キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 こういう意見もある。ただの“自警団”だと。

 よくウルトラマンなどの特撮を見てて、街めっちゃ破壊されてるけど住民の人は大丈夫なのだろうか?と思ったことがある人は多いはずだ。
 でも、そこに言及しちゃうと、ぼくらのヒーローウルトラマンが、よその星からやってきた恐怖の加害者になっちゃうから、それは言わないお約束ってなっていた。
 ここらへんが気になり出すと、いよいよこういう子ども向けのコンテンツは卒業なんだなってって感じていたんだけど、その問題についに言及する作品が出てきた。それがこれ。

 私は、この『シビル・ウォー』って作品、原作漫画をあらかじめパキPさんに貸してもらってて、けっこう陰惨でちょっと後味が悪い社会派作品だなあ、と。だから、これを実写化してもエンターテイメントという形では評価されないんじゃないかって思ってた。
 いや、ピストルに代表されるような武力をどこまで法で規制すべきかという、すごい考えさせられるテーマで、そのような政治的なイシューの是非でアベンジャーズが二つに分断されてしまうっていう展開は、この国でも原発問題や基地問題に伴う利害関係で住民(と無関係なネット市民)が二つに分かれてしまい、両者のあいだで不毛で切ない罵り合いが起きている以上、無関係ではないから、やるべき作品だなとは思ってたんだけど。

 我々は、あの名作『ウォッチメン』の実写映画が一般受けしなかった現実を受け入れなければならないわけじゃん。
 
 そしたら、さすが最近は妙に手堅いディズニー。めっちゃ脚色してきたっていう。もはや別作品。
 スーパーヒーローを国連の監督下に置くというソコヴィア協定(原作では超人登録法でマイナンバー制度みたいなやつ)が物語のコアかと思ったら、それは前半サラっと流されるだけで、市民の安全や公共の福祉はどこへやら(このプロット上の路線変更で多少ストーリー進行がダラつく)、結局はいつものようにかなり個人的な動機で暴れまわるみなさん。
 しかも、内戦ってことでスパイダーマンやアントマンなども参戦、なんでもありの楽しいコスプレパーティーに。

 協定は選択の権利すら奪う。
 
 とか、朝まで生テレビ!的なこと言いながら、なんだよ~結局てめえらは、身近な人しか見えてねえじゃねえかっていう。
 いや、人間ってたった一人の大切な人を守るのにも必死なのはわかるけど、キミらは超人であって人の何倍もの力があるんだから、精神年齢もそれに伴って高潔であってくれよっていう。
 ぶっちゃければ、ソコヴィア協定じゃなくてウィンターソルジャーをめぐって戦ってるもんな。だから、協定がまだ施行もしていないうちに、キャップはなんかこの法律、性に合わないと駄々をこねているように見えてしまうというw
 じゃあ、協定賛成派のアイアンマンはどうかっていうと、やっぱり個人的なうしろめたさでネガティブにただよっているだけだから、いつものように言動はブレブレ。
 というか、キャップは基本的に生真面目なキャラクターだから、この人をブレブレにしないと物語は動かないっていうのはあるんだけどね。
 でもまあ、こういう風に思い切った脚色をすることで、今回も愉快なヒーローたちにガッツリ感情移入はできるようになったと。相変わらずキャラを立たせるのうまいなあと。商業的にはこのやり方が正解だったよな。
 テロの恐怖や復讐の連鎖、そして、その象徴であるアメリカ愛国者法より、キャプテン、スターク、ウィンターソルジャーのドキドキ三角関係のほうが食いつくもんな。観客はスーパーヒーローじゃないからね。国際問題よりも来クールのアニメだもんね。

 でも、待ってくれ。私たちはやっぱり、ウルトラマンに壊された街のがれきに一般市民が埋まってるんじゃないか、ということに気づいてしまった、大きなお友達ではないか。これで満足しちゃっていいのか??
 私がこの映画で最も好きで、高く評価したいのは、ヒーロー同士のお涙頂戴の友情ではなく、このあとのクライマックスなのである。
 アメコミの武力格差社会(1%の超人が残り99%の一般人よりも高い武力を独占する世界)において、身勝手な超人たちの乱闘の犠牲になった一般市民が――アフリカゾウに復讐しようにも絶対に適わない小さなアリが――健気に知恵を振り絞って、このバカどもに一太刀浴びせるのである。おごるな、と。
 
 私はアベンジャーズを殺せない。だが殺し合わせることができれば・・・
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