『風と翼:REVELATION』脚本⑧

横たわって眠っている翼。
記憶が徐々に蘇る。

太平洋戦争末期・・・
煉獄のように燃え盛る首都東京。
その業火の中で、魔王が涼しい顔で歩いている。
魔王「侵略すること火のごとし・・・」

連合軍司令本部
通信兵「ダメです!B29爆撃機で、合計1700トンの焼夷弾を落としましたが、奴にとってはちょっとしたサウナのようです・・・!人間じゃありません!!」
マッカーサー「ジャパニーズサムライ・・・化け物か・・・」
アメリカ軍兵士「元帥!ジャパンのフィクサー、ミスター信長がお見えです。」
マッカーサー「お通しせよ。」
若かりし頃の信長「お邪魔しますよ・・・」
マッカーサー「ウラン型原爆もダメ、プルトニウム型もダメ・・・そして今や、戦場は東京となっている・・・ミスター信長、日本を滅ぼすおつもりか・・・」
ソファに座る信長「一億総玉砕になろうとも、ここであの魔王を止めなければ、お次は中国、満州、ソ連・・・そしてアメリカさん、あなた方の番ですよ?
広島と長崎の最終兵器は確かに効いています。事実、魔王の動きは鈍っている・・・」
マッカーサー「ではこのまま核兵器を使い続けろと・・・?日本を滅ぼすのはトルーマン大統領も反対している。」
信長「この消耗戦には私も反対です。あの魔王は死を超越した・・・殺すのではなく、ひるませて、粗大ごみのように封印するしかない・・・」
マッカーサー「封印だと・・・?」
信長「今回は元帥にお土産を持ってきました・・・」
手を叩く信長。
すると、猛獣用の檻が司令本部に運ばれてくる。
信長「原爆の衝撃波で天空から降ってきた、世にも珍しい珍獣です。」
檻の中を覗き込むと言葉を失うマッカーサー。
信長「野生の天使であります。」
天使は傷だらけで、髪はボサボサ、翼は折れかけている。
マッカーサー「い・・・生きているのか?」
信長「核爆発による大気汚染でかなり弱ってはいますが。」
天使「水・・・」
マッカーサー「会話ができるのかね?」
信長「ここにいる私の部下が調教しましてね。」
天使にコップで水をやる百地丹波。
信長「彼が保護をしたのです。」
マッカーサー「素晴らしい・・・」
信長「地上に悪魔が現れたと思ったら、今度は天空から天使が落ちてきた。
これは天命です。敵の敵は味方。
天使と悪魔・・・神に等しいこの二つの力をぶつければ、互いの力を奪い合い、魔王を封印できるに違いない。」



指令本部の廊下
煙草を出して吸う信長「よくやった三太夫。あとは白人どもに任せよう・・・」
百地「信長様・・・あの天使を、魔王信玄と戦わせるのは反対です・・・」
信長「ほう・・・」
百地「翼・・・いえ・・・上杉謙信は核爆発で弱っています」
信長「それは、武田信玄も同じだろう。
さては、きみ・・・鳥人に情がわいたか。
翼なんていう名前をつけて・・・」
百地「・・・・・・。」
信長「・・・正直、私はこの地獄のような戦争が終われば、あの女が生きようが死のうがどうでもいい・・・」
百地「も・・・もし、上杉が武田に敗れたら・・・?」
廊下を歩いてくる明智博士「それはありえませんよ。」
信長「やあ、明智博士・・・」
明智博士「どうも。
武田信玄が不死身なのは、秘薬の力によってエントロピーにバグが発生したからです。つまり、細胞は老化していくのではなく、むしろ自発的にエネルギーを得て若返っていく・・・ある種の永久機関ですな。」
百地「・・・・・・。」
明智博士「したがって、その生命エネルギーを信玄から永久に奪い続ければ、殺せなくとも動きを封じることができる・・・」
信長「原子炉のようにね。」

明智光秀の部下の研究者が巨大な三叉槍を運んでくる。
明智「アメリカ軍と共同開発したハイドロランサー1530・・・
あの鳥女がこいつで信玄を突き刺せば、奴のエネルギーは槍を介してすべて彼女に吸収される。謙信のキャパシティを超えない限りは、信玄は機能停止です。」
百地「もし上杉謙信がエネルギーを吸収しきれなかったら・・・・!!??」
明智「こんなこと、やったことないから分からないけど・・・風船のように膨らんで爆発するのかも・・・」
百地「神の使いの天使に対してなんてことを・・・!」
信長「じゃあ他に世界を救う手立てはあるのかい?」
百地「・・・・・・。」
明智「百地さん、大丈夫です。核兵器はまだたくさんあります。
これが失敗したら、また核爆弾を使って、天使どもを打ち落とせばいい・・・」
百地「狂ってる・・・」
信長「まあ、武士の情けだ。作戦実行まで5日ある。彼女を見送らせてあげるよ。」



地下シェルターにある小さな教会。
そこで、ささやかな結婚式を挙げる、百地丹波と上杉謙信(翼)。
仲人は服部半蔵。
石川五右衛門(豊臣秀吉)ら、伊賀忍者が列席している。
秀吉「綺麗だぜ、姉ちゃん」
百地「君を救えなくて済まない・・・」
翼「いえ・・・私は幸せです。私は天界でずっと孤独だったから・・・」
百地「翼は天使のように優しいな・・・」
カメラを構える服部「それではご両人、チーズ・サンドイッチ!」
この時撮影した写真が、伊賀エージェンシーに飾られていた。



川中島上空1000m。
米軍輸送機の後部ハッチが開く。
百地「翼・・・」
微笑む翼「私がこの戦争を止めます。」
ひらりとハッチから飛び降りる翼。
羽を折りたたみ、地上の信玄に急降下していく。
翼「信玄覚悟おおおお!!」
頭上の翼に気づく信玄。
とっさに軍配で翼の槍を受け止めるが、そのまま地面がめり込み、地下深くに沈んでいく。あっという間に地殻を過ぎ、上部マントルまで達し・・・閃光――



翼「・・・・・・!!!!」
目を覚ます翼。
千代女「翼ちゃん・・・!大丈夫よ、ここは安全・・・」
汗でぐっしょりの翼「はあはあ・・・こ・・・ここは?」
あたりを見回すと、望月金吾の忍者屋敷だということに気づく。
甲賀忍者の長、望月金吾「お前さんの家じゃよ。」
翼「望月頭領・・・!ロボットたちは・・・?」
千代女「ここにはいないわ。
皮肉にも廃村になって文明から切り離されたことが、功を奏したわね。」
望月金吾「それよりも・・・思い出したんじゃろ?」
翼「・・・おかしな夢を見ました・・・お父さんやお母さんが地獄の魔王と戦っていて・・・」
千代女「夢じゃないわ。私の結界は破られた・・・もう、魔王をおさえるものは何もない・・・」
翼「魔王って・・・そんなものはこの世にはいません。」
千代女「そうね、確かにいなかったわ・・・でも、生み出してしまった。
このじいさんが・・・」
金吾「不老不死の秘薬を作っちゃいました。反省してま~す・・・」
翼「頭領が??」
千代女「魔王の名は、武田信玄・・・日本最強の武将・・・」
翼「武田・・・信玄・・・」



地獄。
地下大本営基地に、封印が解かれた武田信玄が現れる。
鬼たち「武田総統に敬礼!」
「ハイル・タッケダー!!」
「ジーク・甲斐ザー!ジーク・ライヒ!!」
玉座に座る信玄。
副官の源義経「お待ちしておりました、総統・・・」
信玄「待たせたな。
それでは大東亜戦争の続きを始めようか・・・首尾は?」
日本地図を軍剣で指す義経「東京と大阪の奇襲攻撃は成功しました。
警察組織は自動化されていたので、EMP攻撃で簡単に無力化できました。」
信玄「愚かな・・・機械に頼るからこうなるのだ・・・
東部大隊は二手に分けてそのまま南下、自衛隊の市ヶ谷基地と横須賀基地に軍を進めよ。
現在の我々には主に金棒しか装備がない・・・まず市ヶ谷基地の武器庫を狙え。
横須賀基地では、空母と原潜を奪うのだ・・・
西部大隊は八尾駐屯地だ。中部方面ヘリコプター隊をおさえ、人間どもの補給路を断つのだ。日本の全軍を掌握したら、今度こそ鬼畜米英をひねりつぶす・・・!」
義経「はは。」
信玄「・・・で、我が封印を解いた大バカ者は・・・?」
義経「将門将軍が鬼500人を引き連れ、征討に向かいましたが・・・」
信玄「殺すなと伝えよ。吾輩直々に感謝の言葉を述べ・・・勲章を授けよう・・・」



川中島遺跡。
平八郎に蹴散らされている鬼たち。
黒服「獄長・・・!」
平八郎「きさまら!金のかけたドッキリをしおって・・・!
なんだ、このリアルなクリーチャーどもは!スタン・ウィストンスタジオか!?」
黒服「いや、本物かと・・・」
平八郎「だまらっしゃい!はやく、ドッキリ大成功の札を出せい!!」
カイト「本当の化け物がいた・・・」
黒服「獄長大変です!セクハラパラダイス建設地にも鬼が現れました!!」
平八郎「なんだと!!?」

大江戸セクハラパラダイスは阿鼻叫喚の地獄となっている。
逃げ惑う労働者「ひいいい!鬼だ~!!」
勝手にスプラッシュマウンテンやメリーゴーランドに乗って遊んでいる鬼たち。
家康の穴あきパネルに顔を入れて記念撮影をしている。
カイト「まるでグレムリンだ・・・」
平八郎「鬼どもめ・・・好き勝手しおって・・・!」
ドラゴンカッターに弾を込める平八郎
「一匹残らず駆除してやる!!!お前たちついてこい!」
黒服「は!!」
カイトを残して行ってしまう平八郎達。

?「とんでもねえやつが、地上にもいたもんだ・・・」
振り向くカイト「!」
見ると、神輿の上で仁王立ちしている江戸っ子がいる。
背中には「アセノスフェア溶解玄武岩97%」と書かれた火焔放射器のタンクをしょっている。
カイト「あんた誰だ…」
「オレっちか?オレっちは神田大明神・・・平将門だ!」
「平将門・・・」
「あんただろ?うちの総統の封印を解いてくれたのは。礼を言うぜ。
あらよっと!」
カイトを殴って一撃で気絶させる将門。
気を失ったカイトを神輿の中に入れてしまう。

平八郎にちぎっては投げられる鬼たち。
将門「そいつにかまっててもキリがないぜ!
鬼ども、撤収だ!わっしょい、わっしょい!!」
平八郎「おのれ江戸っ子!逃がすか!」
将門「てやんでい!火事と喧嘩は江戸の華だぜ!!」
平八郎に向かって火炎放射器を放つ将門。
平八郎「うおおお!」

炎が鎮火される。
遊園地から消えてしまう鬼たち。
黒服「き・・・消えた・・・」
ちぎり取った鬼の腕をポロリと落とし、涙を流す平八郎。
「おのれ・・・鬼どもめ・・・
殿のテーマパークでそこら中にうんこをしていきおった・・・!!」
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