講習メモ(素朴概念編)

 教育再生会議が贈る伝説の企画…それが教員免許更新講習!!ということでまた行ってきました。これって5コマ30時間も取らないと修了にならないんだけど、スケジュールがバッティングして1コマ取り逃したという・・・返せ、俺の6000円・・・!w

 今回は物理学の講習を選んだんだけど、物理の授業っていうのは力とか現象など目に見えないものを教えるので、学生は自分の主観や個人的経験、テレビCM、漫画などに基づく、誤った認識やストーリー(これを素朴概念という)を構築しがちで、しかもそれに固執する。
 にわかには信じられないが、大学の物理の先生、つまりその道のプロフェッショナルに対して、先生間違ってますよと平気でうそぶく大学生も少なくないという。
 権威を鵜呑みにしないといえば、かっこいいのだが、じゃあ白黒ハッキリつけようと物理を突き詰めて勉強することは当然しないので、結局放置、生半可な知識をツイッターなどに垂れ流すことになり、素人にとっては有害以外の何物でもない。
 本当、やめてくれって感じで、ほいで、自分くらいのレベルが見てもやっぱり間違っているところもあるんだけど、それを指摘しても彼らの自尊心に関わっているから、素直に受け入れないんだよな。で、なんかしばらくしたら時間が解決したのか、平気で意見すり替えてたりするからね。
 そういうのにうんざりしちゃったっていうのはあるよな。文責がないんだよ。でもSNSって発言の履歴が残るから、本当は最もそういうやりとりに注意しなきゃいけない場ではある。
 これは当然自分自身にも言えるから、一時期はSNSで学者さんとかと繋がれて楽しかったんだけど、専門的な話題はもっぱらブログに戻ったな。で、こういう場所のまとまった文章なんて、よほどのもの好きしか読まないから、やっぱり気が楽だっていうのはある。昔はテレビのディレクターさんとか読んでくれたことあったけどね。
 
 さて、以下の、平成教育委員会みたいな問題は、どれも非科学的な思い込みの素朴概念がしゃしゃりでがちな問題なんだけど、注目すべきは正解率で、この正解率は小学生でも、文系大学生でもなく、なんと理工学部の学生の正解率である。
 さらに、あの、日本の理系の最高学府と知られる京都大学においてもパーセンテージはほとんど変わらないという。いやいや、彼らはセンター試験や二次試験で物理をチョイスし、高得点をたたき出しているはずで、嘘だろってにわかに信じられないのだが、もう本当に受験の問題で点数を取るのだけに特化して、根本というか本質は深く考えていないってことなのだろうか。
 でも、これはちょっと安心したよ。高学歴大学生がちょっと身近になったというか。バカはオレだけじゃねえんだ、みたいな。
 これは結局、ヒトという種族に生まれた以上は陥りがちな現象なわけで、勉強ができようができなかろうがみんな同じ人間なんだねっていう。みんなみんな生きているんだ、友だちなんだっていう。

 ということで、現役理系大学生にレッツチャレンジ!※問題は群馬大学理工学部高橋学教授のレジュメによるものです。

参考文献:エドワード・F・レディッシュ著『科学をどう教えるか』、R.D.ナイト著『物理を教える』

Q1:国際宇宙ステーションの中の人や荷物が浮遊している様子はテレビ中継でお馴染みですが、その飛行高度は海面から数100km程度であり(実は大気圏内)、地球の半径6370kmと比べると、地球のすぐ近くを飛んでいることになります。つまり、国際宇宙ステーションの重力と大きさは、地上のそれと大差がないはずです。それなのに、ステーション内の物体が浮遊している理由はなぜでしょう?

 理系大学生の正解率:5%

Q2:二人の力持ちが両側から引っ張ってやっと切れるロープがあります。そのロープの一端を大木にくくりつけ、もう一端を力持ちが引っ張るとすると、ロープを切るのに何人の力持ちが必要でしょうか?

 理系大学生の正解率:60%

Q3:空気を抜いて真空にした室内で、1kgの鉄球、1kgのプラスチック球、1kgの羽毛布団、1gのガラス玉、1gの羽毛を床から1メートルの高さから回転運動しないように注意して同時に落下させます。どの順番で床に到着するでしょうか?そう判断した理由も簡潔に記述してください。

 理系大学生の正解率:60%

Q4:ガラス玉とコルク玉を入れた上で、水を満たし栓をしたペットボトルがあります。このペットボトルを横に倒し、地面と水平方向(※左から右に)にどんどん加速させます。加速している間、コルク玉とガラス玉はペットボトルの中のどの位置に移動するでしょうか?

 理系大学生の正解率:20%

Q5:一つの質量が47gの同一規格のドーナツ型の磁石を2個用意し、N極どうしが向かい合うようになめらかな支柱がついた秤(支柱をつけた状態で0gになるようにセットされてます)に載せたところ、上の磁石が宙に浮いた状態で静止した。この時、秤は何gをさしますか。そう判断した理由も簡潔に記述してください。なお、秤は磁力の影響で狂うことはないとします。

 理系大学生の正解率:60%

Q6:カーリングのストーンにロープをつけて、スケートリンクの氷上の杭につなげて回転運動をさせた。ストーンはしばらく等速円運動をしていたが、途中で突然ロープが切れてしまった。ロープが切れたあとのストーンの運動はどのようになるでしょうか?ストーンの軌跡を書いてください。また、そう判断した理由も簡潔に記述してください。

 理系大学生の正解率:40%

Q7:水平方向に時速10kmの等速度で動いている動く歩道に、Aくんが砲丸を持って乗っている。Aくんは直立不動で手を伸ばし、そっと砲丸を落とした。砲丸はどのように落下しますか。そう判断した理由も簡潔に記述してください。空気抵抗の影響は極めて小さいとします。

 理系大学生の正解率:60%

Q8:同一規格のガスボンベABを用意し、Aにはヘリウムをいれ、Bの中は真空にしました。ふたつのガスボンベをプールに入れるとどちらも水中に沈みました。このガスボンベを水中でも正常に作動する秤(プールのそこに固定されている)の上に載せると、AとBのどちらのガスボンベが重く表示されるでしょうか?そう判断した理由も簡潔に記述してください。

 理系大学生の正解率:35%

Q9:真空に保たれている室内で砲丸を斜め上方向に発射しました。発射装置から放たれ右上向きに上昇中の砲丸と、その後右下向きに下降中の砲丸にはそれぞれどのような力が働きますか?

 理系大学生の正解率:50%

Q10:半径と質量とが等しい、ふたつの金属球があります。二つの金属球はどちらも重心は球の中心ですが、一方は中空(空洞内は真空とする)、もう一方は中心まで均一に金属が詰まっています。この二つの金属球を特別な道具を使わずに正確に区別するにはどうすればいいでしょうか?

 理系大学生の正解率:10%

 慣性モーメントとか知らないとちょっと思いつかないQ10はともかくとして、Q1の正解率が一番低いのがすごい意外。
 自分は6番が理屈では知ってるんだけど、なんとなく素朴概念的に引っかかってしまう。コリオリとかも苦手。
 例えば、ハンマー投げは前にハンマーを飛ばすには室伏は真横で手を離さないとダメじゃんっていうのはわかるんだけど、講習で高橋教授が言ってたように、食べかけのピザのような4分の1が欠けた円を描くと、どうしてもそのまま円周をなぞって物体は回転運動を続けるって考えちゃうんだよね。
 これがピザのひと切れのように、もしくはショートケーキ一個のように、中心角が小さい扇形になると、そうでもなくなるんだよな。つまり、あとちょっとだと書き足したくなるというw
 この心理現象をうまく利用するのが美術とかアートでさ、例えば石膏デッサンとかも迫力出すために、ちょっとだけ支持体(紙面)から石膏像の頭頂部とかをはみ出させるんだよね。
 でも、その欠けた、本来、物理的にはどうやっても見えない部分を、人間ってなんとなしに続きがあるものだと思い込んで、イメージで補完しちゃうんだよね。
 漫画の人物の顔の寄りのコマでも、ぎゃああコイツ首が切断されてる!って読者は思わないもんね。そういう認識の部分と、自然科学の理論が真っ向からぶつかるっていうのが興味深いし、おっかないところでもある。
 自分は何年か前に、実験で実際に見せれば人は納得するとかここで書いた記憶があるんだけど、自体はそう単純なものではなかったのである。そこまでやっても(実際にその目で見せても)、人間というのは自分が見たいものしか見ていない可能性があるから、気をつけろよって叱咤激励されました(^_^;)

※簡単な答え
Q1:実はスカイダイビングと一緒でISSは自由落下しているから。
Q2:1人で切れる。
Q3:質量に差があっても同時に落としているのですべて同時に着地する。
Q4:密度の関係で、ガラス玉が左に、コルク玉が右に動く。
Q5:磁石二つ分の重さの94g。作用反作用の法則。
Q6:ロープが切れた点から円の接線方向に等速直線運動をする。
Q7:慣性が働くのでAくんが放した真下に落下する。
Q8:ヘリウムが入っている方のガスボンベA。
Q9:砲丸自体に推進装置はないので重力のみ。
Q10:二つの金属球を坂で転がす。よく回る方が金属が詰まっている方。
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