『青春アタック』脚本⑮鎧袖一触

白亜高校の学食
サンマ定食を食べる花原「へ~海野さんにそんな友達がいたんだ。」
サンドイッチを食べる海野「もう何年も会ってないけどね・・・」
子ども用のスプーンで猫まんまを食べるちおり「花原さんみたいだよね!」
花原「私はそんな暴力はしないぞ。」
ちおり「中学時代に対不良の爆弾作ったんでしょ?」
花原「・・・そんなこともあったね・・・あれは人生で二度目の逮捕だったかな。」
海野「死んじゃうから・・・」
海野に質問をするちおり「なんで離れ離れになっちゃったの?」
配慮する花原「・・・お、おい・・・」
海野「いいよ・・・
レイちゃんはどんな時でも私を守ってくれた・・・」



中学時代の回想
海野たちの教室。
机をくっつけて、海野と狩野がランチを食べている。
粗末なパンを食べている狩野
豪華なお弁当をあける海野「はい、レイちゃん。」
狩野「・・・?」
海野「いつもパンばっかりだから、私が作ってきたんだ。よかったら食べてよ。」
狩野「海野さんが・・・?」
海野「ま、まあ・・・正確にはお母さんとだけど・・・」
狩野「・・・うれしい。いただきます。」

すると、教室に不良男子が入ってくる。
不良「オレの女を辱めたのはてめえか外人。」
無視して食事をする狩野「・・・おいしい。」
彼氏を止めるうめちゃん「・・・もういいって・・・この子に関わっちゃアカン・・・!」
不良「お前は引っ込んでろ。俺の気が済まん。」
狩野「・・・彼女の忠告は聞いた方がいいわよ・・・」
海野が作ってくれた弁当を床に落とす不良
椅子から立ちあがる狩野
慌てる海野「・・・レイちゃん、私はいいから・・・!」
狩野「・・・海野さん・・・」
海野「・・・うん・・・」
ホッとする海野とうめちゃん。
しかし怒りが収まらない不良が、狩野の飲んでいた牛乳を狩野の頭からかける。
一同「・・・!!」
狩野「・・・この学校のお友達を全員呼んできなさい。めんどうくさいから。」
うめちゃん「全員殺される・・・海野はん・・・助けて・・・!」
海野「祈ろう・・・」

――翌日、校内の不良グループは全員転校をした・・・

海野(レイちゃんはケンカが誰よりも強かったけど・・・
暴力を振るうときは決まってわたしを守るときだけだった・・・
レイちゃんのおかげで、わたしは学校でいじめられることもなくなった。
しかし・・・レイちゃんの強さは周辺の喧嘩自慢の男の子の功名心に火を灯してしまった・・・)

鉄パイプを手に取る不良少年「巨人狩りだ!」


ケガを心配する海野「レイちゃん・・・だいじょうぶ?」
頭に包帯をしている狩野「とうとう素手で勝てないから凶器を使い出した・・・」
海野「もうケンカはやめて・・・」
狩野「わたしもやめたいんだけど・・・
きりがなくて・・・一人で戦うにはもう限界が近いな・・・」
海野「なんでこんなことに・・・」
狩野「このままでは海野さんにも危害が加わる・・・いい加減終わりにしないと・・・」
海野「・・・どこへ?」
狩野「ゲームしてくる・・・」
海野「危ないことは嫌だよ・・・」
狩野「だいじょうぶ。海野さんはわたしが必ず守るから。」

ゲームセンター
不良グループが集会をしている。
そこへ、ボロボロになった構成員を引きずって狩野が歩いてくる。
狩野「どいつがボス?」
奥を指さす半殺しにされた構成員「あの人です・・・」
ボスに近づいていく狩野。
ボスは筋骨隆々でいかつく、喧嘩慣れしている凄味がある。
ボスに声をかける狩野「ゲームしようか。」
ボス「え?」

格闘ゲームの筐体のモニターに頭から突き刺さって動かないボス。
ざわつく不良たち。
狩野「これからはわたしがボスよ。」
不良「誰がお前なんかと・・・」
そう言った不良も、ボスの向かいの筐体に突き刺さる。

狩野「血の気の多い君たちに、うってつけの仕事を与えるわ・・・
この周辺の不良グループ、暴走族、ギャングの最強格をすべてリストアップして、自宅の住所を突き止めてほしいの。」
不良「それで、どうすれば・・・」
狩野「火をつけてきなさい。ノルマは1人1軒以上。」
不良「戦国時代か・・・」
「逮捕されちゃうじゃないですか・・・!」
狩野「はくがつくでしょう?」
「放火殺人はおそらくムショから出てこれません・・・!」
狩野「あと・・・警察の事情聴取で私の名前を出したら・・・殺すから。」



公園のたこ焼き屋の屋台に絡むチンピラ
「おうおう・・・誰に断ってたこ焼き焼いとんじゃ・・・」
海野と狩野が、屋台でたこ焼きを買っている。
海野「ここ、美味しいんだって。」
狩野「楽しみだな・・・」
狩野を見て、逃げ出すチンピラ。

・・・こうして、一人の女子中学生によって関西の反社会勢力はすべて滅ぼされた・・・



学食
食事がのどを通らない花原「・・・それ、どこまでホントの話・・・?」
海野「・・・え?」
花原「恐竜みたいな女ね・・・」
海野「・・・レイちゃんより強い不良は、結局日本にはいなかった・・・
これでやっと平和に暮らせると思ってた・・・
でも・・・誰よりも強い恐竜でも・・・天変地異には勝てなかった・・・」



95年1月。
大地震で壊滅した早朝の神戸。

つぶれたボロアパートでうめいている狩野。
太ももに鉄の支柱が突き刺さり、なかなか抜けない。
狩野「・・・・・・。」
歯を食いしばって引き抜く。傷口から大量の血があふれるが、冷静に止血する。
学校のジャージ姿のままアパートからはい出ると、倒壊した建物だらけの戦場のような光景が広がっている。
狩野「・・・こんな景色・・・もう見たくないと思ったのに・・・」
脚を引きずりながら歩いて行く狩野。
狩野「海野さんを・・・助けなきゃ・・・」

横倒しになった高速道路の橋脚を横目に、よろよろ歩いて行く狩野。
被災した街にはだれもおらず、静寂が漂っている。

とうとう海野の自宅までたどり着くが、裕福だった海野の邸宅は跡形もなくつぶれていた。
狩野「・・・・・・!そ・・・そんな・・・」
がれきを必死に掘り起こそうとする狩野。
「海野さん・・・たーくん・・・お父さん、お母さん・・・」
馬鹿力で柱を持ち上げようとするが、さすがにびくともしない。
太ももから再び血があふれ出てくる。
地面に膝をつく狩野。
そして、慟哭を上げる。
狩野「いない・・・なんで・・・!」

?「ああ・・・誰もいないな・・・」
声の方を振り返ろうとする狩野。
しかしその前に鉄パイプで思い切り頭を殴られる。
がれきの上に倒れる狩野「がはっ・・・!」
不良「・・・やっと、お前に復讐できる・・・」
鉄パイプを受け取るボス「おい、オレにもやらせろ・・・どのみち、大勢死んでんだ。
犠牲者が一人増えても変わりやしねえよな・・・」
涙を流す狩野「・・・おねがい・・・私の友だちをさがして・・・」
ゲーム筐体に突っ込まれた傷で、顔の皮膚が縫われているボス
「・・・お前、言ってたよな?
不良なんざ、人を殺す度胸もない腰抜けだって。
・・・見とけこの野郎・・・」
鉄パイプで再び殴るボス。
ズタボロの狩野。
ボス「死ね!死ね!死ね!!このくそ外人が!!!」
どんどん血まみれになる狩野。
鉄パイプでひたすら殴り続ける。

動かなくなる狩野。
ボス「はあはあ・・・死んだか・・・」
不良「・・・ば・・・バレないよな?」
ボス「こいつは地震で死んだんだ。そうだろ?」
不良「あ・・・ああ・・・」
立ち去っていく二人。

瓦礫のそばでうつぶせに倒れている狩野。
脚はぐちゃぐちゃにへし折れ、パンツは脱がされ、尻に「バカ」と書かれている。
涙を浮かべる狩野。



体育館に作られた仮設の避難場所
被災した人たちが毛布にくるまって、冬の寒さに耐えている。
弟と段ボールの上に座って、放心状態の海野。

会場を右往左往する被災者「わたしの母を見ませんでしたか・・・?」
「妹がいないの・・・!」

その様子を呆然と眺める。
海野「レイちゃん・・・無事かな・・・」
はげますたーくん「お姉ちゃん・・・きっと大丈夫だよ。」
海野「・・・被災してやっとわかった・・・
・・・レイちゃんのご両親は・・・きっと・・・戦争で亡くなったんだ・・・
それで・・・たった一人で知らない国へ逃げてきて・・・
孤独で・・・不安で・・・」
涙を浮かべる。
海野「・・・それなのに・・・私をかばってくれた・・・」
涙をぬぐう海野。
立ちあがる。
たーくん「お姉ちゃん・・・?」
海野「わたし・・・探してくる・・・」
たーくん「ぜったい危ないよ。」
海野「・・・見過ごせない・・・!」
たーくん「ぼくを一人にしないで・・・ひとりぼっちはやだよ。」
海野「たーくん・・・」



たーくんをおんぶしながら、崩壊した都市を歩く海野。
たーくん「レイちゃんのおうちってこっちだっけ?あっちじゃない?」
海野「そうだっけ・・・?」
たーくん「・・・もう帰ろうよ。目印の信号が全部なくなっちゃったから・・・わかんないよ。」
海野「信号・・・なんで忘れてたんだろう・・・!」
ポケベルを取り出す。
液晶を読むたーくん「505・・・3418・・・なんの番号?」
海野「・・・SOS・・・美帆の家・・・!」



救急車が海野の家に走ってくる。
ストレッチャーに乗せられる狩野。
海野「・・・ひ・・・ひどい・・・」
死にかけでやっと一言絞り出す狩野「・・・ごめんね。」
海野「あの・・・どこに搬送されるんですか?」
救急隊員「病院もいくつかやられているから・・・でも、お友達はなんとかします。」

走り去っていく救急車をみつめる兄弟。
たーくん「お姉ちゃん・・・行こう・・・ここにいてもしかたがないよ・・・」
海野「・・・・・・。」
瓦礫の中から、バレー大会の写真を見つける海野。
海野「・・・うん。・・・生きよう。」



学食
厨房でブーちゃんが無言で涙をぬぐう。
花原「じゃあ、それ以来会ってないんだ・・・」
海野「連絡の取りようがなかったから・・・あのころは生きるので精いっぱいで・・・」
ちおり「私たちは幸せだね。」
花原「え・・・おまえもけっこう・・・いや・・・うん。」
海野「でも、生きてれば絶対また会える。そう思うんだ・・・」

学食に入ってくる華白崎。
華白崎「生徒会長・・・ちょっと。」
ちおり「どしたの?」
華白崎「校門にやっかいな不良がいます・・・今マッスル山村先輩が対応していますが・・・
どういたしましょう・・・」
ちおり「花原さん、爆弾投げる?それとも屋上から落とす?」
花原「いやよ・・・怖いもん・・・」
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