『青春アタック』脚本㊺背水之陣

サービスエリアに入る海野。
狩野「海野さんナイスサーブ!」
海野「うん・・・!」
相手コートに強力なジャンプサーブを打つ海野。
レシーブする咲の顔が歪む「あたた・・・!」
トスする幹「咲ちゃん・・・!」
アタックをする咲「だ・・・だいじょうぶ!」
スパイクは海野を狙ってくる。
レシーブする海野。
芝「そう・・・海野さんにレシーブをさせ続ければ、殺人スパイクは封じられる・・・」

スクールファイター「コートチェンジ!」
実況「聖ペンシルヴァニア4点対白亜高校3点で合計7点になりましたので、コートが交換されます・・・!」
ベンチに戻ってくる選手たち。
さくら「あの鮎原姉妹相手によくやった・・・!」
山村がスポーツドリンクを配る。
海野「はあはあ・・・あっちのコートは眩しかった・・・」
乙奈「それなら、これを差し上げますわ。アイドル時代に使っていた偏光グラスです。」
海野「いいの・・・?」
乙奈「はい。わたくしにはもう素性を隠す必要はないので・・・」
サングラスを受け取る海野「ありがとう・・・大切に使うね!」
ちおり「ねえねえ!
あの地面に埋まっちゃうスパイクって体育館でやったらどうなるの・・・?」
狩野「体育館の床は、人体よりも硬い・・・私から言えるのはそれだけです・・・」
花原「いやいや・・・グロイから・・・」
大此木「本当に死ぬじゃねえか・・・」
気象観測をする4組女子
「花原さん・・・これから、こちら側のコートを風上に強い海陸風が吹きます。」
女子が付けていたヘッドセットを受け取ってコンソールをいじる花原
「ちょっと見せて。
ということは・・・相手は強い向かい風で戦うのね・・・海野さん、これはチャンスよ。」
華白崎「ええ・・・監督。ビーチバレーはポジションはないんですよね?
つまり、相手がサーブをしたら・・・」
さくら「あなたたちの好きにやりな。」
海野「どういうこと・・・?」
華白崎「・・・殺人スパイクが打ち放題です・・・」

鮎原姉妹側のベンチ。
咲の腕にコールドスプレーをかける芝「・・・だいじょうぶ・・・?」
咲「なんか、どんどん色が変わっていくなあ・・・」
芝「無理だけはしないでよ・・・咲ちゃん・・・」
咲「無理をしているのは、私だけじゃない・・・」
芝「・・・え?」
幹「そうね・・・あの狩野さんって子・・・かすかにだけど、片脚をかばっている・・・
過去に大きな故障をしたんじゃない・・・?」
咲「こんどはこっちが向かい風・・・相手はこの有利な立場を利用するはず・・・」
芝「・・・トラップを仕掛けるのね。」
幹「表現が良くないなあ・・・ティラノサウルスと素手で戦う奴はいないでしょう?」

スクールファイター「ゲーム再開!ファイッ!!」
サービスエリアに入る咲。
咲「風が強くなってきた・・・ついてないわね・・・」

サーブレシーブ体制に入る海野
海野(この風では、いくら咲ちゃんでもサーブの球速は出ない・・・)
前衛の狩野がサインを送って、後ろの海野に目をやる。
頷く海野。
海野(華白崎さんの作戦・・・可能かもしれない・・・)

幹「あまり露骨に打たないように・・・」
咲「わかってますよ・・・!」
海野に向けて無回転フローターサーブを打つ咲。
向かい風でボールに勢いがない。

海野「いまだ・・・!」
すると、海野が前衛に出て、狩野が後衛に下がる。
狩野が咲のサーブをレシーブする。
海野「間に合った・・・!」
狩野に十字トスをする海野。

芝「気をつけて!殺人スパイクよ!!」

強力な殺人スパイクをはなつ狩野。
彼女のアタックに、鮎原姉妹はレシーブすることを諦め、その威力を呆然と見つめている。
砂地に埋まってしまうボール。
幹「はあはあ・・・怖かった・・・まるで隕石ね・・・」
咲「でしょ・・・?どんまい、どんまい!海野さんが十字トスをしたら、もうそのラリーは捨てよう!」
幹「ええ・・・腕を骨折するよかマシよ・・・コントローラーまだ握りたいもん・・・」
実況「なんてことだ!狩野選手の殺人スパイクに鮎原姉妹は手も足も出ない!」

花原「よっしゃあ!作戦成功!!」
華白崎「花原さん・・・この海風はどれくらい続きそうですか・・・?」
花原「この気圧配置だと・・・少なくともあと10分は・・・」
華白崎「ならば、10分のうちに、こちらのコートで7点を取ってしまいましょう・・・!」
海野「レイちゃん・・・いける?」
狩野「もちろん・・・」

気象条件に助けられて、次々に殺人スパイクを決めていく白亜高校。
鮎原姉妹は、殺人スパイクを見ていることしかできない。
スクールファイター「コートチェンジ!二回目!!」
実況「なんてことだ!殺人スパイクの猛攻で白亜高校が7連続ポイント!!
鮎原姉妹を大きく引き離した~!大番狂わせです!!」
観客「・・・なんか、あれってずるくね?」
観客「ああ・・・チート技すぎるだろ・・・」

華白崎「もしかして・・・この世論の形成が相手の策略・・・?」
花原「だとしたら、相手は私たちを甘く見ているわね。
こんなもん泥水すすって生きてきた私たちには屁でもないわよ・・・」

コートを移動する鮎原姉妹。
咲「どうする・・・?そろそろ・・・」
幹「いや・・・まだ早いわ・・・機を誤ったら、もう二度と仕留められない・・・」
咲「まだ慌てる時間じゃないってことね・・・」
幹「それより・・・できそう・・・?」
ニヤリとする咲「コンビネーション技は双子キャラの得意分野でしょう?」



コートが変わっても白亜高校の快進撃は続く。
乙奈からもらった偏光サングラスのおかげで、鮎原姉妹のビキニが反射してもボールを返せる海野。
芝「・・・誰よ、あんなサングラスを渡したのは・・・」
狩野の殺人スパイクをレシーブせずに見つめる鮎原姉妹。
スコアボートは「聖ペンシルヴァニア7―白亜14」となり、テクニカルタイムアウトになる。
スクールファイター「テクニカルタイムアウト&コートチェンジ3回目!!」

さすがに違和感を感じる白亜高陣営。
鶴橋「あの鮎原姉妹がダブルスコアで負けてる・・・?」
スバル「どう思う・・・りかぜちゃん。」
りかぜ「ええ・・・分析している。」
有葉「あの殺人スパイクを?分析したところでレシーブできるんですか?」
シマダ「前脚がへし折れちゃいます・・・」
アライ「骨が太いお前ならいけるんじゃねえの?」
首を振るクマガイ。
オジカ「あの殺人スパイクを攻略できるのなら1セット落とすのは安いものなんだろ・・・」
アライ「攻略できるのならな・・・」
オジカ「ならば、ヒントをやろう・・・
お前は必殺のアタックカウンターを1ゲームでいくら繰り返せるんだ?」
アライ「・・・まさか・・・」
葛城(・・・なんでこの動物たち、普通に会話してるの・・・?)



スコアボードは「聖ペンシルヴァニア12―白亜20」となり、とうとう白亜高校のマッチポイントになる。
海野「よし・・・マッチポイントだ!このまま1セットとっちゃおう!」
狩野「ええ・・・!」

花原「・・・なんか向こうさ、勝負を投げちゃった感じがしない?」
小早川「え?ええ・・・」
乙奈「咲さんの腕のミミズ腫れが痛々しいですわ・・・」
山村「とっくに、相手は限界だったのかもな・・・」
華白崎「そうだといいのですが・・・」
大此木「それはどうかな・・・
あの鮎原姉妹があっさりセットを落とすはずがねえ・・・」
スクールファイター「勝負あった!第一セット・・・勝者白亜高校!!」
ちおり「あっさり落としたよ。」
大此木「・・・・・・。」
花原「おっしゃ~!」



セット間のタイムアウト
聖ペンシルヴァニア陣営。
咲「あたた・・・まあ、健闘したほうでしょ・・・」
幹「ナイスファイト、咲ちゃん。
・・・で、第一セットに殺人スパイクは何度打った?」
カウンターを見せる芝「13回。」
幹「もう十分ね・・・やってみるか。シミュレーションはもうばっちり?」
咲「うん・・・でも、気をつけてよ、幹姉まで腕をやられたら・・・」
幹「こういうのはね、覚えゲーなのよ。13回もリプレイすれば、どんな弾幕も対処できるわ。」

白亜高校陣営
花原「狩野さん、本当にうちに加入してくれてありがとう!
あんたのおかげでドリームジャンボ12億に王手よ!」
狩野「それは光栄です・・・」
興奮して狩野に抱きつく花原「ポーリュシュカポーレ!」
狩野「ちょ、ちょっと重い・・・!」
その時、バランスを崩して倒れかける狩野。
花原「あっ、ご・・・ごめんなさい!」
桃源楼のチャーハンをブーちゃんと食べながらちおり「本当に余計なことするよね!」
花原「なによ、謝ったじゃない・・・」
狩野「優勝したらハグしてください・・・」
乙奈「海野さん、そのサングラス似合っていますわ。」
海野「これのおかげで絶好調。このまま優勝するね。
レイちゃんと私は最高のコンビだから・・・」
狩野「海野さん・・・」
手を握り合う海野と狩野。

華白崎「監督・・・第二セットの作戦は・・・?」
さくら「・・・・・・」
華白崎「監督?」
さくら「・・・・・・?あ、ああ・・・そうね・・・日焼けに注意して頑張って。」
山村「・・・それだけか?」
さくら「え~と、ポロリにもくれぐれも気をつけて・・・」
海野「先生・・・わたしたちスクール水着なんで、多分ポロリはしません・・・」
ちおり「・・・というか、さっき寝てたよね?」
さくら「ばっ・・・なに言ってんのよ~ちおりん・・・
生徒の大事な決勝戦で寝おちするわけないじゃない、やだなあ。」
華白崎「昨夜は何本缶チューハイをあけたんです?」
さくら「そういうことは教師の守秘義務に当たるんで教えられないわ・・・」
華白崎「なんの守秘義務ですか・・・」

その様子を遠くから見つめる芝。
芝(さくら・・・もしかして本当に体調が悪いのでは・・・いや・・・
それすら罠かも・・・わ・・・わからない・・・!)

スクールファイター「それでは第二セットをはじめる!両者前へ!!」

サービスエリアに入る咲(この一発勝負の攻略法が失敗したら、私たちはもう終わり・・・
いや・・・終わりって何?むしろ、始まりじゃない・・・
私たち姉妹を閉じこめた、がんじがらめの鳥かごからの・・・)
後ろを振り向いて妹を見つめる幹(・・・あなたならやれる・・・あなたの二つ名は・・・ランサー・・・!
一撃必殺の突きをするのよ・・・!)
咲がジャンプサーブを狩野に繰り出す。

大此木「海野ではなく狩野を狙った・・・!?」
花原「これで殺人スパイク確定よ!」

狩野が飛び込みレシーブで海野にボールを上げると、海野が手をクロスさせて十字トスの体勢に入る。
海野「レイちゃん・・・!」
飛び上がって、強力無比な必殺アタックをぶちかます狩野。
その殺人スパイクをなんとオーバーハンドパスで受けようとする咲。

大此木「な・・・なんだって~~!!」
山村「いや・・・前頭骨は人間の骨でも強度が高い・・・!」

咲は額を使って殺人スパイクを受けて、無理にレシーブをあげようとせず、スパイクの威力を減衰させて、後ろに控えた姉にボールを送る。
咲「ぐええええ!砲弾を頭突きしたようよ・・・!幹ねえお願い・・・!」
それでも、強力な剛速球が幹に襲いかかる。
幹「見てなよ・・・これがあたしたちの・・・」
幹が渾身のレシーブで綺麗に咲にトスを上げてしまう。
幹「ツインレシーブよ!!」

海野「そんな・・・!殺人スパイクをレシーブした・・・!!!」
ショックを受ける狩野「・・・!」

幹の渾身のトスを受けて、咲が前方に低く飛び、全身の体重を乗せたフェンシングの突きのようなスパイクを打つ。
咲「もらった・・・クードロア!!」
大此木「なんだ、あの低いアタックは!」

狩野「しまった・・・!」
レーザービームのような弾道はネットをかすめて、狩野の脚に勢いよくぶち当たる。
すると、狩野の脚は真っ二つになり、ひきちぎれた狩野の脚が空中に飛んで、海野の顔面に激突してしまう。
粉々になる海野のサングラス。海野の顔から血が吹き出す。
砂場に崩れ落ちる片脚の狩野。

花原「・・・!そんな・・・!!」
会場から悲鳴が上がる。
手を振るスクールファイター「ドクターストーップ!!」

青ざめる鮎原姉妹。
幹「咲ちゃん・・・誰もそこまでやれとは・・・」
咲「うそでしょ・・・バレーボールで人体破壊なんてできるわけが・・・」
幹「・・・あの子が片足をかばっていたのは気づいたけど・・・義足だったんだ・・・」



車椅子を飛び降りて、海野の手当をするさくら「マッスルくん!消毒液・・・!」
救急箱を開ける山村「了解!」
血まみれの海野の顔面にライトを当てるさくら「海野さん・・・目はどう?痛い?」
海野「うう・・・眉を切っただけです・・・多分だいじょうぶ・・・」
ピンセットで顔に刺さったガラスやプラスチックを引き抜くさくら。
さくら「はあはあ・・・こんなことになるなんて・・・!」
海野にぶつかり、木っ端微塵になった狩野の義足。
狩野「ご・・・ごめんなさい・・・義足のこと・・・みんなに言えば・・・」
さくら「そんなこといいって・・・狩野さんは怪我はない?」
頷く狩野。
涙目になるさくら「本当にごめん・・・みんなあたしのせいだ・・・
可愛い生徒をこんなに傷つけるなんて・・・ごめん・・・」
花原「さくら先生・・・落ち着いてください・・・らしくないですよ・・・」
ちおり「うん、スパイクがあたって脚がちぎれるなんて誰も予測できないもん。」
さくら「はあはあ・・・」
さくらの背中に優しく手を置く芝「さくらちゃん・・・深呼吸・・・」
さくら「・・・芝先輩・・・」
芝「監督のあなたが冷静にならないでどうするの・・・生徒が不安になるわよ・・・
あと、やっぱり仮病だったのね。」
海野「先生・・・私だいじょうぶですから・・・」
咲「海野さん・・・狩野さん・・・本当にごめんね・・・!」
海野「謝る必要ないって・・・それよりも、咲ちゃんもおでこ大丈夫・・・?」
咲「全然無傷。わたしは趣味がヘッドバッドだからさ。」
幹「うそつけ。PC原人か。」
さくら「・・・もうたくさんだ・・・私・・・これ以上は・・・」
芝「あなたは何を言ってるの?試合はまだ始まったばかりよ・・・」
さくら「・・・え?」
ちおり「・・・!」
芝「希望を捨てなければきっと勝てるわ・・・」
ちおり「し・・・しろったま子さん・・・?しろったま子さんなんですか!?」
芝「・・・え?だれ??」
ちおり「あのアニメ・・・実話だったんだ!!わーいわーい!!
あたし、本物のしろったま子さんに会っちゃった~!」
はしゃぎまわるちおりを見て、思わず笑ってしまうさくら「はは・・・なんなんだか・・・」
芝「で・・・どうするの?試合の続きは・・・
ビーチバレーは登録ペアが負傷した場合に限って・・・ペアを変更することができるけど?」
海野「先生・・・続けましょう・・・わたし・・・希望を捨てたくない・・・!」
ちおり「海野さん、ちがうよ!正しいポースはこうで・・・」
右手の親指を立てて、左手を腰にやるちおり「希望を捨てなければ・・・きっと勝てるわ!!」
花原「・・・馬鹿だろコイツ・・・」
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