「面白い度× 好き度×」
告白します。この映画は・・・うわ~超つまらねえ・・・!
この映画、観客動員数現在一位で、評論家も映画ブロガーも大絶賛の期待作だったのですが、断言します。つまらない。
私初めて映画の評価で×つけたよ・・・
これが大ヒットする現代の日本において私の感性はもはや適応できていないのか・・・!?漫画家志望としてこれは致命的なのか!?とにかく上映中はそんなことばっか感じていました。
それどころか、上映中に時計見ましたからね。「おお、そろそろ物語終息していくだろうな・・・えええ!?次は少年Bの告白・・・!?一体上映時間どれだけ長いんだ・・・えええ一時間しかたってねえ!!」
とにかくそんな感じで、後半は苦痛以外の何物でもなく、いっそ帰っちゃおうかとも思ったのですが、1800円払ったわけだし元はとりたいし・・・
これって結局何が言いたかった映画なんだか、まったくわからない。私はもっと現代の教育現場が抱える問題(少年犯罪、モンスターペアレント)を取り上げた作品だと思っていたのですが、まったくもって大間違い。
これはファンタジー以外の何物でもありません。物語及び登場人物が漫画を凌ぐほど嘘っぽくて「こんなやついねえよ」を心の中で連呼してました。
唯一メインキャラで現実にいそうなのは、あの空気読めない金八かぶれの熱血先生「寺田良輝(ウェルテル)先生」くらいかな。ああいうタイプは教育実習生の中には必ず一人いて、生徒に見事になめられちゃって自分の不甲斐無さを痛感しちゃうケースが多いのですが、それでも彼だけは誠実な人だったと思う。
あのレベルで「しょうもない先生だ」なんて言ったらいけませんよ。私の大学にはもっとどうしようもないスーパーウェルテルがいて、授業中気に入った女の子に「芸術の答えはキミの胸の中にあるんだよ」とかバカ丸出しの芸術スノッブをずうっとひけらかしていたり、絵の講評会では生徒たちに「ひゅーひゅーかっこいい!」とか騒がれていて、なめられているのも知らずに調子に乗ってるんです。
で「この人イタイなぁ、ついていけないよ」と授業中本を読んでいたら、めっちゃキレられましたからね。
それくらい自分をメタ的に見れない教師が大学にもいるんだから、ウェルテル先生はずっとまとも。
前評判では木村佳乃演じる、少年B「下村直樹くん」の母親がとんでもないモンスターペアレントぶりだとか言われてましたが、思ったより普通の人だった。
実際この映画の元ネタとなったと思われる「酒鬼薔薇事件」の少年Aの母親も、自分の息子が殺した被害者の遺族への配慮が欠けた、息子への溺愛ぶりを手記で公開してしまうわけです。
私は少年Aの母親を弁護するわけではありませんが、おそらく自分の息子が人さまの子を殺めたなんていう超非日常的出来事によって、殺人犯を産んだ母親は精神のバランス感覚が取れなくなってしまっているんだと思います。だって自分がお腹を痛めた子どもが殺人犯なんて、自分の存在も否定されたようで、そんな現実は直視できないから・・・
で、漫画を描く私が一番嘘くさいと思ったのが少年Aの天才科学少年「渡辺修哉くん」(こんな奴はいないw)と、松たか子演じる森口先生。この二人、皮肉なことにとっても似た者同士(同じ科学者だし)。
二人とも「自分の娘を殺された」とか「母親に虐待された」とか理由っぽいものはあるのだけど、要はどちらも人としての一線を超えてしまったサディストなだけなんだと思う。
だいたい、物語を作る上で最も様々な点に配慮しなければいけないのが「重いテーマや事件」を取り上げる時で、下手をすれば被害にあわれた方の心を著しく傷つけてしまう。
私も2006年に「ストーカー殺人」を漫画で取り上げたことがあったのですが、その時もとっても悩んだんです。「オレはこれを書いてしまっていいのだろうか・・・」と(別にプロじゃないけど)。
なのに、この映画はそんな重いテーマを堂々とファンタジーにしてしまっていて、話の作り手としてはちょっと反則手だと思う。やれるけど、皆やらないだけだから・・・
実際「自殺」とか重いテーマを取り上げた漫画を編集部に持ち込む際は、よほどストーリーテリングにパワーがないと確実にボツですからね。「ダメダメ、暗くて読む気にならない」で終わり。
その点で、この映画はどうだったのかな・・・う~ん・・・
この映画を観て「うわ~今の中学校のクラスってあんなんなんだ・・・」って眉をひそめる想像力のない大人は多分いないでしょう。あんたらの子ども時代と変わらないよ。
携帯電話やネットがあろうとも、子どもの心なんていつの時代も大体一緒。あの映画に出てきたような、いじめギリギリの状況は私の中学時代にもあったし、人間社会においていじめが存在するのは当たり前。そもそも大人社会の方がずっとひどい「いじめ」があるじゃないですか。
それなのに「最近の子どもはおっかない」とかいって自分の子ども時代を棚上げしている大人はちょっと卑怯ですね。
私は塾で現役中学生を見ていますが、やっぱりみんな生意気でも可愛いですよ。大体私が中学時代小生意気なガキだったから。
そしてその“若さ”が時に大人なら絶対にセーブする感情や言ってはいけない言葉を出してしまう。
※だから私はネット掲示板の「2ちゃんねる」って中学生や高校生が書いているとずっと思ってた。書いてある内容がいい歳した大人のものとは思えないから。
でも一説には「2ちゃんねる」のメインユーザーは30代らしい。本当に情けない。
携帯電話もネットも学校側や森口先生がもっと厳しく取り締まればよかっただけで、冒頭のシーンであんな状況になるまでクラスを放っておいた森口は教師失格だと思う。
教育現場が過酷なのは分かります。そして女性の教師は中学生にことさらなめられる場合が多いことも解ります(男子にも女子にも・・・)。
特に、「生徒30対教師1」というとてもアンバランスなパワーバランスで、クラスをまとめるのに必要なものは、(ウェルテル先生がやりそうな)生徒との心の通った対話ではなく、もっと客観的なアプローチ。ゴミのポイ捨てをする人をいちいち注意するのではなく、ポイ捨てに罰則を設けるルールや、高尾山の鳥居のようにポイ捨てしづらい環境を考えれば、ポイ捨ては次第に減っていく。
あそこまで生徒を追い詰めた復讐劇が出来る知能のある森口先生なんだから、いくらでもクラスを構造レベルで改革できたと思う。その知能をもっと早くに教育的手腕に生かせば、娘さんだって殺されなかったかもしれない。
結局私は森口先生の少年Aと通じる「子供っぽさ」が嫌だった。いい歳した大人なのに・・・と。だから復讐を果たした森口が少年Aに「どっか~ん・・・な~んてね♪」なんてラストで言っても「あっそ」って感じで、もうとっくに飽きてどうでもよかった(復讐の方法も観る前によめてしまった)。
最後に『告白』つながりで被害者遺族の方について書かれた本では『〈犯罪被害者〉が報道を変える』が大変お勧めです。大切な人を理不尽な暴力で殺されてしまった被害者の感情は、森口どころの話じゃない。
「犯人に私的な復讐をしてやりたい」という森口の感情を通り越して「少しでもこんな不幸があっちゃいけない」とニヒリズムを超えた思いがあるようです。
私も犯罪被害者ではないので、なんだかんだ偉そうに言っても「ただの部外者のたわごと」ですが、それでもこの本を読むと、犯罪被害者の叫びや思いのようなものはとっても伝わります。機会があったらぜひ読んでみてください。
特に「山口県光市母子殺害事件」の被害者、本村洋さんのインタビュー(65ページ~)は、テレビニュースがいかに被害者の方の思いを断片的にしか伝達していないか痛感します。
また活字が苦手な方には漫画の『PS羅生門』がお勧め。警察を題材にした成人漫画なのですが、第5巻「少年Aの将来。」で少年法を扱っています。少年法について『告白』とはまったく違ったアプローチをしているとっても考えさせられるエピソードです。
追記:この映画は森口先生の告白にも少年Aの告白にも嘘がある、虚実が入り混ぜられた物語と言うコメントがありました。
たしかにこの映画は、森口、修哉(少年A)、直樹(少年B)、直樹の母親、美月の告白とモノローグばっかりで、漫画を書くときあまりやっちゃいけない構成なのですが、それでもほとんどのキャラがモノローグ(独白)なのに対して、唯一ダイアローグ(対話)になっているのが森口。
修哉のモノローグ(大学のシーン)は観客のミスリードを誘う、まあよくあるっちゃよくある手法なので、私は映像がアバンギャルドなだけで、この話は夢落ちではないと思う。
私は『告白』はファンタジー映画だと思っているので、あの映画の世界の中では、あれは悪夢のような現実という設定だと解釈しました。
だから森口は、実際に牛乳にHIVウィルスもいれたし、少年Aの母親の研究室にも爆弾を仕掛けたと思う。あの女ならやりかねません。やったかやってないかは観客が判断する構成だとは思うけど、夢落ちって私ダメなんで。「じゃあ今まで見せられたのはなんだったんだ!バカ野郎!」ってなるから。
森口はなんだかんだ言って、誰の殺人も直接手を下してない。作中の悲劇は全部、少年A,Bの暴走。彼らが人の命を大切に思えたなら、全部起きなかった。
というのも作中のラストで言ってたけど、牛乳にHIVウィルスを入れたって気持ち悪いけど感染はしない。胃腸に傷がある私みたいなのは、感染しちゃうかもしれないけど。
そういう意味で彼女は殺人罪には問われないかもしれないが、警察が少年Aや大学に聞き込みなどをして、この完全犯罪が古畑警部補かなんかに破られたら過失致死にはなるかも(いや、爆弾は計画殺人だな。情状酌量があっても20年はぶちこまれるかも)。なにしろ、この森口の騒動ってクラスの子が結構証言できるので(私の報復をちくった奴は少年Cとみなすとか脅していただけだから)、彼女の人生ももう終わりだなあ。な~んてね♪(やべえ気に入っちゃったw)
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