水嶋ヒロ問題について

 元俳優で「これからは作家をやりたい」って言ってた水嶋ヒロさんが処女作で小説の賞を受賞して賞金2000万円をとったとか、この前ニュースでやってて「これは絶対ネットで嫉妬されたり叩かれてるな!」と思ったらやっぱり盛り上がったらしい。
 今はライトノベルブームで小説書いている人も多いだろうし、そういう人にとってみれば処女作で受賞って羨ましいにもほどがあるんだろうな。
 この人ルックスも良くて、スポーツ万能で、帰国子女で、奥さん歌手で、んで文才もあった?わけだから(性格も好さそう)まさに少女漫画に出てくる学園のアイドルそのものだよね。

 結局水嶋さんは賞金の2000万円を辞退しちゃったらしいんだけど(なぜか賞そのものは辞退しなかった)、この一連の騒動は「出来レース」って言えば確かにそうかもしれない。
 まじめに小説家を目指している人にとってはつらい話だけど、世の中って結局小説でも映画でも漫画でも売れなければ話にならないから、この出版不況のなか小説という商品を売るためにはこれも一つの手段だったと思う。

 でもそれが水嶋ヒロが賞をとった後、賞金額をいきなり10分の1にするとか、あまりにやらせな感じが露骨で、いくらなんでもこれはひどい!ってなったんだろうな。確かにワイドショーを見てて笑ってしまったもん。今の出版業界ってここまで追い詰められたか!って。
 一番かわいそうなのは良くも悪くも色眼鏡で見られちゃう水嶋さんだよな。もしかしたらガチで小説の内容が良くて受賞したという可能性もあるのに、出版社側の節操のない戦略によって、絶対叩かれちゃうもん。

 でもポプラ社は度胸あるし、なんだかんだでこの戦略は結局売れると思う。作者を水嶋ヒロとばらした小説はまずファンの女の子が買うし、受賞に懐疑的な奴も「本当に面白いのかよ」って買っちゃうと思う。ネットでは読まずに批判する人も多いけど、一定数はアンチ水嶋派も買っちゃうだろう。
 話題作りとしてはここで作者が水嶋ヒロだってばらした方が良かったのかもね。ばらさなかったら出版数は大幅に下がっただろう。おそらく100分の1とか。

 節操がないと言えば、『オタクはすでに死んでいる』に書いてあったんだけど、かつて少年漫画ってカラーのグラビアページがメカとか軍記物とかスポーツ選手だったらしいんだけど、マガジンが南沙織かなんかを表紙にしたら凄い売れて、それからどの雑誌もグラビアアイドル路線になっちゃったという。
 この事実は漫画の内容ではなく、とどのつまり水着少女で売れてしまうという辛い現実を漫画編集者に突きつけたそうだけど、やっぱりしょうがないんだ。
 
 これはいわば食玩現象で、お菓子のおまけだったおもちゃの地位が上がって、お菓子がおもちゃのおまけになっちゃったようなもので、そもそもは漫画雑誌のおまけがグラビアアイドルだったのに、もうグラビアあっての漫画雑誌になっちゃった。
 こうなると漫画家がどんなに頑張っても雑誌からグラビアアイドルを駆逐することはできない。食玩のお菓子のクオリティをいくらあげても、おまけのおもちゃはなくならないように。グラビアアイドルの雑誌を売る力って言うのは、漫画よりも強いんだ。
 少年マガジンの編集者ってけっこう自分の雑誌の漫画をニヒルに見ていて「こんな雑誌、部活の合間に読み捨てる程度ですよ」って言ってて、確かにそうかもしれないけど、そんな事言われちゃ作家のドーパミンは出ないよなあって思ったw。

 こういったグラビアアイドルと同じで、「水嶋ヒロ」って名前は小説を強力に売るリーサルウェポンなんだ。もし水嶋さんが純粋に作品の内容だけで勝負したいなら、意地でも水嶋ヒロの名は伏せてもらうはず。
 でも「この小説をあの水嶋ヒロが書いた!」(ゴーストライターが手伝っているかもしれないけど)っていう事実込みで評価されたというならば、そうもいかないのが恵まれた者のみが知る不幸と言うもんだよね。
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