『青春アタック』脚本㉚愛月撤灯

市営団地。
ホステスのような格好の派手な女が男を連れ込む。
女「愛してるわ♡」
若い男「ぼくもさ。」
室内でいちゃいちゃしている男女。
襖が開いて、女の子が入ってくる。
女の子「・・・お母さんおかえり・・・あ、まちがえた・・・」
もう一度襖を閉める女の子。
気まずい男女。

女「ダメじゃない。お店のお客さんには、こりん星出身の24歳独身という設定で押し通してるんだから・・・」
女の子「ご・・・ごめんなさい・・・」
女「夕食代は渡したでしょう?夜は出来るだけ、外に行っててくれないかな。」
女の子「・・・はい・・・」
女「・・・もう少しの辛抱よ・・・もう少し辛抱すれば・・・あんたにも最高のパパができるから。
いいわね?一咲。」
女の子「・・・うん。」



月明かりの下で時間を潰す小早川。
駅では警官に補導され、コンビニではやんちゃな男の子に絡まれる。
しかたなく団地に帰ってくるが、部屋に明かりがついている。
小早川「・・・まだか・・・」
団地の外で体育座りをして待っている小早川。

数時間後。部屋の電気が消える。
家に帰ってくる小早川「・・・ただいま・・・」
暗い部屋で泣いている母親「・・・また体目当てだった・・・くそう・・・次だ・・・!」
母親を抱きしめる小早川「・・・お母さん・・・」

小早川(・・・わたしは、こんな人にはならない・・・運命の相手を見つけるんだ・・・)



夜やることがないので、パーカーを着て、スパッツを履く小早川。
深夜のジョギングということにすれば、補導対象になりづらいことを思いつく。
月明かりの下で、ひたすら公園のジョギングコースをぐるぐる走る小早川。
時間が経つのも忘れて走っていると、やがて朝日が登ってくる。
マラソン選手のように呼吸をする小早川「はあはあはあ・・・」

そのまま、早朝に新聞配達を始める小早川。
雨の日も風の日も雪の日も、新聞を配達し続ける小早川。
配送センターのおじさん「感心な子だなあ・・・」

小早川(朝の5時半・・・この角を曲がった、小さな公園に・・・あの人はいつもいた・・・)
公園で孤独にポージングを決める若かりしマッスル山村。
小早川(あの人も・・・きっと私と同じで、家に入れない事情があるんだ・・・
がんばろうね・・・マッチョさん・・・)
笑顔になり、山村の公園を通り過ぎる小早川。



現在――
体育館
小早川「なんとかすべてのバイトのシフトを調整できました・・・!」
山村「はは・・・それはめでたい・・・」
海野「はい。これが小早川さんのユニフォーム。」
小早川「わあ、ありがとうございます・・・!」
さくら「そいで、リベロを誰にするかだけど、リベロはレシーブを専門とするポジションなので必然的に海野さんかブーちゃんになる。しかし、リベロは前衛時にプレーに参加ができない。
このチームで2番目に身長があるのは海野さんよ・・・
よって、ブーちゃんにリベロの大役を任せるわ・・・!」
ブーちゃんがリベロ専用のユニフォームを受け取る。
さくら「一同拍手・・・!」
拍手するメンバーたち。
海野「頑張ってねブーちゃん・・・!」
さくら「ブーちゃんのプレーは常に安定しているから心配ないっしょ。
バレーボールが身長の高いやつだけのスポーツじゃないことを知らしめてやりなさい。」
手を上げる小早川「あの・・・わたくしは何をすればいいんでしょうか・・・?」
海野「小早川さんはバレーボールはやったことある?」
小早川「ごめんなさい・・・そもそもスポーツ経験がないんです・・・」
山村「だから言ったではないか。
スポーツテストの結果などでメンバーを決めるなど荒唐無稽ぞ。は~はは!」
さくら「・・・小早川さん。
バレーさえ覚えてくれれば、あんたたちの結婚式の仲人をすることを約束するわ・・・」
目の色が変わる小早川「あたし・・・バレーに命をかけます・・・!!」
山村「・・・鬼である!鬼監督である!!」



営業再開した学食
さんま定食を食べながら花原「やっぱりブーちゃんの料理はどこの外食よりも美味いわ・・・」
メザシをかじるちおり「うめ~!」
花原「でも、あの小早川さん?ちょっと華奢だけど、けっこう可愛い子じゃん。」
海野「性格も健気だしね・・・」
花原「正直、山村くんなんぞにはもったいないと思うけど・・・なんで避けるようなことしてんのよ。」
骨も全て食べるちおり「うめ~!!」
マッシュポテトを食べる乙奈「そうですよ・・・女性に恥をかかせるなんて・・・山村さんらしくありませんわ・・・」
山村「・・・確かに彼女の好意は嬉しい・・・しかし、乙女たちよ・・・諸君らに問いたい。
愛とは何だ?」
とまどう花原「・・・え?そ・・・それは・・・海野さんあたりが詳しいんじゃ・・・」
あわてる海野「いや・・・私もバレーボール一筋で男性経験が・・・乙奈さん・・・」
乙奈「慈悲の心ですわ・・・常に弱い立場の人に寄り添い・・・共に歩むことです・・・」
花原「さすが実家が教会・・・!」
乙奈「愛の宗教ですから・・・」
山村「ならば・・・彼女を愛するためには、必ずしも結婚をして添い遂げる必要はないのではないか・・・?私はみなのアイドル、マッスル山村なのだから・・・」
花原「いや・・・別にあんたはみんなのアイドルでは・・・」
乙奈「・・・なら、しっかりと振っておやりなさい。」
花原「乙奈さん・・・?」
乙奈「それも相手を慮ることですわよ・・・さもないと・・・取り返しのつかないことになります。
わたくしは・・・それで大変な目にあったから・・・」
山村「いや・・・振っているのだ・・・で、その場では泣いて「諦めます」とかいうのだが・・・
明日にはまた頬を赤らめラブレターを持ってくるのだ・・・かれこれ半年以上だ・・・
証拠をお見せしよう・・・」
みかんのダンボール箱を机に乗せる山村。
海野「ええ!?これがすべてラブレターなの!!??」
山村「毎日振り続けているからな・・・」
花原「・・・なんて前向きな少女なんだ・・・!」
乙奈「あの子の異常性が垣間見えますわね・・・」
山村「このマッスルも、毎日乙女の涙を見せられては、辛くてな・・・
でも、翌日はケロッとしているから、あやつにはファミリーコンピューターで言うところのリセットボタンがついているのではないかと疑っている。」
花原「よし・・・山村。警察に相談しよう・・・」
海野「いやいや・・・!せっかくチームメイトになったのに、警察に突き出しちゃまずいよ・・・!」



図書室
うきうきしてラブレターを書いている小早川「さあ~て・・・今日はどんな内容にしようかな・・・」
司書教諭の病田「あの・・・もうそろそろ閉館なんですが・・・」
小早川「先生・・・!先生は高校時代に好きな人とかいたんですか・・・?」
病田「ま・・・まあ・・・」
小早川「どう告白したんですか?それが今の旦那さんなんですか・・・!?」
病田「・・・へ?ち・・・ちがいますけど・・・」
小早川「旦那さんはどんな人なんですか?どうやって結婚したんですか・・・?」
病田「そ・・・そういうのは、男性に聞いたほうが・・・」
小早川「たしかに・・・!」



職員室に入ってくる小早川
京冨野「なんだ・・・出入りか・・・!?」
小早川「京冨野先生・・・校長先生・・・ご結婚は?」
京冨野「ああ。娘がいるぞ。」
羽毛田「私にはもう孫もいますけど・・・」

小早川のラブレターを読む京冨野
「お嬢ちゃん・・・これじゃあいけねえな・・・」
小早川「どこがまずいのでしょうか・・・」
赤ペンで添削をする京冨野「例えば、ここ。第2段落の4行目。
あなたは私を妻とし、健やかなる時も病める時も・・・・愛し、敬い、助け合い
死が二人を分かつ限り愛することを誓いますか?
・・・ってこれじゃあ結婚式じゃねえか・・・」
羽毛田「いけませんね・・・これでは恋文というよりは誓約書だ。
ここの、「母子の健康を考慮して、少なくとも25歳までには一人目が欲しいのです」の一文も、けっこうな異彩を放っていますね・・・」
小早川「個人的には自信作だったんですけど・・・」
京冨野「お嬢ちゃんが、結婚に夢や理想を抱く気持ちは分かる。
だが、男にとって結婚とは現実と責任だ。そう簡単に二つ返事はできねえ。」
小早川「でもそれが愛なんじゃないですか?私を先輩が愛しているなら・・・」
きょとんとする羽毛田「・・・むこうは愛しているんですか?」
小早川「・・・え?それは・・・たぶん・・・」
京冨野「・・・だいたい、お前さんらは学生だろ?
普通は、まずは彼氏彼女からなんじゃないか?なぜそんなに事を焦るんだ?」
羽毛田「ええ・・・人生の伴侶は真剣に選ぶべきですよ。
あなたをずっと守ってくれる誠実な人なのかをよく判断して・・・」
すると泣いてしまう小早川
「もう、10年以上も考えて真剣に決めたのに・・・ひどい・・・!え~ん!!」
あわてる羽毛田「あ・・・そうでしたか、す、すいません・・・!」
京冨野「校長、謝る必要はないです。
いいか、お嬢ちゃん・・・金も稼いだこともない学生が、結婚生活を甘く考えるんじゃねえ・・・!
所帯を持つということはな、組を構えるということと同じで覚悟がいるんだ・・・!」
小早川「・・・私は朝から晩まで誰よりも働いて、結婚資金も貯金したのに・・・!うえ~~ん!!」
平謝りする京冨野「そうか・・・悪かった・・・!指を詰めるから許してくれ・・・!」
慌てて止める羽毛田「京冨野先生、止めてください・・・!」
その様子を隣の席で会計処理をしながら無言で見つめている華白崎(・・・この女はヤバイ・・・)



放課後
下校する学生たち
山村の下駄箱に案の定ラブレターが入っている。
物陰から下駄箱の山村を見つめている小早川。
山村「・・・さあて今日の夕刊はどんなかな・・・」
その時、ラブレターを山村から取り上げる華白崎。
山村「むう・・・委員長・・・?」
物陰にいる小早川に近づいてラブレターを突き返す華白崎
「あなた・・・いい加減にしなさいよ・・・
相手が優しい山村先輩だからいいものを・・・一歩間違えれば、これは犯罪よ。」
小早川「ひどい・・・!あなたに私たちの何がわかるんですか・・・!」
華白崎「あなたの一方的な行動で、相手が迷惑しているんですよ?」
小早川「そうなの・・・?」
山村「いや・・・だから毎日そう言っているではないか・・・」
華白崎「それに、先生方がおっしゃってくれたように、あなたは家庭を持つことを軽く考えている。
男に甘えて生きられることが結婚ではないのよ・・・
あなたは、家事や育児の経験はあるの?」
小早川「・・・ないです・・・」
華白崎「なら二度と、結婚だなんて言葉を軽々しく口に出さないで欲しいわ。
それに、男の人は山村先輩以外にもたくさんいます。いい加減諦めなさい。」
小早川「次を当たれと・・・??」
華白崎「しかたがないでしょう・・・」
涙目になる小早川「それじゃダメ・・・それじゃダメなの・・・!
わたしは初恋の人と結婚しなきゃダメなの・・・!」
華白崎「そんな自分勝手な言い分の何が愛よ!」
泣き出す小早川「ダメなの~!うえ~ん!!」
胸が痛む山村。
女の涙にひるまない華白崎「泣くんじゃない!」
小早川「先輩の返事を聞かせてください・・・」
山村「われより君を幸せにできる男もいようぞ・・・」
泣きながら走り去ってしまう小早川「ばか~!!」
山村「・・・さすが50m走が6秒5だけあるな・・・あ、転んだ。」
華白崎「風紀委員に頼んで、ラブレターをひと月に最大1通までとするような条例をしいてもらわなくては・・・」
山村「・・・委員長すまなかったな。」
華白崎「いえ・・・嫌われるのは慣れていますので。」



体育館
海野「ええっ!?帰っちゃったの・・・!?」
華白崎「上履きのまま校門から出て行ったので、判断が難しいですが・・・
おそらく下校したのかと。」
花原「初日から幽霊部員とは・・・なかなかやるわね・・・」
ちおり「負けてらんねーな!」
花原「はりあわなくていいから・・・」
海野「本当に超高速で帰宅した・・・どうしよう・・・」
山村「部長よ、委員長を責めないでくれ。
彼女は、同じ女性という立場から、少女に失恋の味を教えたのだ。」
花原「たしかに、カッシーに口で勝てる学生はこの学校にはいないからね・・・」
乙奈「第一部の無双ぶりは今や伝説ですわ・・・」
ちおり「でも面白い子だよね!
今すぐ結婚しなくても、家も家族も、もうあるのにね!」
花原「・・・お前ならわかるけどな・・・」
ちおりの言葉でハッとする山村「・・・そうか・・・そうだったのか・・・
部長、私も早退していいかね?」
海野「・・・え?」
体育館を慌てて出ていく山村「生原会長・・・感謝する・・・!私が愚かであった・・・!」



小さな公園のブランコに乗って震えている小早川。

公園に入ってくる山村
「この公園でビキニパンツやプロテインを毎日そっと置いて行ってくれたのは、君だったんだな・・・」
小早川「・・・先輩・・・」
山村「3月とは言えまだ寒い・・・風邪をひくぞ・・・」
小早川が置いていった荷物とコートを渡す山村。
小早川「・・・ありがとうございます・・・」

並んでブランコに乗る2人。
小早川「何年も、誰もいない朝の街を走ってた・・・
この公園を通って最後の家に新聞を入れるとき・・・
いつも先輩がいました。
家に帰れない子は・・・私だけじゃないんだ・・・
そう思うと、勇気が出て・・・」
山村「なるほど・・・(そういう性癖であったとは言えまい・・・)」
小早川「わたしは・・・あたたかい家庭に憧れていただけなのかもしれない・・・
華白崎さんが言うとおり・・・現実から目を背けて・・・」
山村「ならば・・・キミが求めていたのは、このオレではなく・・・お母上の愛なんじゃないか?」
小早川「でも・・・どうすれば・・・」
山村「・・・お母上に手紙を書くのだ・・・毎日毎日・・・心を込めてな・・・きみの得意技であろう?」
小早川「・・・手伝っていただけますか・・・?」
微笑む山村「このマッスルは、か弱き乙女の味方・・・当然だ。」
目を潤ませる小早川「・・・私の思い込みじゃない・・・先輩はやっぱり優しい・・・」
山村「ラブレターの返事だが・・・今しばらく待ってくれないか・・・
この未熟な私が結婚できるくらい立派な大人の男になれるまで・・・」
笑顔で小早川「はい・・・お互いに・・・」



校外走をする白亜高バレー部
バレー部に戻ってきた小早川「はっはっはっ・・・みなさん・・・あと1周です!ファイト!!」
なんとか小早川についてくる海野「ふうふう・・・これを毎日やってたなんて・・・」
華白崎「体がなまってましたね・・・情けない限りだわ・・・」
吐いている花原「おええええ・・・!」
道端でバテている、運動経験のないちおり、花原、乙奈、ブーちゃんの4人。
道草を食うちおり「うめえ・・・」
その様子を見るさくら「来年はホノルルマラソンでも参加させるか。」
校門でストップウォッチを持つ山村「人は走り続けるしかないのだ・・・人生という名のトラックを。」
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