47階 滋賀県立南蛮貿易博物館収蔵庫
ところせましと西洋の美術品(高性能火縄銃や地球儀、からくり時計)が並んでいる。
翼「ここを通って上に行くしかないようですね。」
カイト「本当に博物館になってる…」
翼「私が様子を確認します・・・」
カイト「まって翼さん!」
翼「きゃっ!」
翼をつかまえる丹羽。首に万年筆を指す。となりには柴田。後ろには二人の兵たち。
丹羽「ほら言ったでしょ?こいつら仲間だって。」
柴田「おまえやるなあ。」
翼「カイトさんすいません油断しました・・・」
丹羽「滋賀県立南蛮貿易博物館へようこそ。
ここの館長で総務部の丹羽と言います。
こちらは参謀本部長の柴田氏。」
翼「あなた方が有名な信長四天王・・・忍者並に気配を消すとは見事です・・・うう・・・」
柴田「ま、そりゃそうだろ。こいつぱっと見ただのサラリーマンだからな。」
丹羽「まったく武将に見えないってよく言われます。」
カイト「し、四天王!?この人たちが?」
丹羽「スナックで会ったよね。」
翼「う・・・不覚・・・」
カイト「翼さんを離せ!」
丹羽「勝手に不法侵入して、それはないでしょう。おたく。」
柴田「その通りだ。そっちこそ目的を言いな。・・・まあ大体想像はつくがな。
おまえら伊賀が有利になるような情報なんてここにはねえぞ。
こそこそ泥棒みてえなことしてねえで、いっそのこと正々堂々戦ったらどうじゃ。」
カイト「忍者はそれが仕事みたいでね・・・
あんたら軍隊の弱点を調べ上げて、こんなバカな戦中止させたかったんだよ。」
丹羽「言っておくけど戦は中止しませんよ。
どこの世界に100%勝てる戦やめる戦国武将がいるんです?」
カイト「なぜ100%と言いきれる・・・?戦もスポーツも勝敗は水ものだろ。」
丹羽「・・・まあね。
さて、彼女の喉をかっ切られたくなかったら、大人しく武器を捨ててもらいましょうか?」
カイトに詰め寄る兵たち。
翼「カイトさん!!これは私のミスです!私に構わず逃げてください!」
カイト「・・・・・・。」
翼「カイトさん!」
カイト「・・・あんた・・・ここの館長だって言ってたよな・・・例えば…」
展示品の壺を手に取るカイト。
カイト「この博物館の展示品が壊れたら、みんなあんたの責任になるんじゃないのか?」
丹羽「げえええええ!きみやめなさい!
それ会長がお気に入りの李朝の白磁器じゃないか!時価3000万だぞ!そいつを元の場所におけ!さもなくばこいつを殺すぞ!!」
カイト「あんたこそ翼さんを開放しろ!そのお気に入りの壺を割られたくなかったらな!
あああ、重くて手がしびれてきたよ~」
丹羽「まじで止めろ、てめえコラ~!!」
柴田「・・・・・。(・・・馬鹿馬鹿しい。ただの壺じゃねえか。)」
丹羽「わかった、返す!返すからそれよこせ!」
翼をカイトの方へ突きとばす丹羽。
カイト「ようし、ちゃんと受け取れ!」
壺を丹羽の方へ放り投げるカイト。
丹羽「馬鹿やろう!なげるんじゃねえええ!」
猛ダッシュして壺をスライディングキャッチする丹羽。
丹羽「うおおおおお!取ったど~!・・・・・・ん?」
壺の中に手榴弾が入っている。爆発する手榴弾。
丹羽「ぐわ~~~~!!」
部屋中に手榴弾の煙幕が広がる。
翼の手を取るカイト「にげよう!」
丹羽「追え~!ぶっ殺せ!!」
二人を追いかけようとする兵たち。
しかし煙幕で視界が悪く展示品につまずく。
丹羽「馬鹿!展示品に配慮して追うんだよ!」
柴田「いた!あそこだ!階段を上がって動物園に行くつもりだ!」
追手の柴田たちに対し、西洋の鎧などの展示物を倒しながら逃げるカイト。
丹羽「ぎゃああ!やめんか~!!」
兵たちは階段を上ろうとするが巨大な地球儀の球が滑り落ちてくる。
階段を逆走する兵士「うわあああああ!」
地球を受け止めて、階段の外に投げ飛ばす柴田「どっせい!」
階段の下の丹羽に呼びかける柴田「丹羽何やってる!来い!」
丹羽たちは追跡をあきらめ、帳簿をつけている。
丹羽「無理!壊れた収蔵品のリストを今日中に作成しないと…!ええとあと地球儀が1…」
柴田「うぬぬ・・・中間管理職が~・・・!お前らはついてこい!」
柴田の兵「は!」
走るカイトと翼「はあはあ・・・」
「あれも父のメモに書いてあったんですか・・・?」
「いや、アドリブ・・・」
48階 私設動物園
動物園に入るカイトと翼。
キリンに顔をなめられる翼「ひい!」
柴田たちも動物園に入ってくる。
柴田「探せ!」
翼「カイトさん入って来ました・・・!」
博物館からくすねた銃を持つカイト
「もうこうなったらやけくそだ・・・!」
背後にある大きな水槽を銃を撃ってぶち割るカイト。
柴田「銃声?」
二人を見つけ指さす兵士「御大将あそこです!・・・あ、あれは!」
柴田「なんだ!」
檻を開けられた動物たちキリンやダチョウ、シマウマの群れが柴田たちの方へ暴走してくる。
兵士「こっちにくるぞ!逃げろ~!!」
柴田「馬鹿もの逃げるな!うぬらそれでも男か~!」
動物園に入ってくる丹羽
丹羽「リストつけ終わりました…ネズミ退治は終わりました?・・・うお!!」
柴田が大暴れする巨大なワニの頭に乗って必死に顎を抱え込んでいる。
「柴田さん!クロコダイルダンディーにでもなるんですか!?」
柴田「馬鹿やろう!早くガムテープもってこい~!!(食われる!)」
49階への階段を上る柴田と丹羽。
柴田「東インド会社の野郎、あんな怪獣送りつけやがって…」
丹羽「さんざんこけにされましたね・・・ここらで我々の恐ろしさを見せてやりましょう。」
49階 織田軍統合参謀本部
部屋に入り、入り口を閉め、ドアの取っ手にライフルをかけて開かないようにするカイト。
カイト「これで少しは時間が稼げるね。ん?・・・何かおかしい?」
翼「いえ・・・なんか、私なんかよりもどんどん忍者っぽくなっていくなって・・・」
カイト「ははは・・・わりかし野球よりも向いているのかもね・・・」
「私の助けも必要ないみたいですね・・・」
「いやいや・・・」
無人の作戦本部の円卓に広げられた資料に目をやる翼。
翼「み・・・みてください・・・」
カイト「これは・・・」
翼「伊賀の…わたしたちの・・・内部資料がこんなに・・・なんで・・・」
カイト「・・・情報流出だ・・・伊賀の戦法やメンバーの戦力・・・隠し砦の位置まですべてのデータがあるぞ。」
翼「だからさっき100%勝つって…
うすうす感づいてたんだ・・・こんなことになってるんじゃないかって・・・」
ボードにはカイトと翼の人相描きが張りつけられている。
翼「これ・・・私達ですよ・・・」
カイト「そうだね・・・」
ボードの覚え書を読む翼「風間海人・・・百地翼の両名に注意せよ・・・
彼らはトップクラスの忍びである・・・
逆にそれ以外は多勢に無勢で押し切ればたいした脅威ではない・・・」
書類をめくり続ける風間「・・・いったい。」
翼「甲賀忍者に比べ、伊賀忍者の結束はもろい。
社長の丹波は金のことしか見えない強欲経営者。役員たちは足の引っ張り合いで、皆己のことしか考えてないものばかり・・・
風間と翼のいない忍者たちは戦の敵ではない。
これって・・・」
カイト「・・・俺たちははめられた。信長はこの城自体を“囮”にしたんだ・・・!」
翼「じゃあ今頃伊賀の国は・・・!!」
ドアを破って入ってくる柴田と丹羽。
丹羽「お察しの通り。会長はもうこの城にはいませんよ。
今頃全軍を上げて伊賀に攻め込んでいるはずです。
あなた方邪魔ものがいない伊賀をね。」
翼「見上げた悪党ですね…」
柴田「まあ見損なうな。わしはお前らなどそんな小賢しい手を使わなくとも伊賀忍者ごとき叩き潰せると思うがの。」
翼「なら今ここでやってみますか・・・?」
カイト「つ・・・翼さん!?急に何を言って・・・」
柴田「どういう風の吹きまわしだ?さっきまで逃げ回っておったのに。
わしの相手になる気か。」
翼「違います・・・二人まとめてですよ」
柴田「がっはっは!気に言ったぞ!翼とやら!
可愛い女の子に挑発されるとは、信長四天王もなめられたもんだのう丹羽よ!」
丹羽「あれだけの美術品を壊したんだ、なんにせよただで返す気は毛頭ありませんよ。」
翼「カイトさん・・・・・・約束は覚えてますね・・・」
カイト「まさか・・・」
翼「私があの二人をひきつけてる間に逃げてください。
そして一刻も早く伊賀に戻り、ここで見たことを皆に・・・!」
カイト「オレも戦うよ・・・!」
翼「相手は信長四天王です・・・!
たとえ二人で戦っても殺されちゃいます。
ならば、どちらかだけでも逃げ延びれば、それは勝利なんです。」
カイト「そんな・・・」
翼「今日で分かった・・・カイトさん、あなたはもう立派なプロの忍びです・・・
プロの忍びはときに冷静に判断しなければいけない。
だから・・・私の合図で逃げてください・・・
そして・・・お父さんを助けて・・・」
カイト「翼さん・・・」
二人との間合いを詰める四天王。
カイト「絶対助けに戻ってくるからね・・・」
翼「待ってます・・・」
翼「3・・・2・・・1・・・今です!」
柴田と丹羽「!」
書類が巻き上がり、一瞬敵の姿を見失う信長四天王。
丹羽「この葉隠れの術・・・!」
頭上に翼が移動している。
柴田「上か!」
翼「もらった!」
刀で切りつける翼。
柴田の頑丈な肉体には全く効かない。
翼「嘘っ!?」
落下してくる翼に拳を振るう柴田「ぬうん!」
柴田の鉄拳がかする翼「ぐあっ!」
柴田「うむ。よくぞかわした。」
着地する翼「はあはあ・・・かすっただけでこの威力・・・」
間髪入れず万年筆がつきだして来る。
翼「くっ!」
丹羽「敵は他にもいますよ。お忘れなく。」
忍び刀を抜き振るう翼。ぎりぎりでその攻撃を発注書のボードで受け止める丹羽。
丹羽「踏み込みが甘いねえ翼ちゃん。
もっと殺す気で来ないと相手にならんよ!ほらほら」
万年筆をかわすので精一杯の翼。
丹羽「ソードダンサーと呼ばれた二年前なら勝てたかな・・・?」
翼「うう・・・!」
丹羽と戦ってる翼を二人まとめてぶん殴ろうとする柴田。
丹羽はよけるが翼はまともに食らって吹っ飛び壁に叩きつけられる。
翼「ぐあああ!」
柴田「こらあ丹羽!きさま何故わしの戦いに手を出すのじゃ~!」
丹羽「しかたないでしょう。一人逃げちゃったんだから。」
柴田「きさま~!なぜそっちを追わん!」
丹羽「あの男の子逃げ足が早くて、見失っちゃったんですもん・・・!」
ボロボロの翼が笑う。
二人「?」
翼「逃げてくれたんだ・・・ありがとうカイトさん・・・」
丹羽「なんか喜んでいますよ」
柴田「サイテーの彼氏だと思うが・・・」
よろよろと立ちあがる翼。
丹羽「柴田さん、なんか様子が変ですよ。
男に捨てられておかしくなっちゃったんじゃ…」
翼「あの人はそんな人じゃない・・・!
あの人は弱い人の頼みは絶対断れない正義の忍び・・・
人のあるべき姿なんだ・・・!」
ベストから何かを取り出す。
柴田「む!あれは・・・!」
翼「・・・最期に信長四天王の首を取れれば上出来かな。」
丹羽「高性能黒色爆薬だ!やめろ!このフロアには武器庫も・・・!」
翼「さらばです、カイトさん・・・!」
50階 隠し飛行場
格納庫にはヘリやセスナ機が並び、奥には滑走路がある。
カイト「そうか・・・緊急時にはこれがあるから非常階段がなかったんだ・・・
これを使えばここから逃げられる・・・!翼さんを呼んでこよう!」
その瞬間下の階で大爆発が起こる。
カイト「つ・・・」
「翼さ~~~ん!!!」
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