『ラストパーティ』脚本⑭

神都ハルティロード
大聖堂には、各地から黒死病に感染した人々が列をなして運ばれてくる。
感染者「せめてこの赤ちゃんだけは治療してあげて・・・!」
シスター・スカーレット「現在病床が足りておりません・・・もう少々お待ちください・・・!」
感染者「二時間前からそう言われているわ!赤ちゃんの息があるうちに・・・!」
ほかの感染者「それなら俺は5時間待っている!うちのじいさんのが先だ!」
順番待ちでもめる感染者たち
「なによ!あんたのじいさんより、うちの子の方が未来があるわ!」
「こういうのは年功序列だろ!」
シスター「神よ・・・愚かなこの者たちをお救いください・・・」

大聖堂や医療施設に入れず、路上に病人が転がっている光景を目にするリネット
「な・・・なによこれ・・・」
感染者に罵倒されるリネット「ちょっとあんた、列の順番を守りなさいよ!」
「そうだ!列の最後尾へいけ・・・!」
リネット「ご・・・ごめんなさい・・・」
ゼリーマン「ずいぶん元気な病人だぜ・・・」
リネット「あ・・・あんたは・・・」
ゼリーマン「黒死病に感染したら最後、町や村から追い出される・・・
重症者はフィールドで野垂れ死にモンスターの餌食・・・
歩ける軽症者はここに集まってくる・・・
生にすがるものの最後の希望・・・それがここだ。」
リネット「最後の希望にはとても見えない・・・だって・・・」
大聖堂の裏には膨大な死体の山があり、サイコゴーレムが怪力で穴に転がして土葬している。
鼻をつまむリネット「うえ・・・だって・・・めちゃくちゃ不衛生じゃない・・・」
ゼリーマン「俺は衛生上、死体は燃やしちまえって言ったんだけどな・・・
死体を燃やすのは宗教上アウトなんだってよ。
なんでも復活する際に肉体がないとか・・・
くだらねえ、腐った肉体に魂が戻って嬉しいやつなんかいるか?」
吐き気を抑えるリネット
ゼリーマン「大丈夫か?」
リネット「魔物の情けなんていらないわ・・・」
ゼリーマン「じゃあ、とっとと帰るぞ。お前まで感染したら大変だ。
みんな心配してるぜ・・・」
リネット「この人たちは助かるの・・・?」
ゼリーマン「お前は勘違いしてるな。
ここはホスピタル(病院)じゃねえ、ホスピス(終末医療施設)だ。
聖職者に看取られて安らかに死ねるんだ、幸せなんじゃねえの?」

その時、感染者の母親が叫び声を上げる。
「あああああ!うちの子が息をしなくなってしまった・・・!」
列の後ろの感染者「やった~!一人繰り上がるぜ!どけいオバさん!!」
幼い我が子を失って崩れ落ちる母親。
リネット「そんな・・・」
ゼリーマン「関わるな。キリがないから・・・」
しかし、リネットはその母親のもとに駆け寄る。
リネット「赤ちゃんを貸してください・・・!」
母親「・・・え?」
リネット「・・・まだ間に合うかもしれない・・・!」
意味がわからない母親。
リネット「早く!」
母親から赤ちゃんを受け取るリネット。
ゼリーマン「何をする気だ?」
リネット「静かにして。集中してるんだから・・・
あたしはね・・・昔から少々の怪我や風邪は気合で治せるのよ・・・」
そう言うと、赤ちゃんの胸に手をかざすリネット。
周囲の空気が変わり、リネットの手に小さくも優しい光が灯る。
ゼリーマン「おいおい・・・お前・・・
魔法の中でもっとも難易度が高い白魔術が使えるのか・・・!?」
集中するリネット「はあはあ・・・」
しばらくすると、赤ちゃんが意識を取り戻し、力なく泣く。
涙を流す母親「坊や・・・!」
赤ちゃんを抱きしめる母親。
ぐったりするリネット「ぜえぜえ・・・う・・・うまくいった・・・」
ゼリーマン「うそだろ・・・死者を蘇生した・・・」
リネットを拝む母親「女神さま・・・!」
リネット「そんなんじゃないですよ・・・私は何もできないへそ曲がり・・・」
ゼリーマン「そうだ、こいつは拝む対象じゃねえ。
いいから早く行きな。そして清潔な場所で栄養のあるものを食わせてやるんだ。」
母親に金貨が入った小袋を渡すゼリーマン。
母親「ゼリー神・・・!」
ゼリーマン「神でもなんでもいいが、これは口止め料だ。
ここで見たことは誰にもしゃべるな。」
母親「は・・・はい・・・!」
リネットを抱きかかえて、慌ててハルティロードをあとにするゼリーマン。



ウィンターズ城
リネットを探すヴィンツァーとセレス。
ヴィンツァー「やっぱりどこにもいません!」
セレス「そうですか・・・こうなると残るのは・・・」
城のすべての鍵がついたリングを手に取るセレス。
セレス「封印された地下室・・・」
ヴィンツァー「勝手に開けていいんですか?」
セレス「ことは緊急事態です。参りましょう。」
ヴィンツァー「一体何があるんですか・・・?」
セレス「この城の真実です。」

地下室への扉の鍵を開けるセレス。
扉を開くと、地下に続く石段が闇に伸びている。
ヴィンツァー「本当に隠しダンジョンなんじゃ・・・」
ランタンに火を灯すセレス「足元にお気を付けください・・・」
石段は想像以上に長く、地下深くへ降りていく二人。
最新部までたどり着くと、重い鉄扉がある。
セレス「ランタンを持っていてください・・・この扉はかなり重いんです・・・」
ヴィンツァーにランタンを渡すと、両手で鉄扉を開けるセレス。
ゴゴゴ・・・と鈍い音が鳴り、扉の封印が解かれる。
扉の中を照らすヴィンツァー
「こ・・・これは・・・」
その時、城の外の警鐘が鳴る。
セレス「旦那様の帰還だわ・・・!」
ヴィンツァー「でも、予定よりずいぶん早いですよ・・・」
セレス「わたし・・・出迎えます・・・!
ヴィンツァー様はリネット様を探して・・・!」

階段を駆け上がり、エントランスを横切り、扉を開けるセレス。
しかし、外には誰もいない。
目線を地面に下げると、傷だらけのウィンロードが倒れている。
青ざめるセレス「・・・!旦那様!!」



ウィンロードの書斎
ベッドの上でウィンロードは高熱にうなされている。
必死に看病を続けるセレス。
タオルを洗面器で濡らして替えてやる。

部屋の外で心配そうに立っているヴィンツァーとリネット。
ヴィンツァー「大丈夫だよ・・・旦那様は最強の剣士だもん・・・」
リネット「あの症状は黒死病よ・・・私見てきたんだから・・・」
ヴィンツァー「じゃあ助からないのか?」
リネット「・・・わからないわよ・・・」

意識がもどるウィンロード「う・・・」
セレス「旦那様・・・!」
ウィンロード「はあはあ・・・す・・・スペシャルウィークを死なせちまった・・・
長年連れ添った相棒を・・・騎士・・・失格だな・・・俺はもう引退するよ・・・」
涙目になるセレス「うう・・・」
ウィンロード「すでに王都デゼニーまで邪神は迫っていた・・・想像の数年は早かった・・・
最後の策の判断をする時が来たようだ・・・2人を呼んでくれないか・・・」
頷くセレス。
部屋に入ってくるヴィンツァーとリネット。
ヴィンツァー「旦那様・・・」
リネット「こんなん、ただの風邪でしょう?すぐに治るわよ・・・」
ウィンロード「ただの風邪が一番怖いんだよ、覚えとけ・・・
さて・・・この城の地下室を見たのだろう・・・?」
ヴィンツァー「はい・・・」
ウィンロード「この城の本当の姿は、終末の時に備えた地下シェルターにほかならない・・・
あそこには300人の人間が数ヶ月暮らせるスペースと、食料や物資が貯蔵されている・・・
私は、このスノーフルが邪神の手に落ちたとき、領民全員がここに一時的に避難できるように、あの地下室を作った・・・しかし・・・これは数日で邪神が消え去ると想定した場合の策だ・・・
300人もの領民を何年も食わせるほどの物資はねえ・・・
そこで、もうひとつの策だ・・・それは、我々だけがあの地下室に半永久的に住み続けるというものだ・・・邪神が日光が苦手なのは確認済み・・・
いずれこの世界に再び光がもどるまで・・・地下で暮らし続ける・・・はあはあ・・・我慢比べさ・・・」
リネット「邪神は倒せないの・・・?」
ウィンロード「ああ・・・」
涙目になるリネット
「うそでしょ!あなたは最強の剣士なのよ・・・!どんな強大な敵も倒してきたはず・・・!
気合で何とかしなさいよ・・・!!」
ウィンロード「あいつの討伐はお前ら若い世代に譲るよ・・・ごほごほ・・・
私の考えは・・・領主失格だが・・・お前たち2人だけを地下室に避難させ・・・邪神が過ぎ去るまで生き延びさせたい・・・」
ヴィンツァー「ウィンロードさんは?」
ウィンロード「偏屈なおっさんはここで退場だ・・・セレス・・・こいつらの世話を頼む・・・」
セレス「・・・それはお断りします・・・
私は、旦那様にプロポーズされるまで10年間も待っていました・・・
こんなのあんまりです・・・私は最後まで連れ添う覚悟ですわ・・・」
ウィンロード「困ったメイドだぜ・・・ぜえぜえ・・・」
セレス「結局わたくしが不潔な魔物だから・・・愛してくれないのね・・・」
ウィンロード「そんなんじゃないさ・・・ここで私がお前をめとったら・・・
お前を助けた理由が下心になるじゃねえか・・・」
セレス「下心でいいじゃない・・・この臆病者・・・」
ウィンロード「そうだな・・・」
セレス「旦那様・・・わたし・・・ヘルシング博士の手紙を盗み見してしまいましたの・・・」
ウィンロード「バカ野郎・・・」
セレス「全部ゼリーマンさんがそそのかしたせいなんですけど・・・
黒死病の進行を食い止めるのに、魔物の体液が有効と書いてあったそうです・・・」
ウィンロード「あのクソゼリー・・・読み上げるんじゃねえよ・・・」
セレス「あなたの妻にして欲しいとは言いません・・・一度だけ・・・私とくちづけをしてくれませんか・・・?」
手を叩くリネット「キース!キース!!」
ヴィンツァー「やめろよ・・・ぼくらは出ていこう・・・」
リネットの手を引いて部屋から出ていくヴィンツァー。
ウィンロード「おい、子どもが気を使うな・・・」
主人に顔を近づけるセレス「お願い・・・あたしを怖がらないで・・・」
ウィンロード「怖がるわけないだろ・・・こんなに美しい女神を・・・」
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