華氏119

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ 絶望感☆☆☆☆☆」

 民衆が政治にうんざりして、諦めた時、独裁者は現れる。

 あの『華氏911』から14年、ブッシュ大統領という強敵(とも)を失い、最近落ち着いてしまった感があったムーア監督が再び修羅の国(故郷フリント)に帰ってきた!
 今度の敵は、もちろんトランプ大統領・・・!!ではなかった!(ここが一番意外だった)
 オルトライトも、共和党保守派も、民主党中道派も、まとめてトランプ以上のプロパガンダ的手法で叩き潰す!
 こういう題材の場合、日本だったら有権者が選挙にいかないのが悪いという、自己責任論で片付けがちなんだけど、ムーア監督は、そういったアメリカに1億人もいる政治的アパシー層を責めたりはしない。
 むしろ、そりゃあ投票する気失せるよ、と民主党代表選のめちゃくちゃさを描きながら(有権者はヒラリーよりもサンダースを選んでいた!)、じゃあ投票が無意味なら、自分自身が立候補すればいいじゃないと、多数派のリベラル層に希望を与える・・・とかいうと、楽観しているような気がするけど、決してそんなことはない。
 この映画の作風は過去最高に切実としていて、なんかけっこう見ていて辛いものがあったよ。
 だいたい、沖縄基地問題なんかも、あれ、沖縄県民の人、アメリカの民主党支持者と同じような無力感を抱いてるんじゃないのかな。
 結局沖縄県の民意は無視して、政府が統治行為論だかしらねーけど、基地建設をごり押ししてるわけじゃん。なんだよ、なんのための選挙だよバカヤローと。やる意味ねーよ、と。

 国民が政府を支配しなければ、政府が国民を支配する。(報道ステーションのインタビューより)

 しかし、フリントの街の惨状は・・・本当にマジか、の一言だよな・・・最近『北斗の拳』読み直してるけど、現実で、しかもアメリカという先進国で、あんな住民毒殺行為が自治体ぐるみで行われているってちょっと恐ろしいものがあるよ。そういう公害の知識がなくてやってしまった、とかじゃないからね。
 この監督の映画を見てると、資本主義とモラルって両立できないのかよって感じがするけど、でもまあ、東京電力なんかも工場萌えとかなんとかいって世間の顰蹙買っちゃったし、まあ、あれは未曾有の自然現象で破壊されちゃったっていう面はあるんだけど、やっぱり、特権階級の政治家や資本家は、動かしている対象がマクロ過ぎて、感覚が麻痺しちゃうっていうのはあるんだろうな。
 あの市街地での軍事演習は、絶対うるさい住民(こざかしい黒人ども)への見せしめでやったよな。
 日本だと逆に、モラル警察がうるさいくらいだから、いくらなんでもここまでの横暴はできないだろ・・・とか思いがちだけど、わりとモラル警察って文句を言えれば満足なところあって、その問題を叩くのに飽きちゃったら、問題の本質的な解決には特に尽力しないからな。
 表面上、上の人が謝って、みんなが問題を忘れるまで耐えてしまえばいいって思ってたりするんだろうね。
 原発問題に関して言えば、国の圧力で放射能汚染の数値を、この映画みたいに改ざんされてない事を願うよ。

 でも、ちょっと、アメリカってこういう映画を撮ってくれる人とかいて、羨ましいよなって思うよね。自分の信じる哲学や信念を下に自由に活動している人って、日本はあまりいないじゃん。同調しちゃうからね。日本人ってアウトローを応援しないからな。
 むしろ、ホリエモンとか前澤社長とか、子どもっぽい欲望しか持っていないような幼児性のある金持ちにシンパシーを感じているところがあって情けなくはなるけどね。

 武器は?
 マイケル・ムーアがいる。
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