『アリス・イン・ワンダーランド』の脚本②

「第二章 不思議の国の危機」

鏡の中のアリスの屋敷の更衣室
ショックでウサギを離すアリス。ウサギは急いで部屋から出ていく。
咆哮をあげるライオン
アリス「う・・・うわああああああああ!!!」
更衣室のドアへ駆けだすアリス。それを猛スピードで追いかけるライオン。
ぎりぎりでアリスは更衣室を出てドアを閉めライオンを閉じ込める。
息を切らすアリス。ほっとしたのもつかの間、ドアにライオンが体当たりし、その衝撃でアリスは突き飛ばされる。
アリス「はあはあ・・・」
アリスの横に長大な角のついた大きな馬が立っている。
ユニコーン「やってくれるね、お嬢ちゃん!」
廊下を駆けだすアリス「わああ!パパ!パパ!家の中に動物が・・・!!」

パパの書斎の扉を開けるアリス。書斎には様々な鳥がひしめいている。
ドードー「なんだ、なんだ騒々しい・・・私は今オックスフォード大学文学部を首席で卒業したこの知性と、生まれつき研ぎ澄まされた感性を統合することによって、赤の女王の暴挙を糾弾する書状を書いているのだ。「今が最悪の状態と言える間は、それはまだ最悪の状態ではない。」もちろんこれはウィリアム・シェイクスピアの引用なのだが・・・まあ無教養な君にはちょっと難しいだろうな。許せ。」
アリス「ちょっと・・・!あなたパパの椅子に座らないでよ・・・!」
ドードー「パパの椅子・・・?それはすまなかった!
・・・娘よ・・・私の胸に飛び込んできなさい。」
アリス「そう言うことを言っているんじゃなくて・・・!」
ドードー「考え方によって世界は変わるものだ。これは誰の引用でもない。私が今作った。」
アリス「どう考えたって私は貴方の娘ではないと思うわ。」
ドードー「君は生まれた瞬間を覚えてはいるのかね?」
アリス「いいえ。でも・・・」
ドードー「では私の勝ちだな御婦人。なぜキミは私が君の父君でないと言いきれる・・・?」
アリス「・・・わかりました。お父様・・・お父様に質問があるんですけど・・・」
得意げなドードー「よろしい。何でも聞きたまえ。」
アリス「なぜ家にライオンがいるの?」
ドードー「ライオン!!??みんな逃げるんだ~!!」
一斉に走り出す鳥たち。しかし部屋の中の同じところをぐるぐる回っている。
書斎を出るアリス「はあ・・・もう付き合ってられない・・・」

廊下で待っていたユニコーン「なあお嬢ちゃん・・・ライオンを閉じ込めちまうとはうわさ通りの勇敢な女だ・・・気に入ったぜ!」
アリス「あなたは・・・なんて動物?」
ユニコーン「おいおい・・・!俺を知らないって?動物園でおなじみの一角獣じゃないか!」
アリス「一角獣なんて動物園にはいないわ」
ユニコーン「キミは動物園に行ったことがないとか?ジャブジャブ鳥は見たことない?バンダ―スナッチは?」
アリス「そんなみょうちくりんな動物は存在しないわ。」
ユニコーン「空想の生物のあんたに言われたくないな。あんたら人間こそ俺は動物園に見にいったことがないがね?キミはある?」
アリス「ない・・・」
ユニコーン「ま、そういうこった。空想の生物のあんたこそこの世界を救う英雄にふさわしい。絵になるからな。」
アリス「冗談じゃないわ・・・私庭に行ってみんなを連れてくる・・・!」
ユニコーン「ほうほう、手下の兵がいるのか?よかったな白ウサギさん。」
白ウサギ「ははは・・・これで我々も・・・」
ウサギを抱き上げるアリス「あなたもくるのよ。」

アリスはウサギを抱いてエントランスのドアを開けようとするが開かない。
アリス「・・・あれ?あれれ?カギがかかってるわ!」
ドアノブ「そりゃカギがあればかけるさ!」
アリス「何の為に・・・うう、でれない!」
ドアノブ「防衛さ。」
アリス「防衛?」
ユニコーン「こいつ、本当になにも知らないみたいだな・・・」
白ウサギ「聞こえないか?外の音が・・・」
アリス「私にはあなたのような大きな耳が無いから・・・」
その時爆音がして屋敷全体が大きく揺れる。
アリス「な、なに!?」
ユニコーン「戦争だよ。ウサギさん。参謀本部へ案内だ。」
白ウサギ「ついてくるんだアリス。」

食堂へ行く。動物や鳥が机を囲んでいる。
一同「満席であります!!」
大きな席に座るアリス「席は空いているじゃないの!」
マウス「いいかな諸君。来るべき戦闘に向けての作戦をリーダーの私が発表する・・・!」
グリフォン「おいおい、俺たち文系にケンカをしろっていうのかい?」
モックタートル「同感よ、グリちゃん。いやねえ、ちゃんと教育を受けたのかしら?」
マウス「きみたち異議があるなら挙手をしなさい!」
グリフォン「俺たち前脚しかないも~ン!」
笑い転げてカップを割る三月ウサギ
モックタートル「あたしはヒレ!」
三月ウサギ「ひゃははははは!ヒレだって!」
アリス「・・・なんか議論はまとまってないみたいね。」
三月ウサギ「ひ~ひ~・・・おいそろそろいいだろ!今度は俺が隊長な!席をずらせよ!」
ローテーション(隣の席に移る)する動物たち。
三月ウサギ「おい!そこの彼女!!その席は帽子屋の席だぜ!」
アリス「あら、御免なさい。でも帽子屋さんなんていないわよ」
ヤマネ「逮捕されちゃったんだよ」
トランプ兵「クーデターの疑いであります!」
アリス「なにをしたの?」
三月ウサギ「なんにも。逮捕に理由なんてないだろ!?」
アリス「えええ?」
三月ウサギ「罪状なんて後から付ければいいんだ!ああ、哀れな帽子屋!!(笑う)」
白ウサギ「こんな調子なんだよ・・・みんな不思議の国が危ない事は分かっているんだけど・・・」
ユニコーン「俺に言わせれば、結束しているとは言い難いな」
アリス「誰か何が起きているか説明できる人はいる?」
全員が黙ってアリスを指さす。
アリス「ふざけないで!!なんで私が一番詳しいのよ!」
三月ウサギ「ひゃはははは!ふざけてなんかいないさ!三月の俺さまは至って正常!」
荒々しくナイフでケーキを机ごと切って、皿に盛りつけ放り投げる三月ウサギ
ヤマネ「それを食べてごらん。よく分かるよ」
ケーキを口に入れるアリス「・・・・・・。」

アリスの体はどんどん大きくなって屋敷の天窓から外が見えるようになった
屋敷の外では爆発と銃声が絶え間なく響き、軍隊によって森が切り開かれている。
赤の軍隊と白の軍隊の小競り合いを木の上でチェシャ猫がにやにや眺めている
アリス「・・・・・・!あれは!」
白ウサギ「彼ら赤の王国と白の王国は森を平地にして戦場をつくっているんだよ」
平地化された土地は塹壕によって区分けされ、チェス盤のようになっている。
モックタートル「あたしの海岸も埋め立てられちゃったわ」
アリス「なんで戦争しているの!?」
マウス「それを聞いてくるのがあんたの仕事だろ!」
白ウサギ「だからずっと君を呼んでいたんだよ。でも最近はキミはここにはきてくれなかったから・・・」
アリス「なるほど。私にあれを何とかしろ、と」
三月ウサギ「ひゃははは!連中をいっきに踏みつけてやれ!」
アリス「・・・お断りします。薬・・・ああ、これね」
テーブルの上の薬をつまんで飲むアリス。大きさが元にもどる。
マウス「おい!どこに!!」
アリス「帰ります。あの鏡に飛び込めばいいのよね。」
マウス「オイオイ待てよ!薄情だな!あんたならあんな連中怖くもなんともないだろ!?ハートの女王を倒したのはあんたじゃないか!」
アリス「昔はね・・・今はあれがとっても痛くて死んじゃうことを知っているの。」
白ウサギ「そんな・・・ならぼくたちがとても痛くて死んじゃってもいいの・・・?」
アリス「え・・・」
振り返ると、動物たちが黙ってこっちを見つめている。

キャタピラー「彼女は成し遂げるわ・・・アリス・・・あなたは強い。お忘れ?」
一同「キャタピラー先生!」
水煙管をふかすキャタピラー「アリス本当に大きくなったわね・・・あなたも私たちに何か用があってきたんじゃないの?」
アリス「え・・・?」
キャタピラー「私にはお見通しよ、アリス。でなければ、この世界にはこれないのだから。」
アリス「それは・・・レオポルドさんにあなたたちを見せたくて・・・」
キャタピラー「それなら、ここでまわれ右して戻ったら、この世界は貴方の夢のままってことじゃないのかしら?」
アリス「・・・・・・。」
キャタピラー「ふふ・・・恋をしたのねアリス。それはとてもいいことだわ。」
白ウサギ「しかし先生、ぼくらは他の人間には見えないのでは・・・?」
キャタピラー「ええそうね。でも実は・・・あなたの願いを一つだけかなえる方法があるの」
アリス「本当に!?」
キャタピラー「それはあなたがこの世界の本当の女王になることよ。」
アリス「本当の女王?」
キャタピラー「外で騒いでいるあいつらに女王の資格はないわ。今こそあなたがこの世界を救い、あなたがあなたの世界の王になるの。そうすればどんな願いもかなえられるでしょう・・・」
アリス「でも・・・私がこの世界を救うっていったいどうすれば・・・!?」
キャタピラー「それは運命が決めてくれるはず。水は高いところから低いところに流れる・・・雪は結晶を作るわ・・・あなたの進む道こそ貴方が進むべき道なのよ。
それは・・・このまま逃げ帰ることじゃないわよね?」
アリス「・・・・・・。更衣室にもどります。」
白ウサギ「アリス・・・!」
アリス「こんなドレスじゃ戦場は歩けないでしょう?」
ユニコーン「はっは~!!言ってくれるねお嬢ちゃん!!あの部屋のライオンなら俺に任せな!」

更衣室にもどるアリスを見送る一同。
白ウサギ「さすがです先生・・・で、彼女が女王になれば願いはかなうんですか?」
キャタピラー「ふふ・・・私にもよく分からないわ・・・けれど彼女の運命を動かすにはあれで充分じゃない?」

更衣室
ユニコーン「ほうら、出てった出てった!レディが着替えるんだからな!」
ライオン「まじで、やってくれるって言ったのか!!」
ユニコーン「さあ、なんでも好きな服に着替えてくれ。俺たちは外で待ってるからな!」
古い洋服棚を開けるアリス「ありがとう・・・ひとつ頼みがあるんだけど・・・あの薬をくれないかしら?」
ユニコーンとライオン「?」

更衣室から出てくるアリス。姿は7歳になっていて昔のエプロンと外着を着ている。
ユニコーン「ああ、あんたはその格好が一番かもな。さあお姫様、俺に乗りな!」

エントランス
アリスはユニコーンに乗り、傍らにはライオンがいる。
マウス「カギを開けろ!」
ドアノブ「了解。」
ライオン「俺たちについてくるものは!?」
モックタートル「冗談じゃないわ」
ユニコーン「しかし女王の城までの道のりが解るものが同行して欲しいな」
白ウサギ「・・・私が行きましょう・・・臆病ですけど・・・」
ライオン「確かにあんたは荒ごとに向かなそうだな。グリフォンくん、あんたは強そうだ!一緒に来ないか!?」
グリフォン「おいおい、あんたと違って俺は半分ワシだぜ?うちの学校ではケンカの仕方は教えてくれなかったなあ。」
ユニコーン「まあ、みんな気が向いたら参戦してくれ。さあ、白ウサギ君。案内を頼む!」

ドアが開く
美しい庭が広がるが、遠くでは火の手が上がっているらしく煙が立ち上っている。
アリス「・・・ひどい・・・」
ユニコーン「出発だ!」
Calendar
<< April 2024 >>
SunMonTueWedThuFriSat
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930
search this site.
tags
archives
recent comment
recent trackback
others
にほんブログ村 科学ブログへ にほんブログ村 科学ブログ 恐竜へ カウンター
admin
  • 管理者ページ
  • 記事を書く
  • ログアウト