『ラストパーティ』脚本⑦

甲冑を着けるヨシヒコ。
ランスを渡すゼリーマン「ほいで、これが槍です。」
ヨシヒコ「・・・めちゃくちゃ重いな・・・」
ゼリーマン「やっぱり俺が代わりましょうか??」
ヨシヒコ「・・・やりたいのか??」
そう言うと、馬のドードー鳥にまたがるヨシヒコ。
ゼリーマン「ずいぶん脚が短い馬っすね・・・」
手綱を引くヨシヒコ「でも、脚は速そうだ・・・どうどう・・・」

支配人室からトーナメント会場を見下ろすメド
(バカね・・・あのデュラハン卿に勝てるわけがないじゃない・・・
あまりに圧勝しすぎてギャンブルとして成立せずブリジッド政府に禁止されたくらいなのだから・・・
それに、あの異世界人が仮にチート技を使用しても、ベット額の5倍は絶対に不可能・・・
デュラハン卿はケンタウロス族・・・そう、下半身が馬・・・!
絶対に落馬はないのよ・・・)
メド「・・・それでは両者スタンバイが完了したようです・・・!
コロシアム中央のウィル・オー・ウィスプが赤から青になったらスタートです!!
エト・ヴ・プレ?(準備はいい?)」

青コーナー
ゼリーマン「旦那!リラックス!一騎撃ちは臆病風邪に吹かれたほうが負けます!
負けたって、せいぜい肋骨粉砕骨折だ・・・!人生、生きてりゃ勝ちよ!!」
ヨシヒコ「にわかに緊張してきたぞ・・・」

赤コーナー
ミノタウロス「人間の体は信じられないくらいひ弱だ・・・加減はしてくれ・・・」
デュラハン「私はプロだ。心得ている。さあ、正々堂々いざ勝負勝負!!」

ウィル・オー・ウィスプのシグナルが青に変わる。
メド「ア・ヴォ・マルケス・・・アロン!!(始め!)」
互いに突進するデュラハンとドードー。
ぐんぐん接近していく・・・
が、デュラハンのオーラに臆して、ドードーがくるりと向きを変えて逃げ出してしまう。
慌てて手綱を引くヨシヒコ「おい!何処へ行く!!」
逃げ出すドードーをそのまま追いかけるデュラハン。
円形コロシアムをぐるぐると回る、追いかけっこが始まってしまう。
観客の大ブーイング。
スケルトン「ふざけんな~~!!もう骨がねえよ、バカヤロー!!!」
怒りが収まらないギャンブル狂の魔物たちが観客席からコロシアムに飛び降りて、追いかけっこに加わり出す。しっちゃかめっちゃかなコーカースレース。

その様子を呆然と見つめるサイクロプス「兄弟・・・この場合は勝敗はどうなるんだ?」
無線をかざすミノタウロス「姐御・・・無効試合ですか?」
メド「青の負けにしなさい!!これで24000ゴールドはいただきよ!」
勝敗をアナウンスしようとするミノタウロス「この勝負・・・」

そのとき会場に精悍な騎士が現れる。
騎士「待った!!」
ミノタウロス「なんだあんた・・・!大事なギャンブル中に!!」
すると、身分証を見せる騎士。
「王立捜査局主席捜査官のペルセウス警部補だ!
賭博目的のジュースティング開催は風営法で禁止されている!!
ただちに試合を中止し、おとなしくお縄に付けい!!」
サイクロプス「さ・・・サツだ!!!」
会場に悲鳴上がり、モンスターたちが逃げ出す。
しかし、巨大な盾を持った王立機動隊の騎士が会場になだれ込み、魔物の行く手を阻む。
モンスターたち「違法賭博は極刑だ・・・!もうやるしかねえ!!」
魔物と騎士たちが乱戦を繰り広げる。

メド「くそ・・・なんでここがバレたのよ!!」

ペルセウスがゼリーマンに近づく。
ペルセウス「寝返ってくれて感謝するスライムくん。
なかなかジュースティングが現行犯で押さえられなかったんだ。
これで私も警部になれる・・・」
ゼリーマン「礼はいい・・・約束の金は?」
ペルセウス「セリポス島の5万ゴールド金貨だ・・・持って行きなさい。」

その様子を眺めて怒りに震えるメド「あのクソゼリー・・・!はなからあたしをハメやがった!!」
すると、デスクの中にしまっていた尻尾を引き抜く。
尻尾の先にはごついガトリングガンがついており、窓越しにゼリーマンに一斉掃射を試みる。
メド「死に晒せええええ!!!!」

あわてて銃弾をかわすゼリーマン。支配人室のデッキを指差す。
ゼリーマン「あの人が主犯です・・・!」
ペルセウス「わかった!君は危ないから下がってなさい!!」
ゼリーマン「勇敢な警部補にアテナの加護があらんことを。」
ペルセウスは頷くと、剣を抜いてメデューサと戦いをはじめる。
ペルセウスなど眼中にないメド「待てやゼリー!!」
ペルセウス「お前の相手はこの私だ!!」
メド「どきなさいよ!!邪魔よ!!」

とうとう、コロシアムの壁に勢い余って激突してしまうドードー。
ドードーから落馬し地面に転がるヨシヒコ。
ヨシヒコ「あたた・・・!」
後ろを振り返ると、ランスを抱えたデュラハンが突進してくる。
デュラハンのランスが届く寸前、ペガサスに乗ったゼリーマンがヨシヒコの手を取って、ペガサスの背中に乗せる。
ペガサスはその白い翼を広げて、コロシアムの上空を飛んで行き、天窓を突き破って「ハリーハウゼン」を脱出する。
ゼリーマン「12ゴールドが4100倍になりましたよ。」
ヨシヒコ「馬に乗るのは誰でも良かったんだな・・・」
天窓を見上げるメド「覚えておきなさい・・・ゼリーマン!!」
その直後、ペルセウスに首を切られてしまうメド「ぐえええ!!」
振り返って微笑むゼリーマン「地獄で会おうぜ!」



美しい朝焼けの空を飛行するペガサス
ヨシヒコ「また、火事場泥棒でこんな白馬を盗んだのか・・・」
ゼリーマン「オレのたった一つの取柄なんでね・・・」
ヨシヒコ「金貨をもらうよりも、あの捜査官を味方につけた方がよかったんじゃないのか?」
ゼリーマン「ペルセウスって・・・何をした人か知ってますか?」
ヨシヒコ「・・・アキレス腱を痛めた人だっけ・・・?」
首を振るゼリーマン「あいつの知名度はそんなもんです。
それに・・・出世の為にオレみたいな薄汚ねえモンスターと司法取引するような奴だ。
信用ならねえ・・・警視総監を約束されたら親だって裏切りますよ。」
ヨシヒコ「なるほど・・・」
ゼリーマン「その点、旦那は信用できる。金でも地位でも動かねえ。
実直な兄貴だ。いや、愚直なのかな・・・?」
ヨシヒコ「・・・どうも。」
ゼリーマン「そんな強い信念のある人物はこの世界には貴重だ・・・
弱気を助け、強きをくじく気高い勇者を見つけないと・・・」
ヨシヒコ「そんな勇者がその金貨につられて仲間になるか?」
ゼリーマン「勇者はまっすぐすぎて、社会で冷遇されているもんです。
なのでだいたい金に困っている。」
ヨシヒコ「悲しい世界だな。」



サントノーレ修道院
「タックスフリー」の看板。
駐車場にペガサスの手綱を結ぶゼリーマン。
ドアを叩くゼリーマン「休憩。大人二名。」
ヨシヒコ「・・・モンスターを泊めてくれるのか?」
ゼリーマン「修道士はそんな差別はしません。宿泊料さえ払えば。」
扉の小窓が開く。
小窓の隙間からカギを出す修道士「この時間だと宿泊料金になるが・・・」
ゼリーマン「じゃあ、モーニング付けてくれや。」
修道士「スタンダード?デラックス?デラックスならミートパイに半熟卵が乗っかるけど・・・」
ゼリーマン「デラックスで。エールもくれ。」
修道士「あいよ・・・お熱い夜を・・・」
小窓を閉める。
ヨシヒコを見つめるゼリーマン。
ヨシヒコ「ぼくにそんな趣味はないからな・・・」

粗末なベッドのあるツインルーム。
ゼリーマン「二段ベッドだ!旦那!どっちにしますか?」
ヨシヒコ「わたしが上でいいかな・・・きみの体液が垂れてくるから・・・」
ベッドに転がるゼリーマン「ラジャー!」
シーツがにわかにびしょびしょになる。
ヨシヒコ「うまいぞ・・・机と筆記用具がある・・・」
机の上には、小鳥大の妖精がカゴに入っており、ほのかに明かりをともしている。
羽ペンをとるヨシヒコ。
ゼリーマン「誰かに手紙ですか?」
ヨシヒコ「冒険の記録をつけようと思ってね・・・
いや、冗談だ。コマキ社に手紙を転送する。
近くに転送ポイントがあるからね。」
ゼリーマン「手紙を送れば、向こうから加勢が来るとか?」
ヨシヒコ「・・・そんなものは期待してないが・・・
これが湯浅専務に届けば・・・少なくとも結城の妨害は防いでくれる・・・
あいつの嫌がらせで、小田さんは亡くなった。やつはその罪を償うべきだ。」
紙を丸めると、妖精をかごから出して、手紙を脚に括り付ける。
ヨシヒコ「向こうの中年のメガネをかけた紳士まで頼む・・・
しかし、アロハシャツの男には気をつけるんだ。」
妖精は頷くと、窓から飛んでいく。



夜が明ける。
修道院の食堂。
朝食のミートパイをがっつくゼリーマン。
その様子を宿泊客の紳士が見つめる。
新聞紙を開きながら紳士「巡礼かね?」
くちゃくちゃしてモーニングを食べるゼリーマン「この俺が巡礼者に見えるか?」
紳士「いや・・・むしろ罰当たりな軟体生物だ・・・出身は湖水地方かね?」
ゼリーマン「そんなとこだな・・・あんたは?」
紳士「ガリア大陸から。帝国軍の進軍に混ざってきたんだ。」
ゼリーマン「あんた・・・その見た目で軍人か?」
微笑む紳士「この私が軍人に見えるか??私は学者だよ・・・
ゴート大学の歴史学者でね・・・勇者学を研究している。」
ゼリーマン「・・・勇者学だって??あんた・・・勇者に詳しいのか?」
紳士「まあね・・・」
ゼリーマン「ズバリ、この世界で一番の勇者は誰だ?」
紳士「その勇者に会いたくて私はブリジッド領にやってきた・・・
かつて世界の崩壊を食い止めた伝説の勇者・・・」
ゼリーマン「おい、あんたもしかしてサー・ヴィンツァーの伝説を信じているのか?
ぎゃっはっは・・・!あいつはただのホラ吹き男爵だよ!
破滅の邪神ニャルラト・カーンを殺せるわけがない!」
紳士「では・・・なぜこの世界はまだ終焉を迎えていないのかね・・・」
ゼリーマン「答えは簡単だ。そんな邪神はそもそも存在しなかったんだ。」
紳士「では、ガリア大陸北東部をゴッソリえぐりとったエリスクレーターはなぜできた?」
ゼリーマン「ああ言えばこう言うインテリゲンチャだな・・・」
紳士「君が言うとおり、勇者といえどたかが人間・・・神は殺せまい。
彼の人柄に惹かれて優秀な戦士や高名な魔導師がパーティに加わったらしいが、邪神との戦いで生き延びたのはサー・ヴィンツァーだけ・・・彼は生き証人なのだよ。
私は歴史学者として彼の証言を後世に残す義務がある・・・」
ゼリーマン「ふうん・・・で、ヴィンツァーはどこにいるんだい?」
紳士「おそらく、ここからずっと北のローク地方だと思われる。」
ゼリーマン「じゃあ、あんたはそこを目指すのか?」
紳士「ああ・・・ガリア軍とは別れてね・・・連中は残虐極まりない・・・
ああいう暑苦しいのは好きじゃないのだよ。」
ゼリーマン「俺たちも勇者を探してるから・・・もしヴィンツァーに会ったら・・・あんたが会いたがっていることを伝えておくよ。」
紳士「それは助かる。」
ゼリーマン「あんたの名前は?」
紳士「ゴート大学リベラルアーツ学部、学部長のローワン・ウイリアム主席司祭だ・・・」
そう言うと、祈りを捧げて食堂から出ていくローワン。
入れ違いに食堂に入ってくるヨシヒコ。
風呂上がりで機嫌のいいヨシヒコ「まさか、こんな修道院に温泉があるとはな・・・生き返ったよ・・・
どうした?誰かと話してたのかい?」
ゼリーマン「勇者マニアの変なおっさんがいました。」
ヨシヒコ「?」
ゼリーマン「それより・・・勇者を探すのにうってつけの場所を思い出しました。」
ヨシヒコ「どこ?」
ゼリーマン「モンスターハンターのギルドです。」
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