著者は歴史マニアの松村邦洋さん。
近所のTSUTAYAの大河コーナーに置いてなくて、もう読みたすぎて書店の取り寄せが待てなくて、泣く泣くキンドルで購入し、あまりの面白さ、情報量の多さに、やはり書籍版で買っとけばよかったと後悔した本。
キンドルってさ、本みたいにパラパラって任意のページを探して飛ばせないから、こういう情報量の多い本を、頭にインプットして読む場合は最悪でさ。ページ行ったり来たりできないじゃん。キンドル。
本当にたくさんの人名が出てきて、さらに義時と義村とか、安達と足立とか、似た名前も多いから、あれ?こいつ誰だっけ?とか、こんがらがってきちゃって、しかも大河オタクでもある松村さんが、同じ鎌倉時代を舞台にした大河ドラマ『草燃ゆる』のトリビアもぶっこんでくるから、本当にキンドルで買うべき本ではなかった。
こういう本は、勉強に使うテキストみたいなもんで、どこにキンドルで参考書やドリルを買う受験生がいるんだってなるじゃん。
とりあえず、一部の人は高校の歴史の授業でも出てくるんだけど(和田、三浦、安達あたりの御家人とか)、伊東氏とか(伊東四郎さんの祖先らしい!)、比企氏とか、まったく知らなかった一族も多くて、で、ほとんどの人が『アウトレイジ』のように退場してしまうというね。
これは、いくらコメディ強い三谷さんでも、山南さんから粛清ラッシュが続いてしまう『新選組!』の時みたいに、けっこう見ていて辛い陰惨な内容になりそうだなあ、と。
まあ、武士だから、アムネスティインターナショナル的な人権思想なんてあるはず無いんだけどさ、『真田丸』が最後までほっこり見れたのって、家族の絆が最後まで強かったってことで、それが今回は家族や親族、身内での殺し合いだからね。やはり、『アウトレイジ』なんだよな。
いや、鎌倉時代初期=『アウトレイジ』は予期してたんだけどね。後白河法皇とか、もう、絶対に片岡刑事じゃん。
でも、この本でわかったのは、自分の想像以上にもっと『アウトレイジ』じゃんっていう。
せいぜい、全体の3割くらいが悪役なんだろうなって思ってて、残り7割は巻き込まれちゃったり誅殺されちゃうかわいそうな被害者なんだろうなって、思ってたら、悲劇の美少年のイメージのある義経を含め、たぶん8割は悪人だね。
普通だったら、こんな奴らに感情移入なんかできないはずなんだけど、三谷さんはうまいもんね。
第1話で、北条時政をああ描くもんね。日本史の勉強すると、権力欲に溺れた強欲で強引、傲慢な初代執権みたいなイメージあったけど、あのドラマだと憎めなさそうなお人好しのおじさんだもんね。
でも、史実に忠実にやるだろうから。あの時政パパもやることやるんだろうなっていう。う~ん、まあ三谷脚本でもないと、まじでこの時代救いようがなさそうだから、塩梅としてはちょうどいいとは思うけど。
それに、三谷さんって『王様のレストラン』でも、鎌倉時代の歴史上の人物を文字って登場人物の名前にしてたり、この時代に愛着ありそうだしね。梶原は「かじはら」らしいしな。北条政子は「ほうじょうまんこ」らしいしな。
て、ことで本当に初めて知った人がほとんどで、名前もうろ覚えなので、せめて鎌倉殿の13人くらいは、ここにメモ書きしておきます。
①北条義時
2代執権。13人の中では最年少。源頼朝に弟のように可愛がられ、事実上の後継者となる。
日本史の授業では、息子の3代執権の泰時がフィーチャーされ、影が薄い。
承久の乱の時も、姉貴の政子が目立つため、やはり影が薄い。
でも、その影の薄さが功を奏したのか、この血みどろの内部抗争を最後まで生き抜いた。
ドラマだと、巻き込まれ型主人公だが、後半は結構汚いことをやってバトルロイヤルに勝ち抜いていくので、闇落ちが心配だ。松村さんも言ってたけど、確かに『ゴッドファーザー』のマイケルっぽい。兄貴が武闘派で危なっかしいってのも似てるし。
②三浦義澄
神奈川の武士。桓武平氏系だが、平治の乱で源氏の側に立って活躍した武闘派。
息子の三浦義村は義時の親友。史実では友情に亀裂が入りそうな時もあったそうだが(義村の弟が承久の乱では上皇側についた)、結果的に対立が深刻化することもなく終わっているので、ドラマも最後まで相棒みたいな感じでいるのではないだろうか。
③梶原景時
この時代の東国武士には珍しく教養が高く、文武両道のエリートだったが、生真面目で上司に告げ口ばかりするため人望がなく、和田義盛らの署名によって鎌倉を追放、最終的に自害する。
なんとなく、石田三成っぽい。戦後処理はすごい几帳面で、その報告書はかなり詳細だったらしい。『新選組!』でいう芹沢鴨的な巨大勢力上総介広常を暗殺もしている。
天才肌の義経が馬鹿にしていたことから、小物と描かれがちだが、頼朝に嫌われた有力御家人や、敵の捕虜を赦免して命を助けていたりしていたので、『真田丸』の石田三成の例のように、実はいい人というふうに持っていく可能性がある。
④比企能員(ひきよしかず)
全く知らなかった。埼玉県の源氏の老舗一族で、不遇な時代を過ごした伊豆時代の頼朝を支え続けた。
2代将軍頼家の時代になると、彼をバックアップし、その権力は絶頂に。
しかし、頼家が病気で倒れると、北条がこれをチャンスと能員を騙し、ティモンディによって竹やぶの中で殺されてしまう。
ちなみに、その後頼家は病気から回復するが、義時の手下に入浴中に金玉を落とされて殺される。ひどい。
この役を、佐藤二朗さんがやっているのが、もう現時点で悲しい。人が良さそうだもんな。
松村さんも、弱肉強食の時代にホワイトすぎた比企氏と評している。
⑤北条時政
言わずもがなの初代執権。やりたい放題をして娘の政子に引導を渡されたイメージが強いが、この人よか、京都からやってきた新しい奥さんの宮沢りえが黒幕として恐ろしいらしい。
ちなみに宮沢りえさんのお兄さん役はNOVAおじさんの山崎一さんらしい。楽しみ。
⑥和田義盛
侍所の初代別当として、また和田合戦で滅ぼされた有力御家人として学校で習う。
短気な武闘派。『真田丸』でいうなら加藤清正のイメージ。いろいろなかったら、新井浩文さんがやってたんじゃないだろうか。三浦氏とは親戚。
石橋山の戦いで敗北した頼朝軍に、関東最大の軍事力を持つ上総広常を加勢させるというファインプレーをした。
壇ノ浦では自分の名前を書いた矢を平家に射って挑発するが、向こうにも同じような矢の名手がいたため逆に恥をかいた。
彼の3男の朝比奈義秀はとんでもない化物で、軍神並みの戦闘力だったらしい。しかし、三浦義村の裏切りに会い、和田合戦で敗北。※義秀は落ち延びたらしく、その後、あの閻魔大王を投げ飛ばしている。両津か(^_^;)
⑦三善康信
京都の貴族で、初代問註所(最高裁判所)執事として習う。
演じる小林隆さんは、『ステキな金縛り』でも裁判長をやっていたので、それつながりだろうか。代々算術が専門の理系の血筋だったという。
承久の乱の時はすでに80を超えていたが、幕府幹部に激励を飛ばした。
⑧二階堂行政
二階建てのお寺の近くに家があったので二階堂。
政所を代々務める文官の一族だった。
⑨大江広元
京都の公家で、政所の初代別当。
大人になって泣いたことがないという冷静な人物で、義経の追討という名目で、全国に守護と地頭を置くなど、優秀な行政官だった。
頼朝に対朝廷(主に後白河のやり方)の攻略法を伝授し、また、彼の残した資料によって後年、御成敗式目が生まれている。
承久の乱の際は、三善康信同様、泰時にすぐに出撃しろと激励した。
ちなみに、三本の矢の毛利氏の祖先らしい。だから、あの人たち「元」が付くのか!
⑩中原親能
大江広元の兄。
⑪安達盛長
交渉術のプロ。流人時代から頼朝を支え、頼朝と政子の仲立ちをしたキューピット。
ドラマだと、頼朝の偏食についてのリストを政子に渡していた。
本名は藤原盛長らしく、後白河上皇の筋の人だった可能性があるらしい。
安達氏といえば、元寇のあとの霜月騒動で滅ぼされる有力御家人なので、少なくとも大河ドラマの中での滅亡は回避確定だと思う。
⑫足立遠元
安達盛長とややこしいが、それもそのはず、安達盛長の年上の甥っ子に当たる。
平治の乱で激闘を繰り広げた老将で、部下や仲間の面倒見もよかったという。
正真正銘の武闘派だが、幕府が出来てからは公文所(後の政所)に配属され、行政もしっかりこなしたらしい。
⑬八田知家
茨城県(もともとは栃木県)の武士。
源頼朝の父親(義朝)の隠し子説がある。
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