第3回目は、英単語のフレキシブルさについてです。英語アレルギーの私にとっては、グローバルスタンダードだかなんだか知らねーが、英語よキサマはいつから地球語になったって感じなんだけど、ひとつ感じたのは、みんなで好き勝手にカスタムできるような言語っていうのはヒットするんだろうな。
参考文献:長谷川瑞穂著『はじめての英語学』
形態素
ことばにおける「意味を持った最小の形式」を形態素という。形態素は大きく二つに分けられ、poiceやcarのようにそれだけで単語になるものを自由形態素、edのようにそれだけでは単語になれず他の形態素に付随するものを拘束形態素という。
さらに、拘束形態素は~edのように形態素の語形を変化させ(過去形や複数形など)文法的機能を担う屈折形態素と、un~や~nessのように形態素にくっつくことで、その意味を付け足し変化させ(反~、非~、前~、~主義者など)別語を作る派生形態素に分けられる。
屈折形態素の例
economy→economies
派生形態素の例
economy→economist
teachers
teach 自由形態素
-er 派生形態素
-s 屈折形態素
misunderstanding(誤解)
mis 派生形態素
under 自由形態素
stand 自由形態素
-ing 屈折形態素
unbelievable
un 派生形態素
believ(e)自由形態素
-able 派生形態素
複合語
自由形態素(単語)どうしの組み合わせで作られた語。大部分は複合名詞と複合形容詞で、複合動詞は少ない。
複合語の内部構造に着目すると、複合語には文法的にも意味的にも中心となる部分(主要部)があり、たとえばブラックボード(黒板)はボードの一種であり、ブラックという色の一種ではない。主要部はほとんどの場合、複合語の右側にあり、そのため右側主要部の規則と言われる。
world-famous
意味:「世界的に有名な」
複合語自体の品詞:形容詞
構成要素の品詞:world名詞 famous形容詞
主要部:famous
bittersweet
意味:「ほろ苦い」
複合語自体の品詞:形容詞、もしくは名詞
構成要素の品詞:bitter形容詞 sweet名詞
主要部:sweet
upgrade
意味:「格上げする」
複合語自体の品詞: 動詞
構成要素の品詞:up前置詞 grade動詞
主要部:grade
その他の語形成
いろいろあります。
派生
例:disappear(見えなくなる)appear(見えてくる)に派生形態素disをくっつけている。
転換
例:fish(「魚」という意味から転じて「釣りをする」という意味も)
略語
例:NASA= National Aeronautics and Space Administration
短縮(省略)
例1:co-op=cooperative(協同組合)
例2:A.M=ante meridiem P.M=post meridiem
例3:B.C.=Before Christ A.D.=Anno Domini(ラテン語で主の年)
借用
例:ombudsman(スウェーデン語の代理人から)
混成
例:bit=binary(二進法の)+digit(ケタ)
逆成
例:window shop(「窓屋さん」ではなく「買わずに陳列品をのぞいて歩く」という意味のウィンドウショッピングから)
意味拡張
以下の3種類がある。
シミリー(simile)
直喩のこと。~のような。
メタファー(metaphor)
隠喩のこと。『ジュラシック・パーク』のマルカム博士の「サトラー博士、まさか“引力の法則”は知っているよね?」のセリフなどがそれ。
メトニミーに比べて抽象的で、場合によっては理解するのに教養がいる。
例:We’ll save a lot of time if we go by car.
時間もお金のように節約(save)できるというメタファー。
時間もお金と同じく価値ある資源だという認識が背後にある。
メトニミー(metonymy)
換喩のこと。メタファーに似るが、こちらのほうが直接的で部分で全体を表す。
「おいそこのメガネ(かけたヤツ)」の「メガネ」がそれである。
例:The hotel was full of suits.
直訳すると「ホテルはスーツでいっぱいだった」になっちゃうが、ここでの「suits」は「重役」と訳す。ほかにも「クラウン」で「王様」、「ハリウッド」で「アメリカ映画界」などなど。
①時間的な長さに基づくメトニミー
二つ以上の行為が同時に起きるときにみられる意味拡張。
例:He turned his back on his own family when they needed help.
「turn one's back」は、本来「背を向ける」という身体的な動作を表す言葉だが、「自分の家族が助けを必要としている」というシチュエーションから、「背を向ける」=「援助を拒んだ」と意味を拡張する。
②メーカーが製品を表すメトニミー
「two Cadillacs」や「a Sony」などで、キャデラック社製の自動車やソニー製品を表す。
会社名は固有名詞なので、普通に会社名が言いたい場合は、複数形のsや冠詞はつかないのに注目。
③推論に基づくメトニミー
「alone(自分ひとりだけ)」なら「寂しい」はずという推論に基づく意味拡張。
同義語(synonym)
シノニム。意味が同じ言葉。
たとえばbig、huge、enormousはどれも「(決定などが)重大な」という意味。
しかし、同義性は言葉の意味が完全に同一であることを必ずしも意味しない(完全な同義性はあり得ないと考える学者もいる)。
たとえばビッグとリトルは主観的(口語的)、ラージ、スモールは客観的(フォーマル)な大きさを表すなどである(ビッグマウスをラージマウスに置き換えると意味が変わってしまう)。
例A:The employees received a little Christmas bonus.
訳:従業員たちはささやかなクリスマスボーナスをもらった。
例B:The employees received a small Christmas bonus.
例:従業員たちはわずかなクリスマスボーナスをもらった
この例では、リトルがスモールと違い、気前がいいというニュアンスがあることが分かる。
反義語(antonym)
意味が反対の関係にある言葉。以下の4種類ある。
①連続的な尺度上の対称
hot-cold、good-bad、long-shortなど
反義語の中間にあたる領域があるため(例えば、熱くも冷たくもない温度など)、前提となる尺度全てをカバーできない。
②相補的な尺度
alive-dead、married(既婚)-unmarried(未婚)、odd(奇数)-even(偶数)
Aじゃなければ必ずBという背理法が成り立つ二者択一タイプ。
③逆方向の移動や変化
ascend(上る)-descend(下る) lengthen(延長)-shorten(短縮)
④反対側からの関係付け
above(~~より高い)-below(~~より低い) ancestor(先祖)-descendant(子孫)
同じ現象でもAから見ればBだが、Bから見ればA的なタイプ。
構造意味論
ある言葉の意味は、他の言葉との関係性に基づいて決定されるという考え方を、構造意味論という。言語学者ソシュールに始まる構造主義による考え方であり、言語の要素はそれぞれが孤立して存在するのではなく、同じ言語内の他の要素とネットワークのように互いに関連し合い、このとき他の要素との差異が認められる場合に限り存在が認められるとする。したがって、同じものを指している言葉でも、意味的に対立する言葉に何を持ってくるかによって、その言葉の意味は変わることになる。
boy(男性)⇔girl(少女=女性)性別で対立
boy(子ども)⇔man(大人の男性)年齢で対立
boy(人間)⇔kitten(子猫)種族で対立
日本語の「水」には、温度の違いによって「湯」という別の言葉が対立するが、英語には湯を表す言葉がなく、水を表す「water」が「湯」を表す際にも用いられる。
日本人は「水」と言うと一般的に「冷たい水」をイメージするが、イギリス人は、冷水からぬるま湯、お湯まで「water」がカバーするので、「water」だけでは水の温度が限定できないということになる。
しかし、「氷」に当たる「ice」は英語存在するため、日本語の「水」は水の温度と状態(相)の違いに対応する言葉だが、英語の「water」は水の状態の違いのみに対応していると考えられる。実際、「水蒸気」を表す言葉は「sterm」として別語があてがわれている。
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