35.分子生物学の時代

 アンチ・ダーウィニスト福岡伸一は分子生物学者である。分子生物学とは生物の構造を分子レベルで解明する学問で1960年代に入ると大流行した。

 なぜなら遺伝子の正体である染色体の詳しい構造が解明されたからだ。染色体と言うのは、拡大して見るといわばスプリングのような構造になっていて、そのバネをスーパーソレノイドと言う。
 この円筒状に巻かれたバネを詳しく観察すると、バネは細い糸のようなもので編み込まれて出来ている事に気付く。
 これをクロマチン繊維と言うが、その編み込まれた糸をほどくいて詳しく観察すると、糸はヌクレオソームフィラメントという構造になっていて、そのヌクレオソームを構成する分子が、ヒストンと言うタンパク質と、ご存知DNA(デオキシリボ核酸) だ。
 まあ、こんな細かい話はいい。つまり「染色体とはDNAと言う糸が編み込まれてできたアミグルミ」である。とりあえずそう考えてください。

 重要なのは、このDNAが生物の遺伝情報を決める具体的な法則を担っているという点だ。
 DNAとは「A」「T」「C」「G」という4種類の化学物質の羅列なのだが、実はこの4種類の塩基と呼ばれるものは、2進法コンピューターの「0」と「1」にあたる、デジタル言語なのである。
 つまりDNAは「4進法」をもちいて、生物の遺伝情報をつむいでいた。ちょうど「AATCCGTAAATT」と言った感じで。
 これをあるルールに沿って翻訳すると「最初にロイシンと言うアミノ酸を持ってきて、その後グリシンと言うアミノ酸、3番目にイソロイシン・・・んでそこまで行ったらアミノ酸をつなげるのは終了してね」となる。

 実は突然変異とは、このDNAの塩基の並び方「塩基配列」が何かのきっかけで変わることに他ならない。
 それは「ATT」→「TTT」のように塩基1個が他の種類の塩基に変わるような小さなものから、染色体のエリアごとの変異・・・これは染色体を「本」、塩基を「文字」なとするならば、ページを丸ごと破り捨てたり、ページの順序を入れ替えることと同じである・・・と様々だ。
 そして塩基配列の変異はそのまま生物の形質として発現し、それによって突如現れた巨大な花のオオマツヨイグサがド・フリースを驚かせていたのだ。

 この時の分子生物学者はかなり楽しかったに違いない。言わば「生物の設計図」の構造どころか読み方まで解ったので、あとは染色体に書いてある全ての塩基配列=ゲノムを調べ上げちゃえば、好き勝手に生物の形質をいじくりまわせるんじゃないか?
 そんな野望を胸に試みられたのが、原子爆弾を研究開発した「マンハッタン計画」にも匹敵する一大プロジェクト「ヒトゲノム計画」だった。
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