『青春アタック』脚本㉑猪突猛進

サービスエリアに入る花原「はっはっは・・・では私のサーブからね」
理央「さー、おてなみ拝見」
海野「花原さん、とりあえずサーブを入れればいいから!無理に強く打つより確実に決めよう!」
花原「・・・おっけい。」
海野(相手の実力がわからない以上、ここはサービスエースなんて狙わないでいこう・・・)

理央「オジカくん。」
オジカ「花原恵菜、2年、174センチ。チームの中で一番の身長を誇るが・・・
アンダーサービスしかできない・・・」

アンダーサービスを打つ花原「てりゃ!」
相手コートに飛んでいくボール。

理央「甘く見られたね、あたしたちも。」
オジカがそのまま角でトスを上げる。
理央「チャンスボールありがと!」
勢いよくアタックを決める理央。

サーブが相手コートまで届いて喜ぶ花原「入った~!」
その花原の顔面に理央のアタックがぶち当たる「ぐえええ!!」
海野「花原さーん!!!」

オジカ「しかもレシーブもできない・・・」
アライ「なぜあいつはコートにいるんだ!??」

海野「ボールは生きてる!とりあえず返そう!!」
地面に倒れている花原※コイツは死んでる
華白崎がアタックの体制に入る。「会長、トスを!!」
トスを上げるちおり。
華白崎「くっ!!」
アタックを決める華白崎。
鋭い角度でコートのスミを狙う。
剛速球はラインぎりぎり。
華白崎「一点目はもらった!!」

イノセ「・・・目標は?」
イノセの背中に乗るシマダ「前方2m、11時方向!」
イノセが突進する。「発進!!」
人間離れした猛スピードでボールに追いつき、レシーブをするイノセ。
華白崎「・・・!」

病田「・・・返した!!」
大此木「うそだろ!?」

再び角でトスを上げるオジカ。
理央「もういっかい!」
容赦ないアタックを決める理央。
後衛の乙奈とブーちゃんは見切れない。
コートの際にアタックが決まる。
主審「ピー!」
理央「わーい!やったー!!」

大此木「なんてこった・・・強いぞ、あのチーム・・・!」

海野「・・・甘かった・・・!バレー経験者の華白崎さんのアタックをレシーブし、レシーブが得意なブーちゃんが反応できないアタックを返した・・・
そして、あのシカの参謀が私たちのデータをすべて把握している・・・」

解説する万石「イノシシの突進は最高速度80kmに及ぶ・・・ちょっとした自動車だ。
スパイクに追いつくなど訳はない。」
ちおり「すげー!」

扇子を広げる理央「動物が相手でラッキーとか思った??
動物の方が人間よりもずっとすごいスキルを持っているのよ。
さあ、我がジェットワールドサーカスの開演よ・・・!」

花原「海野さん・・・この人たち強いよ・・・いたいし、あやまって許してもらおう・・・」
ニヤリとする海野「ひさびさの好敵手ね・・・!面白くなってきた!!」
花原「海野さん・・・?」

大此木「海野が燃えてきたな・・・悪くない・・・だが・・・前途は多難だ。」
病田「・・・え?」
大此木「あいつらはバレーを初めて半年足らずの素人だ。
サッカーや野球と比べて、バレーボールは大番狂わせがほとんどない・・・」
病田「・・・それって・・・」
大此木「勝敗は純粋に練習量で決まるぞ・・・あいつら基礎できてなさそー・・・」
花原「るさい!オコ!!」

理央「さあ、こっちの攻撃だよ!!」

花原「ふっふっふ・・・秘密特訓の成果を見せてあげるわ!」



秘密特訓の回想
やっぱりとんでくるボールを怖がる乙奈。
乙奈「きゃああ!」
花原「・・・・・・。」
乙奈「ごめんなさい・・・」
花原「・・・何かあったの?」
乙奈「・・・そ・・・それは・・・」
ちおり「・・・みなまで言わなくても私にはわかるよ。」
乙奈「・・・ちおりちゃん・・・」
ちおり「白くて丸いものが怖い・・・
幼少期に星のカービィの襲撃にあったんだよね?」
乙奈「ち・・・ちがいますわ・・・」
花原「知らないと思うが、あの珍生物は実在しないぞ・・・」
ショックを受けるちおり「え!?いないの!???」
乙奈「あの・・・バレーボールが怖いんじゃないんです・・・」
花原「・・・話したくないなら、無理しなくていいと思うよ。
誰にだって人に言えない悩みってあるじゃない・・・」
乙奈「花原さんは・・・優しいですね・・・」
花原「それは買いかぶりすぎ。誰が週刊誌に百地翼のネタを売ったと思ってんのよ・・・」
乙奈「・・・・・・。」




アイドル時代の乙奈。ライブや歌番組で熱狂的な人気。
乙奈たちのアイドルグループの楽屋。
乙奈(百地翼)のグループに加入した新人
「翼さん!わたし、翼さんに憧れてこの世界に入ったんです!」
乙奈「まあ、わたくしに・・・?」
新人「私の街は大震災で被災して・・・でも、翼さんの復興コンサートで生きる勇気をもらいました。
私も、そんな多くの人を幸せにできるアイドルになりたいんです・・・!」
乙奈「ありがとう・・・そう言っていただけると、わたくしも、この仕事をやっていてよかったと思いますわ。一緒に頑張りましょうね。」
新人「はい・・・!」

あのころの私は・・・アイドルはたくさんの人を幸せにできると思ってた・・・

ライブが終わり、ステージから笑顔で手を振る乙奈。
観客たちに声をかける乙奈「ボーボボさんいつもありあがとう、ぬきゅさん素敵なお花をすいません、パチスロマンさんまた来てくださいね・・・!」
新人「すごい・・・!ファンの方の名前を全て覚えてるんですか!!!??」
乙奈「ええ・・・リピーターの方は極力・・・ファンの方あってのこの仕事ですから・・・
大切にしたいんです。」
新人「でも、翼さんのファンって数万人じゃ・・・す・・・すごすぎる・・・勉強になります!」
とあるファン「翼ちゃん!愛してる~!!」
乙奈「・・・私もみんなを愛してるよ・・・!」

乙奈(思えばあの時、何気なくファンにはなったこの言葉が・・・取り返しのつかないことになってしまった・・・)

とある日の握手会。
ファンの長蛇の列。
新人「師匠・・・も・・・もう腕が・・・」
乙奈「ソラちゃん。ファンの方の前では笑顔ですわ。」
新人「すいません・・・」
ライブに何度も来ていたファンが、白いボールを持って乙奈に近づいてくる。
ブツブツ言っているファン「ひどいよ・・・」
乙奈「・・・え?」
ファン「あの時・・・愛してるって言ったじゃないか・・・なのに・・・なんで・・・
僕のお嫁さんになってくれないんだ・・・!」
新人「師匠・・・この人、めちゃくちゃなことを言っています・・・」
小声で乙奈「ソラちゃん・・・気づかれないように警備の方に合図を・・・!」
ファン「シングルCDもグッズも、ぼくは誰よりも買ったんだ・・・!住所くらい教えてくれたっていいだろ・・・!!」
なんとか夢を壊さないように必死な乙奈「そ・・・そうだね、じゃあ君にだけ特別だよ!
翼のおうちは天空王国ミルキーウェイの賃貸マンションで・・・4LDK・・・」
ボールを差し出し、こちらに突進してくるファン「じゃあ一緒にそこに行こう・・・」
新人アイドルが、白いボールが爆発物であることに気づく。
新人「・・・翼さん!あぶない・・・!!」
白いボールが発光する。
乙奈「・・・!!」

乙奈(わたくしをかばった新人のソラちゃんは、顔に大やけどを負い田舎に帰りました・・・
爆弾を持ってきたファンは・・・わたくしを応援するために全財産をつぎ込んでいたといいいます。
こんな大事件が起こったのに・・・わたくしの事務所はマスコミに圧力をかけて、もみ消してしまった・・・)

マネージャー「こういうことって、この業界ではよくあることだよ。気にすることはないよ翼ちゃん。」
コートをかぶせられて震えている乙奈。
乙奈(よくあること・・・?
・・・わたくしのせいで・・・多くの人が不幸になったのに・・・?)

新人(私も、翼さんみたいなみんなを幸せにできるアイドルになりたいんです・・・!)




ちおり「・・・みなまで言わなくても私にはわかるよ。
南アフリカの遺跡で大玉に追いかけられたことがトラウマに・・・」
花原「おまえ、いいかげんにしろよ・・・」
ハッとして微笑む乙奈「・・・ふふ・・・実はその通りですわ・・・」

酔っ払って合宿場にフラフラ現れるさくら
「あら~ん・・・珍しい三人組が女子会してるじゃないの。お姉さんも混ぜなさい。」
乙奈「監督・・・わたし・・・どうすればボールを克服できるのでしょうか・・・?」
さくら「・・・克服しなくていいんじゃないの・・・?」
乙奈「・・・え?」
さくら「・・・ちょっとボール貸して。」
花原「はい・・・」
いきなり乙奈の方にボールを打つさくら。
元プロの剛速球をとっさによける乙奈「きゃああああ!」
花原「監督・・・何を・・・」
さくら「・・・いい反応じゃない。
歌姫はダンスをやっていただけあって身のこなしが抜群にいいわ・・・」
乙奈「・・・え?」
さくら「その瞬発力はきっとチームの力になる・・・
ボールが怖いなら・・・怖くなくなるまで、よけ続ければいいじゃない。
世の中の問題なんてね・・・だいたい適当にいなしときゃなんとかなるのよ。」
今度はいきなり花原にボールを打つさくら。
ボールが花原の顔面に当たる。
花原「ぐえ!」
さくら「あら、ごめんね。
・・・花原さんはレシーブで慌てすぎ。だから、顔でボールを受けちゃうわけ。
一拍おいてやってみな。それだけで変わるわよ。」
乙奈「・・・監督・・・」
さくら「バレーボールで最も大切なことを教えるね。
それは、どんなことがあってもコートに立ち続けることよ。」
何かを決意する乙奈「・・・・・・はい。」
さくら「うっ・・・吐きそう・・・トイレ・・・」
合宿場を出ていくさくら。
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