黒執事問題について

 そんな問題があったなんて初めて知ったけど、つまりは『黒執事』っていう漫画(なんかボーイズラブっぽいすごい狭い世界観のお話)の作者に対して「私は原稿を違法ダウンロードしてただで読んだのですが楽しかったです」って感想を直接送りつけてくるファンの人がいて、その作家がそんなファンを「それは泥棒だ」とか「それを作るにはお金がかかるんだから買ってくれ。私たちに死ねって言うのか」とかかなりきつく批判したようです。

 しかし岡田斗司夫さんが「ひとり夜話」で言っていたけど、この作者もプロになる前は少なからずユーチューブなどでタダ見していたと思う。ただ岡田さん曰く、少し前までは、無料で動画を見ることのちょっとした罪悪感があった。でも今のファンはそれすらない。モラルが低下している!と作者は考えているらしい。

 岡田さんはこの問題の本質は、ネット社会に上手く適応しきれずに未だ前時代的な流通システム(印刷、出版、小売=書店)にしがみつく出版社がそもそもダメなのだとして、ネット社会、メディア共有社会へのいらだちをこの『黒執事』の作者に代弁させているとしたら、それは悲しいことだと言っています。

 確かに漫画家がそれを読んでくれるファンを批判するなんて今まで聞いたことが無い。違法ダウンロードは、書店で万引きと本質的には=のような気もするけど、ネットの世界ではいろいろグレーゾーンがあるし、例えばその著作権がグレーなところで素人がその作品を宣伝するのに一役買っていたりするから(コミックマーケットの二次創作のように)メーカーによっては黙認したりするし、対応が統一されていない。
 ただこのグレーゾーンを完全にレッドゾーンにするのか?と言えば誰もそんな事しないだろうし、もはやできない。それは作り手や送り手ですら、別の分野では受け手なわけで、グレーゾーンの恩恵を受けていると思う。
 それともプロになったら、ばっさりと著作権の鬼と化し、ユーチューブで曲なんて聞かなくなるのかな?それなら漫画の後ろに、この漫画を描くにあたって影響を受けた参考文献欄とか載せるべきだと思うが。

 私は漫画家の経済的なゆとりのなさって出版社がもうすこし何とかしてやるべきだと思う。例えば専属契約結ばせたら、漫画家の家計を苦しめるアシスタント費とかを出版社側が負担したり、資料の収集は編集者がやるべきとか。高級なお店で接待する経費が落ちるなら、アシスタント費くらい出してやればいいのに。
 今の漫画は絵のクオリティのアベレージがとんでもなく高いし、どう考えてもアシスタントなしでは一週間で19枚なんて描けないんだから、そんな莫大な仕事を強いるならば、出版社が作家の面倒を見るのも必要なんだけど、そんな文句を仮に作家が言ったら「あ、そう。まあお前の変わりなんていくらでもいるよ」とか言われて出版社に切られてしまう恐怖がある。だから、そういった出版形式に対する文句を漫画家はなかなか言えないんだと思う。
 んで、その怒りを違法ダウンロードをするファンにスライドさせているのだとしたら本当に悲しい。結局作家の才能を安く買いたたいているのは、出版社である可能性だってあるのに。

 宮本拓海さんという動物イラストレーターの人がブログで「恐竜図鑑のイラストの質が低いのは、イラストレーター本人の腕のせいもあるけど、その復元図を書くのに必要な資料を編集者が集めてこないからだ」と言っていました。
 そういえばドラマ化もした野球漫画は甲子園のベンチの裏の描写を描くのに、アシスタントにカメラを持たせて甲子園に取材に行ってもらったとか聞きましたが、それは編集者がやるべき仕事なんじゃないのだろうか?
 でも編集者は編集者ですっごい仕事がきついのも知っていて、三日も会社に泊まり込んで働く編集者の人の愚痴を聞いてたら、オレなんかの打ち合わせのために時間取らせるのが悪く思えてきちゃって、出版社にいきづらくなっちゃったりした・・・

 とにかくこの問題は出版社が変わらなければどうにもならないと思う。どう変わるべきかのヒントを岡田斗司夫さんは示してくれたけど、まず作品をネット上に挙げて、その反響が大きかったものを書籍化、アニメ化すればいいというもの。
 そうすれば出版社も、人気が出るかどうか分からない新人の漫画をリスクを冒して莫大な費用がかかる雑誌に連載させることもなくなるし、ネットでの流通はほとんどタダみたいなものだから、そこで浮いたお金でアシスタント費を出してやるとかいろいろできると思う。
 そもそもかさばるし、ゴミになるあの厚い漫画雑誌は、どんどんなくなって、雑誌に当たるものは電子配信に置き換わり、人気のあるものは雑誌にならずにいきなり単行本化だと思う。
 
 また人気のある漫画は電子データならば岡田さんの言うようにプロテクトがかけれるだろうし、本というマテリアルになったらスキャンされてネットで出回っちゃうんだから、映画と一緒で電子配信(映画館)の後に、単行本(DVD、ブルーレイ)で本当のファンに買わせればいい。
 そしてそのファンの数が多ければ、そのメディアはネット上で出回るだろうけど、単行本になるまでに結構たくさん稼いでいると思うし、逆にマニアックでコアな作品はあこぎな値段で売れると思う。
 これは本当にひどい話だけど、専門家しか買わないような本って価格が5000円~10000円だったりして、すごいびっくりするんだよな・・・

 結論:そのうち漫画は雑誌を飛び越して、ネット配信から直接単行本になると思う。
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