地球の熱収支について

 気象学その3です。こっからが本題で、なかなかややこしくなってきます。当ブログの記事「エントロピーについて」でふれましたが、熱湯と冷水を同じ容器に入れて、ぬるま湯になった時、この状態を熱の出入りがない(ようにみえる)状態、「熱的平衡状態」と言います。
 先生によれば、ある系に入ってくる熱量と出ていく熱量が等しく、収支がプラスマイナスゼロになる時、熱的平衡状態となります。

 地球の熱の出入りを単純化して考えると、地球へ入ってくる熱源は「太陽の放射(短波放射。とんでもなく熱い物体は、波長の短い電磁波を出します)」で、地球から出ていく熱源は「地球の赤外放射。地球は15℃で、あまり熱くないから」となります。 

 ここからの話はアバウトすぎて、ちょっと胡散臭いと思ってしまうのですが、太陽の放射量をF0(太陽定数=面積1m2あたりに太陽が放射によって与える仕事量は一秒間で約1.37kW )として、地球を球体でなく円の板、つまり「ハリボテ」として仮定して、その地球のハリボテが吸収する太陽エネルギーは「πr2(円の面積)×F0」となります。
 当たり前ですが、太陽って地球に一方向から放射してくるから、円=断面積にしちゃってるんでしょうね。すごい発想です。

 そして太陽のエネルギーは全て地球に吸収されず(黒体じゃないから)、一部は反射されます。この反射量をAとした場合、「100%-A%」が地球に最終的に吸収されるエネルギーになります。ちなみに地球では約30%が反射されるのでA=30%(=0.30)で、太陽の熱の七割を地球は吸収することになります。
 よって地球(を円盤とした場合)における太陽からの「熱の収入」は「πr2×(1-A)F0」となります。

 収入はこれでOK(かなりアバウトだけど)なので、次に「熱の支出」を考えます。熱を放射して冷めることを「放射冷却」といいますが、前回ふれた通りその式は、ステファン=ボルツマンの法則(出ていく熱量は温度の四乗)から導き出されて、「E=σT4」です。
 収入の際にはハリボテにされちゃった我らが地球ですが、支出の際にはちゃんと球体として扱われます。断面積分食らった太陽のエネルギーが、「表面」に伝わって宇宙へ逃げていくわけですから、球体の表面積の「4πr2」をかけてやります。
 よって支出は「E=4πr2×σT4」となります。

 収入と支出の式が立ったので、いよいよこの二つの式を=でつないで「収支プラマイゼロ」の熱的平衡状態を考えてみます。
 すると「収入=支出」なので「F0×(1-A)πr2=4πr2×σT4」になります。そして、この式を温度をあらわす式「T=なになに」の形に変形すると、πr2とかが消えちゃって、そして四乗根をつける羽目になります。
 「T=4√F0×(1-A)/4σ」

 √がうまくつけれなくて(4×σ分のF0×(1-A)にまるごと四乗根がかかります)、かなり見づらいですが、こうなるわけで、これに地球の反射率30%と、ステファン=ボルツマン定数「σ=5.67×10-8(J・s-1・m-2・K-4)」を代入(ステファン=ボルツマン定数の単位は「仕事量×秒分の一×平方メートル分の一×ケルビンの四乗分の一」だと思います)すると、答えが255ケルビンになって(私にはこんな計算できません)、0℃=273ケルビンなので、摂氏に直せばなんと地球は、放射平衡状態で、マイナス18℃!になってしまうのです。

 しかし観測では地球の平均気温は15℃であり、この違いはなんだって言うと、「“大気”を、この計算に入れていないから」ということになります。
 大気が地球の気温に大きな役割を果たしている事を理解するために、まあ、地球をハリボテにしたり、太陽定数とかステファン=ボルツマン定数とか使ったんですね・・・
 というわけで次回は大気について、先生の説明をまとめます。
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