「面白い(=感動)度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」
「これぞ感動作!」って映画です。深夜にテレビでやってて号泣してしまった・・・映像的に80年代の名作映画かと思いきや、公開年は何と2001年・・・!まじかい。
「人を泣かせるより、笑わせる方が難しい(悲劇より喜劇の方が難しい)」とかシェイクスピアは言っていましたが、私は感動させて泣かせる方がずっと難しいと思う。
笑いは棚ボタ的ヒットがあるのに対して、感動は計算された演出力と構成力が必要だし、特に映画となると監督だけでなく、俳優さんもその演技力を問われる。
そういう意味で主人公の幼少期を演じた女の子の演技はとってもうまかった。彼女は成長すると、やさぐれてスカレート・ヨハンソンへと進化を遂げるのですが、見事にこの可愛い女の子とミスマッチ。あの有名女優が見事に幼少期担当の歯抜け美少女ラファエラ・バンジャーギちゃんに力負けしちゃってます。
とにもかくにも、この映画に強い印象を残しているのがラファエラちゃんの演技であることは絶対的。
時は第二次世界大戦後1950年代のハンガリー。当時のソ連の支配下に置かれハンガリー人民共和国として、共産主義体制をとっていたハンガリーは、「パンよりも武器」というワルシャワパクトのせいで、とにかく厳しい生活を強いられていた。
主人公の少女「ジュジ」の一家は比較的裕福だったので、自由と民主主義を求めてアメリカ合衆国に亡命を決める。・・・とはいえその亡命方法は、鉄のカーテン20kmを徒歩と言うとんでもなく過酷で危険(ばれたら銃殺)なもので、赤ちゃんのジュジにはとても無理だと判断した一家は、ジュジを別の方法で後から亡命させてもらうように祖母に託し、先にアメリカへ亡命する。
そして赤ちゃんのジュジの亡命方法とは、薬を飲ませてジャガイモ袋の中に入れるというこれまた過酷な方法で、そんなことできなかった祖母はジュジを知り合いの夫婦(?ごめん、ここら辺よく見てなかった)に預けたのち、秘密警察に亡命容疑で逮捕されてしまう。
ということで、本当の家族と離れ一人ハンガリーに残ることになったジュジだったが、生活は地味ながらも、育ての親を本当の親のように慕い幸せな毎日を送っていた。
しかしジュジが(確か)6歳になったある日。アメリカ赤十字の協力で、ジュジにも正式かつ安全な亡命の手筈が整う。
亡命するということがいまいちよく分からないジュジは、里親に「ちょっといってくるけど、すぐ帰ってくるね。学校があるし」と約束し、アメリカに亡命。
アメリカで先に亡命した両親とついに(テレビ的には)感動の再会を果たす。とはいえハンガリーの里親を本当の両親だと思っているジュジ。
本当の母親マージット(ナスターシャ・キンスキー演じる、すっごい美人なママですよ)も「よそのおばさん」よわばりし、常に「ジュジにとっての本当の両親」がいるハンガリーに帰りたがっていた。
そんなジュジに父ピーターは「大きくなったらハンガリーにいってもいいよ」と約束する。パパも故郷ハンガリーに本に携わる仕事をするという夢を置いてきて亡命していて、決して故郷に未練がないわけではないので、ジュジの気持ちは痛いほどわかるのだ。
しかしママはそれを許さなかった。「ハンガリーはすぐに銃殺される恐ろしい国、そんな国に戻るなんてママ絶対許しません!」と猛反対。
そして時は流れジュジ16歳(多分)。見事にアメリカニズムに染まったジュジは、かつての愛らしい歯抜け少女ではなく、立派なやさぐれヤンキーと化していた・・・
ことあるごとに家を抜け出し、友達と深夜遊びまわる毎日。そんなジュジをママはとっても心配するが、相談相手となるべきパパは多忙で、家をあけがち。
困ったママは口で言っても朝帰りをやめない娘の部屋に、鉄格子と鍵をとりつけてジュジを軟禁してしまう。
「なにもやらせてくれない、あんたなんて大嫌い!」と怒ったジュジは、天袋?からショットガンを取り出しドアの鍵を撃破。その銃声を聞いた途端ママは泣き出してしまう。
この騒動中、偶然家に帰ってきたパパはジュジを優しく諭す。そしてかつてジュジと交わした約束をOKする。
ついに再びハンガリーの里親の下に帰ったジュジ。そこで収容所から出所した祖母とも再開し、なぜママが娘のジュジにあそこまで過保護なのか、その理由を知る・・・
深夜に漫画描きながら見たので、細かいところは違っているかもしれませんが、あらすじはこんな感じ。とにかく良くできてます。
この映画は家族を題材にした葛藤劇だと思う。登場人物に一人も悪役はいないのに、それでもジュジは幼少時過ごしたハンガリーに憧憬の念を抱き続け、アメリカの生みの親と上手くいかない。冷戦という国際情勢が、平凡な家族の人間関係にここまで影響を与えてしまう。
もしジュジを軟禁したシーンで「ママ出して!」と叫び続けるジュジにママが掃除機をかけるのをやめて「仕方がないか・・・」と鍵を開けようとドアの前に立っていたら・・・そしてそこをジュジがショットガンで撃っていたら・・・
私は『愛と青春の旅だち』で見事にこの手の映画における「ダークな展開」を見せつけられたので、そんな超悲劇的展開にもなっちゃうんじゃないか!?とハラハラしましたが、そうならなくてよかった。本当に良かった。
それにしてもハンガリーの里親は人間が出来てるなあ。心が大西洋並に広い。ずっと会いたかったジュジがやっとハンガリーに帰ってきてくれたのだから、メチャクチャ嬉しかったはず。
しかしそこでママの気持ちを知ったジュジが「私やっぱアメリカに帰る」って言ってもすんなり送り返してくれたもんなあ(ラファエラちゃんがヨハンソンと化していたからでは絶対にない・・・!)。でもこれ、絶対辛かっただろうなあ。だからおじさん達はジュジが祖母に会うことに怪訝な顔をしたわけだし。
「わしらのこと忘れないでおくれ」っておじさんのセリフで大号泣。なんかママのパートで『ファインディング・ニモ』、里親のパートで『アイスエイジ』を同時にぶちこまれた気分。
そりゃ泣けちゃうよ。それにこの映画は『ニモ』や『アイスエイジ』と違ってギャグはないしね。
とにかく巧い映画。ハンガリーのブダペスト(現地ではブダペシュトと発音するんだって)のシーンでは、おそろしい独裁国家の街並みが御伽の国のように美しいのに対し、自由と平等の国、新天地であるアメリカの町並みのなんて魅力のないこと。
これ絶対狙ってますよ。チェコのプラハといい東欧独裁国家ってなにげに街並みがとても美しいのがすごいギャップ・・・
あ、あとこれ、エヴァ・ガルドス監督の実話だそうです。
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