同義置換に対する非同義置換の割合

 『分子進化のほぼ中立』の第4章~第7章で鍵となっている重要なモデルをまとめます。

同義置換(synonymous substitution)
 生命の設計図と言われるDNAの塩基配列は、タンパク質を作る際のアミノ酸の順番を決めている。塩基配列三文字で一種類のアミノ酸をコードしているんだけど、一種類のアミノ酸をコードする塩基配列のパターンは複数ある。
 例えば「ロイシン」って言うアミノ酸を担当する塩基配列(コドン)は「UUA」「UUG」「CUU」「CUC」「CUA」「CUG」と6種類ある。だから「UUA」がなんかの拍子で「UUG」に変わってもできるものはロイシンで一緒。これを同義置換と言う。

非同義置換(nonsynonymous substitution)
 非同義置換は同義置換の逆で、タンパク質を作るのにつなげるアミノ酸が変わってしまう塩基配列の置換を言う。例えば「ロイシン」をコードしていた三文字の塩基配列「UUA」が、「UUC」になると別のアミノ酸「フェニルアラニン」をコードしてしまう。

 これをふまえると、タンパク質の材料であるアミノ酸の種類を変え、タンパク質の種類を最終的に変えてしまう「非同義置換」は、塩基配列が変わってもできるタンパク質が変わらない「同義置換」に比べて、かかる淘汰圧が高いということになる。
 
 淘汰圧・・・非同義置換(n)>同義置換(s)

 また淘汰圧は集団サイズが大きい方が高いから、集団サイズが大きい生物の非同義置換は淘汰されちゃって同義置換に比べて割合が少なくなるはず。
 実際に集団サイズが大きいネズミと、集団サイズが小さいウシを比べると、ネズミの方が同義置換に対する非同義置換の割合が少なかったらしい。

 非同義置換(n)/同義置換(s)・・・集団サイズ大(淘汰圧大)<集団サイズ小(淘汰圧小)

 次に同じ種類の生物同士の集団内(種内)と、異なる種類の生物同士(種間)の二つの場合を考えてみる。
 例えば「種内競争」と言ったら首の長いキリンの方がメスキリンにモテモテ(性淘汰)とか、ライオン同士の縄張り争いとかそういうもの。「種間競争」と言ったらライオンVSハイエナの抗争みたいなもの。

 非同義置換が生物にとって弱有害な場合、「種内」では中立的に振る舞い(よって様々な遺伝子パターン=「多型」が残される)、「種間」では弱有害淘汰が働く。

 しかし非同義置換が有利な変化をもたらす場合は、「種内」では中立ではなく有利に振舞うので、遺伝子パターンを増やす効果は弱有害時に比べて少ない。
 一方「種間」では正の淘汰が働き、有利な非同義置換はその生物種内で広まっていくので、種間の遺伝子の違いが際立つことになる。

 162ページをふまえてまとめると(同義置換に対する)非同義置換の割り合いは・・・
①非同義置換が弱有害の場合・・・種内>種間
②非同義置換が有利な場合・・・種内<種間

 この理屈で言うと種内に比べて種間の方が淘汰圧が高くドリフトの効果が低いと言うことになる。じゃないと①が成り立たない。

 93ページにも
 種間より種内多型で同義置換に比べ非同義置換が多いと、種間で淘汰が働いているわけだから、非同義置換に対する弱有害淘汰が指摘され、逆に種間で多いと、有利なアミノ酸置換が正の淘汰によって種間の違いをもたらしたと考えられる。
 って書いてある。

 でも最近は種内競争の方が種間競争よりも淘汰圧が高いと言う説があってややこしい。コレはどう考えればいいのだろう?
 ここら辺の問題は最後の最後の132ページにちょろっとふれているんだけど、記述が少なくてどうにも解釈できない。
 あと最後のページの化石動物の進化について(急激な進化を示す化石が見つからないのは、急激な進化は大集団よりも小集団で起こりやすいから、化石が残る確率が漸進的な進化に比べて低い)は、もう少し具体例をあげていろいろ説明して欲しかったけど、そこらへん(古生物学)は専門外なのかな。
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