タクシーの中で汗ダラダラの病田
運転手「お客さん、病院のほうがいいんじゃないですか・・・??」
・
高校時代の病田。
病気の治療でほとんど学校に通えなかったので、友達がいない。
誰もいない裏庭に隠れて、詩集を読んでいる。
女子たちが病田を取り囲んで詩集を取り上げる。
病田をうつ伏せに倒して、蹴飛ばす。
病田のセーラー服から、持病の薬が落ちる。
その薬を踏みつけてぐしゃぐしゃにする。
病田「はあはあ・・・なんで・・・」
いじめっ子の女子「生きる価値のない女を殴るのに理由なんてある?」
・
病田「・・・確かに・・・こんな不祥事をした私に生きる価値なんてなかった・・・
名言だったな・・・ふふ・・・」
心配する運転手「お客さん、心療内科にしますか??」
その時、タクシーに女子高生が飛び込んでくる。
病田「危ない・・・!」
急ブレーキを踏む運転手。
女子高生を引いてしまうギリギリで停車するタクシー。
運転手「ばかやろー!!死にてえのか~~!!」
涙を浮かべる女子高生「そうよ・・・」
病田「・・・え?」
・
公園のベンチに座って、女子高生に暖かい缶紅茶を差し出す病田
「どうしてあんな危ない真似を・・・その制服・・・上武高校ですよね・・・?」
女子高生「初対面の方に話せることでは・・・ご迷惑がかかりますし・・・」
病田「・・・わたし・・・こうみえて高校の先生なんです・・・もしかしたらお力になれるかも・・・」
女子高生「・・・そうなんですか・・・?」
病田「それに・・・あなたの気持ちはよくわかるよ・・・」
女子高生の体中のあざを見る病田
女子高生「どんな大人も最初はそういうのよ・・・」
病田「ううん・・・私も・・・いじめで死にたかったから・・・でも・・・あなたのように勇気がなかったの。」
女子高生「・・・・・・。」
目が潤む病田「今だって・・・けっこう死にたい・・・ねえ、どうすれば車の前に飛び出せるの・・・?
そのあとの迷惑とかそういう悩みは、どう払拭できたの・・・?
教えて・・・一緒に死のう・・・!!」
女子高生にしがみつく病田「ひいい!なんか、話がおかしなことになってませんか・・・!!」
自己紹介をする女子高生
「私は、上武高校女子バレー部の鶴橋美羽です・・・」
病田「病田代和香です・・・」
鶴橋「じつは・・・わたしだけ部でカンパするお金を払えなくて・・・
先ほど、壮絶なリンチにあったんです・・・」
病田「わたしの未来かもしれない・・・
で、金額は?」
鶴橋「ひとり10万円。うちは部員が多いから、合計で1000万円集めないと、今日の試合には勝てないとか・・・でも私の家は貧乏だから・・・」
病田「ほかの子は集められたんですか?」
鶴橋「はい・・・なかにはリンチを恐れて窃盗や売春などでお金をかき集めた子もいるそうです・・・
でも・・・あたしは・・・臆病だし・・・こんなに地味だから売春だってできない・・・」
泣きながら眼鏡のレンズを吹く鶴橋。
病田「・・・そんなことは、絶対にやる必要はないです。」
鶴橋「ううう・・・私なんか生きる価値なんかないんだ・・・」
病田「・・・それ、私たち底辺にとって永遠のテーマだよね・・・」
鶴橋(・・・励ましてくれない・・・??)
病田「・・・監督には相談したの?」
鶴橋「何を言ってるの??あの監督こそすべての首謀者よ・・・
この前も、病田っていう馬鹿な女をカモにしてやったって・・・
やまいた・・・」
話していてその人物が、隣の女性教員だと気づく鶴橋。
病田「わたし・・・小学中学と長いこと闘病生活をしていたの・・・
だから学校で友だちが作れなかった・・・
誕生日パーティもいつもひとりぼっち・・・
みんなについていけるように一生懸命院内学級で勉強して・・・
やっと高校に入学できたと思ったら・・・
ガリ勉が気に食わなかったみたくて・・・いじめられた。
・・・私は、この薬がないと生きていけない・・・」
懐から薬を取り出す病田。
「あるとき、いじめがエスカレートして・・・これを隠されちゃってね・・・
私はあそこで一度死んでしまったのかもしれない・・・」
鶴橋「な・・・なんで、そんな目にあって、今も頑張って生きているんですか・・・?」
病田「高校の担任の先生がいい人でね・・・
どんな人間にも必ず味方になってくれる人がいる・・・そう言ってくれたんだ・・・
私・・・その人のことが好きになっちゃって・・・卒業式の日に告白したけど・・・
職員室で机を並べられる日を待っているって・・・
ていよく断られちゃった・・・へへ・・・」
鶴橋「私の学校には九頭に逆らえる教師なんて一人もいない・・・!」
立ち上がる病田。
病田「・・・その教師に・・・私がなってもいいかな・・・」
・
上武高校
ホスト「え?お金はいらない?」
受話器をおく。
ホスト「あの女・・・感づいたらしい。」
部員「どうすれば?」
ホスト「拐っちゃえ。」
・
さいたまスーパーアリーナ
海野「え・・・?出場できない・・・?」
黒服「うむ・・・上武高対白亜高は9人制バレーで申請が出ている・・・」
海野「9人制・・・?普通、高校バレーは6人制では・・・!」
黒服「この大会では試合形式は自由だ。
つまり、あと3人を選手登録しなければ試合は認められない・・・」
乙奈「そんな・・・いったい誰が上武高校とそんな申請を・・・」
山村「病田先生だ・・・」
華白崎「これは、上武高校の罠ですよ・・・!
きっと先生を騙したんです・・・!」
ちおり「6人でやっちゃダメなの?」
黒服「一度9人制で申請している以上それは認められない・・・
試合開始時刻までに9人集まっていなければ・・・お前たちは不戦敗だ・・・」
海野「そ・・・そんな・・・!」
花原「あ・・・あのやろ~・・・」
ニヤニヤしながら近づいてくる九頭「あら、みなさんお揃いで・・・」
花原「船の時といい、もう許さない・・・!」
九頭「なんのことかしら?みなさんと9人制バレーができることを楽しみにしてるわ・・・ふふふ・・・」
山村「1000万円で負けてくれるのではないか?」
九頭「そのつもりだったよ。そのつもりだったけど・・・試合ができないんじゃ仕方がない・・・」
花原「なら金を返せ・・・!」
九頭「なんで?」
花原「う・・・」
立ち去る九頭。
海野「・・・どうしよう・・・」
華白崎「そういえば、監督の姿が見えませんが・・・」
山村「ちょっと、よるところがあるとか言ってたな。
諸君らは午後の試合にむけて練習をしていろと言っていたぞ・・・」
花原「練習したって、試合に出れないんじゃ意味がないじゃない・・・!」
海野「いや・・・さくら先生を信じよう・・・
先生は監督を引き受けるときに私たちに条件を出した・・・
指示には必ず従ってほしいと・・・」
花原「海野さん・・・」
・
千葉県織戸高校
体育館では女子バレー部が活動をしている。
部員「キャプテン・・・お客様が・・・」
キャプテン「誰?」
体育館に入ってくるさくら「・・・織戸高校キャプテンの葛城ユリさん?」
葛城「ええ・・・あなたは?」
さくら「あんたたちが追い出した海野さんが通っている白亜高校の監督。」
葛城「・・・その名前は忘れました・・・」
さくら「あんたたちは、最後の試合にも出ないで引退?」
葛城「私たちは勝つことよりも楽しむことを大切にバレーをしているんです・・・
もう帰ってくれませんか?」
さくら「まあ・・・青春にもいろいろあるからね・・・
ただし・・・2年前の事件の真相を知りたくない・・・?」
葛城「・・・あれは海野さんが全国大会の遠征費を盗んだんです。
私の推理では、彼女ははなからそれが目的でうちの高校を強豪校にした・・・
あの子は両親もいないし、金に困っていた・・・
犯行の同機は十分にある・・・」
さくら「名推理ね・・・で、そんな大切な遠征費はどこに管理していたのかしら?」
葛城「・・・?大金ですからね・・・金庫かなんかじゃないですか?」
さくら「・・・コインロッカーよ。」
葛城「そんなところに入れないでしょう・・・」
さくら「知らないの?結構安全なのよ。コインロッカーって・・・
そして、当時の部長にそれを提案して、家の都合で転校した部員がいたはず・・・
覚えてない?」
葛城「・・・なにがおっしゃりたいの?」
さくら「私は、うちの学校に海野さんが転校してきたときから、すぐに分かったわ。
・・・あんたの推理はくそってことよ。」
・
ホストクラブに監禁される病田と鶴橋。
病田「・・・ここから出してください・・・!試合が9人制であることをみんなに伝えないと・・・!」
ホスト「試合が終わるまでは、ここにいてもらうよ・・・そして、そこのお前。
よく、ぼくのりりあを裏切ってくれたね・・・
君たち・・・焼きが足りなかったんじゃないか?」
上武高バレー部員が鶴橋を取り囲む。
鶴橋の前で手を広げる病田「や・・・やめて・・・!
こんな部活動間違ってる・・・!
部員同士で傷つけあって・・・こんなの悲しいよ・・・!」
笑顔で病田に近づくホスト「病田先生・・・」
病田をひっぱたくホスト。
鶴橋「先生・・・!」
病田の群青色の髪をつかむホスト「他校のことに口を出すんじゃないよ・・・
それに昨日の金はどこにやった・・・?」
病田「それは・・・」
ホスト「あれはこの店の売り上げだ・・・返してもらえないかな・・・」
病田「だって、あれはりりあちゃんが・・・」
ホスト「気が変わったってさ・・・」
病田「・・・そんな・・・」
もう一度ひっぱたくホスト「さあ、金を返せ。」
鶴橋は部員たちにリンチされている。
部員「この裏切り者!あんたのせいで部がなくなるところだったのよ・・・!」
床でうずくまる鶴橋「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!」
病田「やめて・・・!」
何かに気付くホスト「・・・おい。」
病田の胸ポケットを触るホスト。
ボイスレコーダーが入っている。
青筋を立てるホスト「・・・なんだ、これは・・・?」
病田「し・・・知らない・・・!」
立ち上がってスーツの襟をなおすホスト「・・・二人ともぶち殺せ。」
部員「しかし・・・」
ホスト「1000万円を紛失した挙句、こんなくそみたいな真似しやがったんだ・・・
この女は心臓が弱い・・・スタンガンの一つでもあてておけば、病死ってことになるさ・・・
お前は・・・タクシーにひかれて死にたかったんだよな?」
病田「私はどうなってもいい・・・でも・・・美羽ちゃんだけは助けてあげてください・・・!」
ホストにすがり付く病田「お願いします・・・!
まだ、ほんの子どもじゃないですか・・・!!」
ホスト「じゃあ、お前は死ぬんだな。」
ぼろぼろの鶴橋「先生・・・!」
覚悟を決める病田「私なんかの命で生徒が守れるなら・・・」
その時、ホストクラブに野良ネコや野良犬が大挙して入ってくる。
ワンワン吠える凶暴な野良犬の群れ。
倒れるシャンパンタワー。
絶叫して逃げ出す部員たち。
ホスト達「な・・・なんだ、こいつら・・・!」
一羽のカラスが飛んできて、ホストからボイスレコーダーを奪ってしまう。
カラスはそのまま、入り口にいるセーラー服の高校生の腕にとまる。
ホスト「なんだお前は!!」
有葉理央「・・・これで、あなたはもう終わり。
新宿の動物に食われたくないなら、二人を解放しなさい。」
・
さいたまスーパーアリーナ
コートに並ぶ白亜高校と上武高校
黒服「もう15分で試合が始まるが・・・」
九頭「人数が集められなかったのなら残念だけど、私たちの勝ちね。」
?「待ちなさい!」
九頭「誰?」
誰も知らない女子高生がコートに入ってくる。
「神奈川県立第四高校女子バレー部、風間ケイト推参・・・!
義によって白亜高校の助太刀に参ったぞ・・・!」
ちおり「・・・だれ?」
首を振る海野
ケイト「お前たちの非道な振る舞い・・・目に余っていた・・・!
不戦敗で部を失った数々の高校の恨みをこの私が晴らす・・・!」
海野「どなたかはよく存知ませんが・・・風間ケイトさん、感謝します・・・!」
花原「・・・でも、まだ2人足りないわよ・・・!」
ちおり「ねえ、なんで3人でこなかったの・・・?」
ケイト「・・・え?」
その時、コートに理央と葛城が現れる。
葛城「私たちもいるわ・・・」
海野「!!ゆ・・・ユリちゃん・・・!!??なんでここに・・・」
ちおり「第1話のお姉さんだ!!」
葛城「・・・海野さん・・・謝って済むことじゃないけど・・・ごめんなさい・・・」
海野「・・・え?」
葛城「・・・うちの学校の遠征費を盗んだのは・・・あなたよ!」
九頭を指さす葛城。
葛城「海野さん、覚えてない・・・?
この子はうちの学校のバレー部でマネージャーをやってたりりあよ。」
海野「あ・・・確かに・・・!船であった時、どっかであったことあるなって思ったの・・・!」
葛城「あんたはコインロッカーに遠征費を保管させ、カギを紛失したと嘘をつき遠征費を盗んで転校した・・・そしてその罪を海野さんになすりつけたんだ・・・!」
九頭「記憶にないわね・・・」
こちらに歩いてくるさくら「それは通用しないんじゃない?昨日もやってたんだから・・・」
九頭「しょ・・・証拠はあるのか!」
理央「・・・私の動物たちが全部見てたよ・・・」
病田「私もコインロッカーにくるりりあちゃんを見ました・・・」
九頭「うそでしょ・・・!」
さくら「・・・私は病田先生にこうお願いしたの・・・あえて騙されてやれ、と・・・」
九頭「・・・騙しやがったな・・・!」
さくら「私とやりあうには役不足だったわね、小娘・・・」
花原「なんか、続々人が増えているけど・・・いったいどういうこと?さっぱりわからないわ・・・」
海野「で・・・でも、これで9人集まった・・・理央ちゃんも来てくれてありがとう・・・!」
理央「いえいえ。都会の動物もかわいいですね・・・」
さくら「・・・これで文句はないわね、審判?」
黒服「ああ。」
さくら「さあ、あなたが大好きな9人制バレーをしましょう・・・」
九頭をにらみつける、ケイトと理央と葛城
葛城「・・・9人制は確かローテーションはないはずよね?
海野さん・・・私たち3人を前衛にしてくれない?
私は勝ち負けにはこだわらないけど、スパイクで時速150㎞が出せるわ・・・」
理央「いいですね・・・本当の弱肉強食を教えてあげましょう・・・」
ケイト「成敗・・・」
怯える九頭「じょ・・・冗談じゃないわ・・・!
こんな試合やってられるか!」
上武高の部員「で・・・でも、試合を放棄したらうちの部は廃部に・・・!」
部員「そんなのいやです・・・!!」
九頭「うるさい!なら、あんたたちで勝手にやってなさい!私は帰る・・・!!」
コートから逃げ出そうとする九頭。
破門戸「おやおや・・・彼女ですか・・・レイさんが言っていたスポーツマンシップのかけらもないお馬鹿さんというのは・・・」
狩野「はい・・・」
九頭「あんたは・・・」
破門戸「・・・連れて行きなさい。」
狩野に取り押さえられる九頭「ちょっと・・・!離してよ・・・!」
破門戸「安心なさい。警察には突き出しませんよ。」
九頭に微笑む狩野「・・・うれしいわ・・・やっとあなたを殴れる。」
絶望する九頭「・・・・・・!!」
ちおり「クズの部長いっちゃったよ?」
花原「うん・・・」
海野「せっかく再会できたのにな・・・」
・
さいたまスーパーアリーナを後にする白亜高校の面々。
病田のあとを追ってくる鶴橋。
「病田先生・・・!」
病田「美羽ちゃん・・・」
頭を下げる鶴橋「ありがとうございました・・・わたし・・・先生がいなかったら・・・今頃は・・・」
病田「わたしの方こそ美羽ちゃんに会えてよかった・・・
わたし・・・教師としてもう少し頑張ってみます。」
鶴橋「先生のこと・・・一生忘れません。・・・また、会えますよね?」
微笑む病田「待っています・・・職員室で机を並べられる日を。」
・
白亜高校
くしゃみをする羽毛田校長「はくしょい!」
京冨野「校長・・・花粉症ですか・・・?」
羽毛田「はは・・・失敬・・・」
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