やっぱり資本主義が勝つ

 大西洋のクロマグロが絶滅の危機にあるとして、モナコやEUが大西洋のクロマグロの取引の全面禁止をワシントン条約の締約国会議でもちかけました。
 パンダやトラ、シロナガスクジラなどの絶滅危惧種のラインナップにクロマグロが加わるのはなんというか、すごいものがありますが、これが可決されると、ただでさえ貴重な上、SUSHIブームによって台湾や中国もアグレッシブに漁獲に乗り出している、天然モノのクロマグロの価格が急高騰することは必至で「庶民はマグロを気軽には食えなくなるんじゃないか」とマスコミを中心に大きな騒ぎになりました。
 結局発展途上国や、EUの中でも日本にマグロを輸出しているスペインなどが反対票を投じたらしく(秘密投票だったので真相は不明)クロマグロが絶滅危惧種に追加される事は(今回は一応)回避されました。

 この話魚が嫌いな人にはどうでもいい話で、言い出しっぺのモナコもクロマグロを食っているどころか、輸出も輸入もしていない全く無関係な国で、まあだからこそ取引禁止が言えたわけですが、とどのつまり、クロマグロがどれほど絶滅の危機に瀕しているのかのデータがニュースではほとんど取り上げられず、鮨屋の映像ばっかり流していた感じが「個人的には」します(NHKのあたりは客観的に報道していたのかな?)。
 モナコの言うとおりに本当に絶滅しちゃったら、マグロ価格高騰どころか天然モノは永遠に食えなくなるわけで、テレビも文化的な感情論を刺激するような報道ばっかりしてないで、どういう調査や研究の上でモナコがあの案を出してきたのか、調べて報道する義務はあると思うんですけど…
 想像するに、クロマグロがどれくらい絶滅の危機に瀕しているかの正確なデータは、存在しないような気もします。生態ピラミッドの上層にいる強肉食動物のクロマグロは、ただでさえ個体数がそこまで多くないし、常に高速で回遊しているから、情報を集めるのがクジラ並に大変なような気が…情報不足なんじゃないかな?

 牛や豚の家畜のように、養殖で安定供給と言うのは、マグロ食文化の維持においては王道的安全策だと思いますが、なんというか、結局この議論を観ていると、「まぐろの絶滅の危機を救え」って言う崇高なテーゼより、「マグロの価格高騰させて高値で売り付けてやろうフッフッフ…」という目論見とか、「鮨屋でクロマグロ食えないなんてふざけるな!」という食欲満載のいやしさとか、「日本がマグロ買ってくれなきゃ俺たちの生活は立ち行かない!」という漁業で生計立てている人の切実な思いとか、経済的な香りばかりするのはなぜだろう…
 KO氏は「別にマグロ食えなくたっていいじゃん、そんな騒ぐことか?」と冷めた主張。なんかこれって2004年にあった、吉野家の牛丼が食えなくなるっていうBSE騒ぎと似てるのかもしれませんね。

 結局環境問題って経済問題に他ならず、今回もまた資本主義の勝利ってことなのでしょう。マグロを保護することによる生物多様性の維持より、いじきたない食欲が勝ってしまった…そういう話みたいですね。
 日本をはじめとする取引禁止反対派を最終的に支持してくれたのが、発展途上国だと言うことも、ちょっと考えていかなければいけないことだと思います。
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