数学反省会

 今年度は通常学級で数学を教える機会を頂いたのですが(まったく想定してなかった)、すっごい難しい。一斉授業だと、どのグループのレベルに授業の難易度や進度を合わせていいのか、その見極めがきゃなりシビア。
 美術だと、一つの答えにみんなを誘導する必要はないからいいんだけど、数学はやっぱり正解があるから、君たちひとりひとりに答えがあるんだよ的な逃げができない。
 また、数学って先天的なセンスが最も物を言う教科らしく、ごく少数の子が突出して解けちゃうから(数に愛された子ども)、みんなの授業のペースに退屈しちゃって、じゃあこれもやっててって課題をやらせると、どんどんレベルアップしていって差をつけてしまうという。そんな状況、ファイナルファンタジーとかであったよな。
 まあ、習熟度別っていう考え方もあるんだろうけれど。

 で、もう、自分の実力不足を痛感する日々です。実際、数学は現役時代自分も大嫌いで、だからこそ数学の苦手な子の気持ちがわかるかな、って思ってたんですが、あ、そっか、中学校の自分ってもっとわからなかったよね、と意識を改めることにしました。
 数学の本質は抽象化で、学問としてやるならば概念こそ重要なんだけど(そして個人的にそれが最も面白いところ)、ほとんどの中学生はやっぱりわからないし、んなもん興味ないよなっていう。
 よく、学校の勉強はつまらないって言う人がいて、それはそれで私も同感なんだけど、たとえば微分積分でも、そもそもの理屈とか、考えられた経緯とか、ぶっちゃけ何に使うものなのかとか、そういうことをすっ飛ばして、公式や解法だけを覚えさせるじゃん。ああいうのが数学をつまらなくしているんだよって、ずっと思っていたんだ。
 でも、じゃあ仮にその部分を授業で話しても、実はついてける人って限られていたっていう。そういう切なさがある。学生時代の私の不満やニーズも、結局はマイノリティで、需要がなく、だから学校の授業はああなっていたんだっていう。

 つまり、なにを反省しているのかというと、脳をもっと若返らせなきゃってこと。ここでいう、脳を若返らせるっていうのは、頭をよくするっていう意味じゃなくて、むしろ逆。今より、ずっとずっとバカで木の棒を持ってハナを垂らしていた、あの頃の脳みそをイメージしろってこと。
 自分ももう30年以上生きちゃったから、いろいろな余計なレガシーがあって(理科はともかく、社会の教員免許を取るとは思ってなかった)、確かに、大学とかでも、小学校の勉強を教えるからといって、小学校の勉強だけやればいいのかというと違うって言われて、確かになって思ってたけど、いや小学校レベルでいいよっていう。
 余計な知識はむしろ授業の邪魔になるよっていう。人間いろいろ知識を知っているとそれを話したくなっちゃうものだから。
 だから、私はもっとバカになる。バカになって、そのバカな自分に自分の授業を脳内で受けさせて、難しいとか、分かりにくいとか、速い、ついてけないとか、自分で自分にダメ出ししようと。

 いつも不思議に思うんだけど、いい意味で肩の力を抜いたほうが授業ってうまくいくんだよな。投げやりの奇跡というか。
 例えば準備万端やった研究授業とかって大抵そんなにうまくいかないんだよ。教材研究だなんだで調べたことが、余計な知識になっちゃって、子どもを無視した自己満足になってしまうという。知識量なら負け無しの学者の授業が下手なのもそれだったのかっていう。
 だから、手抜きって言うと言葉悪いけど、でも本当に授業がうまいベテランの先生なんかは、例えば教室に持っていくものもペンだけとか、え!?そんな装備でだいじょぶか!!??みたいな、そういうかっこよさがある。
 能ある鷹は爪を隠しているのか、爪なんてそもそもないのかわからないけど、鷹を恐れる動物なんかは、鷹であるだけで十分なわけだ。
 結局、私も数学なんか苦手でどっちかというと嫌いなんだから、無理して数学の先生になろうとしなくてもいいわけだ。北野武さんが言うように嫌いな仕事をやるほうが、むしろその仕事を客観的に見れてうまくいくこともあるし。
 数学に愛着がないくらいの方が、無理して解析学とか勉強しない方が、情報量がそぎ落とされたいい授業になるんじゃないか。準備不足もダメだけど、準備過多もダメ。

 シンプルにするしかない。残念ながら、自分が子どもの頃受けたかった数学の授業はやっちゃダメっていう。
 子どもの力を過信しない。一回の授業では1個か2個しか教えない。一度にそんなに何個もほとんどの子は入らない。
 中学の数学を教えてると思わず、幼稚園生や小学生に教えると思ったほうがいいのかもしれない。もしくは昨年度の支援学級みたいな。
 そんで、高校生を教えるには中学レベル。大学生を教えるには・・・やっぱり中学レベル。こればかりは相手の知能を見下して、やるしかない。自分と対等のレベルだって思っちゃダメ。もしそうなら、その子には授業なんて必要ないよな。
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