『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本⑤

プロメテウスタワー
航空機の格納バンカー
エド「これがSX32ミラージュです・・・」
ヴィン「全然売れなかったけどな」
ステップに上がってコックピットにあたる部分を覗くミグ。
ミグ「これが・・・本当にコックピットがないんですね・・・」
ヴィン「空飛ぶコンピューターだよ。
ある腕利きパイロットのフライトデータがインストールされているだけ。」

ステップからヴィンを見下ろすミグ「ではその腕利きに緋色の旅団の隠れ家を捜索させましょう・・・
もともと緋色の旅団を倒すために作った戦闘機なんでしょう?」
ヴィン「そうか・・・これで緋色の旅団からライトを救い出せばミラージュの最高のプレゼンになるな」
不安そうなエド「しかし・・・まだこのミラージュは最終調整が・・・」
ヴィン「なあに航空ショーまでには帰ってこさせるさ、戦闘証明だよ。」
エド「テロリストに撃ち落とされたら・・・?」
ヴィン「そんなことないよ、こいつの設計を誰がしたと思う?
ライト・ケレリトゥスだよ」
ミグ「・・・え?ライトが兵器を作ってたんですか?」
ヴィン「たった一度だけね。それがこいつだ。」

コンピューターのキーボードを叩くエド「索敵システム起動・・・目標緋色の旅団・・・」
ミラージュのヘッドライトが灯りふわりと垂直離陸する。
格納庫から飛んでいくミラージュ

社長室
ネクタイを取ってYシャツの襟を広げるヴィン
「あとは待つだけ。さて・・・暇だな・・・なにか話でもしようか。」
ミグ「あのライトが戦闘機を設計していたなんて・・・」
ミグに写真を渡すヴィン「それだけじゃないよ。」

ライトとヴィンの写真。二人とも若い。

ワインを開けるヴィン「19歳のころ、亡命先の地球で出会ったライトとふたりで立ち上げたんだ・・・会社といっても最初はウチのガレージだったけれどね。そこでライトはさまざまな発明をした。
電気水道ガスの供給網の効率化、低価格の自家用旅客機、燃料なしで永遠に電気を作れる発電システム、すべての病気やケガを治癒できる医療機器・・・あいつがアイディアを出して設計し、オレがその資金を集めた。」
ミグ「・・・・・・。」
ヴィン「しかしライトはあるとき急にスランプに陥った。アイディアが何も出なくなったんだ。
もしかしたら恋人を戦争で失ったことが原因だったのかもしれない」
ミグ「恋人・・・?」
写真を指差すヴィン「彼女さ。とびっきりの美女でとびっきりのじゃじゃ馬。あんたによく似てたよ」
ミグ「・・・それでライトは?」
ソファに座るヴィン「それ以来あいつは自分の楽しみのためにしか発明をしなくなった。
ライトフライヤー号とかいう子供のガラクタのような宇宙船を作って勝手に宇宙へ飛んで行っちまったよ。
相変わらず自由で無責任なやつだよ・・・」
写真の女性を見つめるミグ。
ライトとヴィンの肩に腕を乗せて笑うレオナ・イアハートは太陽のように情熱的な女性に見える。
ワイングラスを傾けてつぶやくヴィン「神様って不公平だよな・・・」
写真から目を離してヴィンの方に目をやるミグ「え?」
ヴィン「オレにはあいつの10分の1も才能がない・・・」



ハイペリオン教会
礼拝堂には万里の長城が描かれた巨大なステンドグラスが並んでいる。
星の光によってうっすらと光るステンドグラスを見上げるライトとスカーレット。
ライト「見事なもんやな・・・」
スカーレット「この星の万里の長城は、死を恐れた始皇帝サタンが女神キュベレイのお告げを受けて他の星の侵攻を防ぐために築いた防壁なの・・・」
ライト「ああ、ガイドブックに書いてあった」
「では万里の長城の伝説には続きがあるのを知ってる?」
「いや・・・」
「実は万里の長城の正体は残虐な暴君サタンをこの星に閉じ込めるための結界だったの。
それを知り怒り狂ったサタンは女神を殺しその肉を食らい、ついに不老不死となった・・・
王が神に祈ることはなくなった。自身が神の力を得たのだから。」
ステンドグラスを見上げるライト「ふ~ん・・・」
「しかし・・・やがてサタンを知る者が誰もいなくなったとき、サタンは自分に与えられた力が恐ろしい罰であったことを知った。鳥かごの中の永遠の孤独。
・・・プロメテウス社がやっているのはこれと同じよ。」

ニコライが礼拝堂に入ってくる。
ニコライ「人生が全て金に還元されてしまった。
この星では文字通り金があるだけ長く生きられる、金があれば幸せだと・・・
だが果たしてそれは幸せなことなのだろうか?
実際土星の富裕層は預金通帳の残高を見て常に不安と恐怖に怯えている。
いくら金があっても満たされない。いつか破産して命脈尽きるんじゃないかと悲観している。
連中の頭にはいかにたくさんの金をむしり取るかしかない。
死なないことに頭がいっぱいで生き抜くことを忘れてしまった。
・・・それはもう人間じゃないんじゃないか・・・?」
ライト「♪生きているだけで、死んでいる」
スカーレット「?」
ライト「あ、知らない?ミスタージョージ・トコロっていう有名なアーティスト」
スカーレット「バカバカしい・・・」
ライト「・・・で、このサタンはその後どうしたんやろな・・・」
スカーレット「え?」
ライト「やっぱりもう一度神様に祈ったんちゃうかな・・・」
スカーレット「・・・・・・。」

ステンドグラスに描かれた万里の長城の色が変わる。
ステンドグラスの後ろの大きな影に気づくライト
ライト「!」

スカーレットを押し倒すライト「危ない!!」
スカーレット「きゃっ」

その直後ステンドグラスの向こうから巨大なステルス戦闘機が機銃掃射してくる。
粉々になるステンドグラス。
荘厳な礼拝堂が吹き飛んでいく。
ライト「ふせろじいさん!!」
ニコライ「ミラージュ・・・!」

機銃掃射をやめ旋回し教会の裏に回り込むミラージュ。
とあるポイントを定め空中で静止する。

ライト「墓地の上で止まったで、何をするつもりや?」
何かに気づくスカーレット「ハッ」
教会から飛び出していくニコライ「いかん!!」
ライト「じいさん!!」

教会の裏の墓地
ミラージュの方へかけていくニコライ「やめろ~~~!やめんか~~~!!!」
機体から姿勢制御のジェットを噴射させて空中で位置を固定するミラージュ

ニコライを追いかけるスカーレット「首領!危険です!」
ミラージュの真下で腕を振るニコライ「やめてくれ!!この下には貧しい民が・・・!!」
ライト「!ドヤ街の上なのか!」

ニコライの方へ駆け出すスカーレットを止めるライト
スカーレット「はなして!!」
ライト「あかん!もう間に合わへん!!」

墓地の上から真下に向けてパイルバンカーミサイルを発射するミラージュ
地面が陥没し地下で大爆発が起こる。
二人に爆風が襲いかかる。
スカーレット「首領~~~!!」
ライト「じいさん・・・!」

ニコライのいた場所にはクレーターが残っている。
くるりと向きを変え、引き返していくミラージュ。
カタコンベのドヤ街は一瞬で消滅してしまった。

夜の闇に消えていくミラージュの影を見つめるライト「あの機体は・・・」
がくりと膝をつき泣き出すスカーレット「ひどすぎる・・・」
スカーレットに近づくライト「なあ・・・」
肩を震わせるスカーレット「近づかないで・・・!」



焼け野原となったハイペリオン教会
墓標を作るスカーレットとライト。
スカーレット「これから宇宙の至る所で同じことが起きるわ・・・もうミラージュは誰にも止められない・・・この星はまた同じことを繰り返すんだ・・・」
ライト「わかった・・・協力する。」
スカーレット「・・・・・・。」
ライト「だがひとつ約束してくれ」
「・・・なに?」
「お前はもう誰も殺すな。」
「そんな甘いこと言えるような相手じゃないでしょ・・・」
「ああ。あの機体のパイロットはこのオレが必ず倒す。だからあんたはこれ以上手を血に染めるな。
キミの本職は聖職者なんやろ・・・?」
「私に出来ることはある?」
「祈っててくれへんかな・・・」
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