こんばんは。第二弾は江戸時代の俳人、松尾芭蕉の『奥の細道』です。この人は東京から出発して北関東へ行って、東北、北陸、最終的に名古屋まで旅して回ったんだけど、その歩く速さがかなり速いので、ジャパニーズ・ニンジャだったんじゃないかという説もある。
前回の『平家物語』と異なり、俳句コーナーはあるものの、とどのつまり旅行記なので、写実的(淡々と視覚的情報を記述する)で読みやすい。ということで、今回は超訳ヴァージョンは必要なしということで、よしなにお願い申し上げそうろう。
『奥の細道』
序
月日は永遠に(終わることのない旅をする)旅人(のようなもの)であって(by李白)、行く年来る年もまた旅人である。
船頭として船上で生涯を過ごす人や、馬子として馬のくつわを引いて老いるのを迎える人は、日常そのものが旅であって、言ってみれば旅を住処としているのだ。
私がリスペクトする李白、杜甫、西行といった昔の人も、多くが旅をしながら亡くなっている。
というわけで、私もいつの頃からか、ちぎれ雲が風に誘われて行くように、さまよい歩きたいという思いがやまず、海岸をさすらい歩き、去年の秋に、隅田川のほとりの古びた家に、旅から戻り、留守中にできた蜘蛛の巣をはらいのけて住んでいるうちに、また次第に年も暮れて、春の霞の空を見ると、いざ白河の関を越えん、と、人の心をそそのかす“そぞろ神”が憑いて心を狂わせ、さらに道祖神(旅を守ってくれる神様)も私を旅に招いているような気がして、取るものも手につかず、ももひきの破れを繕って、笠の緒を付け替えて、三里(膝のつぼ)に灸を据えるとすぐに、松島の月が最初に気にかかったので、住んでいた家(芭蕉庵=草庵)は人に譲って、杉風元雅さん(松尾芭蕉のパトロン)の別荘にうつった。
草の戸も 住みかはる代ぞ 雛の家
(訳:わたし一人が住んでいた草庵も住人が替わります。次に住む家族には娘がいるそうで、雛人形などが飾られるのでしょう)
以上の表八句(百韻連句の冒頭の八句)を草庵の柱に掛けておくので、よかったら見てね。
旅立ち
三月下旬の二十七日、夜明けの空はぼんやりとかすみ、月は有明けの月で光はなくなっているので、富士の峰はかすかにしか見えず、上野や谷中の桜の梢を再びいつ見られるのかと思うと、ちょっとさみしい。
親しい人たちはみんな、前の晩から集まってくれて(今朝は一緒に)舟に乗って見送ってくれる。
千住というところで舟をおりると、三千里(1万2000km)もあろうかという旅にこれから出発するのかという思いで感極まり、幻のようにはかないこの世の分かれ道に離別の涙を流す。
行く春や 鳥啼き魚の 目は泪
(訳:春という季節の別れを思い、鳥は鳴き、魚の目には涙が浮かんでいるかのように私には思えてならないのだ)
これを、旅で使う携帯用筆記用具の書き始めとしたが、やはり足が進まない。私たちを見送りに来てくれた人たちは、途中まで一緒に並んで、(私たちの)後姿が見えるまで、ずっと見送ってくれているに違いない。
白河の関
心もとない日々が続いたが、白河の関(福島と栃木の県境にある8世紀の砦)にさしかかると、ようやく旅の実感が湧いてきた。
平兼盛は「いかで都へ(この感動を都へ伝えたい!)」と、便りを求めたのも、もっともである。
中でも、この白河の関は東国三関の一つで、風流を愛する人々の心をとらえてきた。
(能因法師の「都をば霞とともにたちしかど秋風ぞ吹く白川の関」という歌を思うと)今の季節は初夏だが、秋風が耳奥で響くように感じる。
また(源頼政の「都にはまだ青葉にて見しかども紅葉散りしく白河の関」を思うと)今は青葉の梢に(美しい紅葉が想像されて)、いっそう趣深く感じられる。
白い卯の花に、茨の白い花が咲きそえられて、雪にも勝る心地である。
昔の人は冠と衣装を着替えてこの関を越えたと、藤原清輔は書き残している。
卯の花を かざしに関の 晴着かな by曾良
(訳:私たちは卯の花を冠代わりにして、白河の関を越える晴れ着としよう)
平泉
(奥州藤原氏)三代の栄華も一眠りの夢のようにして(消え失せ)、(藤原氏の政庁の)大門の跡は一里(約4km)ほどこちら側にある。(3代目)秀衡(の居館)の跡は、田や原っぱになっていて、金鶏山(秀衡が平泉鎮護のために築いた小山)だけが(昔の)形を残しているのみだ。
まずは高館(源義経の居館跡)に登ると、(眼下の)北上川は南部から流れてくる大河である(ことが分かる)。
(北上川の支流の)衣川は、和泉の城を取り囲むように流れ、高館の下で大河(北上川)に合流する。
泰衡(秀衡の息子)らの旧跡は、衣が関を隔てて、南部地方(盛岡市一帯)からの入り口を厳重に警備し、夷(の侵入)を防いだのだろう。
そうであっても、(義経は)忠臣を選りすぐってこの城に立てこもり、一時的に功名を立てたが(敗北し、そこも)今や草むらとなっている。
国破れて山河あり、城春にして草青みたり
(訳:国が滅びても山河は昔のままで、城跡も春になると草が青々と茂っている※杜甫の漢詩の引用)
と笠を敷いて(腰を下し)、時が移るまで涙を流したのであった。
夏草や 兵どもが 夢の跡 by松尾
(訳:生い茂った夏の草むらを見ていると、かつてこの地で夢のために命を張って戦った武士たちが、ただただ儚く切ない)
卯の花に 兼房見ゆる 白毛かな by曽良(旅に同行した松尾芭蕉の弟子)
(訳:白い卯の花に、義経の老臣兼房の白髪を連想してしまう)
かねてから、話を聞いて驚いていた二堂(中尊寺金色堂=光堂と経堂)が開かれていたので行ってみた。
経堂には三将(藤原清衡、基衡、秀衡)の像を残していて、光堂には(その)三代の棺を納め、三尊(阿弥陀三尊。阿弥陀如来、観世音菩薩、勢至菩薩の3体)の仏像を安置している。
七宝はなくなり、珠で飾られた扉は風雨で破れ、金の柱は霜・雪によって朽ちて、もう少しで荒れ果ててただの草むらになるところを、(光堂の)四方を新しく囲んで、(屋根)瓦を覆って雨風をしのぐ(ように保護している)。
(こうして)しばらくは千年の昔のかたみとなっているのである。
五月雨の 降り残してや 光堂
(訳:あたり一面が雨で朽ち果てている中で、この光堂だけは輝いている。まるで五月雨が光堂を避けて降ったかのように)
立石寺
山形領内に、立石寺という山寺がある。
慈覚大師が開いた寺で、ことさら清らかで静かな土地である。
一見したほうが良いと、人々が勧めるので、尾花沢より引き返した。その道のりは七里(28km)ほどである。
日はまだ暮れていない。
山のふもとの宿坊(参詣者の宿泊施設)にチェックインしてから、山上にある堂に登る。
岩に巌が重なって山となり、松や檜の常緑高木は年をとり、土や石も古くなめらかな苔が覆っていて、岩の上に建てられた僧侶たちの住居の扉は閉じられていて、物音は聞こえない。
切り立った崖をめぐり、岩をはうようにして進み、仏閣を拝み、すばらしい景色はひっそりと静まりかえっていて、心が澄んでいくことのみ感じられる。
閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声
(訳:静寂の中、ただ聞こえるセミの鳴き声は、まるで岩に染み入るようである)
あ、そうだ。話変わるけど、『怪盗グルーのミニオン大脱走』鑑賞。どんどん『アイス・エイジ』シリーズっぽくなってきたなw今後もコンスタントに作られそう。これだけキャラが増えて盛り沢山だとたいてい破綻するんだけど、紙一重でストーリーをまとめているのがすごい力技。
ミニオンたちの活躍は原点回帰ということで少なめ。ちゃんとグルーの話になってます。日本版はもう、劇場版ドラえもん的に「ミニオン」ってつけるって決めたっぽいけど、あくまでも奴らは名も無き脇役に過ぎぬ・・・あるけど。
今回のメインテーマは、過去の栄光にしがみつく松山ケンイチと、(昔のように悪党に戻れよとそそのかす双子の兄弟に出会っても)過去を振り返らない鶴瓶師匠の対比ってことなんだろうな。つーかグルー、大人になりすぎだろ。なんていう安心感w
だから悪党の下で働きたいミニオンたちに関してああいうふうに落としどころ付けるのうまいし、同じようなアルゴリズム(悪党がやりたい)で動くネファリオ博士を、ああしちゃうのも思い切ったなあ。セリフなしかよ!
ほいで、今までの博士がやっていた救援ポジションに奥さんが来たと。さりげなくグルーの左手の薬指にリングがついているのがとてもいい。あと自分が好きなキャラグルーのママもセリフ付きで再登場。嬉しい。
芦田愛菜ちゃんは声変わり。次女より大人っぽい声を出す三女になっちまったぜ。「バイバイ、ろくおんせい」が懐かしいものよ。同じ子役キャラのエヴィル・ブラットについて思うところはあったのだろうか。
声でいうなら、グルーの声は本家だとスティーブ・カレルって人がやってるんだけど、この人の声質は笑福亭鶴瓶さんよか浜田雅功さんに似ている。同じ関西弁キャラだし。でもCGアニメ映画のビッグタイトルである『シュレック』やっちゃってるからなあ。ハマタは。
相変わらず中島美嘉さんは本家と声が一緒でうまい。一作目ではグルーがぎこちなくパパになる過程を描いたけど、三作目はママできたかという。
そういやルーシーは家族とは死別でもしてるのかな。結婚式でもサイラス・ラムズボトムさんしか来なかったし。だとしたら、本作の悪戦苦闘は泣けるところがあるよな。
たまにはいけませんって言ってもいいんだよ。
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