講演メモ(ノーベル物理学賞編)

 一般社団法人日本物理学会主催の講演会『宇宙と素粒子でひもとく世界』に行ってきたでよ~!本当は誰かと行きたかったんだけど、やれ仕事だ、やれ興味ねえわ、で結局単身宇都宮にドライブしてきました。
 前半が東京大学の宇宙線研究所所長でノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章先生、後半が同じく東京大学でカリフォルニア大学バークレー校でもオペレーションチームを引っ張っている村山斉先生の超豪華二本立て。
 梶田先生が長身でフォーマルなジェントルマンだとすれば、村田先生はマルカム博士のように型破りなカジュアル路線でコントラストが面白かった。講演の内容も対照的だったしね。
 ほいで、最大の不覚がさ、私メモと筆記用具忘れちゃったんだよ。よりによってこの日に愉快なサザエさんが出てしまったという。だからケータイ電話でバカバカタイプしていたっていうね。

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宇宙と素粒子の謎への挑戦:梶田隆章
主にノーベル賞受賞となったニュートリノ振動と、昨年物理学界を震撼させた重力波の話。

ニュートリノ関係
・ニュートリノは電子から電荷と質量を抜いたようなもの。電荷がないので(プラスの電荷を持つ)原子核もスルーするが、ごくまれに物質とぶつかる。

・ニュートリノは電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの三種類に分類される。

・ニュートリノ自体はゴーストのように見えないが、原子核にニュートリノがごくまれにぶつかった際に出てくる別の素粒子を見つけることで見えないニュートリノの存在を確認できる。この別の素粒子の種類からニュートリノは分類されている。

・そもそもカミオカンデは陽子の崩壊を研究する装置だったのだが、この時のノイズとして現れたのが大気ニュートリノだった。これは宇宙線の中のエネルギーが高いもの(陽子、ヘリウム原子核、鉄原子核など)が大気にぶつかると生まれる。

・しかし例えばミューニュートリノの量が理論値の半分弱も観測値は足りなかった。この謎の答えとして考えられたのがニュートリノの振動。つまり、ミューニュートリノが減ったのではなく、別のものに変わったのではないか。

・カミオカンデの20倍の体積を持つのがスーパーカミオカンデ。飛行距離の差(例えば上空から降ってくるものと、地球の裏側から地球をすり抜けて向かってくるもの)によってニュートリノの量の減り方に差があるかどうかを測定した。

・その結果、ニュートリノにわずかながら質量がある(振動する)ことが分かり、さらにその翌日さっそくクリントン大統領がMITの卒業式スピーチの時に話してくれたという。

・なにしろニュートリノは電子の100億倍以上軽く、対数グラフを使わないと電子と一緒にポイントできない。

・また超新星爆発が起こるとニュートリノが通常の量よりもかなり増える。この研究で小柴さんがノーベル物理学賞した。しかしその後、超新星爆発は起きていない。

・そこで過去の超新星爆発のニュートリノを観測しようとしているが、これはスーパーカミオカンデでも力不足で装置を改造しないと難しい(来年改造決定!)。

重力波関係
・重力波(グラビテーショナルウェーブ)はアインシュタインが101年前に提唱。

・観測の仕方はシンプルで、ビームスプリッターでひとつのレーザーをふたつに分けてその干渉のタイミングを調べる。ふたつ光がたどる距離が等しかったら波と山は重なりレーザーは消えるが、もしどちらかの道のりが重力波によって変化したら、その波のタイミング(位相)にずれが生じる。

・しかし重力は非常に小さな力で、去年に天の川銀河の300億倍のエネルギーがきて、やっと重力波が観測できた。ちなみに太陽と地球の間だと水素原子一個分しか空間は伸び縮みしない。

・今、梶田先生はカグラ計画をやっている。カグラは上岡鉱山の山肌に作った片道三キロほどのレーザー干渉計のこと。

・光を反射させる鏡はサファイア製で、ここに塵一個でもつくと強力なレーザーで鏡が焼けるのでビニール内のクリーンベースに置いている。

・カグラは2019年完成予定、2020年稼働予定。

・カグラによる重力波の観測で、今後はブラックホールや中性子星や超新星爆発のメカニズムを調べたい。

質問コーナー
高校生の質問:カミオカンデではそもそも陽子の崩壊を観測していたと仰っていたが、その時出す光と、ニュートリノが出す光(ノイズ)は区別ができるのか?
A.区別できる。陽子はエネルギーの合計値はプラマイゼロだが、ニュートリノは違う。

田代(33独身)の質問:宇宙が出来た時の光とよく言うが、その光が放たれたのはひと時、一回だけのはず。なのにコンスタントに宇宙誕生の光が観測されている感じがするのはなぜか。
A.それは例えばいま観測している光と10年後に観測される光を考えてみると分かる。10年後に観測される光は、今来ている光よりも10光年遠い場所からの宇宙誕生時の光が来るのである。

田代(33独身)の質問②:教え子からの質問を持ってきました。ご専門ではないかもしれませんが、温度を上げると強磁性体が磁性を失うキュリー温度について、なぜそういった現象が起きるのか教えてください。
A.え?なになに?・・・(手を叩く梶田教授)あ~~!あったね、そんなの!忘れちゃいました。

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宇宙の誕生,進化と未来を探る新しい目:村山斉
『スター・トレック』と『天使と悪魔』と『スター・ウォーズ』を茶化す話(半分本当)。陣内智則さん的なパワポ芸で会場も笑いの連続でした。つーかそんな本この人出してなかったっけ??

ダークマター関係
・ダークマターは宇宙のお母さん、ニュートリノは宇宙のお父さん。ダークエネルギーはダースベイダー。

・ダークマターは光は愚か電磁波も出してくれないので、引力からその存在を想定している。

・ニュートリノはたくさんあるが質量が小さすぎてダークマターの質量の説明にはならない。

・銀河団はほとんどダークマターでできている。また、ダークマターはガスともダークマター同士とも反応しない(引っ張られたり向きを変えたりされない)ことが観測からわかった。

・ダークマターが仮にないと原子が集まらず宇宙ができない。だからお母さん。

・ダークマターはニュートリノより10兆倍重い。でもやっぱり反応はしない。

・ニュートリノ同様、ダークマターもカミオカンデと同じ要領で、液体キセノン(ダークマターと質量が近い)とダークマターが反応してできる光を観測しようとしているが、あまりうまくいっていない。

・なかなかぶつからないので、じゃあ作ってしまおうホトトギスってことで(※本当に言った)ジュネーブに巨大な加速器つくって陽子同士をぶつけてダークマターを作ろうとしている。でも、これもダメ。もっと小さな電子同士をリニア的にぶつけられないか研究中。

反物質関係
・1933年にキュリー婦人のドーターがかん光版に光を当てて電子の反物質である陽電子を発見した。

・SFだけの存在だと思われがちだが、Pet検査では反物質を使ってるし医療用加速器もある。

・『天使と悪魔』では反物質爆弾が登場する。角砂糖一個分のサイズで広島原爆一個分くらいの破壊力があるが、反物質を角砂糖一個分作るには、電気代が一兆円の一億倍かかるので、あの映画のように施設の所長にも気づかれず作って持ち出すのは無理だし、つーか金ありすぎるだろ。

・この世界に物質と反物質が同じだけあったらそのままくっついて消滅してしまったはず。しかしなぜか現在の宇宙は物質がほんのわずかに反物質の量をしのぎ、消滅を免れている。

・物質と反物質のバランスを崩してくれた救世主としてニュートリノが考えられている。電子などの素粒子は電荷があるので、電子が陽電子に変わったり、陽電子が電子に変わることは難しいが、電荷がないニュートリノなら可能性がある。

・ニュートリノの入れ替わりの研究に関しては日本がトップでカムランド禅という計画を行なっている。

茨城県の特産品はニュートリノで生産量世界一(毎秒100兆個生産)。

宇宙の未来関係
・宇宙の膨張はなぜかどんどん加速しているので、最終的に引き裂かれるかもしれない(ビッグリップ)。

・普通空間が広くなれば、中にある物質の密度は相対的に減っていくが、ダークエネルギーは空間が広がるにつれなぜか増える。

・すばる望遠鏡はハッブル宇宙望遠鏡の視野の1000倍、画素数9億の、重さ3トン。この望遠鏡のデータから、三次元の地図が作れてダークマターのところに銀河があることがわかった。

・星と銀河は宇宙全体の0.5%、約3割がダークマター、約7割がダークエネルギーらしい。ほとんどダークネス。

質問コーナー
小学生の質問:エネルギーが質量に変わるなら、宇宙に60%以上もあるダークエネルギーから物質ができたりはしませんか?
A.その可能性はある。すごくいい質問。

高校生の質問:宇宙人はいると思いますか?
A.個人的にはいると思う。

 このサイトわかりやすい。お勧めです。
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