西洋美術史覚え書き②

 今日はルネサンスから19世紀の美術まで。

ルネサンス前期(14世紀)
・ドナテルロ:ガッタメラータ騎馬像
・マザッチオ:楽園追放
・ボッティチェリ:ビーナスの誕生、春

ルネサンス盛期(15世紀末)
作家が自己の才能に意識的になる。作家性の表現。職人から芸術家へ。

・ダビンチ:最後の晩餐、モナリザ
悪魔の左手を持つ万能の天才。師匠のベロッキオはダビンチの才能にショックを受けて二度と絵筆を握らなかったという。しかし非常に筆が遅く、パトロンも呆れるほどの完璧主義者だった(作品の多くが未完成)。
また、実験が大好きだった彼は、発明家、自然科学者としても精力的に活動していた。持ち運びができる折りたたみ式の橋や、戦車やヘリコプター、パラシュート、進化論、地質学など時代を先取りしすぎてしまった研究も多い。一番笑った論文は(実験台の人を)『飛行実験に踏み切らせるための説得』

・ミケランジェロ:ダビデ像、天地創造、システィーナ礼拝堂天井画、最後の審判
ダビンチのライバル。専門は彫刻だが、その圧倒的な人体表現(ムキムキ)は絵画の名作も生んだ。
彼は誇り高き天才で、ローマ教皇ともガチで喧嘩するとんでもない人だった。
また、晩年になってもモチベーションと実力が全く衰えず、亡くなる6日前まで彫刻を制作していた。

・ラファエロ:びわのマドンナ、システィーナのマドンナ、アテネの学堂
ダビンチの『モナリザ』に感動し、彼に近づこうと努力したが挫折。独自の優しい作風の絵画を描き、最終的にルネサンス期の三巨匠の中で最も規範とされる作家となった。
謙虚な彼はモテモテのリア充だったが37歳という若さでこの世を去った。

北方ルネサンス(16世紀前期)
・ファン・エイク兄弟:画家の妻、アルノルフィーニ夫妻の肖像
顔料を亜麻仁油(リンシードオイル)に溶かし何度も重ね塗りができるようにして、ダビンチですら使いこなせなかった油絵の技法を完成させた。

・デューラー:兎、四人の聖者
もともとドイツで人気のあった版画家だったが、自分の表現を追求するためにイタリア(ベネチア)に留学し、ゴシック感あふれる北方ルネサンスにルネサンス的表現を持ち込んだ。
ドイツの芸術は、結局宗教改革のごたごたで停滞してしまうが、デューラーはそれを戒めるかのように4人の使徒(ヨハネ、ペテロ、パウロ、マルコ)を描いている。また、当時としては異例な自己主張の強い自画像を残している。

・ブリューゲル:農家の結婚、雪中の猟師、バベルの塔、子供の遊び
・ホルベイン:死の舞踏(版画)

マニエリスム
ルネサンスからバロックに移り変わる過程で生まれた絵画の表現形式。洗練された技巧、曲線の多用、複雑な構成、異常なプロポーション、非現実的な色調が特徴。
しかし17世紀に入ると、巨匠の技法の模倣と否定的なニュアンスで言われるようになる。
・エル・グレコ:聖アンデレと聖フランチェスコ

バロック美術(16世紀末~18世紀初頭)
バロックとは「歪んだ真珠」を意味する(らしい)。規範からの逸脱。
絶対王政が確立したヨーロッパで普及。教会堂建築を中心に栄える。
ルネサンスで重視された均衡や秩序、芸術の理想よりもリアリズムに傾倒し、より現実的な宗教画が描かれ、風景画や風俗画といった現実に密着したジャンルが独立する。
ダイナミックな構図、強い色彩、コントラスト(光の効果)、曲線や激しい動きによる躍動感にあふれた感情移入しやすい表現が特徴。
これは偶像崇拝を禁じるプロテスタントに対抗するためのカトリックの戦略だった(対抗宗教改革)。

・カラヴァッジョ(イタリア):バロック絵画の先駆者と言われる。
・ベルニーニ:バロック期の建築と彫刻の頂点に君臨した空間プロデューサー。ローマの広場や噴水は彼の作品で溢れている。聖テレサの法悦。

・ルーベンス(フランドル):実はドイツ生まれ。画家であり法律家でもあった父に学問を教わる。多忙な売れっ子作家(&腕利き外交官)だったが、神や家庭や弟子も大切にする人格者だった。ルーベンスは大量の発注をさばくために友人の画家と合作したり、才能のある弟子に複製を描かせ、生涯で1500~3000点もの作品を残した。
ちなみに若かりし頃、北イタリアの使者としてスペイン国王に絵画を届ける際、雨でその絵画がダメになってしまい、代わりの絵画を急遽描いて持っていったところむしろ大絶賛され、その後、スペインだけでなくフランスやイギリスの王室からもオファーが殺到することになった。
晩年は政治の世界から離れて、田舎に引越し優しい家族と好きな絵を描いて暮らした。
代表作は『マリー・ド・メディシスの生涯』『パリスの審判』

・レンブラント(オランダ):夜警
オランダの豊かな製粉業者の家に生まれる。大学を中退し画家の道へ進む。当時のオランダは家に風景画や肖像画を飾る習慣があったため、画家は大勢いたが、その反面競争は激しかった。
しかしスペインからの(南部)独立を望むオランダが、スペインの依頼を受けるルーベンスではなくレンブラントに絵画をオファーしたことから一躍有名になり、レンブラントの工房はオランダ最大と言われるようになった。
しかし私生活では信じられないほど不幸が続き、実の子どもを幼いうちに三人もなくしており、病弱な奥さんも早死してしまった。その後、気性の激しい家政婦に結婚詐欺と訴えられ、莫大な借金を抱え、最初の奥さんの遺産や家や美術品を手放すことになる。
都会に嫌気が差したレンブラントは、次に雇った優しい家政婦とともに田舎に引っ越すものの、その家政婦も病気で死んでしまう。不幸は更に続き、最初の奥さんの子どもで唯一生きていた息子が結婚直後に亡くなり、レンブラント自身もその半年後に死んでしまった。
ちなみに、代表作の『夜警』は誤ったタイトルで、もともとは『フランスバニングコック隊長の市民隊』が正式な題名だった。これは完成時は明るい絵だったのだが、塗料の重ね塗りによって画面が暗くなってしまったため。

・フェルメール(オランダ):真珠の耳飾りの女
謎の多い画家。作品数もかなり少ない(30点くらい)。
フェルメールブルーという青を好み、ラピスラズリなどの高価な顔料を贅沢に使ったため、生活は苦しかったという。ソフトフォーカスのような表現はカメラオブスキュラを用いたと言われている。

・ベルサイユ宮殿(ゴシック建築の代表作)
・ベラスケス(スペイン):ラス・メニアス、騎馬のドン・カルロス、王女と侍女たち

・ゴヤ:(スペイン)ベラスケスと双璧をなすスペイン最大の宮廷画家。人間の偉大さだけではなく、そのダークサイド(愚かしさ、残酷さ、狂気)もありのままに追求しようとしたため精神的にかなり不安定になり、聴力を失い、恐ろしい幻覚に悩まされたという。
ナポレオンによるスペイン侵攻を象徴しているとも言われる『巨人』や、『我が子を喰らうクロノス』といった黒い絵が有名だが、その一方で『裸のマハ』という官能的(すぎて裁判を起こされた)作品も描いている。

ロココ美術(18世紀~)
フランスから始まった美術様式。ロココとは「岩」の意味。植物の蔦のような複雑な曲線からなる装飾。ただバロックと明確な境界はないと考える人もいる。どうすんだ。
ただ、バロックに比べて少女漫画ちっくというか・・・エロい。
ちなみに、この時期にサロン(王立アカデミー主催の展覧会)が生まれる。一般人が絵画を楽しめる唯一の場となったサロンは芸術家とパトロンの関係だけではなく、評論家、画商が美術のあり方を変えた。美術市場の流動化がはじまったのだ。

ロココ時代の作家が必ずしもロココ調の作品を制作していたわけではない。
・ラ・トゥール(フランス):ポンパドゥール夫人の肖像画
・シャルダン(フランス):ロココ調の甘美で装飾的な画風ではなく素朴で穏やかな静物画などで知られる。食卓の祈り
・フラゴナール:ぶらんこ
・ティエポロ(イタリア):18世紀、ルネサンスを締めくくるイタリア最大の巨匠。ロレートの聖家の奇蹟
・ホガース(イギリス)風刺画の父。人気のあった自身の漫画(連作絵画)を版画にして大量に販売した。またあまりの人気に海賊版が出たときは司法に訴え、議会で著作権法を世界で初めて認めさせた。

19世紀の美術

古典主義
享楽的だったロココの反動(とイタリアのポンペイの発掘)で古代美術の簡素で壮大な表現に憧れた。
特に、ギリシャ、ルネサンス、なかでもラファエロを規範としている。

・ダビッド:ホラティウスの誓い、サン・ベルナール峠を超えるナポレオン
フランス近代絵画の礎を築いたと言われる。市民革命に古代ローマ市民の勇猛さを見て、革命派の偉業を絵に残した。しかしジャコバン派の独裁政治に対してクーデターが起きると、ロベスピエールの友人ということでダビッドも裁判にかけられて幽閉された。その後、政権を取ったナポレオンが古代の歴史や文化を愛していたために重用される。
ちなみに彼は38歳でやっとアカデミーのローマ賞をとっている。この遅咲きの人生が既存の権威への反発や革命精神を育んだのかもしれない。実際彼はジャコバンクラブの議長時代に旧態依然のアカデミーを廃止している。

・アングル:女性の背中フェチ。ダビッド(新古典主義)の継承者。趣味のバイオリンはプロ並みの腕前だった。オダリスク

ロマン主義(1780年~1830年)
古典主義が軽視していた、神秘的なもの、オリエンタリズム、夢などが題材に好まれた。また教条主義によって抑圧されていた個人の感情も表現された。
・ジェリコー(フランス):エプソムの競馬(ウマがフワフワ浮いてる)。馬が大好きで、落馬事故で早死したが、友人のドラクロアなどに影響を与える。

・ドラクロア(フランス):民衆を率いる自由の女神、アルジェの女たち
父親はナポレオンに使えていた外交官(フランス革命の大物タレーランなんじゃないかという説もある)。「フランスの偉大なパレット」とのちにセザンヌに称えられたドラクロワは、当時の画家の登竜門のイタリアにいかず、パリのルーブル美術館で絵の勉強をした。
自由主義に共感し、衝撃的な事件や物語を題材にした彼の絵は、アカデミーになかなか評価されなかったが、ライバルのアングルや文豪のゲーテ、批評家のボードレールはドラクロアの実力を認めていた。ちなみに文学や音楽にも造形があったドラクロアはショパンとも親交があった。
もともと体が弱かったドラクロアは喉頭炎で65歳で亡くなった。待望のアカデミー会員に選ばれた6年後だった。

アカデミック美術
古典主義(アングル)VSロマン主義(ドラクロア)の折り合いをつけたために折衷主義とも言われ、哲学者ヘーゲルの影響を受けている。
言うまでもなく権威主義的で、画家の卵は美術学校で厳しい訓練に明け暮れた。しかしこの教科書的なガチガチの美術教育が、後の芸術家にとっていい反動をつけた。
・ブグロー:とにかく美少女の肌の表現が神がかっている。

自然主義
ロマン主義を引き継いだ。テーゼは結構似てる。フランスではバルビゾン村に暮らして絵を描く画家たち、バルビゾン派が発生。
・ミレー:落穂ひろい
・ターナー:カルタゴ、帆をあげるウィルキイ号、雨・蒸気・スピード
・コロー:印象派の橋渡しをした画家。マントの橋、真珠の女、マンドリンを持つ女

写実主義
ブルジョワ支配に対する不満。支配者や労働者、農民をありのままに描く。
画家の主観や理想を極力排除。これは絵にはテーマが必須という当時の常識を覆すラディカルな試みだった。これは印象派にも受け継がれていく。
・ドーミエ:風刺版画家として知られる。クリスバンとカスバン、三等列車
・クールベ:パリ万博に落とされた腹いせに世界で初めて個展を開く。この個展はほとんど客が来なかったが、ある時ドラクロワがこっそりやってきて傑作と評価している。集団肖像画、風景画、官能的な女性画などレパートリーが広い。パリコミューンにも参加し、結果的に国を追われることに。ノルマンディーの海岸、波

ラファエル前派(19世紀中期)
当時のアカデミズムでは画家になるならラファエロなどの古典主義の巨匠を勉強するのが常識だったが、それに反発し、中世などルネサンス以前の芸術も規範としたイギリス(リバプール)の一派。
ありのままの自然を描くというジョン・ラスキンの思想が潮流となっている。
アカデミズム対抗したとは言え、緻密な描写はアカデミズム絵画の影響が強く、個人的にはアカデミズム+ロココ+ロマンって感じがする。それもそのはず、ラファエル前派はあまり一貫した芸術運動じゃなかったので、長続きもしなかった。
・ロセッティ
・ハント
・ミレイ:オフィーリア

印象派(19世紀後半~)
絵の具が持ち運びできるようになり、写生やスケッチを野外で出来るようになった。自然の印象を光の表現を巧みに用いることで描き出す。筆触分割によって絵の具が混ざらず、そのため画面が全体的に明るい。

・モネ:印象日の出、睡蓮
子どもの頃は授業中によく漫画を描いていて、そのイラストが若い頃には売れていたが、印象主義の絵画は長いあいだ全く評価されず、貧困生活に絶望して川に身投げ自殺を図ったこともあった(しかし無傷)。
1876年から始まった印象派展(無名芸術家協会展)は8年後の第7回目でやっと評価された。しかし、その頃には印象派のメンバーは内部分裂をしていて、第8回印象派展のメンバーは後に新印象派や象徴主義と呼ばれるスーラ、シニャック、ルドンなどが加わり、大きく変わっていた。

・マネ:草上の昼食
・ルノワール:ムーラン・ド・ラ・ギャレット
・ドガ:踊り子

新印象派(19世紀末~20世紀初頭)
・スーラ:筆触分割の解像度を上げ点描に発展。グランド・ジャット島の日曜日の午後
・シニャック:サン=トロペの港

後期印象派(1880年代)
芸術界に個人主義的な風潮が生まれ、それを批判したグループなので画風の共通性はない。その後フォービスムへ展開。
・セザンヌ:近代絵画の父。自然と幾何学の立体として捉える。この思想が後にキュビスムに。サント・ヴィクトワール山、カード遊びをする人々、リンゴとオレンジのある静物
・ゴーギャン:ゴッホと一時期暮らしていたがどっちも個性が強くてダメだった。タヒチの女
・ゴッホ:絵に自分の感情をのせて描く。大胆な色使い。今でこそ著名な画家だが生前はたった一枚しか作品が売れず(『赤いぶどう畑』が10万円ほどで売れた)、深刻なノイローゼに悩まされて、最終的にピストルで自殺した(他殺説がある)。
自画像、ひまわり、アルルの跳ね橋

ナビ派(19世紀末)
ゴーギャンの教えを受けたポール・セリュジュがリアルには存在しないような色彩で描いたのがきっかけ。20世紀の絵画表現の多様化を予言したような一派。
・ボナール(日本の浮世絵の影響を受ける。ジャポニスム)
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