獣性が人間の本質だというならばウンコの映画を作れ

 私が見た中で最も退屈だった映画(刺激的なシーンがいっぱいあったのに・・・)『告白』つながりでちょっと思ったことを。

 現代美術にマルセル・デュシャンの「泉」という作品があります。といっても、この作品はただ展覧会場に洋式トイレが置いてあるだけで、なにが言いたいのだかさっぱりわからない。
 偉そうな評論家は「ポストモダン思想におけるソーカル事件のように、あえて便器を置くことで価値相対化に傾倒するポストモダン芸術を痛烈に皮肉った」とか「現在の芸術家は作品を作るだけで創作活動が完結するのではなく、どこに何を置くか?(そこで用いる造形物は自分で制作しなくてもよい=レディメイド)という問題の時代に入った」とか、まあ、いろいろと勝手に深読みし、デュシャンの「泉」は芸術史にその名を刻んだ・・・
 ・・・くっだらない。

 だいたい作者のデュシャンが、もし、特に何も考えずみんなの注目を集めたいだけで、あれを置いてたいたらどうなのか・・・?(つまり答えは無し)
 時に鑑賞者は作家の意図した以上のことを感じ取ってしまう。それが現代アートの醍醐味・・・?
 この現象を皮肉ったのが『鏡の国のアリス』の「ジャバウォックの詩」。わけのわからない言葉(答えもない)に踊らされて、真理とやらの剣をふるっている人を皮肉っているわけです。

 考えようによっては「ヴォーパルソード」の最先端は「科学」のような気もしますが(デビット・ハルや三中信宏氏はそれを否定)、科学は基本的にどんな人にも共有化できるもの。
 しかし芸術作品の解釈は共有化できない。だからといってその価値を下に見ているわけでは決してないのですが、それを上手く逆手に取った時、芸術でも映画でもカルト的人気が出ることがある。 
 「泉」しかり『不思議の国のアリス』しかり『告白』しかり・・・これらはどれもが、観客に大事な解釈をまる投げしている点が見事に共通している。
 個人的には私はこれは「反則手」かつ「一発だけ使える必殺技」のようなものだと思っていて、もし「泉」や『告白』のヒットに続いて、似たような作品が出てきても質の悪い劣化コピーなだけだと思います。
 そして私は、人に何かを伝えてそれを共有化したいタイプなので、あまりこの手法はやりたくない。正攻法で攻めていきたい。

 なにしろ『告白』は膨大なモノローグで登場人物の細かな設定を紡いでいくのに、物語で最も重要な真相を「な~んてね」のラストのセリフで観客に見事にキラーパス。私はずっこけましたよ。
 普通の物語は、ちょうどこの逆で、大事なメッセージ性やテーマ性は観客にしっかりと伝え、本筋に関係のないどうでもいい細かな設定(キャラの誕生日とか)は、妄想が大好きな熱狂的なファンの研究本などに任せてしまうw。
 この逆をわざと狙ってきたとは、それはそれで恐れ入る。でもなあ・・・話作りの勉強にはあまりに逆説的すぎて役には立たないなあ・・・

 あと人間の最もダークな部分をよくぞここまで取り上げたって言う評価もあるけど、これってつまりは人間が誰しも持っている「負の攻撃性」ですよね。
 人間の精神性、悟性と対極にある、もっともプリミティブな感情。「やられたら、やりかえす」「自分の大切なものを奪われたら、とってもひどい方法で自分の苦しみを味わわせてやる」まあ「ハムラビ法典」的発想で、それ自体に文句はないもののあまりに建設的じゃない。
 この報復の連鎖を実際実行しているのがイラクであリ、アフガンであり、イスラエルとパレスチナであり・・・き、きりがない・・・
 日本はオウム事件や拉致事件以降、すごいテロってないですけど、他の国ってたくさん森口がいるわけで・・・日本には無い怖いもの見たさってことなのかな?

 私はそういったプリミティブな感情を別にフィクションで見たくない。ノンフィクションの世界でさんざん見なきゃいけないから・・・(今日も若い小学教師が女性を強姦したとかやってたなあ。ついに「暴行」じゃなくて「強姦」って報道されるようになったんだ)。
 食欲、性欲、睡眠欲と同列に「攻撃欲」っていうのが、ただの動物にすぎない人間には確実にある。一応公共の福祉の概念の下、社会がそれを禁じているけどそれは建前でしかない。
 なんだかんだ奇麗事を言って私たちは殺し合いが大好き。でもそれを堂々と言うと偽善者に白い目でみられるから、いかんいかんとワールドカップあたりで我慢する・・ 
 これで人気取れるなら、120分ただ飯を食ってる映画とか、寝ている映画とか、ウンコしている映画とか(あ、それは『セックス&ザ・シティ』にやられた!!)・・・もっと言えばカンヌ国際映画祭とかにアダルトビデオなんか出品したらすごい反響だと思う。
 映画界のデュシャン現る!って。な~んてね。
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