ほぼ中立説について

 おさらい。

①中立的な遺伝子
 生存競争に有利にも不利にもならないので淘汰圧がかからない。中立的な遺伝子は遺伝子浮動(=ドリフト。どうでもいい中立的な遺伝子が“偶然”次の世代に伝わること)の効果が大きいので一般的に進化スピードは速い。

②どうでもよくない遺伝子(私が考えたので学術用語ではありません)
 その生物が生きる上で大切な機能を担う遺伝子。これが変異して機能を失えば生存競争に不利になりその個体は淘汰される。遺伝子浮動の効果は少ないので進化の速度は漸進的。

③ほぼ中立な遺伝子
 集団サイズによって①になったり②になったりする遺伝子。集団サイズが小さいと生存競争がそこまで厳しくなく淘汰圧が低いので中立的に振舞う。逆に集団サイズが大きいと生存競争が厳しいので、その遺伝子が弱有害な場合、淘汰される可能性がある。

分子進化時計
 アミノ酸配列の変化率はほぼ一定なことから(すなわち中立的)、異なる生物種のアミノ酸を比べて変化の度合いを調べれば、その二つの種類が分岐した時代が分かるという考え方。

元祖中立説
 元祖中立説の木村資生さんは、タンパク質の進化速度がこれまで考えられていた以上にとても速く、一世代あたりの突然変異の数がすごく多くなっちゃうことを発見した。
 自然淘汰にイチイチかかっていたらタンパク質の進化がこんなに速いはずはない。だからタンパク質の突然変異は中立的だとして「分子進化の中立説」を発表。

 元祖中立説は、進化の速度は中立的遺伝子の突然変異率と同じとモデルを単純化した。しかしこのモデルでは、タンパク質の種類によって進化のスピードが異なることを説明できない。
 たとえば血液を固めるフィブリノペプチドはイヌとウマではその材料(アミノ酸)の半分が違っているのに、染色体のクロマチン繊維を構成するヒストンはイヌとウマでもまったく同じアミノ酸配列だった。
 この事実はアミノ酸の変化率が一定だと言う「分子進化時計」の考え方と矛盾してしまう。アミノ酸が数珠つなぎになってできているのがタンパク質だから。

ほぼ中立説
 そこで「ほぼ中立進化説」では元祖中立説の中立な突然変異を「中立」と「ほぼ中立」の二種類に分けて、ほぼ中立な突然変異は場合によっては自然淘汰の影響を受けるとした。
 これによればフィブリノペプチドはドリフトの効果が大きくいろんなタイプが残ったけど、ヒストンはドリフトよりも自然淘汰の力が強く、他のものは厳しい戦いに敗れて姿を消すことになった。
 この違いは生物集団の大きさが大きく影響しているらしい。
 
 集団サイズが大きい・・・競争が厳しく淘汰圧が高い。ドリフトの世代効果は低い。進化速度は遅い。

 集団サイズが小さい・・・競争が緩く淘汰圧が低い。ドリフトの世代効果は高い。進化速度は速い。


 ちなみに提唱者の太田朋子さんによれば「中立突然変異のほとんどはほぼ中立」だと言う。確かにそうかもしれない。どのような突然変異が自然淘汰を受けるかは、その時代の自然環境や競争相手によっても違うから普遍的ではないのだろう。
 そうなるとごく僅かな「全く中立」としている突然変異も「ほぼ完全に中立」とした方がいいかもしれない。
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