ノマド・ワーキングから“人間”を捉えよう

 半導体技術の急速な進歩によって携帯電話もパソコンも小型化し、とうとう「スマートフォン」なるものまで登場しました(よくしりませんが)。
 これらの小型ハイテク機器は、私たちの生活に大きなパラダイム転換を迫るでしょう。それはこれらの機器が「情報」をあつかう情報端末だからです。
 西部邁氏は人間を「情報の集合体」と捉えています。この意見を私は「うまい比喩だけれどやっぱり人は情報じゃなくて動物だろ~」と思っていました。
 しかしこれは生物学的にも単なるアナロジーではなく、リチャード・ドーキンスは大ヒットベストセラー『利己的な遺伝子』において生物を「情報を受け継ぐもの」と定義し、私たち一般人の生物に対する見方を大きく変えました。

 そう考えると、現在の情報化社会は、これまで遺伝子だけが担っていた情報のリレーを、これまで以上に簡素化、ハイスピード化していると言えます。
 この変化を歓迎するのか、問題視するのかは私にはちょっと判断がつかないのですが、たとえば「ノマド・ワーキング」。これは「遊牧民的仕事」という意味で、おそらくドゥルーズ=ガタリかなんかが好きな人が考えた言葉なんでしょうが、持ち運びできるパソコンを持って、会社ではなく喫茶店などをはしごして仕事をする労働形態のことなんだそうです。
 こうなるとスカイプなどで会議もできちゃうし、会社のでかいビルという「箱」のレーゾンデートルがどんどんなくなっちゃうような気もするのですが、私はネクタイをびしっと締めて職場に行かないと、やはりどうも働いている気にならないので、会社のビルはなくならないとは思います。少なくとも当分は。

 たとえば漫画業界。打ち合わせは出版社でも行いますが、親密になると何かおいしいものを食べさせてくれますw。
 最近は出版不況で経費が落ちるか解りませんが、私は「値段の書いてないお店」で漫画の打ち合わせをしたがあり、高校出たての当時の私は、びびりまくって打ち合わせどころじゃありませんでした。
 正直ああいうところが「漫画家ってどうも遊びの延長っぽい仕事だなあ・・・」って思ってしまうのですが、その「イメージ」と裏腹に労働状況は極めて過酷で、漫画家は朝夜関係なく机に向かい続けるのです。
 特に最近の漫画は絵の水準が上がり、アシスタントを大勢抱え(しかもアシスタントの給料は原稿料などの収入から作家が出す!)みんなで一日中絵を描いても締切ぎりぎりという有様です。
 これは凄いレベルの絵の漫画に囲まれている現代の読者の目が美術評論家のようにやたら肥えてきたということかもしれませんが(これとよく似た話がアニメの「作画崩壊!」と騒ぐ現象。手を抜けない状況なのです)、私は違った見方をしています。
 大人が漫画を卒業せずに読み続け、目が肥えているわけであり、子どもの読者は今も昔も変わっていないという説です。
 おそらくネットなどで漫画、アニメ、映画などを批評している人たちは私も含めサブカルから卒業できない「うるさ型ピーターパン」であり、大衆の総意の代表では決してないと思います。私はオタクなのです。

 で、話を戻しますが「ノマド・ワーキング」も漫画家と同じことが言えるのです。実は仕事の効率化スピード化によって労働時間が短縮され、プライベートな時間が増えると思いきや、労働時間は変わってないと言うのです!
 つまり一見便利で使い勝手のいい情報端末は、同じ時間においてこれまで以上に膨大な仕事を現代人に要求するようになったというわけです。
 このことは「産業革命に匹敵する、変化のスピードの過渡期に私たちは生きているのだ」と考えることができます。しかし産業革命直後、ロンドンは汚れ、富裕層は都市郊外に移り住み、知識人は悲観的になりましたが、なんだかんだ言って最終的には適応しちゃいました。そしてストレス型社会になりました。

 それをふまえると、これらの変化は最終的には私たちの肉体にも変化を要求するだろうと予想されます。一日中寝なくても健康な体。病気にならない体。近い将来ガンは確実に完治する病気となるでしょう(なんでもガンはインフルエンザと同じように予防接種で倒せることが解ったとか!)。
 私たちの肉体がどれだけ、この情報の変化に適応できるか?この情報スピードVS動物としての肉体の仁義なき戦い。もはや漸進的な遺伝子プールの更新など、人間には待てません。

 その科学力を武器に環境はおろか自分自身の生き方すら変えてしまう「ハイスピード型情報伝達媒体」それが人間という種の正体だと思います。
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