『80日間宇宙一周 CRIMSON WING』脚本⑦

プロメテウス社役員室
役員が会議をしている。
役員「我が社の株は75から22に大幅に下落。
航空ショーで与えた損害は23兆3000億ドル。土星の国家予算に匹敵します。」
ヴィン「ありがとう、チャン。
そういうことだ。我が社としてはただちにミラージュの生産を打ち切り、この異常事態に対処しなければ・・・」
席から立ち上がるエド「それはどうでしょうか?
あんな恐ろしい破壊兵器を公表してしまった以上、どの星もミラージュを買わないわけにはいかないでしょう。
我が社はミラージュを生産し続け、ミラージュの抑止力にするしかない。」
ヴィン「・・・どういうことだ?オレは社長だぞ。」
エド「昨日まではね。役員会はたった今あなたの解任を決めました」
ヴィン「なんだと!?」
エド「土星のために尽力したあなたが最終的に土星にこのような災厄をもたらしてしまったのは私としても大変に残念に思います。
しかし今、この星のいたるところで罪のない貧困層や少数民族がミラージュによって虐殺されている。レイセオンCEOにはその責任を取る必要があります。」
ヴィン「お前らあれを作り続けるっていうのか!?土星全土がローストになるぞ!」
気まずそうに目をそらす役員たち「・・・・・・。」
エド「兵器メーカーとしては優れた兵器があるなら売らないわけにはいかないでしょう。
あれが欲しい惑星はいくらでもあるんだ。
ミラージュがもたらす利益は今回の損失を補って余りある。」
ヴィン「航空ショーの惨状を見てまだそんなこと言うのか・・・」
エド「あなたの言ってたとおりだ、ヴィン。ミラージュは戦争を変えますよ。」
ヴィン「・・・お前・・・もしかしてお前がミラージュを意図的に暴走させたのか・・・?」
エド「人聞きの悪い。あの試作機を強引に動かしたのはあなたでしょう。」

エドの私設オフィス
ミラージュのコックピットからの映像をリアルタイムで他の星のテロリストに中継する
他の星の独裁国家やテロリストからたくさんの発注が来る
裏口座の売上額が天文学的な数字にまで膨れ上がっていく



リンドバーグ号のコックピット。
コックピットの奥でミグの缶ビールを飲むヴィン。
それを横目で見つめるミグ「あの人大丈夫か・・・」
Yシャツ姿のヴィン「もうダメだ・・・エドの野郎にまで裏切られるなんて・・・」
操縦桿を握るライト「裏切られたって・・・お前はどれだけあの副社長を信じていたんや・・・」
ヴィン「・・・え?」
ライト「人を信じてない奴に誰が心を開く思う・・・まあ過ぎたことを言ってもしゃあないけどな。
今はオレたちにできることをやろう。」
ヴィン「ライト・・・お前って優しいな」
ライト「うるさいわ」

ハイペリオン教会
教会の前にリンドバーグ号が着陸する
ヴィン「ここは?」
ミグ「ハイペリオン教会だ・・・」
ライト「ああ、ミラージュの秘密を知る最後の手がかりや・・・」
ヴィン「最後は神頼みってか・・・」

廃墟
ドヤ街があった場所に降りていくライト
スカーレット「おかえりなさい。言われたとおり探しておいたわよ」
ライト「ありがとな・・・」
スカーレット「土星のためよ・・・」

ヴィン&ミグ&スカーレット「あ!!」
ライト「へ?」

ヴィンに気づくスカーレット「ヴィンセント・レイセオン!よくも・・・!」
ライト「おいそれはあとでいいやろ。」
ヴィン「もう殺してくれていいよ・・・」
かつてのターゲットは髪はボサボサでYシャツのえりは汚れている。
スカーレット「・・・?なんか随分みすぼらしくなったわね」
ライト「会社乗っ取られちゃったんや」
スカーレット「資本主義なんてそんなものよ・・・当然の報いね」
ライトに耳打ちするミグ「おい、お前・・・その女は緋色の旅団の暗殺者だぞ・・・」
ライト「緋色の旅団はもうないんや。彼女はただの動けるシスター」
スカーレット「よろしくね、ミス・傭兵」
ミグ「誰が傭兵だ・・・」

ライト「・・・でミラージュに関する情報は?」
汚れたオープンリールテープのケースを差し出すスカーレット
「これしか残ってなかったけど・・・」
ヴィン「・・・なんだそれ?」
ライト「緋色の旅団はここでお前の会社の情報を傍受していた・・・そのデータを遡ればなにか分かるかもしれんやろ」

礼拝堂
レコーダーにテープをセットする。

ミラージュ開発プロジェクトチームのやり取り
「4月14日。開発段階522日目。
ミラージュのアビオニクスは大変高性能だが、パイロットコンピューターがエネルギーを食いすぎて、すぐにエネルギー切れになってしまう。CPUの冷却システムについてはおおよそ問題はない。」

「554日目。またエネルギー切れになって墜落した。だが搭載されたオートパイロットの技術はとんでもないレベルだ。エネルギー問題さえ克服できればこのミラージュは冥王軍を抜き宇宙最強の航空部隊となるだろう。」

「562日目。また墜落。あまりに持久力がない。
これではいくら戦闘で負けなしでも空母に引き返す前に落ちてしまう。
ここまで進捗状況が悪いと、気まぐれなヴィンセントが計画を打ち切る可能性もある。ここまで来て開発中止にされてたまるか」

「599日目。冥王星から来たある男と出会う。彼は死の商人サーペンタリウスとコネがあるらしい。相手が死の商人だろうがなんだろうが今の我々にはパトロンがいる。」


ミグ「サーペンタリウス・・・」
ヴィン「エドのやつ、やっぱり死の商人とグルだったんだ」
ライト「まあ、続きを聞いてみよう」
スカーレット「そうね、そうしましょう」

「733日目。サーペンタリウスの資金協力で無事ミラージュのエネルギー問題は解決した。
社の上層部も、まさか万里の長城の太陽光発電所から電子パイロットに直接信号を飛ばすとは思わないだろう。
つまりミラージュの動力源は太陽ということになる。太陽がある限りミラージュは作戦を実行し続ける。素晴らしい!」


ライト「!」
ヴィン「万里の長城だって!?」
スカーレット「そう言ったわ・・・!」

テープを止めるライト。
ライト「さてと・・・どうする?」
スカーレット「決まってるでしょ。万里の長城を止めましょう。それしかない・・・」
ヴィン「ちょっと待て!あの発電所は土星の65%の電力を供給しているんだぞ!
それを停止するってことは首都カッシーニを中心に土星の6割以上が停電することに・・・」
スカーレット「ほかにミラージュのパイロットを止める手段があるの?
こうしている間にもミラージュは土星の各地で虐殺を繰り返しているわ・・・
あなたはどう思うの天才発明家?」
ライト「電気を止めて戦争が終わるなら安いもんやろ。オレは彼女に賛成や。」
スカーレット「ありがとう」
ライト「約束したしな・・・」
ヴィン「おいおい・・・」
ミグ「で、どうやって実行する?」
ヴィン「あんたもやる気かよ」
ミグ「あなたはパーティでこう言った。戦争で失われる命を救うためにミラージュを作ったと。ならば、我々がやるべきことは決まっているはずだ・・・」
スカーレット「ふん、資本主義者の詭弁ね」
ミグ「私はリアリストな軍人だ。世界から完全に戦争や兵器がなくなるとは思えない・・・
・・・だが、手段は違えど少しでも世の中をよくしていこうとする志は、緋色の旅団もプロメテウス社も一緒だったんじゃないか?」
スカーレット「この女なんてこと言うの!こんな金の亡者と一緒にされちゃたまらないわ!
この男の会社がいったい何人の人間を殺したと思ってるの!」
ミグ「それはお互い様だろ・・・」
スカーレット「・・・え?」
ミグ「緋色の旅団が私の星でやったこと・・・私は一生忘れない」
スカーレット「・・・あれは一部の過激派が・・・」
ミグ「でも私はあなたたちを許す。許さなきゃいけないんだ・・・」
スカーレット「・・・・・・。」
ミグ「あなたはまるで昔の私だ・・・
実は私も、最初はこのライトとは思想の面で違いがあって対立ばかりしていたんだ・・・
でもそれは、あまりにも自由なライトに私があこがれと嫉妬を感じていただけだった。」
スカーレット「なにが言いたいのよ」
ミグ「国家や思想が違っても・・・許す強さがあれば、人は分かり合えることはできるんだよ」
スカーレット「・・・・・・。」

ライト「ヴィンセント?」
破壊された礼拝堂をぼんやり見つめるヴィンセント
ヴィン「そういえば聖書にそんな話があったな・・・ルカの福音書第23章だっけ。
ずっと忘れていたけれど」
スカーレット「え・・・」
意を決したように立ち上がるヴィン「万里の長城の発電所をとめるのは、そう簡単じゃない。
・・・というか永久に止めるつもりはなかったからね。二重のロックを施した。
あれを止めるにはプロメテウスタワー地下にある発電所のコントロールセンターで認証装置のロックを外し、私だけが知っている緊急停止コードを打たなければならない。」
ミグ「認証装置はどこに?」
ヴィン「タワー最上階の社長室に隠している。」
スカーレット「・・・ミラージュが妨害する可能性があるわ・・・」
ライト「あいつはオレに任せろ・・・オレも過去にケリをつけなきゃな。」
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