『知られざる日本の恐竜文化』①

 著者はご存じサイエンスライター金子隆一さん。

 金子版『オタクはすでに死んでいる』と言ってもいいかもしれない。岡田さんも金子さんも今のオタクの体たらくぶりを嘆いているのは同じだし。
 二人ともSFファンから出発した筋金入りの能動的なオタクやマニアであり、最終的に自分の趣味をクリエイティブな仕事にしてしまった、いわばオタクの花道を歩いた人たちだ。
 この世代のオタクの行動力やエネルギー(そして財力)はすごいし、二人とも今の消費者と変わらぬ受動的なオタクに「なんでそれが好きならそれくらい行動しないの?」って首をかしげている点も似ている。

 彼らに言わせればオタクとはアマチュア研究者のことなのだろうか?と思える節がある。そしてその定義は少なくとも今のオタク像には合致しない。
 しかし真の恐竜マニア(第三段階)はプロの古生物学者と定義する金子定義だと、恐竜オタクはアニメおたくやSFオタクと違って、ろくに生まれもせず死んじゃった気もする(恐竜オタクを自負する金子さん自身も結局第三段階と第二段階のあいだでは?)。

 岡田さんは今の「萌え」を中心とするオタクの定義が、かつて自分が定義していたものとは変わってきてしまった。それは仕方がないと(内心「最近のオタクにもバカがいるんだ」とがっかりしながらも)、それを受け入れ、ある意味突き放してしまった。
 しかし金子さんは違う。岡田さんに比べてはるかに熱いし痛々しい。

 まず金子さんはオタク第一世代に立ちはだかった筋金入りのハードSFマニアだから、サブカルチャーすら一段下に見ている(気がする)。おそらく「ガンダムなんてSFじゃねえ!」って叩いたのは金子さんたちだろう・・・112ページでは「漫画やアニメはハードSFの寄生虫」と爆弾発言w。まあそれは同感だけど・・・
 でもおかしいのは岡田さんが初代ガンダムが大好きで、それ以後のガンダムシリーズは認めない!と言っているのと同じく、金子さんも初代ゴジラ(だけ)の熱烈なファンであり、海外のプロの恐竜研究者にもゴジラファンはいるよ!とアピールするところ。アニメや漫画オタクと何ら変わらないのが痛々しい。

 少なくとも特撮がアニメや漫画より優れているというわけではないだろうし、岡田さんが「ガンダム」をアニメだから好きになったわけではないのと同じで、金子さんも「ゴジラ」を特撮だから好きになったのではなく、あくまでも内容が良かったから好きになったのだろう。
 ならアニメや漫画をSFの寄生虫と切り捨てるのはかなりオレ基準で、大胆な発言だと言わざるを得ない。日本のアニメは「ガンダム」をはじめハードSFたりえないアニメばかりだろうから、気持ちは分かるけどさ。
 でもどんなにケネス・カーペンター博士が頑張っても生物的にあり得ない大きさの「ゴジラ」は傍から見れば「ガンダム」とあまり変わらないと思うし、初代ゴジラは知らないけど、特撮怪獣ものだってサブカルチャーじゃないか。そもそもハードSFの基準って何?センス・オブ・ワンダー?
 それにこの人「恐竜惑星」や「カウボーイ・ビバップ」っていうアニメも監修してたりするから「おいおいおいおいおい」ってみんな突っ込むと思う。アニメ製作会社から「金子さんこのアニメの科学考証お願いしますよ」って依頼が来ても、ちゃぶ台ひっくり返して「アニメはSFの寄生虫ぞ!」って叩き返すはずだろ。まったくひどい矛盾だ(それがおもしろいんだけどね)。

 また散々日本のアニメや漫画を叩いておきながら264ページの

 アメリカには「バットマン」や「スパイダーマン」や「Xメン」や「ファンタスティック・フォー」がいくらあっても、ついにただ一人のラムちゃんを生み出すことはかなわなかった。いくらディズニーやピクサーが興行収入ばかり大きい空疎な作品を繰り出してきても、そこには宮崎駿や庵野秀明や押井守の千分の一、万分の一のクリエイティビティが認められるわけでもない。

 という挑発的な記述はなんだ!結局こいつは「風の谷のナウシカ」や「エヴァンゲリオン」や「攻殻機動隊」とかが好きなだけなんじゃないか?って気がしてガッカリ。とりあえず金子さんが「トイ・ストーリー」を見ていないのだけは分かった。
 
 なんかこの記事あまり恐竜の話していないけど、それは次の記事に回します。続く。
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