『アオイホノオ』第8巻と才能について

 「仕方の無いことなんだよ・・・面白いウソをつくのが漫画家の仕事なんだから!恐竜より怪獣だ!ティラノサウルスよりゼットンなんだよ!」津田さん「ごめんちょっとわからへん」

 現在唯一単行本を集めてて続きが気になる漫画!で、昨日発売日だったのでさっそくその日に買ってきました!一件目の本屋ではそもそも置いてなくてちょっとせつなかったけど、歯医者の帰りに遠回りして別の本屋に寄ったらちゃんと置いてあってよかった・・・

 しかし相変わらず帯が面白い。なぜ島本先生はこんなワナビーの本質を付いたセリフが思いつくのだろうかw

俺の漫画家としてのオリジナリティーなのさ。作家性……とでも言うかな。

「学校を描かずに学園ラブコメを描く」奇跡の発想とは……!?

 とか書いてあって、なにずるいこと考えてるんだホノオさんって気もするけれど、本編の冒頭を読んでくれればわかるけれど、学校の教室を描くのってとにかくしんどい。
 
 「学園ものを始めるにはまず学校が出てくるんだよ!こういうイスや机が40個も並んでいるのを描かないと始まらないんだ!素人にはわからないよ、この…教室の恐ろしさは…机やイスなんてひとつ描くだけでどれだけ大変か!」

 机が単なる箱ならそんなに大変じゃないんだけど、パイプが複雑に曲がっていて、しかもそこに椅子が入る。また放課後のシーンでもない限り、席に生徒をつかせなくてはいけないから、要求されるデッサン力は計り知れない。
 もし金八先生の「ガラッ(扉を開ける音)」「お~席つけ~席ついた~」みたいなカット割り(教室をやや俯瞰で撮影)を学園漫画で毎回やるのだとしたら、私はおそらく精神を病むか過労で寝込むと思うw

 で、ホノオくんも極力学校の教室を描かないように、転校生が教室に入る前に(なぜか)バトル漫画が始まる…というとんでもないアイディアを実行するんだけど・・・あれだね。やっぱり淘汰圧がかかると進化ってするんだね。
 私も『クオリア』で似たようなことやってたから笑えないんだけど、確かにアングルを工夫してさりげなく手を抜くっていうのは、作画時間の短縮にもなるし、プロの必須技術なのかもしれない。

 この前、浦沢直樹先生の『MASTERキートンReマスター』を読んでても思ったんだけど、最近の浦沢先生って人物描写とかがけっこう雑になっていて、それでも全然雑に見えないとことがすごいなあって。
 でもあれは巨匠の境地であって新人が数年でつかめるようなテクニックでは勿論ない。最初は地道にやっていくしかないし、自分より絵の才能のある人が自分の何倍も原稿を仕上げているんだから、敵うわけはない。

 ということで、ここからは才能マップの話。

 岡田斗司夫さん(←アオイホノオ最新刊で家を増築&両親登場!)が昨日の午後に大学の講義を生中継していてさ、「みんな最初にプロの仕事をやろうとしてオレには才能がないって諦めちゃう。自分が興味があるってだけでそれは才能だ」みたいなこと言ってて、まあ確かにそうなんだけど、そう考えるとオレ達がやるべきことは、自分の興味の幅をより広げて才能の質より量で戦うことなのかもしれない。
 
 今のオタクって自分の好きなもの――特定のすっごい狭い範囲のことしか興味が無くて、それ以外は文字通り“眼中にない”。
 例えばツイッターでよく特定のクラスターの人が「○○は××を下に見ている」ってちょっと被害妄想的に言うんだけど、あれもちょっと違うよね。
 もう上下や優劣関係にすらなってなくて、ひたすら水平方向に趣味がブロック化しちゃってるんだよ。だから自分の興味のあるものしか見えないし、物事の全体像を俯瞰で考えられない。

 他の分野に対して「劣っている」とか「これじゃよくない」とか価値判断すら付けないんだ。興味がないんだから。そもそも認識してないんだよ。
 だから漫画が規制されるとかなった時に、いきなり狼狽しちゃってどうしていいかわからない。とりあえず文句だけ言ってるって感じで。
 消費者として生きるならそれでいいけれど、クリエイターではそれじゃ不幸なんだよね。「わからない」に意識的じゃないとどんどん視野や守備範囲が狭くなる、と。

 で、その講義で岡田さんは学生に「才能マップ」ってのを書かせたんだ。これはA4用紙に自分が「わかるもの」と「分からないもの」を列挙するってだけなんだけど、これがなかなか書けそうで書けない。講義受けた大阪芸大の学生さん達は、岡田さんが周到に用意した教室の前にあるお菓子に釣られて書いてたけど。どんな大学なんだ(笑)

 自分が何に興味があるのか、何が「わかるもの」かは、まあ書けるかもしれない。でも「わからないもの」って分からない。本当にわからないものは自分の意識に登ってないから。
 岡田さんのうまいところは、それでも「わからない」って欄にかけるものは、実は「わかるもの」と相等なわけで(わからないって“わかる”から)、その人がどんな仕事ができるのか、その可能性を分析する判断材料になりうるって考えている点だ。

 そうなると、結局この才能マップって、「わかるもの」と「わからないもの」から共通項みたいなのを見つけられる分析力や頭の良さが必要になってくる。
 つまり才能マップを書いただけじゃダメで、かと言って分析力の才能がある岡田さんにいちいちプリント持って行って考えてもらうのもダメ。
 やっぱり最終的には“才能”で決まっちゃうのかって・・・才能ってなんだ!(戻ってきた)
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