先月、QUに関する研修を二度も受けたので、ちょっと覚え書き(しかも一回目は作者ご本人の講演だった)。そういや講演といえば今度うちの地元にノーベル物理学賞の梶田さんが来るんだよな、楽しみである。
QU(クエスチョナリー・ユーティリティー)
学級版顧客満足度調査のようなアンケートのこと。学校生活や友人関係について「ややあてはまる」「そうでもない」などの選択肢を選んでいく。早稲田大学の心理学者河村茂雄が作成。
当初は小学生のみで行われていたが、その後ハイパーQU(初代にソーシャルスキル項目が加わった)にパワーアップし、中学校や高校でも実施されている。
この調査結果で学級の現状や課題を教師が分析することができる。『なぜ日本の公教育費は少ないのか: 教育の公的役割を問いなおす』でも言及されていたが、日本の学校は生徒数ではなく学級数を基準に教員数を調整する特殊なシステムがあるため、学級を分析する意義は非常に大きい。
いじめアンケートと同様のものだと捉えられていることもあるが、確かにいじめの兆候はキャッチできる可能性はあるが、厳密には異なると思う。
また、生徒の不満やクレームを受けて、そのままクラスを改善するわけでもない。そのように答えた生徒の背景(自分やクラスに対する評価が甘かったり、逆に厳しすぎたり)を読み取ることが求められる。
つまりQUの結果は客観的な事実ではなく、生徒の主観的な思い込み(認知)であり、教師はQUの結果と日々の観察によるクラスの実態を比較検討し、その認知状況を改善するのである。
実施は年2回が望ましい。
実施期間は、年度始めはバタバタしている上に新クラスで互いに牽制し合っているので、GW開けが適切。二回目は二学期がいいが、行事が少なく生徒が落ち着いている月に行う。
QUの分析
QUはデカルト座標上に各生徒の解答(スコア換算される)が点として打たれる。
X軸が、クラスのルールがどれだけ徹底されているか(=治安)の尺度で、Y軸が生徒がどれだけ教師やクラスメイトに承認をされているかの尺度となっている(※ハイパーで追加されたソーシャルスキル尺度は別のひし形のグラフにポイントされる)。
そして、右上の第一象限から学級生活満足群、左上の侵害行為認知群(クラスの生活に満足はしているが、いじめや冷かしも認知している)、左下の学級生活不満足群(特にひどいものは最も左下の要支援群となり緊急対応が迫られる)、右下の非承認群(いじめやからかいは受けてはいないもののクラスで認められることが少ない)の4つのグループに分類される。
QUの結果で大切なのは、各点の凝集性であるという。クラス人数分ある各点がグラスの様々な場所にバラけていると、クラスというチームを生徒たちはほとんど意識していないことになる。
①まあまあOK
学級生活満足群が70%以上、またはその周辺に55%以上の生徒が集まっている場合。
この場合に、要支援群に20%ほど生徒がいても、たまたま特別な支援が必要な子がいすぎただけだと解釈される。
また、ADHDといった発達障害の子は担任の先生一人で対応しきれる仕事ではないので、必ずチームで対応する。
担任は発達障害の子だけを個別に対応していると学級経営がおざなりになりがちなので、基本的に全員指導をメインに行なう。
②P(パフォーマンス)型
まさかこの研修で三隅二不二のPM理論が出てくると思わなかったけど、P型は担任がクラスの目標に向かって生徒を引っ張っていくタイプ。
各点はY軸に沿って集まってくる。つまり、クラスのルールは守られてはいるが、承認されていると感じている子と、そう感じていない子の意識に差があり、ヒエラルキーができている。
③M(メンテナンス)型
組織配慮型の担任のクラス。各点はX軸に沿って集まってくる。生徒の誰もが承認されているが、クラスのルールが徹底されておらず、子どもは楽しいけど見ようによっては荒れている。つまり、馴れ合いになっている。
④崩れてきたクラス
第一象限から第三象限にかけて斜めに点の集まりが下っているタイプ。
P型やM型で、学級生活不満足群が増えてくるとこうなる。
⑤介入不足のクラス
担任の先生がクラスを放置しているタイプ。自由にやらせているということだが、今の子達は自己判断能力に乏しいので、各々が好き勝手な行動をとる。各点は拡散し、傾向が見いだせない。
どうやって学級経営をしていいかわからない新任の先生に多いタイプ。
ちなみに④と⑤は、アクティブラーニングとかそういう理想は捨てて、教師がイニシアティブをとってクラスを立て直すしかない。まずもって生徒が安心してクラスにいられるフレーム作りをしなければならないのである。
⑥学級崩壊
第三象限の学級生活不満足群ばかりのクラス。リセットボタンを押すしかない。
小学校の段階ですでに手がつけられないほど荒れている場合は、中学校でもそのままこのタイプを示してしまうことがある。
リレーション
親和的な人間関係を築くこと。
コンピテンシー
協働性。他者と共に生きる力。技能(スキル)よりも総合的なものだとされる。
もともとはアメリカの企業の人事評価で使われだした言葉。
オーバーアチーバー
知能以上の学力を引き出している子どものこと。
彼らはクラスメイトが承認され満足な学級にいることが多い。
逆がアンダーアチーバー。
小学校:ギャンググループ
今までは家族単位で行動していた小学生が、高学年くらいになると結成する悪ガキグループ。親よりも友達が大切になる。男子が作りがちでくだらないいたずらをする。ミニオンズがこれだと思う。
中学校:チャムグループ
不安定な思春期を過ごす中学生がつくる、同じ興味や同じ部活などの似た者同士の3~4人の少人数グループ。
一人が怖いために結成しているため、いちいち「私たちは同じね」ということを確認し合う。同じ芸能人が好きなど。
逆に、自分と異なる個人やグループに対しては排他的で、いじめに発展することもある。
女子が作りがちだが男子も作る。オタクのクラスタもこれだと思う。
高校生:ピアグループ
共通点だけではなく互いの違いも受け入れることができるグループ。
自己が確立しつつあり、そのため男女が入り混じったり、年齢層にも幅があったりする。
どの世代にも言えるが、自分のことをなんでもさらけ出せる友人が6人以上いる人はコミュニケーション能力が高い傾向がある。部活を続けている子などに多く、彼らは社会的発達が進んでいる。
逆にそういった人が0~1人は不安感や攻撃性が高い傾向がある。
参考文献:土井隆義著 『友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル』
very goodよりもgood enough(アドラー)
グーニーズではない。他者による評価よりも自分の満足感の方が人生は充実するといった意味。
人は誰かに気に入られるために生きているのではない(ゲシュタルト)
私は愛されるに足る人間であると自己愛が強い人は、反面、自分に対する人の評価を偏執的に気にする(失愛恐怖)。
行為分析
過去と他人は変えられないので、自分の関わり方(行為)を変える。
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