『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本①

「第一章 結婚できない女」

巨大化し法廷を叩き壊すアリス。
石版をほうり投げ逃げ出す陪審員。
ハートの女王「あ、あやつの首をはねよ~!!」
処刑人「陛下、首まで届きません!」
アリスにつまみあげられるハートの女王「うわわ・・・!ちょっとつままないで・・・!」
アリス「いいこと?これにこりたらもう少しみんなと仲良くすることね・・・」
?「アリス・・・アリス・・・!」


お見合い会場のレストラン。
料理のアスパラガスをつまんでいる19歳のアリス「ほへ?」
お見合い相手「・・・・・・・。」
アリス「・・・(アスパラガスを相手に向ける)・・・・いる?」
ママ「まあ、ちょっと白昼夢の気があるんですけど、大変いい子なんですのよ・・・ほほほ」
お見合い相手「ははは・・・大変興味深い話でしたが、こ、この話はなかったことに・・・」

帰りの馬車
ママ「まったく、どこの世界にお見合いで寝ちゃう子がいるのかしら・・・」
アリス「だって話が「鉄道株の利率が何だ」ってつまらないんだもん・・・」
ママ「みんながみんな面白いわけじゃないのよ?旦那様にはユーモアよりも誠実さを・・・」
妹イーディス「・・・ようは金(ディケンズの小説を読みながら)。」
ママ「あなたは・・・」
イーディス「おねえさまもなんだかんだ言って、いい感じの実業家をものにしたわけだし。やっぱり安定した収入ってことよ、アリス。」
アリス「そ、そうなの・・・?」
ママ「イーディス。お姉ちゃんに余計な事言うんじゃありません。」
イーディス「あ~あ、私もどっかのセレブと結婚したいなぁ~」
ママ「あんたはまだ早い。・・・とにかく、あなたは今女として危機的状況にあるの、アリス。婚期を逃したら女は一巻の終わりなんだから」
アリス「でも、旦那さんにお金を工面してもらわなくても、自分で働けばいいんじゃない?」
笑うイーディス「妄想族のあんたになにが出来るって言うのよ・・・」
ママ「こら!お姉ちゃんに何てこと言うの!」
アリス「いいっていって・・・は~将来か~・・・」

リデル邸
パパ「いや~娘たち!おかえり~!どうだった?お見合いは?」
イーディス「・・・推して知るべし」
メイドにコートを渡して首を振るママ「これでアリスの記録がまた更新されたわ・・・」
パパ「まあまあ、お見合いなんてダメでもいいじゃないか!アリスはずっとパパのものだ!」
アリス「ありがとう、パパ。」
イーディス「わたしゃごめんだ・・・」
ママ「なにいってんだか・・・あなたがそうやってすぐ甘やかすから・・・」
パパ「今日はお姉ちゃんも帰ってきてるぞ。みんなで食事にしよう。」

食事をするリデル一家
パパ「ウィリアム。仕事の方はどうだい?」
姉ロリーナの夫「順調ですよ。ロンドンの工業化はもっと進むでしょうね。アフリカのトランスバールでは戦争が起こるかもしれません。これはビジネスチャンスだと考えています。」
パパ「へ~」
ウィリアム「義父さんの方はどうですか?学校・・・」
パパ「ぼちぼちやっとるよ・・・最近庭のシカが学生寮にはいってきちゃうのがちょっと問題になっているくらいかな。」
アリス「きっとシカさんも外は寒いんじゃないかしら?」
イーディス「・・・はじまった。」
ウィリアム「・・・彼女は何て言ってるんです?」
パパ「鹿もこの季節は野外は寒いんじゃないかってね。」
妻に目をやるウィリアム「ははは・・・愉快な方ですね~・・・」
ロリーナ「ふふ、アリスは天才だもんね~」
パパ「パパもそう思うぞ。お前は好きに生きればいい」
ため息をつくママ「その天才が悩みの種・・・」

屋敷の廊下を歩くアリス「あら、イーディスそこでなにしてるの?」
イーディス「ちょっと御覧なさいよ、アリス。面白いから。」
ロリーナとウィリアムが庭で抱き合っている。
アリス「はわわわ・・・!一体なにを・・・?」
イーディス「キスに決まってるじゃない、バッカじゃない?」
アリス「やっぱ、わ・・・私にはまだ早いわ・・・」
イーディス「お姉ちゃん、それ30になっても言うつもり?」

庭のテラスにやってくるアリスに気付くロリーナ「あら、アリス。」
アリス「スキーンさんは?」
ロリーナ「ああ、ウィリアム?コーチマンに言って帰りの馬車を手配させてるわ」
アリス「泊っていけばいいのに・・・」
ロリーナ「ウィリアムの仕事が忙しいのよ・・・彼の傍にいてやらないと」
アリス「会社の人がいるのに・・・?」
ロリーナ「そうだね・・・私はあの人の妻だから・・・」
アリス「ずっと旦那さんの隣にいなきゃいけないなんて、私は嫌だな・・・」
笑うロリーナ「きっとあなたにあった素敵な男性がいるわよ。」
アリス「でも私いつもぼんやりしてるし・・・」
ロリーナ「それがいいんじゃない。それがあなたのいいところだとお姉ちゃんは思うわ。今はみんなせかせかしすぎ・・・わたしいつもあの人を見てて思い出すのよ(懐中時計を見ながら、召使に指示を出す夫を遠くから眺めて)。あなたの夢の話・・・なんだっけ・・・いつも時間に追われている・・・」
アリス「白ウサギ。」
ロリーナ「そう、それ。笑っちゃったなあ・・・確かにウサギってどことなく焦ってるもんね。」
アリス「・・・・・・。・・・お姉ちゃん・・・お姉ちゃんだけに言うけどここだけの話実はあのウサギ・・・夢じゃなくて・・・」
急に立ち上がるロリーナ「あら、わたしの白ウサギが呼んでるわ。じゃあ続きはまた今度ね。またね、アリス。」
アリス「う、うん・・・じゃ・・・」

玄関
ウィリアム「それじゃあ、お父さんお母さん失礼します。」
パパ「また遊びにおいで。」
ママ「ウィリアムさん、ぜひうちの娘にいいお相手がいましたら紹介を・・・」
パパ「ママ・・・」
ウィリアム「ははは・・・喜んで。では。」
馬車に乗る夫婦。

アリス「・・・・・・。お姉ちゃんなんか可愛そう・・・」
ママ「アリス。」
アリス「なんで私たちは将来を決められてしまうの・・・?」
パパ「お姉ちゃんは自分で将来を決めたんだよ」
アリス「私はそうは思わない。まるでなにも悪いことをしてないのに捕まった囚人みたい。」
ママ「いい加減になさい・・・!」

アリス邸。午前。
召し使いたちが社交パーティの準備をしている。

パパの書斎
アリス「パパ・・・私今日はとっても面白い夢を見たんだけど・・・」
パパ「あ、ちょっと悪い。今は忙しいんだ。パパの知り合いがたくさん来るからね。後で聞くよ。お外で遊んでいたらどうだい?」

妹の部屋
アリス「ねえイーディス・・・お外で遊ばない?」
イーディス「一人でどうぞ・・・私は今本を読んでいるの。」
アリス「へ~どんな本?」
イーディス「もう気が散るからあっち行ってよ。外の動物とまた会話してきたらいいじゃない。」
アリス「・・・・・・。」

庭でガーデンパーティの準備をするのを眺めるアリス
アリス「・・・退屈だなあ・・・」
レオポルド「あれはクロウタドリだね」
アリス「・・・?」
レオポルド「あそこの鳥さ。ここは自然豊かだね。きみはリデル校長の娘さんかな?」
頷くアリス。
レオポルド「なにしていたの?」
アリス「え・・・そ、その・・・ぼ~っと・・・」
レオポルド「ふうん・・・君は時間の使い方をよ~く知っているんだね。」
アリス「そんなこと初めて言われた。」
レオポルド「ぼ~っと出来るうちはぼ~とするべきさ。隣いいかな?正直ぼくもこういう社交パーティは苦手でね。退屈してたんだ。」

二人で鳥を眺める。
アリス「私・・・いつもぼ~っとして変な夢を見るんです。」
レオポルド「へえ。聞かせてほしいな。」
アリス「ほ・・・本当に?」
レオポルド「社交パーティのあたりさわりない会話よりずっと面白そうだ。」
アリス「白ウサギを追いかけて庭にある兎の穴を落っこちたら、そこには動物や草花たちが喋る世界があるんです。その世界の薬やパンを食べると私の体の大きさは変わるし、なにもかもが不思議。その世界はトランプの兵隊を率いるハートの女王が支配しているんだけど、大きくなった私が懲らしめてやったわ。」
レオポルド「・・・続きは?」
アリス「そ、そんなに聞きたい?」
レオポルド「うん。」
アリス「三月ウサギの家の前ではウサギとヤマネと帽子屋がお茶会をやっているんだけど、みんないかれていて、変ななぞなぞを出すの・・・カラスと書きもの机は何が似ている・・・?って・・・」
レオポルド「ふうん・・・面白いなぞなぞだなあ・・・」
アリス「私には答えが思いつかなくて・・・これって答えがないのかな?」
レオポルド「・・・答えがないということは、どんな答えも正解ってことだよ・・・ぼくはいくつか思いついたよ。」
アリス「え?教えて!」
立ち上がるレオポルド「いいの?こういうなぞなぞって自分で答えを見つけた方がいいと思うな。おっとお偉方が呼んでいる・・・
じゃ、また今度。ぼくはレオポルド・ジョージ・アルバート。楽しかったよ。アリスさん。」

庭に出てくるイーディス「・・・あの人誰?」
アリス「・・・変わってる・・・」
イーディス「お姉ちゃんが言うなら筋金入りの変態ね・・・残念・・・ハンサムなのに・・・」

パパ「さあ、美しい娘たち、ドレスに着替えてくれ。」
イーディス「はいはい。いこうアリス。」
アリス「パパ。あの人・・・」
パパ「ああ、アルバート王子だよ。面白い人だろう?」

更衣室
鏡の前でドレスを着るアリス「あの人なら・・・」

ガーデンパーティ
ドレスを着たアリス「アルバート王子・・・」
レオポルド「レオポルドでいいよ。君はそういう格好も似合うな。」
アリス「あ、あの・・・さっきの話なんですけど・・・」
レオポルド「ああ、ウサギを追いかけて不思議な国に行くって話?」
アリス「実はあれ、夢じゃないんです・・・!」
レオポルド「え?」
怪訝な顔をする他の婦人「アルバート王子様、この人何かおかしいようですわよ」
アリス「いるんです・・・この庭に。懐中時計を持ってチョッキを着たせわしない白ウサギが・・・!」
レオポルド「こ・・・この庭に・・・?」
婦人「相手にしない方が・・・」
アリス「信じてください・・・!実際今日だって・・・」
茂みが揺れる
アリス「いた~!!」
レオポルド「え?」
アリス「レオポルドさん、後ろ!」
振り返るレオポルド「どこ?」
婦人「あなた、そんな大声出してはしたない。いい加減になさいよ。」
婦人「そうよ!社交パーティの邪魔よ!」
ウサギを追いかけるアリス「今日と言う今日は必ず証明して見せる・・・!」
レオポルド「お、おい・・・きみ・・・!」
婦人「あんな娘はほっときましょうよ。」
「そうそう・・・」

白ウサギを追いかけて庭の奥へ行くアリス
アリス「まちなさい・・・!」
ぴょんぴょん飛び跳ねる白ウサギ。
ウサギの穴の一歩手前でアリスにつかまる。
アリス「つかまえた・・・!」
白ウサギ「や・・・やあアリス・・・待ってたんだ・・・ずっと・・・」
アリス「?ど、どうしたの?ウサギさんなんか疲れてるようだけど・・・」
白ウサギ「はあはあ・・・いろいろなことがおこりすぎてね・・・とにかく不思議の国に来てくれないか・・・大変なことになっているんだよ・・・」
アリス「それより、ちょっと社交パーティに来てくれない?私の友だちに貴方を見せたいの。」
白ウサギ「きみは相変わらずひとの話を聞かないねえ…君にも解り易く話そう。ハートの女王の政権が落ちた。」
アリス「よかったじゃない。」
白ウサギ「冗談じゃない!新しい女王は普通じゃない!まったくもっておかしいんだ!」
アリス「へえ、どんな?」
白ウサギ「世界を変えてしまうんだ。なにもかも・・・時間も場所も。そしていちいち言うことがつじつまが合っている。」
アリス「時間が変わっていくのは自然なことじゃない?それにつじつまを合わせてお話しするのは正しいことよ。」
白ウサギ「正しいもんか・・・いいからこっちにおいでよ、君の言う正しさを見せてあげよう!」
アリス「そのまえにあなたに会わせたい人がいるの!まずそれからね」
白ウサギ「あああ・・・!わかってない!ぼくは“会わせられたく”も“合わせられたく”もない!会わせたいのはこっちなんだよ!」

アリスを蹴とばし、再び逃げ出すウサギ。屋敷に入ってしまう。
アリス「はあはあ・・・ねえウサギが入ってこなかった?」
メイド「いいえ、お嬢様・・・みてませんわ」
レオポルド「どうかした?」
アリス「レオポルドさん・・・私・・・必ず私の話が本当だってこと見せてあげるから・・・!」
階段を駆け上がるアリス
レオポルド「おい・・・ん?」
カーペットにウサギの足跡がついているのに気付くレオポルド

アリスはクローゼットだらけの更衣室に入るウサギを見つける。
アリス「あそこね・・・」
鏡の前のウサギに追いすがり、飛びつくアリス「今度こそ捕まえた!」
白ウサギ「!」
アリス「わああ危ない!」
ウサギもろとも全身鏡にぶつかるアリス・・・と思ったら、鏡の中に入ってしまい、すべてが左右反転しているクローゼットの部屋に出る。
アリス「あ・・・あれ?」
白ウサギ「・・・不思議の国へようこそアリス。」
その刹那後ろから低いうなり声がして、カーテンが揺れる。
アリスが後ろを振り返ると、巨大なライオンがこちらに近づいている。
アリス「嘘でしょ・・・」

レオポルドはウサギの足跡を逆にたどっていくと、庭の茂みに伸びている。
そこにはウサギの他に見たこともない猫の何倍も巨大な動物の足跡も付いていた。
レオポルド「・・・アリス・・・!」
屋敷に駆けだすレオポルド。
クローゼットの部屋に入るが、そこにアリスの姿は影も形もなかった。
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