が出てくる。これを重力補正といい、以下の3段階で行われる。

①フリーエア変換
引力は重心から遠ざかるほど小さくなるため、この効果を取り除く。
重力は1メートル高くなるごとに約3.086×10-6m/s2小さくなるので、ジオイド面からHメートル高い場所の重力は3.086×10-6×Hだけ小さくなる。
ちなみにフリーエア変換とフーリエ変換は名前が似ているが、フリーエアとは人名ではなく自由大気という意味で、実測地の高さとジオイド面との高さの差をフリーエアと仮定することに由来する。

②地形補正
地表はジオイド面と平行ではなく凸凹しているため、測定地の高さHよりも高い場所にある物質は、高さHの平行面に引力をもたらし、測定値よりも低い場所にある物質は引力を及ぼさない(物質がないから)、こういった地形の効果を測定値から補正して、高さHのジオイドとの平行な面の重力値を求める。

③ブーゲー補正
最後に測定面とジオイド面との間にも物質があるため、その引力も差し引かなくてはならない。
間にある物質の密度を平均的な地殻の密度と仮定して、その値を測定値から取り除く。
ブーゲーとはこの計算を行った学者の名前。

フリーエア異常
フリーエア補正した値と標準重力との差のこと。
測定点の下にある物質が均質の場合は、測定地の高さを補正するだけで標準重力に一致するのでフリーエア異常は見られない。
アイソスタシーが成立している場合は高度によらずどこでもフリーエア異常は見られないが、日本列島は沈み込みプレートの境界にあるため、海溝付近は強制的に地球内部に引っ張る力が絶えず働いていて、アイソスタシーが成立せず著しいフリーエア異常が見られる。

ブーゲー異常
フリーエア補正、地形補正、ブーゲー補正して出した値と標準重力との差のこと。
ブーゲー補正は、ジオイドと測定値の間の密度を平均的な近くの密度と仮定して補正してしまっているため、鉱床のように地下に密度の高い物質が集まっている場合はプラスのブーゲー異常が見られる。
逆を言えば、ブーゲー異常が見られるところでは鉱床があるということで鉱床の探査に利用されている。
またカルデラや断層など、地下構造が水平的に変化する場所でもブーゲー異常が見られる。例えば、基盤が陥没していたり、断層がある場所では密度の大きな層が部分的に下がっているので、マイナスのブーゲー異常が見られる。

地球の内部
地震波の速度や、地球内部の化学組成から、地球内部の密度と圧力を算出すると、地球の中心密度は17g/cm3、圧力は4×1011Pa(≒400万気圧)に達する。
しかし地球内部の温度は直接測れないので推定幅が大きい。マントルと核の境界付近は3000℃、中心部は5000℃くらいだと考えられている。

地温勾配(地下増温率)
地下に行けば行くほど周囲の岩石の温度は上がるが、その割合を地温勾配という。
だいたい100メートル深くなる事に3℃上がる。

地殻熱流量
地球の内部の熱は、熱伝導によって表面に向かって逃げていき、最後は宇宙空間に放出される。
この時流れ出る熱量を地殻熱流量という。
地球全体では0.085W/m2(1平方メートルの面積から1秒間に0.085Jの熱が流出している)、大陸地域では0.065W/m2、海洋地域では0.1W/m2で、海洋地域の方が地表に放出される熱が大きい。これは海底に海嶺があるからである。
逆にプレートが沈み込む境界(=海溝)では地殻熱流量は低くなっている。

熱源
地球の熱源は、地球ができるときに蓄えられた熱エネルギー(=微惑星衝突の運動エネルギーと鉄がマグマーオーシャンの中に沈んでいった位置エネルギー)と、ウラン、トリウム、カリウムといった地球内部の放射性同位体が崩壊して発生した熱エネルギーである。
ちなみに、地球ができるときに蓄積された熱エネルギーと、放射性崩壊による熱エネルギーの比はちょうど1:1だという。

地球内部の化学組成
地球は原子太陽系星雲中の微粒子が集まって出来たと考えられているので、太陽系にある代表的な隕石と化学組成は似ていると考えられている。そのためイトカワなどの小惑星からサンプルと採取しようとしている。
また、出来たての地球は隕石の衝突エネルギーや大気の温室効果によって、ドロドロに溶けていたので、密度が高い(=重い)金属の鉄などはどんどん沈んで中心部に溜まっていった。
こうして現在の地球の化学組成が決定した。

地殻
二酸化珪素(55%)、酸化アルミニウム(15%)
大陸地殻は厚さが30~50キロメートルで、上部が花崗岩質、下部は玄武岩質。
海洋地殻は厚さが5~10キロメートルで、ほとんどが玄武岩質。

マントル
二酸化珪素(45%)、酸化マグネシウム(37%)
上部はかんらん岩(カンラン石、輝石)、下部はかんらん石が圧力によって相転移を起こしワズレアイト→リングッダイトといった高圧で安定する構造を持つ鉱物によってできている。


鉄(90%)、ニッケル(9%)、コバルト(0.6%)
液体の外核と、固体の内核に分けられる。

アイソスタシー
密度の小さい岩石が、密度の大きいマントルの上に浮かんでいるとする考え方。
アイソスタシーによれば大陸も海洋も同じ浮力をマントルから受けていると考える。

マントルの密度:3.3
大陸地殻の密度:2.8
海水の密度:1.0
海洋地殻の密度:3.0
氷の密度:0.9

上のような密度のデータがある場合、地殻の厚さが36キロメートルで標高2キロメートルの大陸の地点Aから、水深が4キロメートルで海洋地殻の厚さがわからない海洋の地点Bの海洋地殻の厚さを求めることができる。

地点Aの地殻の質量は、密度×地殻の厚さで

2.8×36=100.8

地点Bの質量は海水と海洋地殻とマントル(海洋地殻は大陸地殻よりも薄いため勘定に入れる)の質量を合計して

海水・・・1×4=4
海洋地殻・・・3×X=3X
マントル・・・3.3×(30-X)=99-3.3X

4+3X+99-3.3X=-0.3X+103

大陸の質量=海洋の質量なので

100.8=-0.3X+103

0.3X=2.2

X≒7.3333・・・

したがって海洋地殻の厚さは約7キロメートルである。

また、20000年前には大規模な氷河で覆われていた大陸の土地が、氷河の消失により400メートル隆起したとする。氷河の厚さが1500メートルだった場合、今後さらにどれくらい隆起するかもアイソスタシーによって求めることができる。
氷河の質量分だけ隆起すると考えられるので、隆起する高さをXメートルとすると・・・

3.3X(マントルが氷河に与えた浮力)=0.9×1500(氷河の質量)

3.3X=1350

X≒409メートル

すでに20000年かけて400メートル隆起しているので、今後はあと9メートル隆起する。

さらに、氷河がない場所で土地が400メートル隆起した場合は地殻の厚さが増加したと考えられる。よって地殻の厚さをXメートルとすると下方向への増加幅はX-400メートルである。
アイソスタシーにおいて、地殻の質量と、マントルが地殻に与える浮力は等しいので・・・

2.8X=3.3(X-400)

-0.5X=-1320

X=2640

よって地殻の厚さは2640メートルである。

プレートテクトニクス
地球の表面を覆うプレート(リソスフェア)という15枚の固い岩盤がマントルの対流(上昇する熱いプルームと下降する冷たいプルーム)によって動くこと。

プレートと地殻の違い
一見同じようなものに思えるが、厳密には定義の仕方が異なる。
地殻やマントルは地震波の速度の違いや化学成分で分類されるが(地震波トモグラフィー)、プレートは力学的な区分、つまり硬いか柔らかいかで分類されている。

リソスフェア
地表付近の硬い岩石部分。硬い分割れやすい。
リソスフェアは地殻とマントル上部の硬い部分が合わさり出来ていて、このリソスフェアが十数枚に分割したものがプレートである。

アセノスフェア
リソスフェアの下にある柔らかい部分。アセノスフェアは一応固体ではあるが、溶けかけていて流動しやすい(対流をしている)。プレートがマントルの上を移動できるのはこのためである。

メソスフェア
アセノスフェアの下にある残りのマントル全て。かなり硬い。

①拡散する境界(広がる境界)
海嶺の活動によってプレートとプレートが遠ざかっていく。正断層ができる。
東アフリカ地溝帯、ギャオ(アイスランドの割れ目)、東太平洋海嶺など。

②収束する境界(狭まる境界)
プレートとプレートがぶつかっていく。ぶつかった部分が盛り上がり山脈を形成したり、地震が起こる。海洋プレートがほかのプレートの下に沈み込む場所は海溝と呼ばれる。逆断層ができる。
ヒマラヤ山脈、日本海溝など。

③すれ違う境界
横ずれ断層ができる。
サンアンドレアス断層が有名。

VLBI
ベリー・ロング・ベースライン・インターフェロメトリー。超長基線干渉計と言う。
宇宙から飛んでくる電波を地上の複数の箇所にあるパラボラアンテナで受信し、その到達時間の差からそれぞれのアンテナ間の距離を求めることができる。
例えば、宇宙で最も明るい星(そして遠い)であるクェーサーからの電波を2地点で受信した時、電波の速度をc、電波到達時間の差をt、2地点間の距離をL、パラボラアンテナの角度をθとすると、Lを斜辺、アンテナに届く電波の道筋を底辺とする、角度θの直角三角形を作ることができる。
この直角三角形の余弦は

cosθ=ct/L

Lcosθ=ct

L=ct/cosθ

となり、2地点の距離をパラボラアンテナの角度と電波到達時間の差から求めることができる。
これにより、地震などの地殻変動によってプレートがどれだけ移動したか、ミリ単位で算出することができる。

地磁気
地球は大きな磁石になっていて、これによって発生する磁気を地磁気という。渡り鳥なんかはこれを感じ取って目的地まで飛んでいるらしい(あと星座)。
地磁気は、ベクトルによって表すことができ、水平分力と垂直分力を合わせた合力の全磁力(平行四辺形の対角線にあたるベクトル)、対角線の水平分力からの角度を表す伏角、そして磁気の方位を示す偏角が、地磁気の三要素である。

双極子磁場
ダイポールとも言う。N極とS極の二つがある棒磁石で形成される磁場のこと。
ちなみに磁石には必ずN極とS極がセットで存在するが、どちらかの極しかない磁石をモノポールといい、その存在をスーパーカミオカンデで探している。

磁気圏
太陽から地球に飛来する荷電粒子の流れ(太陽風)をはねのけてくれる領域を、地球の磁気圏という。
磁気圏は太陽側では地球半径の10倍くらいだが、その反対側ではその数百倍に広がり、彗星のような形をしている。これは太陽側は太陽風は向かい風、反対側は追い風になって、磁気圏の形が変わるからである。

バンアレン帯
磁気圏の内側では、陽子や電子(いわゆる放射線)が地球の磁力線に捕まって二重のドーナッツ状に地球を取り巻いている。このドーナッツを(発見した物理学者の名前をとって)バンアレン帯という。
なんでドーナツ状になるのかというと、自転や公転軌道の関係で、極地域から太陽風が来ることはないからである(ただ極地域に荷電粒子が磁力線に引っ張られて飛来することはある。詳しくはオーロラの項で)。
バンアレン帯の放射線は自然放射線の一億倍以上にも登り、電子は地球の周りを東回りに、陽子は地球の周りを西回りで回転している。ただアポロ計画の宇宙飛行士は毎回ここを通過していたので、即死レベルの放射線ではないらしい。
ちなみに内側のドーナッツ(地球から4000キロメートル)は内帯と呼ばれ、高速の陽子と電子が、外側のドーナッツ(地球から)は外帯と呼ばれ、高速の電子が多い。

オーロラ
太陽風の強さは太陽活動によって変化し、たまにすごい強くなって地球の磁気圏を押しつぶし、地磁気を変化させてしまう。これを磁気嵐という。
このとき荷電粒子の流れが地球の磁力線に沿って北極や南極といった高緯度地域の大気に侵入することがあり、そこで大気粒子と荷電粒子がぶつかると発光してオーロラができる。
カナダのイエローナイフなどが有名(桃鉄知識)。
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