ズートピア

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆」

 ちゃんと消すよ。48時間後に。

 観る予定はなかったんですけど、SGA屋さんに「私が好きそうな話」って言われたので、急遽観に行ってみた。というか、あらすじの段階でも確かに自分が考えそうな話だなとは思ってたんだよな(黒幕即行分かった)。私はイソップ童話の形式がかなり好きだし。
 ということで、この『ズートピア』、内容はなかなかの社会派で、脚本の完成度も非常に高かったんですけど、このテーマって現在のハリウッド映画ではかなり繰り返されていて、贅沢を言わせてもらえば、ちょっと食傷気味(自分も作品で取り扱ったし)。
 とはいえ、ディズニーの子ども向けアニメ(だよね?ドン・コルレオーネとかパロってたけど)の形式でも、こういった池上的なテーマをやりだしたっていうのが、やっぱりそういう国際情勢なんだなあって。イソップ童話2.0というか。
 例えば『バグズ・ライフ』のころは強者は少数派ということに言及はしながらも、やっぱり強者は敵であることには変わりはないって感じで物語を着地させてたんですけど、それはやっぱりある種のファンタジーであって、最善策ではないという事実にディズニーアニメも向き合わざるを得ないという、そういう時代になっちゃったって事なんだよね。
 もはや共存するしかないという。『シッコ』のマイケル・ムーア監督じゃないけど、同じ船に乗る乗客であって運命共同体なんだっていう。

 そう言う意味で、これまでのイーブルやヴィランを、被食者からみた捕食者というポジションに置き換えて相対化しているのはうまいなあって。そうすることで、マイケル・サンデル的な、加害者の子孫は先祖がやった罪をどこまで謝罪すればいいのか的な問題も掘り下げられるしね。アメリカ白人のインディアン迫害や、日韓問題みたいな。
 さらに、か弱いウサギ、ずる賢いキツネとか、そういったイソップ的な動物のイメージを、私たちの人種や文化に対する偏見のメタファーにしているのも、わりと思いつくアイディアではあるんだろうけど、それをやるとどうしても物語が重くなりがちだから、仮に思いついても子ども向け作品として仕上げるのには、なかなか勇気が必要で、それで今まで実現しなかったんだろうなっていうのはある。
 そこをなんとか上手にクリアしたっていうのが、この映画の一番上手なところだよね。下手すると人間のすっごい嫌~なところを描いちゃう、極めて後味の悪いアニメになっちゃうもん。自分じゃ無理だな。このバランスはかなり調整するのが難しかったんじゃなかろうか。
 グローバル社会にこれから繰り出す子どもに向けてもちゃんと教訓があるし、やっぱり海外はえらいなって。ちゃんと教育しようとしてるよなってw

 すべてのキツネがそうとは限らない。意地悪なウサギもたくさんいる。

 ほいで、SGA屋さんはもうひとつ「この映画は今のピクサーよりもピクサーっぽい」ともおっしゃってたんだけど、この意見には半分同意するけど、半分違和感がある。
 この映画が“かつてのピクサーっぽい”(=脚本の完成度が高い)ってのはわかるんだけど、ピクサーって私の中では常に新しいチャレンジをするスタジオってイメージがあるから、そう言う意味ではやっぱり『ズートピア』よりも『アーロと少年』の方が、ずっとヘンテコでなんか引っかかるんだよね。こんなの見たことねえよっていう。
 つまり、かつての繰り返しを、ピクサーはやりたがらないわけで、そう言う意味で『シュガーラッシュ』も『ベイマックス』も、この『ズートピア』も完成度は高いんだけど、やっぱピクサーではないよなって思っちゃう。もう、そういうの一度見たよっていう。
 うまいなとは思うんだけど、超好きかっていうと「う~ん」っていう(^_^;)クリエイティブ業、難しいね。
 若い頃は、いやいや、『カリオストロの城』みたいな完成度が高いやつを繰り返せばいいじゃん、なに無茶なチャレンジして良くわからない作品作ってんだよジブリみたいに思ってたんだけど、歳をとるって恐ろしいね。
 今じゃ、宮崎駿さんの歩んだ道のりが、すっごい腑に落ちるというか。やっぱり同じものを二度はやりたくないよなっていう。もっと新しいことに挑戦したいよなっていう。
 そう言う意味でもピクサーはジブリをお手本にしているっていうのがわかるよ。結局アメリカのジブリなんだな。で、ラセターさんが引退したらやっぱり崩壊しちゃうのだろうか(^_^;)
 とりあえす今度の『ファインディング・ドリー』が『カーズ2』のような新しい驚きをさせてくれる映画であることを祈る!

 追記:完成度以外にもなんか自分がこの映画好きになれない理由あると思うんだよな。深読みするとやっぱりあのラスト自体に欺瞞を感じちゃうからかなあ。
 とにかく、この映画ってポリティカルコレクトネスに溢れてるじゃん。「ウサギがウサギをかわいいっていうのはいいけれど、ヒョウがウサギを可愛いっていうのは失礼なのよ」とか。
 そう言う意味で、正しい映画なのかもしれないけれど、すごい窮屈な映画なんだよね。デモリションマン的なw動物園のユートピアとはこの映画の本質を表す素晴らしいタイトルよ。まさにジェイルよ。
 だいたいキリがないからね。そういう配慮で神経使うことに、ほとほと疲れちゃった人たちの鬱積がトランプさんフィーバーにつながっているのかもしれないし。というか、とうとう共和党候補なってたよな、あの人。すごいな。
 で、グローバル化っていうのは結局のところ世界がアメリカ化(地球全体が移民国家化)するってことだからね。歌って踊ればみんなハッピーで終わってたけど、いやいやリアルではもっとシビアなバランスを取らないと危ないぜっていう。
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