ソルト

 「面白い度☆ 好き度☆」

 次々に明かされる(聞いてない)新設定・・・!

 アンジェリーナ・ジョリー演じる「イヴリン・ソルト」っていうロシア女スパイの話なんだけど・・・なんだこれ・・・『インセプション』の三倍難しい。これ『サマーウォーズ』以来のすっごい難解な映画ですよ!

 とりあえず北朝鮮のシーン~CIAの取り調べ室までのシーンは面白かった。おおおっ女版インディジョーンズの次は、女版マスターキートンか!って。
 部屋にある日用品を使ってロケット砲をこしらえちゃうところなんてまんまマスターキートン。そういえばこの漫画に出てくるロシアの殺し屋「赤い風」なんかも、その場にある物(万年筆とか木の枝とか)を凶器にして標的を殺してしまう恐ろしい奴だった。

 今回は役作りなのか、ちょっと病的にやつれてしまった感があるアンジェリーナ・ジョリーだけど、それがスパイの過酷な任務によってゲッソリしているようにも見えるし、あのホオジロザメや爬虫類特有の意思のないビー玉のような目つきは不気味2000パーセント。怖い!夢に出てくるよ!

 そしてジョリーが『トゥームレイダー』以上に体張りまくり!どこまでスタントの人か分からないけど、のっけから北朝鮮の兵士に下着姿にされ、汚い地べたに倒されてボコボコ。
 左目なんて飛び出ちゃうくらいに腫れてて、アンジェリーナ・ジョリーの凄まじい女優魂を見た・・・!そして裸足でかけてくノーパンアンジー。
 ここまで女にやらせるか?って話だけど、ここまでやらなきゃ女スパイと言う設定にリアリティが出ないと思う。だからこのつかみのシーンは完璧だと思う。素晴しい!

 しかしラストまで見てこの映画の全体的な構造はかなりちぐはぐ。『ダイ・ハード4.0』でも思ったけど、この手のアクション映画って展開が早いから、すぐにクライマックス的なシーンが来ちゃって、それが終わっちゃうと映画の長尺を持たせるために、また新たな展開を継ぎ足さなきゃいけない。
 イメージとしては未完成のプラレールのレールを電車が脱線する前に、ボンボンつなげていく感じだ。
 だからイブリンの立ち位置も石油会社の社員、CIAエージェント、ロシアの殺し屋・・・とコロコロ変わって、結局こいつは何なんだ感がすごい。
 「謎の女イブリン・ソルト」って言えば聞こえはいいけど、本当に謎なものに人は感情移入はできないと思う。
 だから観客のほとんどはこの女を本当に応援していいのかふみきれない。だって数十分後にまた新たな設定が出てきて俺たちの信頼を裏切るんだものw。

 ここまで観客を翻弄したのならば、最後までロシアのプロの殺し屋としていってほしかったけど、結局ロシアの大統領も殺さず、核ミサイル求めてしまったソルト・・・さんざんいろんなものくすねたり、破壊したり、何人も怪我を負わせているんだから、もう今更正義のヒーローになっても関係ないよって感じだ。

 物語には大きく分けて二つのやり方があると私は思っています。ひとつは「感情移入型」。皆が好きになってくれそうな魅力のあるキャラクターを登場させて冒険させるやつ。
 受け手は映画のヒーローに感情移入して応援したりする。『トイ・ストーリー3』なんかはまさにこのタイプだ。だから皆で手をつなぐ焼却炉のシーンで胸を締め付けられる。

 もうひとつはなんだって言うと「メタ型」。受け手がその物語の世界の傍観者(=神の視点)となって、物語を冷静に追っていくタイプ。
 登場人物や物語にそこまでのめりこませず、観客に映画の構造を追ってもらうこのタイプで面白い話を作るのは、かなりテクニックがいるんだけど、たとえば『インセプション』なんかは、このタイプのよくできた映画だと思う。あの映画はいわゆる「感動」はない。でも実存主義的ななにかを強く感じる。あとは『告白』かな。そしてギャグ漫画って意外とこっちだったりする。

 じゃあこの『ソルト』はどっちかと考えると、この映画の構造上の失敗(?)がちょっと見えてくる。

 『ソルト』ってどっちがやりたかったんだろう?

 かっこいい女スパイが出てくるヒーローものなのか?それともソルトの正体を推理する観客とスタッフの知恵比べなのか?
 『ソルト』は尺を持たせるために後者でシーンをつないでしまったように思える。だからソルトはキャラクターとして立たなかった。いや意図的に立たせなかった。だって立ったらソルトは謎の女ではなくなるから・・・

 ・・・でソルトは結局何がやりたかったんだ?・・・いや分かるよ。ロシアのトップクラスの暗殺者として任務を遂行しようと、ずっとCIA職員としてアメリカに潜伏していたたんだけど、生物学者の旦那さんに情が移って、殺し屋から足を洗おうと思い立って、わざわざ危険を冒してロシアの大統領を暗殺する振りをして、ロシアの同志のところにいる旦那さんを助け出して、殺し屋やめようと思ったら、旦那さんがロシアの同志に殺されちゃって、一気に反ロシアになっちゃって、アメリカの危機を救おうと核ミサイルの発射を止めて、同じ境遇だったロシアの殺し屋を殺したんでしょ?ぜいぜい・・・

 あの映画でロシアの極右勢力は、親米のロシア大統領を殺し、アメリカのミサイルでイスラム社会を核攻撃し、アメリカをめちゃくちゃにしてやろうと企んだけど、ああいう過激な勢力は今もロシアに実在するらしい。NHKのドキュメンタリーでやってて驚いた。意外と若者が参加してるんだ。
 だからこの映画の悪役(及び主人公)もそこまでリアリティの無い話ではないと・・・思わないな。やっぱり。ごめんよ。

 最後に北朝鮮のシーンで感じたんですけど、日本ってCIAみたいな諜報機関ってないですよね。隠しているだけかもしれないけど・・・(その割に官邸の動きが鈍い)
 北朝鮮の拉致被害者の人を救出するために、日本のスパイを送り込むとかって作戦は立てられないのかな?そんなこと韓国なんかはやりそうだけど、北朝鮮には秘密警察とかがいてソルト並のスパイでもなかなか厳しいのか・・・(捕まってたし)
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